医療的な支援が必要になったとき、「看護小規模多機能を使いながら自宅で暮らすか」「老人ホームへ入居するか」で迷うことがあります。
この2つは、どちらも介護と医療の支援を受けられる可能性がありますが、仕組みは大きく異なります。
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、自宅での生活を続けながら、「通い」「宿泊」「訪問介護」「訪問看護」を一つの事業所から組み合わせて利用する介護保険サービスです。一方、老人ホームは施設そのものが生活の場になります。
まず結論|看多機は「在宅生活を支えるサービス」、老人ホームは「生活の場」
看護小規模多機能は、自宅で暮らし続けることを前提に、通い・宿泊・訪問介護・訪問看護を柔軟に組み合わせる地域密着型サービスです。老人ホームは施設へ住み替えて生活と介護を受けます。医療ニーズが高い人でも、在宅生活を続けられる体制があるなら看多機、24時間の生活支援や施設での継続的な介護が必要なら老人ホームが候補になります。
看護小規模多機能と老人ホームの違い
最も大きな違いは、本人がどこで生活するかです。
01
看護小規模多機能|自宅を生活の拠点にする
看護小規模多機能型居宅介護は、略して「看多機」と呼ばれます。
本人は自宅で暮らしながら、必要に応じて事業所へ通い、短期間宿泊し、職員による訪問介護や看護師などによる訪問看護を受けます。
02
老人ホーム|施設へ入居して生活する
老人ホームでは、本人が施設へ住み替え、そこで食事、介護、生活支援などを受けます。
介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホーム(特養)、住宅型有料老人ホームなど、施設種別によって介護や医療の提供方法は異なります。
看護小規模多機能は4つのサービスを一体的に利用する
看多機の特徴は、一つの事業所が本人の状態に合わせて複数のサービスを組み合わせることです。
「通い」を中心に必要な支援を組み合わせる
日中は事業所へ通い、食事、入浴、介護、機能訓練などを受けることができます。
本人の状態や家族の事情に応じて、自宅への訪問介護や訪問看護、事業所での宿泊を組み合わせます。
複数のサービスを同じ事業所の職員が一体的に提供するため、本人の状態変化を共有しやすいことが特徴です。
訪問看護を組み合わせられることが小規模多機能との大きな違い
一般の小規模多機能型居宅介護も、通い・宿泊・訪問を組み合わせるサービスです。
看多機では、これに看護師などによる訪問看護が加わります。
そのため、退院後の療養生活、医療処置が必要な人、状態が変化しやすい人など、医療と介護の両方を必要とする人を在宅で支える選択肢になります。
POINT
看多機は「看護師がいる老人ホーム」ではありません。自宅生活を中心に、介護と看護を一つの事業所から柔軟に利用する在宅サービスです。
看多機は要介護1〜5が対象で、要支援1・2は利用できない
看護小規模多機能型居宅介護を利用できるのは、要介護1〜5の認定を受けた人です。
要支援1・2には看多機の介護予防サービスがない
小規模多機能型居宅介護には要支援者向けの介護予防サービスがありますが、看護小規模多機能型居宅介護は要支援1・2の人は利用できません。
要支援の人が医療や生活支援を必要とする場合は、訪問看護など別のサービスを組み合わせる方法を検討します。
老人ホームは施設によって入居条件が違う
老人ホームは、すべて同じ入居条件ではありません。
特養の新規入所は原則として要介護3以上ですが、要介護1・2でも一定の事情があれば特例入所の対象になる場合があります。
介護付き有料老人ホームなどでは、自立・要支援から受け入れる施設もあれば、要介護者を中心とする施設もあります。
看多機は地域密着型サービスなので地域要件がある
看多機は介護保険の地域密着型サービスです。
そのため、原則として事業所が所在する市区町村の介護保険被保険者が利用します。
利用したい事業所が別の市区町村にある場合は確認が必要
自宅の近くに看多機がないからといって、隣の市の事業所を自由に利用できるとは限りません。
利用できる事業所は、本人の住所地や市区町村の指定状況によって確認する必要があります。
老人ホームでは、広域型の特養や有料老人ホームなど、市区町村を越えて入居できる施設も多くあります。
看多機は登録定員29人以下の小規模なサービス
2026年10月時点の基準では、本体となる看護小規模多機能型居宅介護事業所の登録定員は29人以下です。
通いと宿泊にも利用定員がある
通いサービスの定員は、登録定員に応じて最大15〜18人です。
宿泊サービスは、通いサービスの利用定員の3分の1から9人までの範囲で設定します。
つまり、看多機の「宿泊」は老人ホームへの入居ではなく、在宅生活を続けるために必要なときに利用する短期間の宿泊です。
看多機の宿泊を「長期入居」と考えない
看多機は在宅サービスです。宿泊を利用できても、老人ホームのようにその事業所を恒久的な生活場所として入居する仕組みではありません。自宅での生活を続けることが難しくなった場合は、施設入居を含めて見直す必要があります。
