認知症のある家族の住まいを探すとき、「有料老人ホームとグループホームのどちらが向いているのか」と迷うことがあります。
どちらも認知症の人が暮らせる可能性がありますが、グループホームは認知症のある人を対象とした地域密着型サービスであるのに対し、有料老人ホームは認知症専用の施設ではなく、介護付き・住宅型などで介護の受け方も異なります。
この記事では、認知症の人にとってどちらが合いやすいかを、生活環境、介護体制、医療対応、費用、入居条件、将来の住み替えまで比較して整理します。
有料老人ホームとグループホームはどちらが認知症に向く?
まず結論|少人数の認知症ケアを重視するならグループホーム、選択肢の広さや医療・介護体制まで比較したいなら有料老人ホーム
グループホームは、認知症のある人が少人数で共同生活しながら日常生活の支援や介護を受けるためのサービスです。一方、有料老人ホームは認知症専用ではありませんが、施設によって認知症ケア、看護体制、医療連携、看取りなどに対応しています。
本人が落ち着いて生活できる環境を重視するのか、医療や介護の選択肢を広く持ちたいのかによって、適した施設は変わります。
グループホームは認知症の人のための地域密着型サービス
認知症対応型共同生活介護、いわゆるグループホームは、認知症のある高齢者が共同生活住居で暮らしながら、食事、入浴、排せつなどの日常生活上の支援や介護、機能訓練を受けるサービスです。
少人数で家庭に近い環境で暮らす
グループホームはユニット単位の少人数生活が基本です。大規模な施設に比べ、顔なじみの職員や入居者との関係をつくりやすく、毎日の生活動作を続けながら暮らすことを重視します。
少人数だから必ず本人に合うわけではありません。見学では、本人が共用スペースで過ごす様子を想像し、職員の声かけや入居者同士の距離感も確認します。
対象は要支援2または要介護1〜5で認知症のある人
介護保険のグループホームは、要支援2または要介護1〜5で、認知症のある人が対象です。要支援1の人は対象になりません。
要支援1は対象外です。また、認知症の診断があっても共同生活が難しい状態や医療ニーズによっては、受け入れ可否が個別に判断されます。
原則として住んでいる市町村の事業所を利用する
グループホームは地域密着型サービスです。そのため、原則として本人が居住する市町村が指定した事業所を利用します。市町村をまたいで利用できる場合もありますが、区域外指定など自治体間の手続きが必要になることがあります。
「認知症なら必ずグループホーム」が正解ではありません
認知症があっても、医療処置が多い、常時看護が必要、身体介護量が非常に多いなどの場合は、本人に合う他の施設を検討した方がよいことがあります。
地域要件があるため、家族の近くへ転居して入居したい場合は事前確認が必要です。住民票の扱いや例外的な利用については、施設と自治体へ相談します。
有料老人ホームは認知症専用ではないが選択肢が広い
有料老人ホームは、食事、介護、家事、健康管理など一定のサービスを提供する高齢者向けの住まいです。認知症専用ではありませんが、認知症の人を受け入れている施設は多くあります。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受け、ホームが介護保険サービスを提供します。食事、入浴、排せつなどの介護を施設内で受けながら生活できます。
認知症ケアに力を入れている施設もありますが、対応できる症状や医療ニーズは施設ごとに異なります。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームでは、生活支援などを受けながら暮らし、介護が必要な場合は外部の訪問介護などを個別に契約して利用します。
認知症がある人も入居できる施設がありますが、介護量が増えた場合の費用や、認知症が進行したときの対応を事前に確認することが重要です。
POINT
有料老人ホームを検討するときは、「認知症対応可」という表示だけでは判断しないことが大切です。
夜間の職員体制、看護職員の勤務時間、医療機関との連携、行動・心理症状への対応、看取り、退去条件まで確認しましょう。
生活環境の違い|少人数で暮らすか、設備や選択肢を重視するか
グループホームは少人数の共同生活が基本
グループホームでは、食事の準備、片付け、掃除など、できることを続けながら生活することが重視されます。本人の生活歴や残っている力を活かしやすい環境です。
食事や家事など、本人ができることを続けながら生活を支える点が特徴です。生活リズムや他者との共同生活が本人に合うかを見学時に確認します。
有料老人ホームは施設ごとの差が大きい
有料老人ホームは、小規模な施設から大規模施設まで幅があります。居室、共用設備、レクリエーション、食事、面会、外出などの生活環境も施設によって大きく異なります。
生活環境で比較したいポイント
- 本人が落ち着ける人数・規模か
- 居室や食堂の雰囲気
- 日中の過ごし方
- 職員と入居者の関わり方
- 本人ができる家事や役割を続けられるか
- 家族が面会しやすいか
認知症の受け入れ実績だけでなく、具体的な症状への対応や夜間体制まで確認します。介護付きと住宅型では介護サービスの受け方も異なります。
介護体制の違い|認知症ケアだけでなく身体介護も確認する
認知症が進行すると、記憶や判断力だけでなく、食事、排せつ、入浴、移動など身体介護の必要性も高くなることがあります。
