老人ホームに入居したあと、年金の減少、医療費の増加、家族からの援助が難しくなるなどの理由で、施設費の支払いが苦しくなることがあります。
「払えなくなったらすぐ退去になるのでは」と不安になりますが、まず必要なのは、滞納するまで黙って抱え込むことではありません。施設へ早めに相談し、利用できる負担軽減制度や、費用を下げられる住まいへの変更も含めて対応を考えます。
まず結論|払えなくなりそうな段階で、施設・市区町村へ早めに相談する
老人ホームの費用が払えなくなりそうなときは、滞納が続いてからではなく、支払いが難しくなると分かった時点で施設へ相談します。そのうえで、毎月何にいくら不足しているかを整理し、高額介護サービス費、介護保険施設の食費・居住費の負担軽減、社会福祉法人による負担軽減など、本人が利用できる制度を市区町村へ確認します。それでも継続が難しい場合は、より費用負担の小さい施設への住み替えや、生活保護を含む生活支援について福祉事務所へ相談します。
老人ホームの費用が払えないと気づいたら最初にすること
最初に行うのは、「あといくら足りないのか」を把握することです。
施設費全体を一つの金額として見るのではなく、家賃・居住費、食費、管理費、介護保険自己負担、医療費、日用品、追加サービスなどに分けます。
毎月の不足額を確認する
本人の年金やその他の収入と、施設で毎月支払っている金額を並べます。
月に1万円不足しているのか、5万円以上不足しているのかで、制度利用だけで対応できるのか、住み替えまで考える必要があるのかが変わります。
一時的な不足か、今後も続く不足かを分ける
臨時の医療費などで一時的に苦しい場合と、預貯金が減って今後も毎月赤字が続く場合では対応が異なります。
今後6か月、1年と同じ施設で支払いを続けられるかまで考えることが重要です。
IMPORTANT
「今月だけ何とか払う」ことを繰り返すより、毎月の収支を出して、いつ資金が不足するかを早めに把握してください。
滞納する前に施設へ相談する
支払いが難しくなったとき、家族だけで対応を決める必要はありません。
施設の相談担当者へ現在の状況を伝える
本人の収入、預貯金の残額、毎月の不足額などを整理し、今後の支払いが難しいことを伝えます。
施設によっては、利用サービスの見直しや別料金プラン、系列施設への住み替えなどを相談できる場合があります。
契約書の支払い・退去条件を確認する
利用料を滞納した場合に、いつ、どのような手続きを経て契約解除となる可能性があるのかを確認します。
「払えない=翌月すぐ退去」と決めつけず、実際の契約条件と施設からの説明を確認してください。
高額介護サービス費を利用できないか確認する
介護保険サービスの自己負担が高額になった場合には、高額介護サービス費の対象になることがあります。
介護サービスの自己負担には所得に応じた上限がある
介護保険サービスの1割・2割・3割の自己負担について、所得区分に応じた月額上限を超えた分が支給される制度です。
市区町村への申請が必要になるため、現在利用できているか、未申請の期間がないかを介護保険窓口へ確認してください。
食費・居住費などは別に考える
高額介護サービス費は、施設で支払うすべての費用が対象になる制度ではありません。
食費、居住費、日常生活費などは別に負担が必要になるため、「高額介護サービス費を使えば施設費全体に上限が付く」と考えないようにしてください。
特養・老健・介護医療院では食費・居住費の負担軽減を確認する
介護保険施設に入所している低所得者には、食費・居住費の負担を軽減する仕組みがあります。
負担限度額認定の対象になるか確認する
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの利用者で、所得や資産等が一定以下の場合、食費・居住費について負担限度額が設定されます。
利用するには市区町村で負担限度額認定を受ける必要があります。
有料老人ホームの家賃が同じように軽減される制度ではない
