老人ホームへ入居すると、毎月の施設費だけでなく、介護保険の自己負担、医療費、日用品、理美容などさまざまな支出が発生します。
「年金だけで足りると思っていたのに、毎月少しずつ貯蓄が減っている」ということも珍しくありません。そこで役立つのが、本人の年金・その他の収入と、施設生活でかかる支出を一枚にまとめた家計表です。
まず結論|「月額料金」ではなく、毎月の収支と貯蓄残高まで家計表で管理する
老人ホームの費用管理では、①本人の年金・その他の収入、②施設の固定費、③介護・医療・日用品などの変動費、④毎月の収支差額、⑤貯蓄残高を一つの家計表で管理します。特に重要なのは、毎月いくら不足しているかと、その不足額を貯蓄で何年補えるかを確認することです。月額料金だけを見るのではなく、半年・1年単位で資金がどう減るかを把握すると、家族援助や住み替えを検討する時期を早めに判断できます。
老人ホームの費用管理に家計表が必要な理由
老人ホームの料金は、パンフレットに掲載された月額利用料だけでは実際の支出を把握できないことがあります。
施設の月額料金以外にも支出がある
介護保険の自己負担、医療費、薬代、日用品、理美容、衣類、通院付き添いなど、本人の状態や生活によって変わる費用があります。
施設の基本料金だけを家計管理の基準にすると、実際には毎月数万円ずつ支出が増えていたということが起こりやすくなります。
貯蓄の減り方を確認できる
年金収入より支出が多い場合、その差額は預貯金などから補うことになります。
毎月の赤字額を把握すれば、「あと何年程度この施設で支払いを続けられるか」を考えやすくなります。
POINT
家計表の目的は節約だけではありません。「現在の施設費を本人の資産でいつまで継続できるか」を把握することが最も重要です。
家計表は5つの項目に分ける
複雑な家計簿を作る必要はありません。老人ホームの費用管理では、まず5つに分ければ十分です。
01
年金など毎月の収入をまとめる
公的年金、企業年金、個人年金、家賃収入など、本人に定期的に入る収入を記録します。
年金が2か月に1回振り込まれる場合でも、月平均に直しておくと支出と比較しやすくなります。
02
家賃・管理費・食費など施設の固定費をまとめる
家賃・居住費、管理費、食費など、毎月ほぼ一定の金額で発生する費用をまとめます。
料金改定があった場合は、その月から家計表も変更してください。
03
介護・医療などの変動費
介護保険自己負担、医療費、薬代、通院費など、月によって変わる費用を記録します。
本人の状態が変化すると増える可能性がある項目です。
04
生活にかかるその他の費用
日用品、理美容、衣類、通信費、嗜好品、レクリエーションなどを記録します。
少額でも毎月続く支出は年間で大きくなるため、固定費とは別に把握しておきます。
05
月末の預貯金残高を記録する
月末時点の普通預金・定期預金など、施設費へ充てられる資産残高を記録します。
毎月の収支と残高を並べることで、資金の減少速度が分かります。
最初に本人の収入を整理する
家計表の最初に、本人に毎月どの程度の収入があるかを確認します。
年金は月平均に直す
公的年金は原則として偶数月に2か月分が支給されるため、施設費と比較するときは1か月あたりの平均額に直しておくと分かりやすくなります。
通帳の入金額を見て、年間でいくら受け取っているかを確認し、12か月で割る方法でも整理できます。
年金以外の定期収入も入れる
企業年金、個人年金、賃貸収入などがある場合は合わせて記載します。
一方、毎年必ず受け取れるとは限らない臨時収入は、月々の生活費を支える基本収入として過度に見込まないほうが安全です。
施設へ毎月支払う固定費を書く
次に、施設へ毎月ほぼ確実に支払う費用を整理します。
家賃・居住費は実際の請求額を記録する
居室の利用料として支払う費用です。
前払金を支払っている場合は、月額家賃が減額されているケースもあるため、実際の請求額を家計表へ記載します。
管理費に含まれる内容を確認する
共用部の維持管理や生活支援などに関する費用として設定されている場合があります。
