特別養護老人ホーム(特養)へ申し込んだあと、待機中に要介護度が変わることがあります。「要介護2から3になったらどうするのか」「要介護3から2に下がったら申込みは無効になるのか」と不安になる人もいるでしょう。
特養は原則として要介護3以上が新規入所の対象ですが、要介護1・2でも一定の事情があれば特例入所の対象になることがあります。また、特養の入所は単純な申込順ではなく、介護の必要性や在宅生活の困難さなどを踏まえて判断されます。
まず結論|待機中に要介護度が変わったら、申込先の特養へ必ず連絡する
特養の待機中に要介護度が変わった場合は、申込先の特養へ新しい認定結果を伝え、申込内容を更新してください。要介護2から3以上になった場合は原則的な入所対象となり、逆に要介護3以上から1・2へ下がった場合は、特例入所に該当する事情があるか確認が必要です。要介護度の変更によって優先順位や必要書類が変わることがあるため、「自動的に情報が更新される」と考えず、家族側から連絡することが重要です。
特養は原則として要介護3以上が新規入所の対象
現在の制度では、特養への新規入所は原則として要介護3以上の人が対象です。
要介護3・4・5は原則的な対象
厚生労働省の入所指針では、2015年4月以降、特養への新規入所は原則として要介護3以上に限定されています。
そのため、待機中に要介護2から3へ上がった場合は、原則的な入所対象として扱われることになります。
要介護1・2でも特例入所がある
要介護1・2であっても、居宅で日常生活を営むことが困難なやむを得ない事情がある場合には、市町村の関与のもとで特例的に入所できる仕組みがあります。
認知症による生活上の困難、知的・精神障害、虐待、家族支援が期待できない状況などが勘案事項として示されています。
POINT
「要介護2だから絶対に特養へ入れない」わけではありません。原則要介護3以上ですが、要介護1・2には特例入所の仕組みがあります。
要介護2から3以上になった場合
待機中に要介護度が上がった場合は、できるだけ早く申込先へ連絡してください。
新しい認定結果を伝える
要介護認定の結果通知や介護保険被保険者証など、新しい要介護度が分かる情報を施設へ伝えます。
施設によっては申込書の変更届や追加書類の提出を求めることがあります。
優先順位が再評価されることがある
特養は申込順だけでなく、本人の介護の必要性や在宅生活の困難さなどを考慮して入所の必要性を判断します。
要介護度が上がれば、それだけで必ず最上位になるわけではありませんが、入所判定に使う情報の一つとして再評価される可能性があります。
要介護3から4・5へ上がった場合
すでに原則的な入所対象であっても、要介護度がさらに上がったら施設へ報告します。
介護量の変化も伝える
要介護度だけではなく、移乗が全介助になった、夜間介助が増えた、認知症症状が強くなったなど、実際の生活状況を伝えてください。
特養側は、現在どの程度在宅生活が困難なのかを判断する材料として確認します。
医療ニーズの変化も同時に伝える
酸素、吸引、インスリン、経管栄養などが新たに必要になった場合は、それも伝えます。
要介護度が高くても、本人に必要な医療ケアへ施設が対応できなければ、受け入れが難しい場合があります。
要介護3以上から要介護1・2へ下がった場合
待機中の更新認定などで、要介護3から2、または1へ下がる場合があります。
原則的な新規入所対象から外れる
要介護1・2は原則として特養への新規入所対象ではありません。
そのため、要介護度が下がった場合は、これまでと同じ条件で申込みを継続できるか施設へ確認が必要です。
特例入所に該当するか確認する
在宅生活が著しく困難で、厚生労働省の指針で示される特例入所の事情に該当する場合は、要介護1・2でも入所対象となることがあります。
施設と市町村が関わりながら判断するため、家族だけで「もう対象外」と決めず、申込先へ相談してください。
特例入所で確認される主な事情
厚生労働省の指針では、要介護1・2の特例入所について、在宅生活が困難な事情を具体的に確認する考え方が示されています。
認知症による生活上の困難
認知症により、日常生活へ支障を来す行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、在宅生活の継続が難しい場合です。
徘徊、火の不始末、夜間の見守りなど、家庭で実際に困っている状況を具体的に伝えることが重要です。
知的障害・精神障害等がある場合
