介護医療院の費用は、「月○万円」と一つの金額で決まるわけではありません。毎月の負担は、介護保険の施設サービス費の自己負担に、食費、居住費、日常生活費などを加えて考えます。
さらに、施設サービス費は要介護度、施設の類型、居室、加算、本人の負担割合によって変わります。食費・居住費も、施設の設定額や所得に応じた負担軽減制度の利用状況によって異なります。
まず結論|介護医療院の月額は「介護保険+食費+居住費+実費」で考える
介護医療院の毎月の支払いは、①施設サービス費の1~3割自己負担、②食費、③居住費、④加算の自己負担、⑤日用品・理美容などの実費が基本です。低所得者には食費・居住費を軽減する負担限度額認定があり、介護保険の自己負担が高額になった場合には高額介護サービス費の対象となることがあります。見学・契約前には「基本料金」ではなく、本人の条件で計算した月額総額を確認してください。
介護医療院の月額費用は何で決まる?
介護医療院の費用を理解するときは、最初に「介護保険が適用される費用」と「介護保険とは別に支払う費用」を分けて考えると分かりやすくなります。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設サービス費 | 要介護度・施設類型・居室などで決まる介護保険サービス費 |
| 加算 | 施設の体制や本人へのサービス内容に応じて加わる介護報酬 |
| 食費 | 食事の提供にかかる費用 |
| 居住費 | 居室の利用にかかる費用 |
| 日常生活費 | 理美容・日用品・洗濯など施設ごとに設定される実費 |
介護保険の自己負担は原則1~3割
介護保険サービスを利用したときの利用者負担は、原則としてサービス費の1割です。一定以上の所得がある人は2割または3割になります。
負担割合は「介護保険負担割合証」で確認する
本人が1割・2割・3割のどれに該当するかは、手元の介護保険負担割合証で確認します。
同じ施設、同じ要介護度であっても、負担割合が違えば介護保険部分の自己負担額は変わります。
食費・居住費・日常生活費は別に必要
施設サービス費の自己負担だけを見ても、実際の月額は分かりません。介護保険施設では、食費、居住費、日常生活費なども必要です。
POINT
「介護保険の自己負担額」と「請求書の総額」は同じではありません。施設選びでは、食費・居住費・実費まで含めた月額総額で比較します。
施設サービス費はいくら?要介護度で変わる
介護医療院の施設サービス費は、要介護度が高くなるほど基本報酬が高くなる仕組みです。また、Ⅰ型・Ⅱ型などの施設類型や居室区分によっても単位数が異なります。
Ⅰ型介護医療院・多床室の基本報酬例
令和6年度介護報酬改定後の「Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)(ⅱ)(多床室)」では、1日あたりの基本報酬は次のとおりです。
| 要介護度 | 1日あたりの基本報酬 |
|---|---|
| 要介護1 | 833単位 |
| 要介護2 | 943単位 |
| 要介護3 | 1,182単位 |
| 要介護4 | 1,283単位 |
| 要介護5 | 1,375単位 |
単位数=そのまま支払額ではない
上記は介護報酬の「単位」です。本人がそのまま833円、1,375円を支払うという意味ではありません。
地域区分等を踏まえて介護報酬額を算定し、そのうち本人の負担割合に応じた1~3割を支払います。さらに加算も加わるため、実際の施設サービス費は施設から本人条件で試算してもらうのが確実です。
1割負担・1単位10円として単純計算した例
計算の仕組みを理解するため、仮に1単位10円、1割負担、30日利用、加算なしとして単純計算すると、要介護1の833単位では約24,990円、要介護5の1,375単位では約41,250円です。
これは基本報酬部分だけを示した説明用の概算です。実際の請求額は施設類型、居室、加算、地域などによって異なります。
注意:「要介護5なら月約4万1,000円で入所できる」という意味ではありません。このほかに食費・居住費・加算・日常生活費などが必要です。
食費はいくら?基準費用額と施設の設定額を分けて考える
