介護保険負担限度額認定とは?施設入所時の食費・居住費を抑える制度

特養や老健などへ入所すると、介護保険サービスの自己負担だけでなく、食費や居住費も必要になります。

所得や預貯金が一定の条件を満たす人について、この食費・居住費の負担を軽減する仕組みが「介護保険負担限度額認定」です。

認定されると、本人の所得区分や居室の種類などに応じて、1日あたりの食費・居住費に負担限度額が設定されます。

ただし、すべての老人ホームで利用できる制度ではありません。対象となる施設・所得・預貯金・配偶者の状況を確認し、市区町村へ申請する必要があります。

まず結論|低所得の人が介護保険施設等を利用するときの食費・居住費を軽減する制度

介護保険負担限度額認定は、特養・老健・介護医療院などの介護保険施設や対象となるショートステイを利用する低所得者について、食費・居住費の負担上限を設ける制度です。対象判定では、市町村民税の課税状況、年金収入等、預貯金等、配偶者の状況を確認します。認定には申請が必要で、有料老人ホームや一般的なサ高住の家賃・食費が同じ仕組みで軽減されるわけではありません。

介護保険負担限度額認定とは

介護保険施設では、介護サービス費の自己負担とは別に、食費・居住費を本人が負担します。

低所得者の食費・居住費を軽減する「補足給付」

所得の低い人については、食費・居住費に所得段階ごとの「負担限度額」が設定されます。

施設における標準的な費用である基準費用額と負担限度額との差額は、介護保険から「特定入所者介護サービス費」などとして給付されます。

本人に現金が直接支給されるというより、認定された負担限度額を上限として本人が施設へ支払う仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

自動的には適用されない

所得が低ければ自動的に食費・居住費が安くなるわけではありません。

原則として、本人または家族が市区町村へ申請し、「介護保険負担限度額認定証」の交付を受ける必要があります。

POINT

施設の料金表に「第1段階」「第2段階」などが書かれていても、本人がその金額で利用するには負担限度額認定が必要です。入所前に市区町村へ対象になるか確認してください。

負担限度額認定の対象になる施設

この制度は、すべての高齢者向け住宅・老人ホームを対象にするものではありません。

01

特別養護老人ホーム(特養)

施設サービスの食費・居住費について、認定区分に応じた負担限度額が適用されます。

02

介護老人保健施設(老健)

食費・居住費が対象です。多床室については室料徴収の有無などにより居住費の基準が異なる場合があります。

03

介護医療院

長期療養と介護を提供する介護保険施設で、食費・居住費について制度の対象になります。

04

対象となるショートステイ

短期入所生活介護・短期入所療養介護などでも、認定区分に応じた食費・滞在費の負担限度額があります。

有料老人ホーム・サ高住は同じ制度の対象ではない

負担限度額認定について、特に誤解しやすいのが民間の老人ホームです。

介護付き有料老人ホームの家賃・食費には原則適用されない

介護付き有料老人ホームは介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている場合がありますが、特養などの介護保険施設とは料金の仕組みが異なります。

施設が設定する家賃・管理費・食費について、介護保険負担限度額認定を使って同じように軽減する制度ではありません。

住宅型有料老人ホーム・サ高住も別に考える

住宅型有料老人ホームや一般的なサ高住の家賃・食費についても、同じ負担限度額認定が適用されるわけではありません。

施設費を抑えたい場合は、施設独自の料金、自治体独自制度、介護保険サービスの負担軽減などを別に確認する必要があります。

「老人ホームなら負担限度額認定が使える」わけではない

対象になるのは主に介護保険施設と対象のショートステイです。有料老人ホームやサ高住を検討するときは、施設の家賃・食費について別の料金体系として確認してください。

対象になるかは4つの条件を確認する

負担限度額認定では、単に本人の年金が少ないだけではなく、複数の条件を確認します。

01

世帯の市町村民税課税状況

原則として、本人が属する世帯の世帯員全員が市町村民税非課税であることが基本条件です。

02

配偶者の課税状況

世帯分離している配偶者も判定対象になります。

住民票上は別世帯でも、配偶者が市町村民税課税の場合は原則として対象になりません。

03

年金収入等と所得

市町村民税非課税世帯の中でも、年金収入額などにより第2段階、第3段階①、第3段階②に分かれます。

04

預貯金等

預貯金、有価証券などの資産額にも上限があります。配偶者がいる場合は夫婦合算で判定します。

2026年8月以降の利用者負担段階

2026年8月以降の主な所得区分では、第1段階から第3段階②までが補足給付の対象です。

01

第1段階

生活保護受給者、または世帯全員が市町村民税非課税で老齢福祉年金を受給している人などが対象です。

預貯金等
老齢福祉年金受給者は1,000万円以下、夫婦は2,000万円以下
生活保護受給者
預貯金要件なし

02

第2段階

世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入額等と合計所得金額の合計が年82.65万円以下の人です。

