老健で看取りはできる?終末期対応を確認

介護老人保健施設(老健)は、リハビリテーションなどを通じて在宅復帰や在宅療養を支援する施設です。

そのため、「老健では看取りはできない」と思われることがありますが、実際にはターミナルケアに対応する老健もあります。ただし、すべての老健が同じ体制で最期まで対応するわけではありません。

まず結論|老健でも看取りは可能だが、施設ごとの対応範囲を必ず確認する

介護老人保健施設(老健)にはターミナルケア加算が設けられており、医師が回復の見込みがないと診断した入所者について、本人・家族等の同意のもと、医師・看護職員・介護職員・支援相談員・管理栄養士等が共同してターミナルケアを行う仕組みがあります。一方、老健は本来、在宅復帰・在宅療養支援を担う施設です。すべての老健が看取りに対応しているわけではないため、夜間の医療体制、急変時対応、苦痛緩和、救急搬送、家族の面会・付き添い、死亡確認まで具体的に確認してください。

老健で看取りはできる?

介護老人保健施設(老健)でも、看取りやターミナルケアに対応する施設があります。

老健にはターミナルケア加算がある

介護サービス情報公表システムでは、老健のターミナルケア加算について、医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した入所者に対し、医師、看護職員、介護職員等が共同して、その人らしさを尊重したターミナルケアを支援する場合に算定される加算とされています。

「老健だから看取り不可」ではない。制度上、老健でのターミナルケアは想定されています。そのため、終末期になったから直ちに別施設へ移らなければならないとは限りません。

すべての老健が対応するわけではない。実際の看取り体制は施設によって異なります。医師の関わり方、夜間の看護体制、対応できる医療処置などを確認する必要があります。

老健は本来どんな施設?

老健の役割を理解すると、看取りへの対応が施設ごとに異なる理由が分かりやすくなります。

在宅復帰・在宅療養支援が大きな役割。老健は、病状が安定した要介護者に対し、リハビリテーション、医療、介護、日常生活上の支援を提供し、在宅復帰や在宅生活の継続を支える施設です。

長期入居だけを目的とする施設ではない。特別養護老人ホーム(特養)のように、長期的な生活の場を第一目的とする施設とは役割が異なります。

「必ず3か月で退所」ではない。老健には一律に「3か月で退所しなければならない」という制度はありません。本人の状態や在宅復帰の可能性などを踏まえ、継続入所や退所支援が検討されます。

老健で看取りを行うのはどんな場合?

老健で看取りを行う場合は、本人の病状と意思を踏まえ、医療・介護の多職種で方針を検討します。

01

医師が回復の見込みがないと判断している

ターミナルケア加算では、医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断していることが要件の一つです。

02

本人・家族等と方針を共有している

本人または家族等の同意を得て、ターミナルケアに関する計画を作成します。

03

多職種でケアを行う

医師、看護職員、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が共同し、本人の状態に応じて支援します。

04

本人の意思を尊重している

厚生労働省の人生の最終段階における医療・ケアの考え方に沿い、本人の意思を中心に方針を決めます。

看取りを希望するなら本人の意思を早めに確認する

看取りの方針は、本人が意思を伝えられるうちから話し合っておくことが大切です。

本人がどこで過ごしたいかを聞く。老健で最期まで過ごしたいのか、状態が悪くなったら病院で治療を受けたいのかなど、本人の希望を確認します。

本人の意思は変わることがある。厚生労働省のガイドラインでは、本人の意思は心身の状態に応じて変化し得るため、繰り返し話し合うことが重要とされています。

一度決めても見直せる

看取り方針を決めた後でも、本人の気持ちや病状が変われば内容を見直すことができます。

POINT

老健で看取りを希望する場合も、「病院へ行かない」と一度決めて終わりではありません。本人の状態や意思の変化に応じて、医師・看護職員・介護職員・家族等で何度でも方針を見直すことが大切です。

