老人ホーム入居後の自宅は売る・貸す・残すのどれがよい?

親が老人ホームへ入居すると、それまで住んでいた自宅を「売る」「貸す」「そのまま残す」のどれにするか悩むことがあります。

どれが一番よいかは、本人が自宅へ戻る可能性、施設費の負担、自宅の管理状態、家族の手間、将来の資産活用によって変わります。

まず結論|「戻る可能性」と「維持できるか」で3択を決める

老人ホーム入居後の自宅は、本人が戻る可能性が高く、維持費を負担できるなら「残す」、戻る可能性が低く、家賃収入を得ながら保有したいなら「貸す」、長期的に戻る見込みが低く、施設費の資金確保や管理負担の軽減を優先するなら「売る」が候補になります。ただし、本人の意思や名義、判断能力、税金、賃貸管理の負担もあるため、費用面だけで決めないことが重要です。

老人ホーム入居後の自宅は3つの選択肢に分けて考える

自宅をどうするか考えるときは、「空き家にするか売るか」の二択にしないことが大切です。

01

自宅を残すと戻る選択肢を維持できる

本人が自宅へ戻る可能性がある場合や、家族が将来利用する予定がある場合に選びやすい方法です。

一方で、固定資産税、保険、管理、修繕などの費用が続きます。

02

自宅を貸すと家賃収入を得られる可能性がある

自宅を保有しながら家賃収入を得る方法です。

施設費の補助になる可能性がありますが、賃貸管理、修繕、入居者対応、空室リスクなども考える必要があります。

03

自宅を売ると施設費へ使える資金を確保しやすい

自宅を現金化し、施設費や今後の生活費へ充てる方法です。

管理負担を減らせる一方、一度売却すると本人が元の自宅へ戻る選択肢は失われます。

まず本人が自宅へ戻る可能性を考える

3つの選択肢を決めるうえで最初に考えたいのが、自宅復帰の可能性です。

入居直後は結論を急がない

老人ホームへ入ったばかりの時期は、本人が施設生活に慣れるか、体調がどう変わるか分からないことがあります。

短期間で自宅復帰の可能性があるなら、すぐに売却・賃貸まで進めず、一定期間様子を見る方法もあります。

医療・介護状態から現実的に判断する

本人が「家に帰りたい」と希望していても、実際に在宅生活へ戻れるかは別の問題です。

主治医、ケアマネジャー、施設職員などから、必要な介護や医療の状況を聞き、現実的な復帰可能性を確認してください。

POINT

本人の「帰りたい」という気持ちと、実際に在宅生活へ戻れる条件は分けて考えることが大切です。

自宅を「残す」場合のメリットと注意点

自宅をそのまま残す方法は、本人の選択肢を維持できる点が大きなメリットです。

本人が戻れる場所を残せる

施設生活が合わなかった場合や、体調が改善して在宅生活を再検討したい場合、自宅が残っていれば戻る選択肢があります。

本人にとって心理的な安心につながる場合もあります。

家族が将来使える可能性がある

家族が住む予定がある、相続後も保有したいなどの理由がある場合は、売却を急がない選択もあります。

ただし、本人の財産である以上、本人の意思を優先し、家族都合だけで保有を決めないことが重要です。

維持費がかかり続ける

固定資産税、火災保険、庭や建物の管理、修繕などの費用が続きます。

マンションなら管理費・修繕積立金もかかるため、施設費との二重負担が長期化しないか確認してください。

自宅を「貸す」場合のメリットと注意点

自宅を貸す方法は、資産を手放さずに収入を得られる可能性がある点が特徴です。

家賃収入を施設費へ充てられる

立地や建物状態によっては、毎月の家賃収入を施設費の不足分へ充てることができます。

売却と違い、資産そのものを保有し続けられる点もメリットです。

空室・修繕・管理費を考える

毎月必ず家賃が入るとは限りません。空室期間や修繕費、管理会社への委託費などが発生します。

想定家賃をそのまま施設費収入として計算せず、維持費を差し引いた手取りで考えてください。

本人が戻りたいときにすぐ戻れない可能性がある

賃貸中は入居者との契約があるため、本人の希望だけですぐに退去してもらえるとは限りません。

自宅復帰の可能性が残っている場合は、長期賃貸にすることが本当に適切か慎重に判断する必要があります。

自宅を「売る」場合のメリットと注意点

売却は、自宅を現金化して施設費へ充てたい場合に有力な選択肢です。

まとまった資金を確保できる

売却代金を老人ホームの前払金や月額費用、医療費などへ充てることができます。

ただし、売却価格の全額が手元に残るわけではなく、ローン残債、仲介手数料、税金などを差し引いて考える必要があります。

空き家管理から解放されやすい

売却が完了すれば、その後の固定資産税や建物管理、保険など所有者としての負担を整理できます。

遠方の家族が自宅管理を続けている場合は、時間的負担も減らせます。

元の自宅へ戻れなくなる

売却後は、本人が以前の家へ戻ることはできません。

施設入居が長期化する見込みや本人の意思を確認したうえで決めることが大切です。

3つの選択肢を費用面で比較する

感情だけでなく、年間収支に直して比較すると判断しやすくなります。

残す

自宅を残す場合は年間維持費を確認する

固定資産税、保険、管理、修繕、マンションなら管理費・修繕積立金などを合計します。

施設費との二重負担が長期化しても支払えるかまで確認してください。

主な特徴
戻る選択肢を残せる一方、維持費が続く

貸す

自宅を貸す場合は家賃収入から維持費を差し引く

家賃収入から管理委託費、修繕、税金、空室リスクなどを差し引きます。

想定家賃ではなく、実際に施設費へ回せる手取り額で比較することが重要です。

主な特徴
収入を得られる可能性があるが、管理と変動リスクがある

売る

自宅を売る場合は売却後の手取り額を確認する