施設によって管理費に含まれる内容が異なるため、料金表や重要事項説明書で確認してください。
食費は欠食時の扱いも確認する
1日3食を利用した場合の月額と、欠食時の扱いを確認します。
入院や外泊で食事を取らなかった場合に減額されるかも、施設ごとに異なります。
毎月変わる介護・医療費を別欄にする
固定費と変動費を分けると、なぜ支出が増えたのかを把握しやすくなります。
介護保険の自己負担
介護サービスの利用状況や本人の負担割合などにより、毎月の自己負担額が変わることがあります。
請求書を確認し、施設の基本料金とは別に記録してください。
医療費・薬代は月ごとの変動を記録する
定期受診、訪問診療、歯科、薬などの費用を記録します。
入院や検査などで一時的に大きな支出があった月は、通常月と区別して記録すると、普段の生活費を把握しやすくなります。
通院の交通費・付き添い費用も記録する
通院時の交通費や、施設職員による付き添いが有料の場合はその費用も記載します。
医療費そのものだけでなく、受診に伴う周辺費用まで含めると実際の負担に近づきます。
日用品などの「小さな支出」も記録する
老人ホーム費用が予定より増える理由の一つが、日常生活で発生する細かな支出です。
家計表へ入れたい生活費
- ティッシュ・洗面用品などの日用品
- 衣類・下着・靴
- 理美容代
- おむつ等の費用
- 電話・通信費
- 買い物代行費
- レクリエーション・行事費
- 嗜好品・本人の小遣い
- 家族が購入して持参した物品代
家族が立て替えた費用も入れる
家族がドラッグストアや衣料品店で購入し、そのまま本人へ渡している場合も、本人の生活に必要な支出です。
現金払いで記録から漏れやすいため、レシートを残すか、月ごとにまとめて記録してください。
毎月の収支差額を計算する
収入と支出を整理したら、「毎月いくら残るか、またはいくら不足するか」を確認します。
収入から支出を引く
月平均の収入から、固定費・介護医療費・その他の生活費を引きます。
結果がマイナスなら、その金額が毎月預貯金から減っていく基本的な不足額です。
赤字が小さくても年間では大きくなる
月2万円の不足でも年間では24万円、月5万円なら年間60万円の不足になります。
月単位だけでは負担感が分かりにくいため、年間の赤字額も必ず確認してください。
貯蓄が何年持つかを計算する
家計表で最も重要なのが、現在の預貯金で何年生活できるかを見ることです。
「使える貯蓄」を確認する
預貯金すべてを施設費に使えるとは限りません。
医療費、急な入院、葬送など今後必要になる可能性のある費用をある程度残したうえで、施設費に充てられる資金を考えます。
毎月の不足額で割る
たとえば施設費に充てられる貯蓄が600万円あり、毎月5万円不足する場合、単純計算では120か月分です。
ただし、施設料金、医療費、介護費などが今後変わる可能性があるため、この年数を「必ず持つ期間」とは考えず、現時点の目安として利用してください。
預貯金がなくなる直前まで同じ施設に住み続ける計画にしない
資金が底をついてから住み替え先を探すと、選択肢が限られることがあります。家計表で資金減少を確認し、数年先に不足が見込まれる段階で、制度利用や費用の低い施設への住み替えを検討できるようにしてください。
家計表は「通常月」と「特別支出」を分ける
毎月の生活費を把握するには、一時的な大きな支出と普段の支出を分けると見やすくなります。
通常月の支出を把握する
施設費、介護保険自己負担、通常の医療費、日用品など、毎月発生する費用を基準にします。
この金額が本人の年金でどの程度賄えているかが、長期的な資金計画の基本です。
特別支出は別欄にする
入院、眼鏡・補聴器の購入、季節衣料、大きな家電購入など、一時的な費用は別欄へ記録します。
年間でどの程度の特別支出があったかを把握しておくと、翌年の予算にも反映できます。
家計表は毎月完璧につけなくてもよい
細かい家計簿を毎日つけようとすると、管理する家族の負担が増えます。
