介護医療院は認知症でも入所できる?

認知症のある家族について介護医療院を検討すると、「認知症があっても入所できるのか」「徘徊や大声があると断られるのか」「認知症のケアやリハビリを受けられるのか」と不安になることがあります。

介護医療院は、長期にわたる療養が必要な要介護者に対し、医療と介護を一体的に提供する介護保険施設です。認知症があること自体は入所を妨げる条件ではなく、制度上も身体合併症を有する認知症高齢者などを受け入れることが想定されています。

結論|認知症があっても介護医療院へ入所できる可能性がある

介護医療院は認知症のある人も入所対象になり得ます。ただし、「認知症であること」だけで入所が決まるわけではありません。介護医療院は要介護1~5の人が対象で、心身の状態や病状、生活環境などから、長期療養のための医学的管理、看護、介護、機能訓練などが必要かを確認して入所を判断します。さらに、徘徊、他者への暴力、大声、夜間の不穏など認知症の行動・心理症状(BPSD)がある場合は、施設の人員・設備・認知症ケア体制で安全に対応できるかを個別に確認する必要があります。

最初に確認する3点

  • 認知症だけで入所可否は決まらない
  • 長期的な医療管理の必要性を確認する
  • BPSD・夜間・医療対応の実際を施設へ聞く

認知症があっても介護医療院の入所対象になる

認知症があるという理由だけで、介護医療院へ入所できないわけではありません。

厚生労働省の介護医療院の基準では、心身の状況、病状、置かれている環境などに照らして、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護、機能訓練、その他の医療が必要と認められる人を対象としてサービスを提供するとされています。

認知症の有無ではなく「医療・介護の必要性」を見る

入所判定では、認知症という診断名だけでなく、本人にどの程度の医療・介護が必要なのかを確認します。

  • 要介護度
  • 病状と医療処置の内容
  • 認知症の状態
  • 食事・排泄・移動などの介助量
  • 服薬管理の必要性
  • 長期療養の必要性
  • 施設で安全に生活できるか

こうした情報を総合して、介護医療院での生活が本人に適しているかを判断します。

Ⅰ型介護医療院では認知症高齢者の受け入れが制度上想定されている

厚生労働省のⅠ型介護医療院の基本報酬の算定要件では、重篤な身体疾患を有する人とともに、身体合併症を有する認知症高齢者の割合が要件として示されています。

これは、認知症があり、さらに医療ニーズも高い高齢者が介護医療院の重要な対象として制度上想定されていることを示しています。

POINT

「認知症だから介護医療院」というより、「認知症があり、長期的な医療・介護の両方が必要だから介護医療院が候補になる」と考えると分かりやすくなります。

要支援では利用できず、要介護1~5が対象

介護医療院は介護保険施設のため、要介護認定が必要です。

要支援1・2では介護医療院を利用できない

厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、介護医療院は要支援1・2の人は利用できないと案内されています。

対象になるのは、要介護1~5の認定を受けた人です。

認知症の診断だけでは入所条件を満たさない

認知症の診断を受けていても、要支援1・2の場合は介護医療院の施設サービスを利用できません。また、要介護認定があっても、本人の医療・介護ニーズが介護医療院の役割に合うかを施設が確認します。

要介護1なら必ず入所できるわけでもない

要介護1~5は介護保険上の利用対象ですが、実際の入所可否は要介護度だけでは決まりません。

空床状況、長期療養の必要性、必要な医療処置、認知症の状態、施設の対応体制などを確認して判断します。

どのような認知症の人が介護医療院を検討しやすい?

