「老人ホーム」と「高齢者向け住宅」は、どちらも高齢者の住まいとして使われる言葉ですが、制度上は同じものではありません。
特に分かりにくいのが介護サービスの違いです。介護付き有料老人ホームのように施設の仕組みの中で介護を受ける住まいもあれば、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のように、必要な介護を外部サービスから利用することを基本とする住まいもあります。
まず結論|「老人ホームか住宅か」より介護サービスの受け方を確認する
老人ホームと高齢者向け住宅の違いは、名称だけでは判断できません。介護付き有料老人ホームは施設から介護サービスを受けることが基本ですが、住宅型有料老人ホームやサ高住では、訪問介護など外部の介護サービスを利用する形が一般的です。施設を選ぶときは、「介護が付いているか」ではなく、誰が・どの仕組みで・どこまで介護を提供するのかを確認することが重要です。
「老人ホーム」と「高齢者向け住宅」は何が違うのか
「老人ホーム」は、高齢者が入居して生活しながら、食事や介護、生活支援などを受ける施設を指す言葉として広く使われています。制度上は、特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームなど、それぞれ異なる根拠法や役割を持つ施設があります。
一方、「高齢者向け住宅」は、高齢者が暮らしやすい設備やサービスを備えた「住まい」としての性格が強いものです。代表例がサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。
名称だけでは介護の手厚さは判断できない
「老人ホーム」と書かれていれば介護が手厚く、「住宅」と書かれていれば介護が少ない、と一律に判断することはできません。
たとえば、住宅型有料老人ホームでも訪問介護や訪問看護と連携し、要介護度の高い人を受け入れている施設があります。反対に、サ高住でも介護サービスの提供方法や受け入れ可能な状態は住宅ごとに異なります。
介護付き有料老人ホームは施設から介護を受けるのが基本
介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホームです。入居者は施設の仕組みの中で、食事、入浴、排せつ、移動などの介護や機能訓練、療養上の支援を受けます。
施設サービス計画に基づいて介護が提供されるため、日常的に介護が必要な人にとって、住まいと介護を一体的に受けやすい点が特徴です。
介護保険費用は要介護度などに応じて算定される
一般的な介護付き有料老人ホームでは、特定施設入居者生活介護の基本報酬に各種加算などが加わり、そのうち所得に応じた1〜3割を本人が負担します。
訪問介護を利用するたびに個別に費用を積み上げる仕組みとは異なります。ただし、介護保険対象外の個別サービスや医療費、日用品などは別料金になる場合があります。
住宅型有料老人ホームは住まいと外部介護サービスを組み合わせる
住宅型有料老人ホームは、住まいと食事、見守り、生活支援などを提供し、介護が必要になった場合は、訪問介護や通所介護など外部の介護保険サービスを利用することを基本とします。
介護付き有料老人ホームのように、ホームそのものが特定施設入居者生活介護として包括的に介護を提供する仕組みではありません。
必要な介護サービスを個別に選ぶ
住宅型では、ケアプランに基づき、必要な介護サービスを組み合わせて利用します。訪問介護、訪問看護、通所介護など、本人の状態に応じてサービスを選びます。
そのため、介護サービスの利用量が増えると自己負担も増える場合があります。月額の家賃や食費だけでなく、介護サービス費を含めた総額で考える必要があります。
住宅型でも介護が必要な人は入居できます
「住宅型=自立した人専用」ではありません。外部の介護サービスを利用しながら生活できる住宅型有料老人ホームも多くあります。ただし、重度化した場合にどこまで住み続けられるかは施設ごとに異なります。
サービス付き高齢者向け住宅は「高齢者向け住宅」
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、老人ホームというよりも、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づいて登録された高齢者向け住宅です。
バリアフリー構造などの住宅基準があり、入居者には安否確認と生活相談サービスを提供することが必須です。
サ高住の基本サービスは安否確認と生活相談
サ高住だからといって、介護サービスが最初から一式付いているわけではありません。制度上の基本サービスは、安否確認と生活相談です。
食事、介護、家事、医療との連携など、その他のサービス内容は住宅によって異なります。介護が必要な場合は、訪問介護など外部サービスを利用する住宅もあります。
サ高住でも特定施設の指定を受けている場合がある
サ高住の中には、特定施設入居者生活介護の指定を受け、介護付き有料老人ホームに近い仕組みで介護を提供する住宅もあります。
そのため、「サ高住なら外部介護だけ」と一律には言えません。候補住宅がどの制度で介護を提供しているのかを個別に確認する必要があります。
老人ホームと高齢者向け住宅を介護の受け方で比較
介護サービスの違いを理解するには、「建物の名称」より「介護を誰から受けるか」を見ると分かりやすくなります。
01
介護付き有料老人ホーム
施設の介護サービスを利用することが基本です。介護が必要な状態でも、施設内で継続的に支援を受けながら生活しやすい仕組みです。
