介護老人保健施設(老健)を利用していると、「毎月の施設費は医療費控除の対象になるの?」「食費や居住費まで申告できる?」と迷うことがあります。
結論からいうと、老健では、施設サービスの対価として支払った介護費・食費・居住費が医療費控除の対象になります。ただし、老健へ支払った金額がすべて対象になるわけではありません。日常生活費や本人の希望による特別なサービス費用など、対象外となる費用もあります。
まず結論|老健の介護費・食費・居住費は医療費控除の対象
国税庁では、介護老人保健施設の施設サービスの対価として支払った「介護費・食費・居住費」を医療費控除の対象としています。一方、理美容代などの日常生活費や、本人の希望による特別なサービス費用は対象外です。申告するときは請求総額をそのまま使わず、施設が発行する領収書などで医療費控除対象額を確認することが重要です。
老健で医療費控除の対象になる費用
老健は介護保険制度上の施設サービスを提供する施設であり、国税庁は施設サービスの対価のうち一定の費用を医療費控除の対象として示しています。
老健の場合、基本となるのは次の3つです。
| 費用 | 医療費控除の扱い |
|---|---|
| 介護費 | 施設サービスの対価として支払った額が対象 |
| 食費 | 施設サービスの対価として支払った額が対象 |
| 居住費 | 施設サービスの対価として支払った額が対象 |
介護サービス費の自己負担分
老健で受ける介護保険施設サービスについて、利用者が負担した介護費は医療費控除の対象になります。
要介護度や自己負担割合、施設の体制、算定される加算などによって毎月の介護費は変わります。そのため、自分で「基本料金だけ」を抜き出して計算するのではなく、施設から交付される領収書などに記載された医療費控除対象額を確認するのが確実です。
食費も対象になる
老健で施設サービスの一環として負担した食費も、医療費控除の対象になります。
「食事は医療そのものではないから対象外」と考えてしまうことがありますが、老健の施設サービスについては、国税庁が介護費とあわせて食費も対象として示しています。
ただし、通常の施設サービスとは別に本人の希望で追加した特別な食事などがある場合は、通常の食費と同じ扱いになるとは限りません。請求書・領収書の内訳を確認してください。
居住費も対象になる
老健で施設サービスの対価として支払った居住費も医療費控除の対象です。
居住費は居室の種類や負担限度額認定の有無などによって実際の負担額が変わることがありますが、医療費控除では、制度上の標準額ではなく実際に支払った対象額を基に確認します。
POINT
老健では「介護費だけ」が医療費控除になるわけではありません。施設サービスの対価として支払った介護費・食費・居住費が対象になる点が重要です。
老健に払っても医療費控除の対象にならない費用
老健へ支払った費用だからといって、すべてを医療費控除に含められるわけではありません。
国税庁は、日常生活費や特別なサービス費用などを医療費控除の対象外としています。
理美容代などの日常生活費
日常生活費とは、施設で生活するうえで提供される便宜のうち、日常生活でも通常必要となり、本人に負担させることが適当とされる費用です。
たとえば、理美容代などは医療費控除の対象外となります。
施設の請求書には介護費・食費・居住費と日常生活費が一緒に記載されることがあります。請求総額をそのまま医療費として申告しないよう注意してください。
本人の希望による特別なサービス費用
通常の施設サービスとは別に、本人が希望して利用した特別なサービスの費用についても、医療費控除の対象外となるものがあります。
「老健の請求書に載っているか」ではなく、何のために支払った費用なのかで確認することが重要です。
施設の月額請求額を丸ごと申告しない
老健の請求書には、医療費控除の対象になる費用と対象外の費用が混在することがあります。家族が独自に総額を医療費として計算するのではなく、領収書などに記載された対象額を確認してください。
おむつ代は別に医師の証明書が必要?
老健入所中のおむつ代については、自宅で使用するおむつ代と同じように考えないことが重要です。
国税庁の案内では、介護老人保健施設の入所者に係るおむつ代は介護費として介護保険給付の対象に含まれるため、その自己負担額は医療費控除の対象になります。
老健の施設サービスに含まれるおむつ代を二重計上しない
老健で施設サービスとして処理されているおむつ代については、介護費の対象額に含まれているため、家族が別項目として重ねて医療費控除へ加えないようにします。
領収書に記載された医療費控除対象額を基準に確認すると、二重計上を避けやすくなります。
個室・特別室の料金は医療費控除になる?
老健の個室料金については、「個室だからすべて対象」「個室だからすべて対象外」と一律には判断できません。
国税庁は、老健の個室など特別室の使用料について、診療または治療を受けるためにやむを得ず支払うものに限り医療費控除の対象になるとしています。
本人の希望だけで選んだ特別室は分けて考える
プライバシーを重視したい、広い部屋を希望したいといった本人側の希望による追加料金は、医療上やむを得ない費用とは同じ扱いになりません。
特別室料金が医療費控除対象額に含まれているか判断できない場合は、自己判断せず施設の事務担当者へ確認してください。
高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合はどうする?
介護保険サービスの自己負担が一定額を超え、高額介護サービス費として払い戻しを受ける場合があります。
国税庁の案内では、高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合、その払い戻し額を医療費の金額から差し引いて医療費控除を計算します。
「支払った額」だけでなく「戻ってきた額」も確認する
たとえば、老健へ一度自己負担分を支払い、その後に高額介護サービス費の支給を受けた場合、最初に支払った金額だけを見て申告すると医療費を多く計上する可能性があります。
確定申告前には、施設の領収書だけでなく、高額介護サービス費の支給決定通知なども確認してください。
確定申告前にそろえて確認したいもの
- 老健から交付された領収書
- 利用料の内訳が分かる請求書
- 医療費控除対象額の記載
- 高額介護サービス費などの払い戻し額
- 別途支払った診療費や薬代などの領収書・明細
医療費控除はいくら戻る制度?