障害等による行動や意思疎通の困難さが頻繁にあり、在宅生活が難しい場合も勘案されます。
診断名だけではなく、日常生活でどのような支援が必要なのかを伝えてください。
虐待が疑われる場合
家族等による深刻な虐待が疑われ、本人の安全を在宅で確保することが難しい場合も対象となり得ます。
この場合は、地域包括支援センターや市区町村の担当窓口などへ早めに相談することが重要です。
家族の支援が期待できない場合
単身世帯、同居家族が高齢・病弱などで支援が難しく、地域の介護サービスだけでは在宅生活を支えきれない場合も勘案事項とされています。
同居家族がいるという理由だけで支援可能と判断せず、実際の介護力を伝えてください。
要介護度が変わったら申込書を更新する
特養へ申し込んだ時点の情報は、その後の状態変化によって古くなります。
施設へ変更を届ける
要介護度、住所、家族状況、入院先、介護者の状況などが変わった場合は、申込先へ連絡します。
施設によって変更届の様式がある場合は、その書類を提出してください。
自動反映されるとは限らない
介護保険の認定情報が行政側で更新されても、申込先のすべての特養で申込内容が自動更新されるとは限りません。
特に複数の施設へ直接申し込んでいる場合は、それぞれへ連絡する必要があるか確認してください。
要介護度以外の変化も同時に伝える
入所の必要性は、要介護度だけで決まるものではありません。
主介護者の状況
介護していた配偶者が入院した、家族が仕事を続けられなくなったなど、介護者側の状況が悪化することがあります。
こうした変化は在宅生活の継続可能性に大きく関わるため、施設へ伝えてください。
在宅サービスの利用状況
訪問介護、デイサービス、ショートステイなどを増やしても在宅生活が難しい場合は、その状況も重要な情報です。
「サービスをどこまで利用しても支えきれないのか」を具体的に伝えると、現在の困難さが分かりやすくなります。
認知症・医療状態
認知症症状の悪化や医療ケアの追加なども、入所判断や受け入れ可否に影響します。
診断書や情報提供書などを求められた場合は、主治医へ相談してください。
優先順位は要介護度だけで決まらない
「要介護5なら要介護3より必ず先に入れる」と考えるのは正確ではありません。
入所の必要性を総合的に判断する
厚生労働省の指針では、施設は入所の必要性が高い人を優先的に受け入れることが求められています。
具体的な評価方法は地域の入所指針等によりますが、要介護度だけでなく、介護者の状況や在宅生活の困難さなども考慮されます。
申込みが早い人だけが優先されるとは限らない
特養は単純な先着順ではありません。
後から申し込んだ人でも、緊急性や介護の必要性が高ければ優先される場合があります。
複数の特養へ申し込んでいる場合
待機期間を短くするため、複数の特養へ申し込んでいる人もいます。
それぞれの施設へ変更連絡が必要か確認する
自治体の一括申込みではなく施設へ直接申し込んでいる場合、要介護度変更を各施設へ知らせる必要があることがあります。
申込先一覧を作り、連絡漏れを防いでください。
希望順位が変わった場合も伝える
本人の状態変化や家族の転居により、「以前は第一希望だった施設へ通いにくくなった」といったことがあります。
現在の希望を整理し、必要なら申込内容を見直してください。
入院中に要介護度が変わった場合
特養待機中に入院し、その間に要介護度が上がることもあります。
退院後の生活場所を早めに検討する
病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者へ、特養へ申し込んでいることを伝えます。
退院後に自宅へ戻れるか、ショートステイ等を利用するか、別施設も探すかを早めに検討してください。
医療状態の変化も施設へ伝える
入院をきっかけに酸素、吸引、経管栄養などが必要になった場合、特養の受け入れ条件が変わる可能性があります。
要介護度だけでなく、退院時の医療・介護状態を更新してください。
区分変更申請中の場合はどうする?
本人の状態が大きく変化し、要介護認定の区分変更を申請している途中で特養の入所話が進むこともあります。
申請中であることを施設へ伝える
現在の認定だけでなく、「区分変更申請中」であることを申込先へ伝えます。
新しい認定結果が出たら、改めて報告してください。
現在の状態を具体的に説明する
認定結果がまだ出ていなくても、実際の介護量が大きく増えている場合があります。
移動、排泄、食事、夜間介護など、現在どの程度介助が必要かを伝えることが重要です。
要支援になった場合はどうなる?
