介護医療院では、歯みがきや義歯の手入れといった日常的な口腔ケアだけでなく、入所者の口の健康状態を確認し、その人に合った口腔衛生管理を計画的に行うことが制度上求められています。
また、必要に応じて歯科医師や歯科衛生士と連携し、専門的な口腔ケアや歯科診療につなげることもあります。ただし、歯科医師が施設内に常勤しているとは限らず、訪問歯科診療や協力歯科医療機関との連携方法は施設によって異なります。
まず結論|介護医療院では口腔衛生管理が基本サービスとして求められる
介護医療院では、入所者の口腔の健康を保つため、口腔衛生の管理体制を整え、一人ひとりの状態に応じて計画的に管理することが求められています。施設職員だけで完結するのではなく、歯科医師や歯科衛生士から技術的助言・指導を受ける仕組みも制度上位置づけられています。歯科治療が必要な場合は、訪問歯科診療や外部受診の方法を施設ごとに確認することが重要です。
介護医療院ではどこまで口腔ケアを受けられる?
介護医療院では、口腔衛生管理は単なる任意サービスではありません。厚生労働省の運営基準では、入所者の口腔の健康保持を図り、自立した日常生活につなげられるよう、口腔衛生の管理体制を整備し、各入所者の状態に応じて計画的に口腔衛生管理を行うことが求められています。
日常的な口腔ケア
毎日の生活では、歯みがき、口腔内の清掃、義歯の着脱や清掃など、本人の状態に応じた口腔ケアを行います。
自分でできる部分を残しながら支援する
本人が自分で歯みがきできる場合は見守りや仕上げを行い、自力では難しい場合は介助します。
重要なのは「全部職員が行う」ことではなく、本人の能力を生かしながら必要な部分を支援することです。
義歯の管理も確認する
義歯を使っている人では、装着状況、汚れ、破損、痛みの有無なども確認が必要です。
入所前から義歯を使用している場合は、普段の管理方法や就寝時の扱いを施設へ伝えてください。
口の健康状態を定期的に確認する
厚生労働省の運営基準の解釈通知では、施設入所時と、その後おおむね月1回程度、入所者ごとの口腔の健康状態を評価することが示されています。
「歯があるか」だけを確認するわけではない
口腔状態の確認では、歯や義歯だけでなく、口腔内の清潔、粘膜の状態、乾燥、食べにくさなど、生活に関わる状態を見ることが重要です。
POINT
介護医療院の口腔ケアは、歯みがきの介助だけではありません。口の状態を評価し、その結果を日々のケアや必要な歯科対応へつなげることが重要です。
歯科医師・歯科衛生士はどのように関わる?
介護医療院では、歯科専門職と連携した口腔衛生管理の仕組みが設けられています。
歯科医師等から介護職員への技術的助言・指導
厚生労働省の解釈通知では、歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、施設の介護職員に対して口腔衛生管理に関する技術的助言・指導を年2回以上行うことが示されています。
年2回は「入所者への歯科診療回数」ではない
この「年2回以上」は、歯科専門職が介護職員へ技術的助言・指導を行う頻度です。
入所者本人が年2回しか口腔ケアを受けられない、あるいは歯科診療が年2回に限られるという意味ではありません。
口腔衛生管理加算では歯科衛生士による管理も評価される
一定の基準を満たす施設では「口腔衛生管理加算」が算定されることがあります。
加算Ⅰ・Ⅱは月額の介護報酬
現在の介護報酬では、口腔衛生管理加算(Ⅰ)は1月につき90単位、(Ⅱ)は110単位です。
加算の基準では、歯科医師等の助言に基づく計画作成や、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士による口腔衛生管理などが求められます。
加算がなくても基本的な口腔衛生管理は必要
口腔衛生管理そのものは介護医療院の基本サービスとして求められています。
そのため、「加算を算定していない=口腔ケアを行っていない」と単純に判断することはできません。加算の有無より、実際にどのような管理を行っているかを確認してください。
歯科診療は施設内で受けられる?