この負担軽減は、すべての老人ホームの家賃や食費を一律に下げる制度ではありません。
現在入居している施設が対象になるか、施設種別を伝えて市区町村へ確認してください。
社会福祉法人による利用者負担軽減制度も確認する
低所得で生計が困難な人については、一定の要件のもと、社会福祉法人等が介護保険サービスの利用者負担を軽減する制度があります。
利用できる施設・サービスは限られる
すべての有料老人ホームで利用できる制度ではありません。
対象となる社会福祉法人やサービス、本人の所得・資産などの要件があるため、市区町村の介護保険窓口へ相談してください。
特養を利用している場合は確認する価値がある
特別養護老人ホームなど、対象となる介護サービスを社会福祉法人が運営している場合は、制度を実施しているか確認します。
施設側だけでなく、市区町村へ本人が対象になり得るかを確認すると確実です。
施設費の中で減らせる支出がないか確認する
公的制度だけでなく、現在契約しているサービスの中に見直せる費用がないか確認します。
01
追加サービス費を確認する
買い物代行、通院付き添い、洗濯、個別サービスなど、基本料金とは別に費用が発生している項目を確認します。
本人に必要なサービスは残しながら、利用頻度を見直せるものがないか施設と相談します。
02
居室・料金プランを変更できないか聞く
同じ施設内に複数の居室タイプや料金プランがある場合、負担を抑えられる選択肢がないか確認します。
変更時の費用や空室状況も合わせて確認してください。
03
家族が負担している費用も整理する
施設利用料以外にも、衣類、日用品、理美容、通信費などを家族が負担している場合があります。
金額が小さく見えても毎月続く支出なので、本人に本当に必要なものか確認します。
家族からの援助を続けられるか確認する
本人の年金だけで施設費を賄えず、家族が補填しているケースもあります。
家族の援助を前提にしすぎない
家族自身にも住宅費、教育費、老後資金などの生活があります。
無理な援助を長期間続けると、本人だけでなく家族の生活も不安定になるため、「毎月いくらまで、いつまでなら可能か」を具体的に決めてください。
兄弟姉妹で負担する場合は事前に共有する
一人の家族だけが長期間費用を負担すると、不公平感や家族間のトラブルにつながることがあります。
本人の資産状況と必要額を共有し、誰が何を負担できるかを話し合います。
現在の施設を継続できない場合は住み替えを検討する
負担軽減制度や支出の見直しを行っても毎月の赤字が続く場合は、より費用負担の小さい住まいを検討する必要があります。
現在より月額の低い施設を探す
家賃や管理費が低い有料老人ホーム、条件が合えば特別養護老人ホームなど、本人の状態と予算に合う候補を探します。
単に安い施設を探すのではなく、必要な介護・医療を受けられることを絶対条件にしてください。
住み替えには初期費用も必要になる
新しい施設の契約費用、引っ越し、現在の施設の精算などが発生する可能性があります。
月額が下がるかだけでなく、住み替え時に必要な総額を確認してください。
費用だけを理由に必要な介護・医療条件を外さない
月額が安くても、本人に必要な医療処置や認知症対応ができなければ長く生活できません。住み替えでは、「支払えること」と「本人が安全に暮らせること」の両方を満たす候補を探してください。
生活そのものが成り立たない場合は福祉事務所へ相談する
収入や資産、家族からの援助などを活用しても生活を維持することが難しい場合は、生活保護を含む生活支援について相談する方法があります。
生活保護の相談先は福祉事務所
生活保護の相談・申請窓口は、現在いる地域を所管する福祉事務所です。
施設に入居している場合や今後施設への入居が必要な場合も、本人の収入・資産・生活状況を伝えて相談してください。
「家族に相談してからでないと申請できない」と決めつけない
厚生労働省は、同居していない親族に相談してからでなければ生活保護を申請できないというものではないと案内しています。