介護医療院は、認知症のケアだけを目的とした施設ではありません。認知症に加えて、継続的な医療や手厚い介護が必要な人が主な対象になります。

認知症に加えて医療管理が必要な人

認知症があり、慢性疾患の管理、経管栄養、喀痰吸引、酸素療法など、日常的に医学的な管理を必要とする場合は介護医療院が候補になります。

ただし、具体的な医療処置に対応できるかは施設ごとに違うため、処置名と頻度を伝えて確認してください。

介護量が多く在宅生活が難しい人

食事、排泄、移動、服薬など多くの場面で介助が必要で、在宅での療養が難しい場合にも検討されます。

長期療養と看取りまで見据えている人

介護医療院は、長期療養のための医療に加え、看取りやターミナルケアを担う施設です。

認知症が進行し、将来的にも医療と介護を継続して受けながら生活する必要がある場合は、入所後の医療・介護・終末期まで含めて相談できます。

徘徊・大声・暴力などがあっても入所できる?

認知症では、本人の状態や環境などによって、徘徊、大声、介護への抵抗、昼夜逆転、他者への攻撃的な言動などがみられることがあります。こうした症状は認知症の行動・心理症状(BPSD)と呼ばれます。

BPSDがあるから全国一律で入所不可という制度ではありません。ただし、実際に受け入れられるかは施設によって異なります。

何が違うのか

施設差が出やすいのは、次のような点です。

  • 夜間も含めた職員配置
  • 認知症ケアの経験
  • 精神科・神経内科などとの医療連携
  • 他の入所者への安全確保
  • 施設内を安全に歩ける環境
  • 本人の行動の頻度や程度

「認知症あり」だけでなく具体的な状態を伝える

入所相談では、「認知症があります」だけでは施設側も対応可能か判断しにくくなります。

たとえば、「夕方になると出口を探す」「夜間に何度も起きる」「入浴介助の際に拒否がある」など、いつ、どのような場面で、どの程度の症状があるのかを具体的に伝えてください。

最近急に症状が強くなった場合は身体状態も確認する

認知症のある人の不穏や混乱が急に強くなった場合、感染症、脱水、痛み、便秘、薬の影響など身体的な要因が関係することもあります。

「認知症が悪化した」と決めつけず、必要に応じて医療的な評価を受けることも重要です。

施設ごとの入所制限を必ず確認する

介護サービス情報公表システムでも、認知症のある人を受け入れている介護医療院がある一方、徘徊や他者への暴力行為などについて入所制限を公表している施設も確認できます。「介護医療院なら必ず対応可能」と考えず、本人の具体的な状態を伝えて受入可否を確認してください。

介護医療院ではどんな認知症ケアを受けられる?

介護医療院では、認知症の人に対しても、施設サービス計画に基づいて医療、看護、介護、機能訓練などを提供します。

生活リズムを整える支援

起床、食事、排泄、入浴、日中活動、就寝など、本人の生活リズムを整えながら過ごせるよう支援します。

認知症がある人に一律の生活を強いるのではなく、本人のこれまでの生活歴や習慣、心身の状態を踏まえることが重要です。

できることを活かす介護

着替えや食事、移動など、本人が自分でできる部分まで職員がすべて代わりに行うのではなく、残っている能力を使えるよう支援します。

BPSDの背景を考える

大声や介護拒否などがある場合、行動そのものだけを抑えようとするのではなく、痛み、不安、環境の変化、空腹、睡眠不足など背景にある要因を確認することが重要です。

認知症ケアの専門的な体制を整えている施設もある

介護医療院は、一定の要件を満たす場合に「認知症専門ケア加算」や「認知症チームケア推進加算」を算定できる仕組みがあります。

これらは、専門的な研修を受けた職員の配置や、認知症の行動・心理症状へのチームケアなど、一定の体制を評価するものです。

確認のポイント

加算を算定しているかだけで施設の良し悪しは決まりませんが、認知症ケア体制を確認する手がかりになります。見学時には、専門研修を受けた職員の配置や、BPSDが出たときの対応方法まで聞いてみましょう。

認知症短期集中リハビリテーションを受けられる場合もある

介護医療院には「認知症短期集中リハビリテーション」という介護報酬上の仕組みがあります。

認知症なら全員が対象になるわけではない

対象は、認知症であると医師が判断し、リハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断された人です。

入所後3か月以内に個別で行う

施設基準を満たした介護医療院で、医師または医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、入所日から3か月以内に集中的な個別リハビリを実施した場合に算定されます。