介護医療院で口腔ケアを受けられることと、虫歯や歯周病、義歯調整などの歯科診療を施設内でいつでも受けられることは別です。
歯科医師が常勤とは限らない
介護医療院には医師や看護職員の配置基準がありますが、歯科医師が常勤配置されていることが全国一律に求められているわけではありません。
訪問歯科診療を利用する施設もある
施設によっては、協力歯科医療機関や訪問歯科診療を行う歯科医師が来院し、入所者の診療を行うことがあります。
診療の頻度、対象者、予約方法、費用の扱いは施設によって異なります。
外部の歯科医院へ受診する場合もある
施設内で対応できない治療が必要な場合は、外部の歯科医院へ通院することがあります。
送迎・付き添いの方法を確認する
施設職員が同行するのか、家族の付き添いが必要なのか、外部の移送サービスを使うのかは施設差があります。
入所前から歯科治療を継続している人は、受診先・治療内容・次回受診予定を施設へ伝えておくとよいでしょう。
注意:「介護医療院なら歯科治療もすべて施設内で完結する」とは限りません。日常の口腔ケアと、歯科医師による診療を分けて確認してください。
義歯が合わない・歯が痛いときはどうする?
長期療養中でも、義歯の不具合、歯の痛み、口腔内の傷などが生じることがあります。
まず施設職員へ伝える
本人が痛みや違和感を訴えられる場合は、介護職員や看護職員へ伝えます。
認知症などで訴えにくい場合は変化を見る
本人が症状を言葉で伝えにくい場合は、食べる量が減った、義歯を外したがる、口元を気にするなどの変化が手がかりになることがあります。
家族が面会時に気づいた変化も施設へ共有してください。
必要に応じて歯科医師につなぐ
施設内の口腔ケアだけで改善できない場合は、歯科医師による診察・治療が必要です。
どのような場合に訪問歯科を依頼するのか、外来受診へつなぐのか、施設の流れを事前に確認しておくと安心です。
口腔ケアは食事・栄養管理とも関係する
口腔の状態は、食べることとも深く関わります。
口の状態が悪いと食べにくくなることがある
義歯が合わない、痛みがある、口の乾燥が強いなどの状態では、食事が進みにくくなることがあります。
食事量の低下を「食欲がない」だけで終わらせない
食事量が落ちた場合は、体調や栄養状態だけでなく、口の中に問題がないかも確認する必要があります。
口腔・栄養・食事の情報を多職種で共有する
介護医療院では、医師、看護職、介護職、管理栄養士、リハビリ職など多職種が関わります。
口腔状態の変化を食事や栄養管理へつなげられる体制があるかを確認するとよいでしょう。
入所前から歯科治療中なら何を伝える?
入所前に歯科医院へ通っている人は、治療を中断しないために情報を整理して伝えます。
入所前に伝えておきたい情報
- 現在通院している歯科医院
- 治療中の歯や口腔内の問題
- 次回受診予定
- 義歯の使用状況
- 過去の義歯調整・修理歴
- 口腔ケアで介助が必要な範囲
- 歯みがきや義歯管理で本人が嫌がること
- 食べにくさや口の痛みの有無
治療継続の方法を確認する
従来の歯科医院へ通院を続けるのか、施設の協力歯科医療機関や訪問歯科へ切り替えるのかを相談します。
家族が自己判断で治療を中止・変更せず、施設と歯科医療機関で情報を共有してください。
施設選びで口腔ケア体制をどう確認する?
介護医療院を比較するときは、「口腔ケアをしていますか」という質問だけでは実態が分かりません。
本人ができない場合の介助方法を確認します。
入所時・定期的な確認方法を聞きます。
訪問頻度や職員への助言体制を確認します。
訪問歯科か外来受診か、受診方法を確認します。
施設内対応か外部受診かを確認します。
家族負担や追加費用の有無も確認します。
加算名より実際のケア内容を見る
口腔衛生管理加算を算定しているかは一つの確認材料ですが、それだけで施設の口腔ケアの質を判断することはできません。
本人の場合に、毎日どのようなケアを行い、異常があったとき誰が確認し、歯科へどうつなぐのかまで聞くことが大切です。
まとめ|日常ケアと歯科診療へのつながりを両方確認する
介護医療院では、入所者の口腔の健康を保つため、口腔衛生管理を計画的に行うことが制度上求められています。日常の歯みがき・義歯管理に加え、施設入所時や定期的な口腔状態の評価、歯科専門職から職員への助言・指導なども仕組みに含まれます。
一方で、歯科治療そのものを施設内でどこまで受けられるかは施設によって異なります。
特に確認したい3点
- 本人の状態に合わせた毎日の口腔ケアを受けられるか
- 歯科医師・歯科衛生士とどのように連携しているか
- 治療が必要になったとき訪問歯科・外来受診へどうつなぐか
義歯を使用している人、歯科治療中の人、自分で口腔ケアを行うことが難しい人は、入所前に現在の状態を具体的に伝え、施設の歯科・口腔ケア体制を確認しておきましょう。