預貯金等
650万円以下、夫婦は1,650万円以下

03

第3段階①

世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入額等と合計所得金額の合計が年82.65万円を超え120万円以下の人です。

預貯金等
550万円以下、夫婦は1,550万円以下

04

第3段階②

世帯全員が市町村民税非課税で、年金収入額等と合計所得金額の合計が年120万円を超える人です。

預貯金等
500万円以下、夫婦は1,500万円以下

第2号被保険者(40歳以上64歳以下)には、預貯金要件について異なる取扱いがあります。本人の年齢・所得状況を含め、市区町村で確認してください。

年金収入には非課税年金も含めて判定する

所得区分を考えるとき、「課税されていない年金なら計算しなくてよい」とは限りません。

遺族年金・障害年金も判定に含まれる

負担限度額認定では、所得段階の判定にあたり、課税年金収入だけでなく、遺族年金や障害年金などの非課税年金も含めます。

申請時には、本人が受け取っている年金の種類を正確に確認してください。

所得だけを自己判断しない

税法上の「所得」と、負担限度額認定で使う年金収入等の判定は同じ考え方ではありません。

年金額が境界に近い場合などは、市区町村の介護保険窓口へ確認するのが確実です。

預貯金等には何が含まれる?

負担限度額認定では、所得だけでなく資産も確認します。

預貯金・有価証券等を申告する

申請書では、預貯金、有価証券、その他の資産などを申告します。

複数の金融機関に口座がある場合は、そのすべてを確認する必要があります。

配偶者がいる場合は合算する

本人だけでなく配偶者の資産も判定対象になります。

世帯分離している配偶者や、事実上の婚姻関係にある人が含まれる場合があります。

通帳等の写しを求められる

申請時には預貯金額を確認できる通帳等の写しなどが必要になります。

必要なページや期間は自治体の案内を確認してください。

2026年8月以降の食費の負担限度額

2026年8月から、食費の基準費用額や一部所得段階の負担限度額が見直されています。

01

第1段階

施設入所
1日300円
ショートステイ
1日300円

02

第2段階

施設入所
1日390円
ショートステイ
1日600円

03

第3段階①

施設入所
1日680円
ショートステイ
1日1,030円

04

第3段階②

施設入所
1日1,420円
ショートステイ
1日1,360円

2026年8月以降の食費の基準費用額は1日1,545円です。ただし、実際の施設請求額は施設の設定や利用状況によって異なり、認定者は原則として認定証に記載された負担限度額が上限となります。

居住費の負担限度額は居室タイプで違う

居住費は、本人の所得段階だけでなく、特養・老健・介護医療院の違いや、多床室・従来型個室・ユニット型個室などによって金額が異なります。

多床室は施設種別で異なる

2026年8月以降、特養等の多床室では、第1段階0円、第2段階430円、第3段階①430円、第3段階②530円が1日あたりの負担限度額です。

老健・介護医療院の多床室では、室料を徴収するかどうかでも制度上の区分があります。

従来型個室・ユニット型個室も段階別

例えば特養等の従来型個室は、第1段階380円、第2段階480円、第3段階①880円、第3段階②980円です。

ユニット型個室は、第1・第2段階880円、第3段階①1,370円、第3段階②1,470円が1日あたりの負担限度額です。

居室タイプによって月額差が大きくなるため、施設見学では本人が利用する居室区分を確認してください。

負担限度額は「施設料金そのもの」ではない

負担限度額の数字を見ると、「全国どの施設でも食費・居住費がこの金額になる」と考えやすいですが、少し注意が必要です。

施設が設定する費用と負担限度額を区別する

施設は食費・居住費を設定しており、負担限度額認定を受けた人については、制度上の負担限度額を上限として本人負担を調整します。

実際の施設料金が負担限度額より低い場合など、請求の考え方は施設へ確認してください。

介護保険自己負担は別に必要

負担限度額認定で軽減されるのは主に食費・居住費です。

施設サービスの介護保険自己負担、医療費、理美容、日用品などは別に必要です。

申請はどこでする?