介護医療院では、施設サービス費とは別に食費を支払います。
国が示す食費の基準費用額は1日1,545円
介護医療院・老健・短期入所療養介護について、国が示す食費の基準費用額は1日1,545円です。
1,545円が全国一律の請求額ではない
この1,545円は、すべての介護医療院が必ず請求する固定料金ではありません。
実際の食費は施設が定めているため、1,545円より高い場合も低い場合もあります。重要事項説明書や料金表で1日あたりの食費を確認してください。
30日なら基準費用額ベースで46,350円
1日1,545円を30日で計算すると46,350円です。
ただし、これは基準費用額をそのまま30日分にした数字です。実際の請求は施設の設定額や、後述する負担限度額認定によって変わります。
居住費はいくら?個室・多床室で大きく変わる
介護医療院の居住費は、利用する居室の種類によって差があります。
国が示す基準費用額
介護医療院・老健等について示されている主な基準費用額は次のとおりです。
| 居室区分 | 基準費用額(日額) |
|---|---|
| ユニット型個室 | 2,066円 |
| ユニット型個室的多床室 | 1,728円 |
| 従来型個室 | 1,728円 |
| 多床室(室料を徴収する場合) | 697円 |
| 多床室(室料を徴収しない場合) | 437円 |
30日では居室だけで数万円の差になる
基準費用額を30日分として単純計算すると、ユニット型個室は61,980円、従来型個室は51,840円、多床室は13,110円または20,910円です。
このため、同じ介護医療院でも居室区分によって月額総費用が大きく変わる可能性があります。
基準費用額と実際の居住費は同じとは限らない
食費と同様に、基準費用額は全国一律の請求価格ではありません。実際の居住費は施設の料金表で確認します。
さらに、特別な療養室を本人が選ぶ場合などには、通常の居住費とは別の費用が設定されていることがあります。
加算があると介護保険の自己負担額も増える
介護医療院では、基本報酬だけでなく、施設の体制や本人に提供したサービスに応じて各種加算が算定される場合があります。
基本料金だけでは最終的な介護保険負担額は分からない
同じ要介護度・同じ居室でも、算定される加算によって介護保険部分の請求額は変わります。
加算名と月の見込み額を確認する
契約前には、すべての加算制度を家族が暗記する必要はありません。
施設から本人について「通常どの加算が算定される見込みか」「介護保険部分の月額はいくら程度になるか」を説明してもらいましょう。
日用品・理美容・洗濯などの実費も施設差がある
介護医療院では、日常生活上必要になる費用のうち、介護保険や食費・居住費とは別に実費が発生するものがあります。
施設ごとに設定が違う
介護サービス情報公表システムを見ると、実際の介護医療院でも、日用品費、理美容代、洗濯代、病衣レンタル、テレビ利用料などの設定は施設ごとに異なります。
「月額○万円~」に含まれているか確認する
施設の料金案内に示された月額が、どこまでを含むのか確認してください。
実費で確認したい項目
- 日用品費
- 病衣・寝巻きのレンタル
- 私物の洗濯代
- 理美容代
- テレビ・冷蔵庫などの利用料
- 特別な居室を希望した場合の費用
- その他、施設独自の実費項目
低所得者は食費・居住費の負担軽減を受けられる場合がある
所得や資産などの条件を満たす人には、介護保険施設の食費・居住費を軽減する「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」があります。介護医療院も対象です。
認定されると食費・居住費に負担上限が設定される
介護医療院・老健について、現在公表されている負担限度額の例は次のとおりです。
| 区分 | 食費の負担限度額(日額) |
|---|---|
| 第1段階 | 300円 |
| 第2段階 | 390円 |
| 第3段階① | 680円 |
| 第3段階② | 1,420円 |
居住費についても、所得段階と居室区分ごとに負担限度額が設定されています。
自動的に安くなるわけではない
負担軽減を受けるには、所得・資産等の要件を満たしたうえで、市区町村へ申請し、負担限度額認定を受ける必要があります。