グループホームは認知症ケアを前提にしている
グループホームでは、認知症のある人への支援を前提として職員配置やサービスが組まれています。日常生活の中で本人のできることを活かしながら支援します。
認知症ケアを前提としたサービスでも、本人の症状や医療ニーズによって必要な支援は異なります。入居前に生活上の困りごとを具体的に共有することが大切です。
有料老人ホームは施設ごとに介護体制を確認する
介護付き有料老人ホームでは施設内で介護サービスを受けますが、人員体制や認知症ケアの方法には施設差があります。住宅型では外部サービスを利用するため、必要な介護量に応じたサービス調整が必要です。
「認知症対応可」という表示だけでは支援内容は分かりません。夜間の介護、外出傾向、服薬管理など、本人に必要な支援へ対応できるか確認します。
医療対応の違い|持病や看取りまで考える
認知症の人の施設選びでは、認知症そのものへの対応だけでなく、持病や医療処置、緊急時対応まで確認する必要があります。
グループホームの医療対応は事業所によって異なる
グループホームは医療施設ではありません。訪問診療や協力医療機関との連携、訪問看護の利用などで医療を支えることがありますが、対応できる医療処置や看護体制は事業所ごとに異なります。
協力医療機関や訪問診療と連携している事業所もありますが、看護体制や対応可能な処置には差があります。状態悪化時の継続入居についても確認します。
有料老人ホームは医療対応の幅が広い
有料老人ホームには、看護職員が日中配置される施設、24時間看護職員がいる施設、訪問診療や訪問看護との連携を重視する施設などがあります。
医療依存度が高い場合は、施設名よりも具体的な医療体制を優先して比較してください。
医療ニーズが高くなった場合の退去条件を確認する
長期入院、経管栄養、吸引、頻回な医療処置などが必要になった場合に、どこまで対応できるのかは施設ごとに異なります。入居前に重要事項説明書や契約内容を確認しましょう。
費用の違い|グループホームと有料老人ホームはどちらが安い?
費用は施設ごとの差が大きいため、「グループホームの方が必ず安い」「有料老人ホームは必ず高い」とは言えません。
グループホームで必要になる主な費用
- 家賃
- 食費
- 光熱水費
- 管理費など
- 介護保険サービスの自己負担
- 医療費や日用品など
介護保険サービスの自己負担に加えて、家賃、食材料費、光熱水費などの生活費が必要です。金額は事業所や地域、要介護度などによって異なります。
介護保険の自己負担割合や要介護度によって介護サービス費は変わります。家賃などの生活費と介護保険自己負担を分けて確認すると、月額総費用を比較しやすくなります。
有料老人ホームで必要になる主な費用
- 入居一時金・前払金がある場合の初期費用
- 家賃・管理費
- 食費
- 介護保険の自己負担
- 医療費
- 生活支援や個別サービスの追加費用
比較するときは、表示されている月額料金だけでなく、本人が実際に必要とする介護や医療を含めた総額を確認します。
入居一時金の有無や家賃・管理費・食費に加え、介護保険自己負担、医療費などを確認します。住宅型では利用する外部介護サービスの量によって負担が変わることがあります。
認知症の状態からどちらが向いているか考える
01
少人数で落ち着いた生活を続けたいならグループホーム
大人数の環境が負担になりやすく、家庭に近い環境で顔なじみの人と暮らすことを重視する場合は、グループホームが候補になります。
02
医療や看護の選択肢を広く比較したいなら有料老人ホーム
認知症に加えて持病や医療処置があり、看護体制や医療連携を重視する場合は、対応力のある有料老人ホームを比較する価値があります。
03
要支援1ならグループホームは対象外
グループホームは要支援2または要介護1〜5が対象です。要支援1の場合は有料老人ホームなど他の住まいを検討します。
04
地域外の施設も含めて探したいなら有料老人ホームの方が選択肢を広げやすい
グループホームは地域密着型サービスのため、原則として居住する市町村の指定事業所を利用します。広い地域から探したい場合は、有料老人ホームの方が候補を増やしやすい傾向があります。
見学で確認したいポイント
認知症のある人の施設選びでは、資料や料金だけでは分からない部分が多くあります。可能であれば実際に見学し、本人の反応も見ながら判断しましょう。
見学時の確認項目
- 職員が認知症の入居者へどのように声をかけているか
- 入居者が落ち着いて過ごしているか
- 昼間の過ごし方や活動内容
- 夜間の職員体制
- 看護・医療連携
- 認知症が進行した場合の対応
- 看取りの可否
- 退去条件
まとめ|認知症なら施設名ではなく本人に合う環境で選ぶ
グループホームは、認知症のある人が少人数で共同生活することを前提としたサービスです。一方、有料老人ホームは認知症専用ではありませんが、施設によって認知症ケア、介護、看護、医療連携の体制に幅があります。
認知症があるという理由だけでグループホームに決めるのではなく、本人の要介護度、生活のしやすさ、身体介護量、医療ニーズ、費用、家族の通いやすさまで含めて比較してください。
CONCLUSION
本人が落ち着いて生活できることを第一に、認知症ケアだけでなく、将来必要になる介護・医療まで対応できるかを確認して選びましょう。