医療費控除は、対象となる医療費がそのまま現金で戻ってくる制度ではありません。
一定の計算によって求めた金額を所得から差し引く「所得控除」です。実際に所得税がどの程度軽減されるかは、その人の所得や適用される税率などによって異なります。
医療費控除額の基本的な考え方
通常の医療費控除では、その年に実際に支払った対象医療費から、保険金などで補てんされる金額と一定額を差し引いて控除額を計算します。
差し引く一定額は原則10万円ですが、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%となります。医療費控除額には上限があります。
ここでいう対象医療費は老健の費用だけではありません。本人や、生計を一にする配偶者その他の親族について、その年に支払った医療費控除対象の医療費を合計して計算します。
「老健代が10万円を超えたら10万円が戻る」わけではない
医療費控除は所得控除です。対象費用の合計額、補てんされた金額、所得金額などによって控除額が決まり、その控除額に応じて税負担が変わります。
家族が老健の費用を払った場合は誰が医療費控除を受ける?
老健へ入所している本人ではなく、子どもなどの家族が施設費を支払っている場合もあります。
医療費控除は、自分自身の医療費だけを対象にする制度ではありません。国税庁では、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために医療費を支払った場合、その実際に支払った人が医療費控除を受けられるとしています。
親と別居していても「生計を一にする」場合がある
「生計を一にする」は、必ずしも同居していることだけを意味しません。
療養などの事情で別居していても、常に生活費や療養費などを送金しているなど、実際の生活関係によって「生計を一にする」と扱われる場合があります。
反対に、親子だから自動的に子が申告できるわけではありません。誰が実際に費用を負担したのか、生計を一にしている関係かを確認する必要があります。
何年分の医療費として申告する?
医療費控除では、その年の1月1日から12月31日までの間に実際に支払った医療費が、その年分の対象になります。
たとえば12月分の老健利用料を翌年1月に支払った場合、原則として実際に支払った翌年分の医療費として扱います。
請求された年ではなく実際に支払った年を確認する
年末年始をまたぐ利用料がある場合は、サービスを受けた月だけで判断せず、領収日や口座引き落とし日などを確認してください。
老健の医療費控除を申告するときの手順
老健の費用を医療費控除に含めるときは、「毎月の施設費を合計する」だけではなく、対象額と払い戻し額を順番に確認します。
介護費・食費・居住費など、施設が示している対象額を確認します。対象額の記載場所が分からなければ施設の事務担当者へ確認します。
理美容代などの日常生活費、本人希望の特別なサービス費用などを請求総額から区別します。
高額介護サービス費など、その対象費用を補てんする払い戻しを受けている場合は金額を確認します。
老健以外に支払った診療費や薬代など、同じ年の医療費控除対象額も整理します。
申告する人が実際に支払った対象医療費を基に、医療費控除の明細書と確定申告書を作成します。
領収書は申告後も保存する
医療費控除では、原則として領収書そのものを確定申告書へ添付するのではなく、「医療費控除の明細書」を作成して提出します。
ただし、税務署から明細書の内容を確認するため領収書の提示や提出を求められることがあります。申告が終わってもすぐ処分せず、法定の保存期間を守って保管してください。
領収書を見ても対象額が分からないときはどうする?
老健の請求書や領収書は施設によって様式が異なります。
「介護費」「食費」「居住費」以外にも多くの項目があり、どの金額を医療費控除に記入するのか迷うことがあります。
まず施設の事務担当者に対象額の場所を確認する
領収書に「医療費控除対象額」などの記載があれば、その欄を確認します。
記載の意味が分からない場合は、自己判断で項目を足したり引いたりせず、施設の事務担当者に「医療費控除の対象として記載されている金額はどこですか」と確認すると分かりやすくなります。
税務上の判断に迷う場合は税務署・国税庁で確認する
施設側は請求内容について説明できますが、個別の確定申告で最終的にどのように扱うかは税務上の判断になります。
家族が支払った場合の「生計を一にする」の判断、特別室料金、払い戻しとの関係などで迷う場合は、領収書や支払状況が分かる資料を用意して、税務署または国税庁の相談窓口で確認してください。
老健の医療費控除で最後に確認すること
- 介護費・食費・居住費の対象額を領収書で確認したか
- 日常生活費や特別なサービス費を混ぜていないか
- 特別室料金は医療上やむを得ないものか確認したか
- 高額介護サービス費などの払い戻しを確認したか
- 誰が実際に費用を支払ったか確認したか
- 支払った年ごとに整理したか
- 判断できない項目を自己判断で計上していないか
CONCLUSION
最後に、本文で確認した内容を本人の状況に置き換え、施設・担当者へ具体的に確認して判断しましょう。
まとめ|老健は介護費・食費・居住費が医療費控除の対象
介護老人保健施設では、施設サービスの対価として支払った介護費・食費・居住費が医療費控除の対象になります。
一方、理美容代などの日常生活費や本人の希望による特別なサービス費用など、対象外になる支出もあるため、老健へ支払った総額をそのまま申告するのは適切ではありません。
また、高額介護サービス費などの払い戻しを受けた場合は医療費控除の計算に影響します。個室などの特別室料金も、医療上やむを得ず利用したものかどうかで扱いが変わります。
確定申告の際は、まず老健が発行した領収書の「医療費控除対象額」を確認し、対象外費用や払い戻しを整理してください。
領収書の見方が分からない場合は施設の事務担当者へ、家族が支払った場合や個別費用の税務上の判断に迷う場合は税務署・国税庁へ確認すると、誤った申告を防ぎやすくなります。