待機中に状態が改善し、要介護から要支援へ変更されることもあります。
特養の入所対象ではなくなる
特養は要介護者を対象とする介護保険施設であり、要支援1・2は入所対象ではありません。
認定結果が要支援となった場合は、申込先へ速やかに連絡してください。
本人に合う住まいを改めて検討する
在宅生活を継続するのか、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム等を検討するのか、本人の状態と希望から考えます。
地域包括支援センターなどへ相談すると、利用できるサービスを整理しやすくなります。
待機中は定期的に申込状況を確認する
特養へ申し込んだ後、何年も連絡せず待ち続けるのは避けたいところです。
更新確認がある施設もある
一定期間ごとに、入所希望の継続や本人の状態について確認する施設があります。
施設からの郵送・電話を見落とさないようにしてください。
家族からも状態変化を伝える
要介護度変更だけでなく、介護者の入院、認知症悪化、住居変更などがあれば連絡します。
最新情報が施設に届いていることが、適切な入所判定につながります。
待機中に家族が確認したいこと
要介護度が変わったときの確認項目
- 新しい要介護度を施設へ伝えたか
- 変更届・認定結果の提出が必要か
- 申込順位・評価が再確認されるか
- 要介護1・2なら特例入所に該当する可能性があるか
- 認知症症状の変化を伝えたか
- 主介護者の状況変化を伝えたか
- 医療ケアの追加を伝えたか
- 入院・退院予定を伝えたか
- 複数施設へそれぞれ連絡したか
- 現在も入所希望を継続するか
施設へそのまま聞きたい質問
連絡時に確認したい質問
- 要介護度が変わった場合、どの書類を提出すればよいですか
- 要介護2から3になった場合、入所判定は再評価されますか
- 要介護3から2に下がった場合、申込みは継続できますか
- 特例入所の相談はどのように行いますか
- 市区町村への確認が必要ですか
- 家族の介護力が低下したことも評価対象になりますか
- 認知症症状が悪化した場合は何を提出すればよいですか
- 入院中でも申込みを継続できますか
- 医療ケアが増えた場合、受け入れ可能か再確認できますか
- 次回はいつ申込内容を更新すればよいですか
要介護度が上がるまで申込みを待つ必要はない
現在要介護1・2であっても、在宅生活が著しく困難で特例入所の可能性があるなら、相談する意味があります。
地域の入所指針を確認する
特例入所の具体的な運用は、厚生労働省の指針を踏まえて自治体・関係団体が定める入所指針等で運用されます。
本人が住む地域や申込先施設へ確認してください。
介護の困難さを具体的に伝える
「大変です」だけではなく、夜間に何回介助しているか、一人にできない時間がどの程度あるか、介護者にどんな負担が出ているかを整理します。
事実を具体的に伝えることで、入所の必要性を判断しやすくなります。
要介護度が下がっても自己判断で申込みを取り下げない
要介護3から2へ下がったとき、「もう特養へは入れない」と考えて申込みを自分で取り下げてしまうと、特例入所の検討機会を失う可能性があります。
まず施設へ相談する
本人の認知症、家族状況、在宅サービス利用状況などを伝え、申込みをどう扱うか確認してください。
必要に応じて市区町村が特例入所の判断に関与します。
別の選択肢も並行して検討する
特養だけに絞らず、老健、有料老人ホーム、グループホームなどが本人の状態に合う場合もあります。
待機期間中の生活を維持するため、ショートステイなどの在宅サービスも含めて検討してください。
特養の入所は単純な「申込順」ではない
厚生労働省の指針では、施設は入所の必要性が高い人を優先的に受け入れることが求められています。要介護度が変わったときは、認定結果だけでなく、介護者の状況・認知症・医療ニーズ・在宅生活の困難さなど最新情報を施設へ伝えてください。
待機中の変化に対応するときの優先順位
01
新しい認定結果をすぐ申込先へ伝える
要介護度の上昇・低下のどちらでも、まず施設へ連絡します。
必要書類と申込内容の更新方法を確認してください。
02
要介護度以外の生活変化も伝える
介護者の病気、認知症悪化、入院、医療ケアの追加なども重要です。
現在の在宅生活がどの程度難しくなっているか、具体的に共有します。
03
特養だけでなく待機中の生活も整える
入所時期は確約されないため、ショートステイ、訪問介護、デイサービス等を活用しながら待機中の生活を支えます。
状態変化が大きい場合は、他の施設種別も並行して検討してください。
まとめ|要介護度が変わったら、特養への申込情報を最新状態に更新する
特養への新規入所は原則として要介護3以上ですが、要介護1・2でも在宅生活が困難なやむを得ない事情があれば特例入所の対象になることがあります。
待機中に要介護2から3以上へ上がった場合は、新しい認定結果を施設へ伝え、入所判定に使う情報を更新してください。逆に要介護3以上から1・2へ下がった場合も、すぐに申込みを取り下げず、特例入所に該当するか施設へ相談することが重要です。
厚生労働省の指針でも、特養は単純な先着順ではなく、入所の必要性が高い人を優先的に受け入れる考え方が示されています。
「要介護度が変わったからどうなるか」だけでなく、「今の介護量・家族の介護力・認知症・医療ニーズ・在宅生活の困難さがどう変わったか」を申込先へ具体的に伝えることが、特養待機中の手続で最も重要です。