老人ホームでは、入居時にまとまった前払い金を支払う料金方式が採用されていることがあります。退去や死亡によって契約が終了したとき、「残った分は返ってくるのか」が気になる人は多いでしょう。
結論からいうと、前払い金は必ず全額返ってくるわけではありません。返還される金額は、契約で定められた初期償却、想定居住期間、償却方法、実際の入居期間などによって変わります。有料老人ホームでは前払い金の算定根拠や返還方法を確認することが重要です。
老人ホームの前払い金は退去すると返ってくる?
まず結論|このページで最も重要な内容
前払い金の未償却部分が残っていれば、契約内容に基づいて返還されることがあります。ただし、初期償却された部分や実際に居住した期間に相当する額などは返還対象にならない場合があります。契約前に「返還金の算定式」と「いつまで返還対象が残るか」を確認してください。
前払い金とは、将来の家賃やサービス費などの全部または一部を、入居時にまとめて支払う仕組みです。一般に、契約で定められた期間にわたって少しずつ償却されます。
そのため、想定居住期間の途中で退去した場合には、まだ償却されていない部分が返還金として残ることがあります。一方、想定居住期間を過ぎるまで入居していれば、返還金が残らない契約もあります。
返還金を理解するために知っておきたい3つの言葉
01
前払い金
将来発生する家賃などの全部または一部を、入居時にまとめて支払うお金です。施設によっては「入居一時金」などの名称が使われることもあります。
02
初期償却
入居時に前払い金の一部を一定割合または一定額で償却する仕組みです。初期償却が設定されている契約では、その部分は入居後の返還金計算から除かれることがあります。
03
想定居住期間
前払い金を算定する基礎として設定される期間です。この期間にわたって前払い金を償却する契約では、途中退去時に未償却分が返還される仕組みが一般的です。
返還金はどのように計算される?
実際の返還金は、施設ごとの契約書に記載された算定式で決まります。単純に「支払った前払い金から入居月数分を引く」とは限りません。
確認したいのは、次のような項目です。
返還金の計算で確認する項目
- 前払い金の総額
- 初期償却の有無と金額・割合
- 想定居住期間
- 月単位か日単位かなどの償却方法
- 途中退去時の返還金算定式
- 返還金が支払われる時期
- 死亡による契約終了時の扱い
前払い金が高額な施設ほど、返還金の計算方法まで理解してから契約することが大切です。
入居後3か月以内に退去した場合はどうなる?
有料老人ホームでは、前払い金を受領する場合、入居後一定期間内に契約が解除されたり入居者の死亡によって契約が終了したりした場合について、前払い金から実際の利用期間に対応する額などを控除した残額を返還する契約が求められています。
そのうち、入居後3か月までの期間については、いわゆる短期解約に関する返還ルールがあります。契約書では「短期解約特例」などと記載されていることがあります。
3か月以内なら必ず全額返金とは限らない
短期間で退去した場合でも、実際に利用した期間に対応する家賃等の費用が差し引かれる場合があります。「3か月以内なら無条件で全額返還」と考えず、契約書に記載された算定方法を確認してください。
長期間入居した場合は返還金がなくなることもある
前払い金を一定期間で償却する契約では、入居期間が長くなるほど未償却残高は少なくなります。
想定居住期間をすべて経過すると、前払い金が全額償却され、退去時に返還金が残らないことがあります。その後も追加の前払い金を求めずに居住できる契約もありますが、扱いは施設ごとに異なります。
「想定居住期間を超えたら追加料金が発生するのか」「前払い金の返還金はいつゼロになるのか」は、契約前に確認しておきたい重要なポイントです。
前払い金と敷金は別のもの
前払い金と敷金は性質が異なります。
前払い金は、将来の家賃などをあらかじめ支払う性質のお金です。一方、敷金は家賃の未払いなどに備えて預けるお金で、退去時に未払い金などを差し引いて精算されるのが一般的です。
入居時にまとまった金額を支払う場合は、その全額を「入居一時金」とひとまとめにせず、前払い金、敷金、その他の費用に分けて確認してください。
前払い金がある老人ホームで契約前に確認したいこと
01
初期償却はいくらか
入居直後に償却される金額が大きい契約では、短期間で退去した場合の返還金にも影響します。
02
返還金の算定式を数字で確認する
「途中退去なら返還あり」という説明だけでは不十分です。1年後、3年後など具体的な時点で退去した場合の返還額を試算してもらうと分かりやすくなります。
03
死亡による契約終了時の扱いを確認する
本人が死亡した場合の返還金の有無、精算方法、相続人等への支払時期も確認しておきます。
04
返還金の保全措置を確認する
前払い金を受け取る有料老人ホームでは、返還債務に備えるための保全措置が関係します。重要事項説明書などで、どのような保全措置が講じられているか確認します。
重要事項説明書と入居契約書の両方を確認する
前払い金がある施設では、料金表だけで判断せず、重要事項説明書と入居契約書を確認してください。
特に、前払い金の算定根拠、初期償却、償却期間、返還金の算定式、短期解約時の扱い、返還時期について、書面の記載と担当者の説明が一致しているかを確認します。
分からない項目があれば、その場で契約せず、「この金額は退去時に返るのか」「何年後に返還金がゼロになるのか」を具体的に質問することが大切です。
CHECK
前払い金の金額だけでなく、「途中で退去したらいくら戻るのか」まで確認して初めて、実際の費用負担を比較できます。
前払い方式と月払い方式は返還金まで含めて比較する
同じ施設でも、前払い方式と月払い方式を選べる場合があります。前払い方式は月々の支払いを抑えられる場合がある一方、早期退去時の返還条件を理解しておく必要があります。
比較するときは、入居時費用だけでなく、想定する入居期間の総額と途中退去時の返還金まで含めて考えます。本人の年齢や健康状態だけで入居期間を決めつけず、複数の期間で試算すると判断しやすくなります。
前払い金が返ってくるかどうかは「施設名」ではなく契約内容で決まります。契約前に返還条件を数字で確認し、家族も同じ内容を理解したうえで判断してください。
費用は、毎月ほぼ固定して発生する家賃・管理費等と、介護保険自己負担、医療費、日用品、追加サービスなど利用状況で変わる費用に分けて整理します。表示された月額だけでなく、本人の条件を伝えて1か月の見積りを出してもらうと実支出を比較しやすくなります。
入院や外泊の際に減額される費用と継続して発生する費用は施設ごとに異なります。欠食時の食費、居室確保のための家賃・管理費、追加サービスの停止手続きなどを契約前に確認してください。
長期の資金計画では、現在の月額だけでなく、要介護度の上昇、医療費の増加、料金改定、日用品費の増減も見込みます。年金収入、預貯金、家族援助を分けて整理し、数年単位で継続できるかを確認します。
老人ホームの前払い金は返ってくる返還金の仕組みについて判断するときは、一般論を本人の状態に置き換えて確認することが重要です。現在困っていること、本人が自分でできること、家族が継続できる支援の範囲を整理してから施設へ相談すると、必要な条件が伝わりやすくなります。
施設へ質問するときは、「できますか」だけでなく、誰が、いつ、どの範囲まで対応するのかを具体的に確認します。例外となる条件や追加料金がある場合は、その条件も合わせて聞いてください。
最終判断では、パンフレットやウェブサイトだけでなく、重要事項説明書、料金表、契約書などの書面を確認します。入居時点の条件だけでなく、状態が変化した場合の追加費用や支援範囲、退去条件まで確認しておくと、入居後の行き違いを減らせます。