本人が意思を伝えられない場合

認知症や意識状態の低下によって、本人が自分の希望を十分に伝えられない場合があります。

以前の発言を手がかりにする。「できるだけ病院には行きたくない」「苦しい治療は避けたい」など、本人が以前話していた内容があれば施設へ伝えます。

本人の価値観や生活歴を考える。これまで大切にしてきたこと、医療に対する考え方、家族との関係なども本人の意思を推定する材料になります。

家族だけで決断を背負わない。本人の意思を確認できない場合も、家族等が推定する本人の意思を尊重し、医療・ケアチームと十分に話し合って方針を決めます。

老健の医師体制を確認する

老健には医師が配置されていますが、病院と同じ診療体制ではありません。

医師が施設にいる時間を確認する。常勤医師の勤務時間、休日・夜間の連絡方法を確認してください。

夜間の急変時に誰が判断するか。夜勤職員が看護職員へ連絡し、その後医師へ相談するのかなど、実際の連絡手順を聞きます。

必要時の往診・診察体制。夜間・休日に状態が変化したとき、医師がどのように関与するかを確認します。

夜間の看護体制を確認する

看取りを希望する場合、日中の看護職員数だけでなく夜間の体制が重要です。

看護職員が夜間も施設内にいるか。夜勤として施設内にいるのか、オンコールで連絡を受ける体制なのかを確認します。

介護職員だけの時間帯があるか。看護職員がいない時間帯に呼吸状態や意識が変化した場合、介護職員がどのように対応するかを聞いてください。

医師への連絡ルート。看護職員から医師へ連絡するのか、夜勤の介護職員から直接連絡する場合があるのかなどを確認します。

痛みや呼吸苦への対応を聞く

看取りでは、「治療をしない」ことではなく、本人の苦痛を和らげることが重要です。

痛みをどう評価するか。本人が言葉で痛みを伝えられない場合も、表情、うなり声、体のこわばりなどから苦痛を把握できるか確認します。

呼吸苦への対応。体位調整、酸素療法、医師の指示による薬剤など、施設でどこまで対応できるかを確認してください。

不安や不穏への支援

本人が不安になったとき、環境調整や声かけ、家族との面会などを含めて支援できるかを見ます。

看取りは「何もしない」ことではない

厚生労働省は、人生の最終段階においても、可能な限り疼痛や不快な症状を緩和し、本人・家族等への精神的・社会的支援も含めた総合的な医療・ケアを行うことを重視しています。

食べられなくなったときの対応

終末期になると、食事や水分を以前と同じ量だけ取れなくなることがあります。

無理に食べさせない。意識が低い、嚥下が難しい、本人が強く拒否している場合に無理に食べさせると、誤嚥や窒息につながる可能性があります。

食べられる方法を探す。食形態、一口量、姿勢、本人の好物などを調整し、負担が少ない方法を検討します。

食べられない原因も確認する。口腔内の痛み、便秘、吐き気、薬の影響など、改善できる原因がないか医療職へ相談します。

点滴・経管栄養はどうする?

食事や水分が取れなくなったとき、点滴や経管栄養をどうするか家族が悩む場合があります。

利益と負担を医師へ確認する。点滴や経管栄養によって期待できる効果と、本人への負担を医師から説明してもらいます。

一律に実施・不実施を決めない。病状や回復可能性、本人の希望によって判断は異なります。

本人の価値観を中心に考える。「家族がどうしたいか」だけでなく、「本人ならどう考えるか」を医療・ケアチームと話し合ってください。

救急搬送をするか事前に確認する

老健で看取りを希望しても、すべての急変で救急搬送をしないと一律に決めることは適切ではありません。

治療可能な急変もある。骨折、窒息、感染症など、病院での治療によって本人の苦痛や状態を改善できる場合があります。

どの状態で病院へ行くかを話し合う。発熱、出血、転倒、呼吸状態の悪化など、どのような場合に医師へ連絡し、搬送を検討するか確認します。

本人の希望を優先する。治療内容や入院について本人の意思を確認できる場合は、その意思を基本に判断します。

看取り方針を決めた後でも入院できる?