売却価格からローン残債、仲介手数料、税金などを差し引きます。

売却後は元の自宅へ戻れないため、資金面だけでなく本人の意思も含めて判断します。

主な特徴
まとまった資金を確保しやすく、所有後の維持負担を減らしやすい

「残す」場合は管理できる人がいるか確認する

自宅を残すなら、費用だけでなく実際の管理体制が必要です。

定期的な点検が必要

換気、通水、清掃、雨漏りや設備故障の確認などを行います。

長期間放置すると不具合の発見が遅れ、修繕費が大きくなる可能性があります。

遠方家族なら管理サービスも検討する

家族が頻繁に通えない場合は、空き家管理サービスなどを利用する方法があります。

その費用も年間維持費に加えて、保有を続ける価値があるか判断してください。

「貸す」場合は手取り家賃で考える

賃貸を検討するときは、不動産会社の想定家賃だけで判断しないことが重要です。

管理委託費・修繕費を差し引く

管理会社へ委託する場合の手数料、入退去時の修繕、設備交換などの費用を見込みます。

築年数が古い場合は、賃貸開始前にまとまった修繕が必要になることもあります。

賃貸収支には空室期間も見込む

常に入居者がいるとは限りません。

年間12か月すべて家賃が入る前提ではなく、空室期間が出ても施設費を払える資金計画にしておく必要があります。

「売る」場合は売却後の手取り額で考える

売却を検討するときも、査定額だけで判断しないことが大切です。

売却費用を差し引く

仲介手数料、登記関係費用、住宅ローン残債、税金などを確認します。

施設費へ使えるのは、それらを差し引いた後の手取り額です。

税制特例を確認する

元の自宅を売却する場合、一定の要件を満たせば居住用財産の譲渡に関する税制特例を利用できる可能性があります。

適用条件や期限があるため、売却前に税務署や税理士へ確認してください。

本人の名義・判断能力も確認する

自宅を貸す・売るには、所有者本人の意思や契約能力が関係します。

自宅の名義人と共有者を確認する

本人単独名義か、配偶者や子どもとの共有かを確認します。

共有の場合は、他の共有者との調整が必要になります。

本人が契約内容を理解できるか確認する

認知症などで不動産契約の内容を十分に理解することが難しい場合、家族が本人名義の家を自由に売却・賃貸できるわけではありません。

成年後見制度など適切な手続きが必要になる場合があるため、専門家へ確認してください。

売る・貸す・残すを選ぶ判断基準

家族で確認したい項目

  • 本人が自宅へ戻る可能性はあるか
  • 本人は自宅をどうしたいと考えているか
  • 年間の自宅維持費はいくらか
  • 施設費との二重負担を何年続けられるか
  • 家族が定期的に管理できるか
  • 賃貸した場合の手取り家賃はいくらか
  • 空室・修繕費を負担できるか
  • 売却後の手取り額はいくらか
  • 売却資金で施設費を何年補えるか
  • 自宅の名義は誰か
  • 本人は売却・賃貸を理解して意思表示できるか
  • 将来家族が自宅を利用する予定はあるか

判断を急がないほうがよいケース

老人ホーム入居直後など、状況がまだ固まっていない時期は結論を急がないほうがよい場合があります。

本人の施設生活が安定していない

本人が施設生活に適応できるか分からない段階では、自宅復帰や住み替えの可能性も残っています。

少なくとも今後の生活見通しを確認してから、不動産契約を進める方法があります。

家族内で意見が分かれている

一人は売却、一人は保有を希望するなど意見が分かれている場合は、本人の意思と資金計画に戻って整理します。

感情ではなく、年間維持費・手取り家賃・売却手取り額を数字で比べると話し合いやすくなります。

逆に早めに見直したいケース

自宅を残していることで施設費の支払いが苦しくなっている場合は、早めの見直しが必要です。

維持費が本人の資産を大きく減らしている

施設費に加えて固定資産税、管理費、保険、修繕費が続き、預貯金の減少が早い場合があります。

本人が戻る可能性が低いなら、保有を続ける理由を改めて確認してください。

誰も自宅を管理できないなら保有方法を見直す

家族が遠方で、建物の状態を確認できないまま長期間空き家になっている場合は、管理委託や売却などを検討します。

「とりあえず残す」が最も負担の大きい選択になることもあります。

家族会議では3つの数字を並べる

売る・貸す・残すで迷ったときは、少なくとも3つの数字を確認します。

01

残した場合の年間維持費

税金、保険、管理、修繕などを合計します。

施設費と合わせて何年負担できるかを確認します。

02

貸した場合の年間手取り

家賃収入から管理費、修繕、税金、空室分を差し引きます。

実際に施設費へ回せる金額で比較します。

03

売った場合の手取り額

売却価格から残債、手数料、税金などを差し引きます。

その手取りで施設費を何年補えるかを確認します。

まとめ|自宅は「一番お金になる方法」だけで決めない

老人ホーム入居後の自宅は、「売る」「貸す」「残す」のどれが必ず正解というものではありません。

本人が自宅へ戻る可能性、本人の希望、自宅の維持費、賃貸した場合の手取り、売却した場合の手取り、家族の管理負担を比較して判断します。

本人が戻る可能性が高いなら残す選択、保有しながら収入を得たいなら貸す選択、戻る見込みが低く資金化と管理負担軽減を優先するなら売る選択が候補になります。

「どれが一番得か」ではなく、「本人の生活を守りながら、家族が無理なく管理でき、長期の施設費も支えられる方法はどれか」を基準に選ぶことが大切です。

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