制度上は1週に3日を限度として算定されます。

認知症そのものを治す制度ではない

目的は、認知症そのものを治癒させることではなく、本人の生活機能の改善を図ることです。

本人の状態によっては、日常生活動作、コミュニケーション、活動への参加などを支援します。

入所前に認知症について施設へ伝える情報

認知症の人の受入可否を正確に判断してもらうには、診断名だけでなく日常の状態を具体的に伝えることが重要です。

01

認知症の診断・これまでの経過

診断名、診断時期、最近の変化など、分かる範囲で伝えます。

02

現在の認知機能と生活動作

会話、食事、排泄、着替え、歩行などについて、本人ができることと介助が必要なことを伝えます。

03

BPSDの内容と頻度

徘徊、夜間不眠、大声、介護拒否、攻撃的な言動などがある場合は、どのような状況で起きるのかを具体的に伝えます。

04

持病と医療処置

糖尿病、心疾患、パーキンソン病などの持病、経管栄養、吸引、酸素療法など必要な医療処置を伝えます。

05

服用している薬

認知症治療薬だけでなく、睡眠薬、向精神薬、鎮痛薬なども含めて現在の処方内容を伝えます。

06

本人が落ち着きやすい関わり方

好きなこと、苦手なこと、生活習慣、不安になりやすい場面、落ち着く声かけなども施設に共有するとケアの参考になります。

見学時に確認したい認知症ケアの7項目

認知症対応は「受け入れ可能です」と言われただけで判断せず、本人の症状に合わせて具体的に確認します。

施設へ確認したいこと

  • 本人の現在の症状でも受け入れ可能か
  • 夜間の認知症ケア体制はどうなっているか
  • 徘徊・介護拒否・大声などが出た場合にどう対応するか
  • 認知症ケアの研修を受けた職員がいるか
  • 精神科など外部医療機関との連携があるか
  • 認知症短期集中リハビリの対象になる可能性があるか
  • 症状が強くなった場合に入所継続できる範囲はどこまでか

現在だけでなく「悪化した場合」も聞く

入所時は落ち着いていても、認知症の進行や身体状態の変化によって介助量が増えることがあります。

現在の受入可否だけでなく、「夜間の不穏が強くなった場合」「歩けなくなった場合」「食事が難しくなった場合」など、状態が変化したときにどこまで対応できるかも確認してください。

認知症がある場合は医療対応も同時に確認する

介護医療院を選ぶときは、認知症ケアだけを見ればよいわけではありません。

介護医療院を必要とする人は、認知症に加えて慢性疾患や医療処置を抱えていることが少なくありません。

必要な医療処置に対応できるか

吸引、経管栄養、酸素療法、インスリンなどが必要な場合は、処置内容だけでなく頻度と時間帯も伝えて確認します。

急変時の対応を確認する

介護医療院の医師が施設内で必要な医療を提供することが難しいと判断した場合は、協力医療機関などへの入院や他の医師への対診など、適切な措置を取ることが基準上求められています。

急変時にどの医療機関と連携するのか、家族への連絡方法、救急搬送の考え方を確認しておくと安心です。

まとめ|認知症でも入所できるが、症状と医療ニーズを具体的に伝える

介護医療院は、認知症がある人も入所対象になり得る介護保険施設です。制度上も、身体合併症を有する認知症高齢者など、認知症と医療ニーズを併せ持つ人の受け入れが想定されています。

ただし、認知症だけで入所が決まるわけではありません。要介護1~5であり、長期療養のための医療、看護、介護、機能訓練などが必要かを確認したうえで入所を判断します。

また、徘徊、大声、介護拒否、他者への攻撃的な言動などへの対応力は施設によって異なります。「認知症があります」とだけ伝えるのではなく、現在の症状、起こりやすい時間帯、医療処置、服薬、本人が落ち着きやすい関わり方まで具体的に共有してください。

見学時には、現在受け入れられるかだけでなく、認知症が進行した場合や医療ニーズが高まった場合にも入所を継続できるかまで確認することが大切です。

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