老健で看取りを行う方針を決めても、状況によって入院へ切り替えることはあります。

本人の希望が変わった場合。本人が病院で治療を受けたいと希望した場合は、方針を見直します。

施設では苦痛を十分に緩和できない場合。病院での処置や治療の方が本人の負担を減らせる可能性がある場合は、入院を検討することがあります。

家族の希望だけでなく医療的妥当性も考える。医師から病状や治療の見込みについて説明を受け、本人の意思を中心に多職種で判断します。

DNARをどう確認する?

人生の最終段階では、心肺停止時に心肺蘇生を行うかを話し合うことがあります。

心肺蘇生を行わないことと治療をしないことは別。心肺蘇生を行わない方針であっても、痛みや呼吸苦への対応、必要な治療やケアまで一律に行わないという意味ではありません。

本人の意思を中心に話し合う。医学的な見通しについて医師から説明を受け、本人がどのような医療を望むかを確認します。

家族への連絡体制を確認する

看取り期では、家族が施設へ向かうタイミングを判断できるよう、連絡基準を確認しておくことが重要です。

食事量が大きく減ったとき。食事・水分摂取量がどの程度減ったら連絡してもらえるか聞きます。

意識・呼吸状態が変わったとき。夜間も含め、どのような状態変化で家族へ連絡するか確認します。

危篤が近いと判断したとき。家族が遠方の場合は移動時間もあるため、早めの連絡を希望することを伝えておきます。

家族の面会・付き添いはできる?

本人の最期が近づくと、家族が長時間そばにいたいと希望することがあります。

通常時間外の面会。夜間や早朝でも看取り期は面会できるか確認してください。

付き添い。家族が居室で長時間付き添えるか、椅子や簡易ベッド等を利用できるかを聞きます。

家族の休憩場所。数日にわたる場合を考え、休憩や飲食が可能な場所についても確認します。

死亡確認はどう行われる?

施設内で本人が亡くなった場合、死亡診断は医師が行います。

夜間の医師への連絡。夜間・休日に亡くなった場合、どの医師へ連絡し、どのような流れで死亡確認を行うか確認します。

家族への連絡。危篤時・死亡時の連絡先と、家族の優先順位を施設へ伝えておきます。

その後の流れ。着替え、葬儀社への連絡、私物整理など、施設がどこまで支援するかを確認してください。

看取り中もリハビリはする?