負担限度額認定は、市区町村の介護保険担当窓口へ申請します。

本人の住民票がある市区町村へ確認する

申請先や提出方法は自治体によって案内が異なるため、本人の介護保険を担当する市区町村へ確認します。

郵送申請に対応している自治体もあります。

施設やケアマネジャーにも相談する

入所予定の施設では、負担限度額認定の対象になりそうな人へ申請を案内している場合があります。

分からない場合は、施設相談員、ケアマネジャー、市区町村の介護保険窓口へ相談してください。

申請時に準備するもの

自治体により必要書類の案内は異なりますが、一般的には次のような書類を確認します。

申請前に確認したい書類

  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 本人・配偶者の預貯金等を確認できる資料
  • 通帳の写しなど残高が分かる資料
  • 有価証券などを保有している場合の確認資料
  • 本人確認書類
  • 自治体が指定するその他の書類

預貯金等を複数保有している場合は、対象となるものをすべて申告します。

認定証が届いたら施設へ提示する

申請が認められると、介護保険負担限度額認定証が交付されます。

利用施設へ認定内容を伝える

認定証には、本人の負担段階や食費・居住費の負担限度額などが記載されます。

施設へ提示し、いつの利用分から認定額で精算されるか確認してください。

請求書でも反映を確認する

認定証を提出した後は、最初の請求書で食費・居住費が認定内容どおりになっているか確認します。

申請時期と施設利用時期の関係で精算が後になる場合は、施設や市区町村へ確認します。

認定には有効期間があり更新が必要

一度認定されれば、その後ずっと同じ条件が続くわけではありません。

所得・資産状況を毎年度確認する

負担限度額認定は、年度ごとの所得や預貯金等の状況に基づいて判定されます。

継続して制度を利用する場合は、更新申請が必要になります。

毎年の案内を見落とさない

現在の運用では、負担限度額認定は毎年8月以降の利用に向けて更新されます。

自治体から届く案内を確認し、期限までに必要書類をそろえて申請してください。

世帯分離すれば必ず対象になるわけではない

負担限度額認定について、「配偶者と世帯分離すれば非課税世帯になる」と考えることがあります。

世帯分離した配偶者も確認対象

制度では、世帯を分離している配偶者についても課税状況や預貯金等を確認します。

そのため、住民票だけ別世帯にすれば必ず認定されるという仕組みではありません。

形式だけでなく実際の要件で判定される

課税状況、年金収入、合計所得、預貯金などの条件を総合して判定します。

対象になるかは市区町村へ確認してください。

預貯金が変わったらどうする?

申請後に預貯金等の状況が大きく変わることがあります。

資産要件を超えた場合は自治体へ確認する

相続や資産売却などで預貯金等が増え、認定要件を満たさなくなった場合は、市区町村へ取扱いを確認してください。

虚偽申告はしない

厚生労働省の申請様式では、虚偽申告によって不正に給付を受けた場合、支給額に加えて最大2倍の加算金の返還を求めることがあると注意されています。

本人・配偶者の預貯金等は正確に申告してください。

施設を比較するときは認定後の総費用を見る

負担限度額認定の対象になる人は、施設比較時にも認定を前提とした費用を試算してもらいます。

居室タイプで居住費が変わる

多床室、従来型個室、ユニット型個室では負担限度額が異なります。

同じ施設でも居室タイプによって月額総額が変わるため、本人が入る部屋で試算してください。

軽減後も必要な費用を加える

食費・居住費が軽減されても、介護保険自己負担、医療費、薬代、日用品、理美容などは必要です。

「負担限度額認定を使えば月○万円」と食費・居住費だけで判断せず、すべて含めた月額総額で比較します。

市区町村へ確認するときの質問

そのまま使える確認項目

  • 本人は負担限度額認定の対象になりそうですか
  • 本人の所得区分は第何段階になりますか
  • 配偶者の所得・資産も確認対象ですか
  • 預貯金等には何を含めて申告しますか
  • 申請に必要な通帳の写しはどのページですか
  • 認定はいつの利用分から適用されますか
  • 認定証はいつ頃交付されますか
  • 更新申請はいつ必要ですか
  • 現在検討している施設は制度の対象ですか

施設へ確認するときの質問

入所前に確認したいこと

  • 負担限度額認定証を使えますか
  • 本人の段階では食費はいくらですか
  • この居室タイプの居住費はいくらですか
  • 認定証をいつまでに提出すればよいですか
  • 食費・居住費以外に毎月必要な費用は何ですか
  • 介護保険自己負担を含めた月額総額はいくらですか
  • 日用品・理美容など別料金はいくらですか

まとめ|低所得で介護保険施設を利用するなら入所前に確認する

介護保険負担限度額認定は、特養・老健・介護医療院などを利用する低所得者について、食費・居住費の負担を軽減する制度です。

対象になるかは、市町村民税の課税状況だけでなく、年金収入等、預貯金等、配偶者の課税・資産状況も含めて判定されます。

2026年8月からは、食費の基準費用額や一部の負担限度額が改定されています。制度の金額は改定される可能性があるため、実際の入所時には最新の認定証と市区町村の案内を確認してください。

特に重要なのは、「低所得だから自動的に安くなる」のではなく、市区町村へ申請し、認定を受ける必要があることです。

また、有料老人ホームや一般的なサ高住の家賃・食費には同じ制度がそのまま適用されません。施設種別を確認したうえで、負担限度額認定後の食費・居住費と、介護保険自己負担・医療費・日常生活費を合わせた月額総額で比較してください。

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