02
住宅型有料老人ホーム
住まいと生活支援を利用しながら、介護が必要な場合は訪問介護など外部サービスを個別に契約します。
03
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
安否確認と生活相談が基本サービスです。介護サービスの提供方法は住宅によって異なり、外部サービスを利用する場合もあれば、特定施設の指定を受けている場合もあります。
契約形態にも違いがある
高齢者向けの住まいを比較するときは、介護だけでなく契約形態も確認します。
有料老人ホームは利用権方式などが中心
有料老人ホームでは、居室と各種サービスを利用する権利を契約する利用権方式などが用いられます。前払金を設定する施設もあれば、月払い方式を採用する施設もあります。
契約終了時の扱いや、入居一時金・前払金の返還条件などは施設によって異なるため、重要事項説明書と入居契約書を確認します。
サ高住は賃貸住宅としての契約が基本
サ高住は高齢者向け住宅であり、賃貸借契約を基本とする住まいが多くあります。家賃、共益費、サービス費、食費などを分けて設定している住宅もあります。
住宅契約と介護サービスの契約が別になることも多いため、毎月の支払いを確認するときは住居費と介護費を分けずに総額で把握します。
費用はどちらが安いのか
老人ホームと高齢者向け住宅のどちらが安いかは、一律には決められません。施設や住宅ごとに家賃、管理費、食費、サービス費、介護費などが異なるためです。
特に、月額表示の範囲が施設ごとに異なるため、掲載されている数字だけを並べても正確な比較にならないことがあります。
01
住居にかかる費用を確認する
家賃、管理費、共益費、サービス費など、名称の異なる費用を整理します。水道光熱費が含まれているかも確認してください。
02
介護サービス費を加えて比較する
住宅型有料老人ホームやサ高住では、外部の訪問介護などを利用すると介護保険の自己負担が発生します。現在の介護度でどの程度サービスが必要かを反映して見積もります。
03
将来介護量が増えた場合も試算する
入居時には介護サービスが少なくても、将来は介助量が増える可能性があります。介護付きと住宅型・サ高住では費用の増え方が異なるため、重度化した場合の見込みも確認します。
介護度が上がっても住み続けられるか確認する
住まいを選ぶときに重要なのが、本人の状態が変化したときの対応です。
高齢者向け住宅の中には、比較的自立度の高い人を中心に受け入れているところもあれば、訪問介護や訪問看護と連携して重度者を受け入れているところもあります。
現在の状態だけでなく退去条件を見る
入居時に問題なく生活できても、認知症の進行、医療処置の増加、夜間の介護量増加などによって継続入居が難しくなることがあります。
「要介護5まで対応」といった表現だけでなく、具体的にどの状態まで対応できるか、どのような場合に退去を求められる可能性があるかを確認してください。
どちらが向いているかは本人の生活と介護量で考える
老人ホームと高齢者向け住宅のどちらが適しているかは、本人の介護量、生活の自由度、予算、将来の見通しによって変わります。
施設内の介護を重視したい場合
- 日常的に介助が必要
- 介護サービスを施設内でまとめて受けたい
- 介護量が多くなった場合も見据えたい
- 介護付き有料老人ホームなどを中心に検討する
住まいと介護を分けて選びたい場合
- 比較的自立した生活を続けたい
- 必要な介護サービスを個別に選びたい
- これまで利用していた在宅サービスを続けたい
- 住宅型有料老人ホームやサ高住などを比較する
見学時に確認したい5つのポイント
施設や住宅の分類が分かっても、実際のサービス内容は事業者ごとに異なります。見学時には次の点を確認します。
01
介護サービスは誰が提供するのか
施設の職員から受けるのか、外部の訪問介護事業所を利用するのかを確認します。併設事業所がある場合も、契約関係や選択の自由を確認してください。
02
夜間の支援体制はどうなっているか
夜間に職員がどのように配置され、緊急時に誰が対応するのかを確認します。介護や医療ニーズがある人ほど重要な項目です。
03
介護度が上がった場合も住み続けられるか
現在の状態だけでなく、認知症や身体状態が変化した場合の対応範囲を確認します。居室変更や住み替えの条件も確認します。
04
毎月の総費用はいくらになるか
家賃、管理費、食費、サービス費、介護保険自己負担、医療費などを合計し、本人の条件で月額見込みを出してもらいます。
特に外部介護サービスを利用する住まいでは、現在の利用量だけでなく、介護量が増えた場合の費用も確認しておくと比較しやすくなります。
05
契約と退去条件を確認する
賃貸借契約なのか利用権方式なのか、退去条件や前払金の返還条件はどうなっているかを確認します。重要事項説明書などの書面で確認することが大切です。
まとめ|介護サービスの提供方法まで確認して選ぶ
老人ホームと高齢者向け住宅は、名称だけで明確に「介護あり」「介護なし」と分けられるものではありません。
介護付き有料老人ホームは施設の仕組みの中で介護を受けることが基本です。住宅型有料老人ホームは外部の介護サービスを利用し、サ高住では安否確認と生活相談が基本サービスで、介護の提供方法は住宅ごとに異なります。
施設を比較するときは、「老人ホームか住宅か」ではなく、介護サービスを誰から受けるのか、介護度が上がっても住み続けられるのか、総費用はいくらになるのかまで確認してください。