介護老人保健施設(老健)とグループホームは、どちらも介護保険を利用する施設ですが、入所する目的も対象者も大きく異なります。
老健は、介護やリハビリテーション、必要な医療を受けながら、自宅などへの復帰を目指す施設です。一方、グループホームは、認知症のある人が少人数で共同生活を送りながら、日常生活上の介護や支援を受けるサービスです。
まず結論|老健は「在宅復帰とリハビリ」、グループホームは「認知症ケアと共同生活」
老健は要介護1〜5の人を対象に、医学的管理のもとで介護・看護・リハビリテーションなどを行い、自宅などへの復帰を支援する介護保険施設です。グループホームは認知症のある要支援2または要介護1〜5の人が、少人数の家庭的な環境で共同生活しながら介護を受ける地域密着型サービスです。リハビリを重視して在宅復帰を目指すのか、認知症ケアを受けながら生活を続けたいのかで選択が変わります。
老健とグループホームの違いを最初に整理
老健とグループホームを比較するときは、「何のために利用する施設なのか」を最初に確認すると違いが分かりやすくなります。
01
介護老人保健施設(老健)
要介護者に対して、医学的管理のもとで介護、看護、リハビリテーション、必要な医療などを提供し、居宅での生活へ戻れるよう支援する介護保険施設です。
02
グループホーム
正式には「認知症対応型共同生活介護」といい、認知症のある人が少人数で共同生活しながら、食事・入浴・排せつなどの日常生活上の介護や機能訓練を受けるサービスです。
最大の違いは「施設で何を目指すか」
老健とグループホームは、介護保険を利用する点は共通していますが、施設で目指す生活は同じではありません。
老健は自宅などへ戻るための支援を行う
老健では、本人の身体機能や生活機能を確認しながら、リハビリテーション、介護、看護、必要な医療を提供します。
入所後は、退所後にどこで生活するかを考え、自宅環境や家族の介護力、利用する在宅サービスなども含めて調整していきます。
グループホームは認知症の人が共同生活を続ける
グループホームでは、認知症のある人が家庭的な環境の中で、職員の支援を受けながら共同生活を送ります。
食事の準備や掃除など、本人ができることに参加しながら生活することも特徴です。認知症があっても、本人が持っている力を活かしながら日常生活を続けることを支援します。
POINT
老健は「次の生活へ戻るための支援」、グループホームは「認知症の人が共同生活を続けるための支援」と考えると違いが整理しやすくなります。
入所条件はどう違うのか
老健とグループホームでは、対象となる要介護度や認知症の条件が異なります。
老健は要介護1〜5が対象
老健は、要介護1〜5の認定を受けた人が対象です。要支援1・2の人は入所できません。
さらに、本人の病状が比較的安定しているか、施設で必要な介護・医療・リハビリテーションを提供できるか、在宅復帰に向けた支援が適しているかなどを踏まえて入所が検討されます。
グループホームは認知症の診断が必要
グループホームは、認知症であることが利用の前提です。要支援2または要介護1〜5の人が対象で、要支援1の人は利用できません。
入居時には、主治医の診断書などによって認知症であることを確認します。また、少人数での共同生活に支障がないことや、施設で必要なサービスを提供できる状態かどうかも確認されます。
グループホームは「軽い認知症の人だけ」の施設ではありません
対象は要支援2から要介護5までです。認知症の程度だけで一律に判断するのではなく、本人が共同生活を送れるか、必要な医療や介護に施設が対応できるかを個別に確認します。
グループホームは地域密着型サービス
グループホームは地域密着型サービスです。そのため、原則として、その事業所が所在する市区町村の住民が利用します。
老健はグループホームと同じ地域密着型サービスではないため、同じ住民票要件で利用先が限定される仕組みではありません。
家族の近くへ呼び寄せる場合は住民票要件を確認する
親を子どもの自宅近くへ呼び寄せ、グループホームへの入居を検討する場合は、希望する地域で利用要件を満たすか確認が必要です。
市区町村によって手続きの確認が必要になる場合があるため、候補施設と自治体の両方に相談すると判断しやすくなります。
リハビリテーションはどう違うのか
「リハビリを受けたい」という希望がある場合、老健とグループホームでは位置づけが大きく異なります。
老健は在宅復帰に向けたリハビリを重視する
老健には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職が配置され、本人の状態に応じたリハビリテーションを行います。
歩行や立ち上がりなどの身体機能だけでなく、自宅へ戻った後の生活を想定しながら、日常生活動作や生活環境まで含めて支援することが老健の特徴です。
グループホームは日常生活そのものを活かした支援が中心
グループホームでも機能訓練は行われますが、老健と同じように在宅復帰を目的として専門的なリハビリテーションを中心に提供する施設ではありません。
料理、掃除、洗濯、移動など、日々の共同生活そのものを通して本人の能力を活かす支援が重視されます。専門職による個別訓練の内容や頻度は施設ごとに確認してください。
認知症ケアはどう違うのか
老健にも認知症の人は入所できますが、グループホームは認知症のある人を対象とした専門的な介護サービスです。
老健でも認知症の人を受け入れる
認知症があることだけを理由に、老健を利用できないわけではありません。本人の状態や在宅復帰の見込み、医療・介護ニーズなどを踏まえて入所が検討されます。
ただし、認知症ケアそのものだけを目的にする施設ではなく、老健としての中心的な役割は在宅復帰・在宅療養支援です。
グループホームは認知症ケアを前提に生活環境を整える
グループホームでは、認知症の人ができるだけ落ち着いて生活できるよう、少人数の家庭的な環境を整えています。