老健はリハビリテーションを特徴とする施設ですが、看取り期になれば目標は変わります。

機能回復だけを目標にしない。状態が進行しているときは、歩行距離を伸ばすことより、痛みの少ない姿勢を保つことや、楽に座れることが大切になる場合があります。

本人の負担を減らす支援へ切り替える。関節拘縮の予防、ポジショニング、呼吸しやすい姿勢など、本人の快適さを重視します。

本人が望む活動を支える。体調が許せば、食堂へ出る、好きな音楽を聴く、家族と過ごすなど、その人らしい生活を続けることも重要です。

口腔ケア・清潔ケアも重要

食事量が減った後も、口腔ケアや清潔保持は本人の快適さにつながります。

口腔内の乾燥。口腔内を清潔にし、乾燥を和らげるケアを行えるか確認します。

入浴できないとき。清拭、部分浴、着替えなど、体調に合わせた方法で清潔を保ちます。

褥瘡予防。寝ている時間が長くなる場合、体位変換や皮膚状態の観察が必要です。

老健から別の施設・病院へ移る場合もある

老健で看取りを希望しても、本人の状態や施設体制によっては他の場所を検討することがあります。

医療処置が増えた場合。老健で継続的に対応することが難しい医療管理が必要になれば、医療機関等への移行を検討します。

長期療養を中心に考える場合。長期的な医療と介護の両方が必要な要介護者では、介護医療院が候補になる場合があります。

長期的な生活の場を優先する場合。本人の状態と施設の受け入れ状況によっては、特別養護老人ホーム(特養)などを検討する場合があります。

老健を選ぶときに看取り実績を確認する

看取りを希望する可能性があるなら、入所前から施設の実績や方針を確認しておくと安心です。

看取りに対応した人数。過去にどの程度看取りを行っているかを聞くと、実際の運用状況が分かります。

病院搬送との割合。終末期の人がどのような場合に病院へ搬送されているかを確認します。

家族への説明方法。看取り開始前に誰が説明し、どのような書面を作成するかを聞いてください。

看取りについて確認したいチェックリスト

老健で終末期対応を確認するとき

  • ターミナルケアに対応しているか
  • 看取り・ターミナルケアの実績
  • 看取りを開始する判断基準
  • 本人の意思確認方法
  • 家族への説明方法
  • ターミナルケア計画の内容
  • 医師の勤務・連絡体制
  • 夜間の看護職員配置
  • 夜間・休日の急変対応
  • 痛み・呼吸苦への対応
  • 酸素・吸引等への対応
  • 食事・水分が取れなくなったときの対応
  • 点滴・経管栄養の考え方
  • 救急搬送の判断
  • 心肺蘇生についての話し合い
  • 家族への連絡基準
  • 夜間・早朝の面会
  • 家族の付き添い
  • 死亡確認の流れ
  • 看取り後の私物・葬儀社への対応

重要事項説明書や施設方針で確認する

「看取りできます」という口頭説明だけでなく、書面でも確認してください。

終末期対応の範囲。どこまで施設内で対応し、どのような場合に入院を検討するか確認します。

医療連携。施設医師、協力医療機関、外部医療機関との連携方法を確認してください。

費用。ターミナルケア加算等が算定される場合、自己負担へどのように反映されるか説明を受けます。

家族の役割。夜間の付き添いを家族に求めるのか、家族が来られない時間でも施設で対応できるのかを確認します。

老健の看取りが向いている場合

本人がすでに老健で生活しており、施設職員との関係ができている場合、本人の希望と施設体制が合えば、慣れた環境で最期まで過ごせることがあります。

本人が施設での生活を望んでいる。病院へ移るより、慣れた職員や環境の中で過ごすことを本人が希望している場合です。

必要な医療ケアを施設で提供できる。本人の苦痛緩和や必要な処置を老健の医療・看護体制で対応できる場合です。

家族も施設方針を理解している。急変時や心肺停止時の対応について、本人の意思を中心に家族と施設が十分に話し合えていることが重要です。

老健だけにこだわらない方がよい場合

本人の状態によっては、老健での看取りより別の場所が適している場合があります。

高度・継続的な医療が必要。施設の対応範囲を超える医療管理が必要な場合は、医療機関や介護医療院などを検討します。

本人が病院での治療を希望している。本人が積極的な治療を望む場合は、その希望を尊重し、医療機関への入院を検討します。

施設の看取り体制が整っていない。夜間の連絡体制や医療対応が本人の必要性に合わない場合は、別の施設を探すことも選択肢です。

まとめ|老健でも看取りはできるが、在宅復帰施設という役割と実際の体制を確認する

介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰・在宅療養支援を担う施設ですが、制度上はターミナルケア加算があり、看取りに対応する施設もあります。

ターミナルケア加算では、医師が回復の見込みがないと診断した入所者について、本人・家族等の同意を得て計画を作成し、医師、看護職員、介護職員、支援相談員、管理栄養士等が共同して支援することが求められています。

一方、すべての老健が同じ看取り体制を持っているわけではありません。施設を選ぶときは、夜間の医師・看護体制、苦痛緩和、食事・水分が取れなくなったときの対応、救急搬送、家族への連絡、面会・付き添いまで具体的に確認してください。

また、人生の最終段階の医療・ケアは、本人の意思を基本に、本人・家族等と医療・ケアチームが繰り返し話し合って決めることが大切です。一度看取り方針を決めても、本人の希望や病状が変われば見直すことができます。

「老健だから看取りは無理」「看取りを選んだら病院へ行けない」と決めつけず、本人の希望と施設の実際の対応力を照らし合わせて判断してください。

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