医療ニーズが高い人では看多機が有力な在宅選択肢になる
看多機は、介護だけでなく看護を一体的に提供できるため、医療ニーズのある人が自宅で暮らすための重要なサービスです。
退院直後や医療処置が必要な人を支えやすい
退院後で状態が安定していない、医療処置を継続する必要がある、病状を見ながら介護サービスを調整したいといった場合に、看多機が候補になります。
訪問看護と通い・宿泊を同じ事業所で調整できるため、体調の変化に応じてサービスを組み替えやすい点があります。
どの医療処置でも対応できるわけではない
看多機だからといって、すべての医療処置を受け入れられるわけではありません。
介護サービス情報公表システムでも、経管栄養、中心静脈栄養、点滴、疼痛管理などの受け入れ状況は事業所ごとに確認する仕組みになっています。
本人に必要な処置名、実施時間、頻度を伝え、対応可能か個別に確認してください。
老人ホームの方が24時間の生活支援を受けやすい
看多機では、自宅にいる時間もあります。
そのため、自宅で一人になることが難しい状態や、24時間継続して介護・見守りが必要な場合は、老人ホームの方が生活を組み立てやすいことがあります。
夜間を含め常時見守りが必要なら施設入居も検討する
夜間に頻回な排せつ介助が必要、転倒リスクが高い、認知症による不安が強く一人で過ごせないなどの場合、看多機を利用しても自宅で家族の支援が必要になる可能性があります。
家族がどこまで介護できるかも含めて、在宅生活が継続可能かを考えます。
老人ホームでも医療体制は施設ごとに異なる
施設へ入居すれば、どこでも医療ニーズへ対応できるわけではありません。
看護職員の日中配置だけの施設、24時間看護職員を配置する施設、訪問診療・訪問看護と連携する施設などがあります。
医療ニーズが高い人は、「老人ホーム」という名称ではなく、必要な医療への対応可能時間まで確認する必要があります。
費用は看多機と老人ホームで仕組みが違う
看多機の介護保険基本サービス費は月額制
看多機の基本サービス費は、要介護度に応じた1か月単位の包括報酬が基本です。
2026年10月時点では、同一建物以外に住む登録者の場合、基本報酬は要介護1で月12,447単位、要介護5で月31,408単位です。
利用者は所得に応じて原則1割、一定以上の所得がある人は2割または3割を自己負担します。地域区分や加算によって実際の金額は変わります。
また、食費、宿泊費、おむつ代などの実費は別途必要です。
老人ホームは住居費・食費なども継続して必要になる
老人ホームでは、介護保険自己負担に加えて、居住費や家賃、食費、管理費などが必要です。
費用構造は特養、有料老人ホームなど施設種別によって異なります。
看多機では自宅の家賃・住宅ローンや光熱費も残るため、単純に介護サービスの自己負担だけで比較せず、生活全体の費用で考えることが大切です。
看多機が候補になりやすい人
看多機を検討しやすいケース
- できるだけ自宅で暮らし続けたい
- 要介護1〜5で介護と看護の両方が必要
- 通い・訪問・宿泊を柔軟に組み合わせたい
- 退院後などで状態が変化しやすい
- 家族の介護と専門職の支援を組み合わせられる
老人ホームが候補になりやすい人
施設入居を検討しやすいケース
- 自宅で一人になる時間を作ることが難しい
- 24時間継続した生活支援や介護が必要
- 家族による在宅介護の継続が難しい
- 住環境上、自宅で介護を続けることが難しい
- 長期的な生活の場を確保したい
どちらを選ぶか判断するときの確認ポイント
01
本人が自宅で暮らし続けたいか確認する
在宅生活への希望は重要ですが、本人の希望だけでなく、安全に生活できる支援体制が作れるかも確認します。
02
自宅にいる時間の介護を誰が担うか整理する
看多機を利用しても、自宅にいる時間がなくなるわけではありません。家族の介護力や一人で過ごせる時間を具体的に整理します。
03
必要な医療処置に対応できるか確認する
看多機でも老人ホームでも、必要な医療処置名を伝え、昼夜それぞれの対応可否を確認します。
04
費用は生活全体の総額で比較する
看多機では自宅維持費、老人ホームでは居住費・食費等を含め、月全体で必要な支出を比較します。
05
状態が悪化した後まで想定する
現在は在宅生活が可能でも、介護量や医療ニーズが増えたときにどこまで継続できるかを、ケアマネジャーや主治医と確認しておきます。
まとめ|在宅を続けるか、生活の場を移すかで考える
看護小規模多機能と老人ホームの最大の違いは、本人の生活の拠点です。
看多機は、自宅での生活を続けながら、通い・宿泊・訪問介護・訪問看護を組み合わせる地域密着型サービスです。要介護1〜5が対象で、医療と介護の両方を必要とする人の在宅生活を支えます。
老人ホームは施設自体が生活の場となり、長期的に介護や生活支援を受けます。
どちらを選ぶかは、本人の在宅希望、家族の介護力、夜間を含む見守りの必要性、医療ニーズ、住環境、費用を整理し、「自宅生活を安全に続けられるか」を基準に判断してください。