同じ職員や入居者と顔を合わせながら生活しやすいことも特徴です。ただし、認知症の症状や医療ニーズによって対応できる範囲は施設ごとに異なります。
入所期間・生活期間はどう違うのか
老健とグループホームでは、施設に滞在する期間の考え方も異なります。
老健は一律に3か月で退所する制度ではない
老健について「3か月で必ず退所する」と説明されることがありますが、一律に3か月で退所しなければならない制度ではありません。
ただし、在宅復帰・在宅療養支援を目的とする施設であるため、本人の状態や退所後の生活を継続的に検討します。長期居住そのものを第一目的として施設を探す場合は、別の選択肢も比較する必要があります。
グループホームは生活の場として利用する
グループホームは、認知症の人が共同生活を送る住まいとして利用します。老健のように在宅復帰を目的として退所時期を考える施設ではありません。
ただし、入院治療が必要になった場合や、施設では必要なサービスを提供することが難しくなった場合などには、住み替えを検討することがあります。
費用の仕組みはどう違うのか
老健とグループホームでは、支払う費用の構成も異なります。固定的な月額だけで比較するのではなく、本人の要介護度や施設ごとの料金を反映して確認します。
老健は施設サービス費・食費・居住費が中心
老健では、介護保険の施設サービス費の自己負担に、食費、居住費、日常生活費などを加えて支払います。
所得や資産が一定以下の人は、食費・居住費の負担を軽減する負担限度額認定の対象になる場合があります。
グループホームは介護費に家賃・食費などが加わる
グループホームでは、介護保険サービス費の自己負担に加えて、家賃、食材料費、光熱水費、日常生活費などを支払います。
家賃や食費は施設ごとの差があるため、本人の要介護度と負担割合を伝え、毎月の総額を見積もってもらうことが重要です。
費用比較で確認したい項目
- 介護保険の自己負担
- 食費・食材料費
- 居住費または家賃
- 光熱水費
- 医療費
- 日用品などの実費
医療体制はどう違うのか
老健には医師や看護職員、介護職員、リハビリ専門職などの配置基準があります。グループホームは認知症ケアを行う介護サービスですが、医療施設ではありません。
老健は医学的管理のもとで支援する
老健では、医師の医学的管理のもとで必要な医療や看護、介護、リハビリテーションを提供します。
ただし、病院のような急性期治療を行う施設ではありません。継続中の治療や医療処置がある場合は、施設で対応できるかを事前に確認します。
グループホームは医療機関との連携状況を確認する
グループホームでは、協力医療機関や訪問診療、訪問看護などと連携している施設がありますが、医療対応の範囲は施設ごとに異なります。
認知症に加えて医療ニーズがある場合は、看護職員の配置、夜間の急変時対応、看取り方針などを具体的に確認してください。
老健とグループホームのどちらが向いているか
どちらを選ぶかは、認知症の有無だけではなく、本人が今後どのような生活を目指すのかで考えます。
老健が候補になりやすい人
- 要介護1〜5の認定を受けている
- 退院後すぐに自宅へ戻るのが難しい
- 専門職によるリハビリを受けたい
- 自宅などへの復帰を目指している
グループホームが候補になりやすい人
- 認知症の診断を受けている
- 要支援2または要介護1〜5である
- 少人数の家庭的な環境で暮らしたい
- 共同生活の中で認知症ケアを受けたい
- 地域密着型サービスの利用要件を満たしている
見学・相談時に確認したい5つのポイント
制度上の違いを理解したら、本人の状態と候補施設の実際の支援内容を確認します。
01
本人が目指す生活と施設の目的が合っているか
自宅へ戻るための支援が必要なのか、認知症ケアを受けながら共同生活を続けたいのかを整理します。
施設の目的が本人や家族の希望と合っていないと、入所後に次の住まいを急いで探すことになる場合があります。
02
リハビリの内容と頻度を確認する
老健ではリハビリ専門職の配置や個別の支援内容を確認します。グループホームでは、生活の中でどのように身体機能や役割を保つ支援をしているかを確認します。
03
認知症の状態に対応できるか
本人の症状、困りごと、夜間の状態などを具体的に伝えます。特にグループホームでは、本人がその環境で落ち着いて共同生活できそうかを見ることが重要です。
04
毎月の総費用を比較する
介護保険自己負担、食費、居住費・家賃、医療費、日用品などを含め、本人の条件で毎月の見込み額を確認します。
老健では食費・居住費の負担軽減制度の対象になるか、グループホームでは家賃や食材料費など施設独自の費用も含めて確認してください。
05
退所・退居が必要になる条件を確認する
老健では在宅復帰に向けた退所支援をどのように進めるのか、グループホームでは医療ニーズや認知症の状態が変化した場合にどこまで対応できるのかを確認します。
入所・入居時の条件だけでなく、状態が変わった場合に次の生活先をどのように調整するのかまで聞いておくと、家族も先の見通しを持ちやすくなります。
まとめ|リハビリと在宅復帰なら老健、認知症ケアと共同生活ならグループホーム
介護老人保健施設(老健)とグループホームは、どちらも介護保険を利用する施設ですが、役割は異なります。
老健は要介護1〜5の人を対象に、介護、看護、リハビリテーション、必要な医療を提供しながら在宅復帰・在宅療養を支援する介護保険施設です。
グループホームは、認知症のある要支援2または要介護1〜5の人が、少人数の家庭的な環境で共同生活しながら認知症ケアを受ける地域密着型サービスです。
「自宅などへ戻るためのリハビリが必要なのか」「認知症ケアを受けながら共同生活を続けたいのか」を整理し、本人の状態・費用・医療体制・今後の生活に合う施設を選んでください。