家族だけで負担を抱え込まず、生活維持が難しい段階では福祉事務所へ状況を伝えることが重要です。
費用が払えないときの相談先
状況別の主な相談先
- 施設料金・支払方法・契約について:現在入居している施設の相談担当者
- 高額介護サービス費:市区町村の介護保険担当窓口
- 食費・居住費の負担限度額認定:市区町村の介護保険担当窓口
- 社会福祉法人による利用者負担軽減:市区町村の介護保険担当窓口
- ケアや施設変更の相談:ケアマネジャー・地域包括支援センター
- 生活保護を含む生活支援:福祉事務所
施設費が払えなくなる前に確認しておきたいこと
施設選びの段階から、将来の支払いを考えておくと急な住み替えを防ぎやすくなります。
毎月の総額を確認する
広告の月額基本料金だけでなく、介護保険自己負担、医療費、日用品、追加サービスを含めて確認します。
本人の現在の条件で、平均的に月いくら必要になるかを施設へ聞いてください。
預貯金が何年持つか計算する
毎月の不足額を預貯金から補う場合、何年間支払いを続けられるかを計算します。
長期入居を前提にすると、入居時には問題なくても数年後に資金不足になることがあります。
介護度が上がった場合の費用も聞く
介護保険自己負担や追加サービスなど、本人の状態が変わることで増える費用があります。
現在の金額だけでなく、将来の費用変化を見込んで施設を選ぶことが大切です。
費用が厳しくなったときに避けたい対応
何も伝えず滞納を続ける
施設側が事情を把握できなければ、支払い計画や住み替えについて相談する機会も失われます。
支払いが難しいと分かった段階で、できるだけ早く連絡してください。
家族が借金をして払い続けることだけを考える
一時的に支払えても、毎月の赤字そのものが解消しなければ問題は続きます。
まず公的制度、費用見直し、住み替えなど、継続可能な方法を検討することが重要です。
費用だけで急いで退去先を決める
安い施設へ移った結果、必要な医療や介護を受けられず、再度住み替えが必要になることがあります。
予算だけでなく、本人に必要な支援条件を維持したまま候補を比較してください。
費用が払えなくなりそうなときの対応手順
01
毎月の不足額と資産残高を確認する
今後いつ頃から支払いが難しくなるのかを把握します。
問題が顕在化する前に動けるほど、選択肢を比較する時間を確保しやすくなります。
02
現在の施設へ相談する
料金プランや利用サービスの見直し、支払いについて相談します。
契約上の滞納・退去条件も確認してください。
03
市区町村へ負担軽減制度を確認する
高額介護サービス費、負担限度額認定など、本人が使える制度を確認します。
制度によって対象となる費用や施設種別が異なるため、現在入居中の施設名・種別を伝えて相談します。
04
必要なら住み替え先を探す
今後も毎月赤字が続く場合は、本人の介護・医療条件を満たしながら費用を下げられる施設を探します。
退去期限が迫ってからではなく、資金に余裕があるうちに比較することが大切です。
05
生活維持が難しい場合は福祉事務所へ相談する
収入や資産などを活用しても生活が成り立たない場合は、生活保護を含めた支援について相談します。
制度の対象になるかを家族だけで判断せず、窓口で本人の状況を確認してください。
まとめ|払えなくなる前の相談が最も重要
老人ホームの費用が払えなくなりそうなときは、滞納してから対応を始めるのではなく、資金不足が見えた段階で相談することが重要です。
まず毎月の不足額を確認し、現在の施設へ相談します。そのうえで、高額介護サービス費や介護保険施設の食費・居住費の負担軽減など、利用できる制度を市区町村へ確認してください。
それでも支払いを継続できない場合は、本人の介護・医療条件を守りながら費用の低い施設への住み替えを検討し、生活そのものが成り立たない場合は福祉事務所へ相談します。
「払えなくなってから退去先を探す」のではなく、「払えなくなりそうだと分かった時点で、施設・市区町村・福祉の相談先につながる」ことが最も重要です。