老人ホームを選ぶとき、居室が「個室」か「多床室」かは、毎月の費用だけでなく、入居後の過ごし方や本人のストレスにも関わります。
個室はプライバシーを保ちやすい一方、居住費が高くなる傾向があります。多床室は費用を抑えやすい反面、生活音や他の入居者との距離が近くなります。
まず結論|個室はプライバシー、多床室は費用を抑えやすい点が大きな違い
個室は自分だけの空間を確保しやすく、着替え、面会、睡眠などを自分のペースで行いやすいのが特徴です。多床室は複数人で一つの居室を使うため生活音などへの配慮が必要ですが、介護保険施設では個室より居住費を抑えやすい傾向があります。どちらが良いかは、費用だけでなく、本人の性格、睡眠、認知症の状態、人との距離感まで含めて判断します。
老人ホームの個室と多床室は何が違う?
個室と多床室の最も分かりやすい違いは、一つの居室を何人で使うかです。ただし、施設の種類によって居室の名称や設備、料金の仕組みは異なります。
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個室は1人で使う居室
個室は、一つの居室を1人で使用するタイプです。自分だけの生活空間を確保できるため、着替え、休息、面会などを周囲に気兼ねせず行いやすい点が特徴です。
ただし、個室といっても設備は施設によって異なります。ベッドと収納のみの居室もあれば、トイレ、洗面台、浴室、ミニキッチンなどを備えた居室もあります。
02
多床室は複数人で一つの居室を使う
多床室は、一つの居室を複数の入居者で使用するタイプです。ベッドごとにカーテンや家具などで区切られていることがありますが、完全な個室とは異なります。
介護保険施設では、個室と比べて居住費を抑えやすい傾向があります。一方、話し声、テレビ、照明、いびき、夜間の介護など、他の入居者の生活の影響を受けやすくなります。
費用の違い|介護保険施設では居室区分で居住費が変わる
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院などの介護保険施設では、居室の種類によって居住費の基準が異なります。
一般的には、ユニット型個室、従来型個室、多床室などに区分され、個室の方が居住費は高くなる傾向があります。
介護保険施設の居住費は「全国一律の実際の請求額」ではない
厚生労働省は、介護保険施設の居住費について、居室区分ごとの「基準費用額」を定めています。ただし、基準費用額はすべての入所者が必ずその金額を支払うという意味ではありません。
補足給付の対象ではない人が実際に負担する居住費は、施設と利用者の契約によって決まります。そのため、候補施設では料金表の「居住費」を直接確認する必要があります。
POINT
「多床室なら月○万円、個室なら月○万円」と全国一律には決められません。
施設種別、居室区分、所得区分、施設の料金設定によって負担額は変わります。比較するときは、本人の条件で月額総費用を確認してください。
低所得者には居住費・食費の負担軽減制度がある
特養、老健、介護医療院などでは、所得や資産など一定の要件を満たす人について、居住費と食費の負担に上限を設ける「負担限度額認定」の制度があります。
対象になる場合は、個室か多床室かによって負担限度額も異なります。施設の料金表だけで判断せず、市区町村に負担限度額認定の対象になるか確認することが重要です。
有料老人ホームでは個室料金が施設ごとに大きく異なる
介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなど、民間の有料老人ホームでは、家賃や居室料金は施設ごとの契約内容によって決まります。
個室の広さ、トイレや浴室の有無、方角、階数などによって料金が変わる施設もあります。また、有料老人ホームは全室個室としている施設も多く、そもそも多床室を選べない場合があります。
部屋代だけでなく月額総費用で比較する
個室料金が安くても、管理費、食費、介護保険自己負担、医療費、日用品費などを加えると月額総費用が高くなる場合があります。
反対に、家賃がやや高くても、追加料金が少なく総額が分かりやすい施設もあります。居室料金だけを比較せず、毎月必要になるすべての費用を確認してください。
プライバシーの違い|個室は自分の時間を確保しやすい
個室は着替え・睡眠・面会で周囲を気にしにくい
個室では、着替えや排せつの介助を受けるときにも、他の入居者の視線を気にしにくくなります。家族が面会に来たときも、周囲を気にせず会話しやすいでしょう。
テレビを見る時間、照明を消す時間、休憩する時間なども、自分の生活リズムに合わせやすい傾向があります。人との距離を保ちたい人には、個室が合いやすい場合があります。
多床室では他の入居者への配慮が必要
多床室では、複数人が同じ空間で生活するため、テレビの音量、照明、電話、面会などで周囲への配慮が必要になります。
カーテンでベッド周囲を区切っても、音や気配までは完全に遮ることができません。プライバシーをどの程度確保できるかは、実際の居室を見学して確認することが大切です。
睡眠・生活音の違い|夜間の介護も確認する
居室選びでは、昼間だけでなく夜間の環境も重要です。
多床室は他の入居者の生活音の影響を受けやすい
いびき、咳、寝返り、トイレへの移動、職員の介助など、夜間にもさまざまな音が発生します。
夜中に排せつ介助を受ける人が同室にいれば、職員の出入りや照明で目が覚めることもあります。眠りが浅い人や音に敏感な人では、こうした環境がストレスになる可能性があります。
個室でも完全に静かとは限らない
個室でも、廊下を職員や他の入居者が通る音、ナースコール、隣室の音などが聞こえることはあります。
個室だから静かだと決めつけず、見学時には居室の位置、廊下との距離、夜間の見回り方法なども確認するとよいでしょう。
見守り・安心感の違い|多床室が合う人もいる
プライバシーだけを考えると個室が優れているように見えますが、本人の性格によっては多床室の方が落ち着く場合もあります。
人の気配がある方が安心する人もいる
一人で過ごすことに不安を感じる人や、人の気配がある方が安心する人では、多床室が合うことがあります。
同室者との会話が生まれる場合もあり、「個室だと寂しい」と感じる人には生活上のメリットになることがあります。ただし、同室者との相性によって感じ方は変わります。
個室でも職員の見守り体制を確認する
個室の場合、「一人でいる時間が長くなるのでは」と心配する家族もいます。
実際には、食事やレクリエーションを共用スペースで行う施設も多く、職員による巡回やセンサーなどを活用して見守る施設もあります。個室か多床室かだけではなく、日中の過ごし方と見守りの方法を確認してください。
認知症がある場合はどちらがよい?