月1回の確認でも役立つ
施設からの請求書、通帳、医療費の領収書、家族の立替費用を月末にまとめて確認する方法でも十分です。
重要なのは、支出を1円単位で合わせることより、毎月の赤字額と預貯金残高の変化を継続して確認することです。
3か月平均を見ると変化が分かりやすい
医療費などで月ごとの支出が大きく変わる場合は、3か月程度の平均を見ます。
一時的な出費に振り回されず、「最近の平均支出が上がっているか」を確認できます。
家族が管理する場合は記録を共有する
本人の預貯金を子どもなどが管理する場合は、家計表を一人だけの情報にしないことも大切です。
本人のお金と家族のお金を分ける
施設費や本人の日用品を家族が立て替えた場合でも、本人の支出と家族自身の生活費を混ぜないようにします。
立替額や返金を記録しておくと、後から家族間で確認しやすくなります。
兄弟姉妹で定期的に共有する
本人の年金、施設費、預貯金残高などを定期的に共有すると、「そんなに貯蓄が減っているとは知らなかった」という認識違いを防ぎやすくなります。
特に将来、家族援助が必要になる可能性がある場合は、早い段階で状況を共有しておくことが重要です。
家計表を見直すタイミング
一度作った家計表をそのまま使い続けるのではなく、本人の状態や料金が変わったときに見直します。
01
介護度や介護サービスが変わったとき
介護保険サービスの利用量や自己負担額が変わることがあります。
新しい請求額を確認し、月額予算を修正します。
02
入院・通院が増えたとき
医療費だけでなく、付き添い・交通費などが増えることがあります。
一時的な変化なのか今後も続くのかを確認してください。
03
施設料金が改定されたとき
食費、管理費などが値上げされれば、毎月の不足額も変わります。
年間ではどの程度負担増になるかまで計算します。
04
預貯金が一定額を下回ったとき
たとえば「残高が500万円を下回ったら次の施設を検討する」など、家族で見直し基準を決めておく方法があります。
資金がほぼなくなってから動くのではなく、選択肢を比較できる余裕がある段階で見直します。
家計表に入れておきたい基本項目
毎月確認する項目
- 年金などの月平均収入
- 施設の家賃・居住費
- 管理費
- 食費
- 介護保険自己負担
- 医療費・薬代
- 日用品・理美容・衣類
- 通院・追加サービス費
- 家族が立て替えた費用
- 月の支出合計
- 月の収支差額
- 月末の預貯金残高
- 年間の赤字見込み
家計表から分かる「見直しのサイン」
家計表は記録するだけでなく、今後の対応を判断する材料として使います。
毎月の赤字額が増えている
施設料金、医療費、介護費などの増加によって、入居時より赤字が拡大している場合があります。
支出の内訳を確認し、利用できる負担軽減制度や不要な追加サービスがないか確認します。
貯蓄の減少が想定より早い
入居時に10年程度持つ計画だったのに、数年で資産が大きく減っている場合は早めに見直しが必要です。
今後の施設費を再計算し、必要なら家族援助や住み替えの検討を始めます。
家族の立替額が増えている
家族が本人の日用品や医療費を負担しているうちに、実質的な援助額が大きくなっていることがあります。
本人の家計表へ立替分も記録し、誰がどの程度負担しているかを見えるようにしてください。
まとめ|老人ホームの家計表は「貯蓄が何年持つか」を見るために作る
老人ホームの費用を管理するときは、施設の月額料金だけを見るのではなく、本人の年金・預貯金と、実際の生活で発生する支出をまとめて確認することが大切です。
家計表には、毎月の収入、施設の固定費、介護・医療費、日用品などの変動費、月の収支差額、預貯金残高を記録します。
細かな支出を完璧に合わせることより、「毎月いくら不足し、年間でいくら貯蓄が減っているか」を継続して確認することが重要です。
老人ホームの費用管理では、「今月払えたか」ではなく、「この支出を続けたら本人の貯蓄が何年持つか」を家族全員が把握できる家計表を作ることが、長期的な資金計画の基本です。