本人が該当しそうな場合は、施設だけでなく、本人の介護保険を担当する市区町村窓口へ確認してください。
読者への影響
食費・居住費は長期入所では大きな負担になります。負担限度額認定の対象になるかどうかで月額が大きく変わる可能性があるため、入所前に確認する価値があります。
介護保険の自己負担が高い場合は高額介護サービス費を確認
介護保険の1~3割負担が高額になった場合には、所得区分に応じて月ごとの上限を設ける「高額介護サービス費」があります。
一般的な課税世帯では月44,400円の上限区分がある
令和7年8月以降の制度では、市町村民税課税世帯で課税所得約380万円(年収約770万円)未満の区分では、世帯の負担上限は月44,400円です。
より所得が高い区分では93,000円、140,100円という上限があり、住民税非課税世帯などには24,600円や15,000円などの区分があります。
食費・居住費まで上限になる制度ではない
ここで特に注意したいのは、高額介護サービス費の上限が、施設から請求される総額すべてに適用されるわけではないことです。
食費・居住費などは原則として高額介護サービス費の対象外です。そのため、「44,400円以上は払わなくてよい」と考えないでください。
申請方法は市区町村へ確認する
対象となる場合の手続きについては、市区町村の介護保険窓口へ確認します。本人の所得区分によって上限額が異なるため、施設の料金説明とあわせて確認してください。
月額費用はどう計算すればよい?
介護医療院の月額を確認するときは、次の順番で積み上げると漏れを防げます。
要介護度、施設類型、居室、負担割合から確認します。
本人に算定される見込みの加算を確認します。
施設設定額と負担限度額認定の有無を確認します。
個室・多床室など本人が使う居室で計算します。
洗濯、理美容、日用品、病衣などを加えます。
「平均○万円」より本人条件の見積書を見る
介護医療院は、要介護度、自己負担割合、居室、施設の料金設定、加算、所得区分によって支払額が変わります。
そのため、一般的な平均額だけを基準に予算を組むより、候補施設へ本人の要介護度と負担割合を伝え、30日入所した場合の見積書を出してもらう方が確実です。
入院・外泊時の料金も確認する
長期入所では、途中で入院や外泊が発生する可能性があります。その際に施設サービス費、居住費、その他の料金がどのように扱われるかは、契約前に確認しておきましょう。
契約前に料金表・重要事項説明書で確認する
介護医療院の費用は、口頭説明だけで判断しないことが重要です。
施設の料金表や重要事項説明書を見ながら、介護保険の自己負担と保険外費用を分けて確認します。
費用について確認したい質問
- 本人の要介護度・負担割合で30日利用した場合の総額はいくらですか
- その金額にどの加算が含まれていますか
- 食費は1日いくらですか
- 居住費は1日いくらですか
- 負担限度額認定を利用した場合はいくらになりますか
- 日用品・洗濯・理美容・病衣などの実費はいくらですか
- 特別室を選ぶ場合はいくら追加されますか
- 入院・外泊時の居住費等はどうなりますか
- 高額介護サービス費の対象となるのはどの部分ですか
- 料金改定時はどのように説明されますか
まとめ|介護医療院の費用は「総額」で比較する
介護医療院の費用は、介護保険の施設サービス費だけではありません。要介護度などに応じた1~3割の自己負担に加えて、食費、居住費、加算、日常生活費などを支払います。
国が示す基準費用額では、食費は1日1,545円、居住費は居室区分によって1日437~2,066円などですが、実際の料金は施設設定額によって異なります。また、所得・資産等の条件を満たす場合は、負担限度額認定によって食費・居住費を抑えられる可能性があります。
費用確認で重要な3点
- 本人の要介護度・負担割合で30日分を試算してもらう
- 食費・居住費・加算・実費まで含む月額総額を見る
- 負担限度額認定や高額介護サービス費の対象になるか確認する
「月額○万円から」という表示だけで決めず、本人の条件を当てはめた見積書と重要事項説明書を確認し、毎月継続して支払える費用かどうかを判断しましょう。