認知症があるから個室、多床室のどちらかが必ず適しているという決まりはありません。
本人の症状、これまでの生活環境、他人との距離感、夜間の状態などによって適した環境は異なります。
個室が落ち着きにつながる人もいる
周囲の音や人の動きが刺激になりやすい人では、個室の方が落ち着いて過ごせる場合があります。
自宅で使っていた家具や写真などを置き、自分の部屋として分かりやすくすることで、生活環境になじみやすくなることもあります。
一人になることで不安が強くなる人もいる
一方で、個室で一人になると不安が強くなり、頻繁に部屋から出たり、職員を探したりする人もいます。
認知症がある場合は、居室形式だけで判断せず、施設へ本人の普段の様子や不安になりやすい場面を伝え、どの環境が適しているか相談してください。
認知症のある人を一律に個室・多床室へ当てはめない
認知症の状態は一人ひとり異なります。「認知症なら個室が安心」「人の気配が必要だから多床室」と単純に判断せず、本人の反応を見ながら選ぶことが大切です。
ユニット型個室と従来型個室の違いも確認する
特養などでは「ユニット型個室」と「従来型個室」という名称を見かけることがあります。どちらも個室ですが、生活単位の考え方が異なります。
ユニット型個室は少人数単位の共同生活を重視する
ユニット型では、個室と共同生活室を一つの生活単位として、少人数の入居者が生活します。
個人のプライバシーを確保しながら、共有スペースで食事や交流ができるよう設計されています。居室だけでなく、ユニット全体の雰囲気や職員との距離感も確認したいポイントです。
従来型個室は個室でもユニット単位とは限らない
従来型個室も1人で使う居室ですが、ユニット型のように少人数単位の共同生活を前提とした設計ではありません。
「個室」という言葉だけでは施設内の生活スタイルまで分からないため、食事場所、職員配置、日中の過ごし方なども合わせて確認してください。
個室・多床室を選ぶときの確認ポイント
01
毎月の総費用を比較する
まず、本人の所得区分や要介護度を踏まえて、個室と多床室それぞれの月額総費用を確認します。
介護保険施設では負担限度額認定の対象になるか、有料老人ホームでは家賃以外にどの費用が加わるかまで確認してください。
02
睡眠と生活音への敏感さを考える
本人がテレビの音、いびき、夜間の人の出入りなどを気にするタイプかを考えます。
自宅でも物音で目が覚めやすい人は、多床室での生活が負担になる可能性があります。可能であれば実際の居室まで見学してください。
03
一人で過ごすことを好むか、人の気配を好むか
本人が一人の時間を大切にするのか、人と話したり同じ空間で過ごしたりすることを好むのかも重要です。
家族の希望だけで「個室の方が快適」と決めるのではなく、本人がこれまでどのような生活をしてきたかを考えます。
04
面会時にどのように過ごしたいか
家族と居室でゆっくり話したい場合は、個室の方がプライバシーを確保しやすくなります。
多床室では居室での面会に制限があり、共用スペースを利用する施設もあります。面会方法や利用できる場所を確認しておきましょう。
05
居室変更の可能性と追加費用を確認する
入居時は多床室でも、本人の状態変化や感染症対応などによって個室へ移る場合があります。反対に、個室から別の居室へ移動する可能性もあります。
居室変更がどのような条件で行われるのか、料金はどう変わるのかを、契約前に重要事項説明書などで確認してください。
見学では「部屋」だけでなく一日の生活を見る
個室か多床室かを決めるときは、居室だけを見て判断しないことが重要です。
見学時に確認したいこと
- 居室の広さと収納
- ベッド周辺のプライバシー
- トイレ・洗面所までの距離
- 廊下や隣室からの生活音
- 夜間の照明・巡回方法
- 同室者がいる場合の生活ルール
- 日中に居室で過ごす時間
- 共用スペースでの過ごし方
- 面会できる場所
- 居室変更の条件と料金
日中の多くを食堂やリビングで過ごす施設であれば、居室は主に睡眠と休息の場になる場合があります。一方、居室で過ごす時間が長い施設では、居室環境の影響がより大きくなります。
本人の一日の生活を想像し、「この部屋で眠れるか」だけでなく「この施設で毎日どのように過ごすか」を見て判断しましょう。
まとめ|個室か多床室かは費用と本人の暮らしやすさで選ぶ
老人ホームの個室と多床室では、費用、プライバシー、生活音、人との距離感などに違いがあります。
個室は自分の空間を確保しやすく、睡眠や面会も自分のペースで行いやすい一方、居住費が高くなる傾向があります。多床室は費用を抑えやすい反面、同室者の生活音やプライバシーへの配慮が必要です。
介護保険施設では、居室区分によって居住費の基準や負担限度額が異なります。有料老人ホームでは、居室料金は施設ごとの契約で決まるため、実際の料金を個別に確認する必要があります。
どちらが良いかは、安さや個室という名称だけで決めず、本人の性格、睡眠、認知症の状態、人との距離感、毎月支払える総費用を合わせて判断してください。