老人ホームを比較するとき、最初に目に入りやすいのが「月額○万円」という料金表示です。
しかし、月額表示だけを並べても、本当にどちらが安いかは分からないことがあります。施設によって月額料金に含まれる項目が違い、介護費、医療費、通院同行、日用品などが別にかかる場合があるためです。
まず結論|老人ホームの費用比較は「同じ条件・同じ項目」で総額を見る
老人ホームの費用を比較するときは、広告の月額表示だけでなく、家賃・管理費・食費・介護保険自己負担・医療費・日用品・追加サービス・初期費用まで含めて確認します。さらに、現在の介護状態だけでなく、要介護度が上がった場合や長期入院した場合、退去する場合の費用も確認してください。比較のポイントは「安い施設を探すこと」ではなく、「本人が実際に暮らした場合の総支出を同じ条件で比べること」です。
同じ「月額15万円」でも中身は同じではない
老人ホームの料金表示は、施設ごとに含まれる項目が異なります。
家賃・管理費・食費だけの月額表示もある
月額料金として、家賃相当額、管理費、食費などが表示されていても、介護保険の自己負担や医療費は別の場合があります。
そのため、パンフレットの月額料金だけで比較すると、入居後の支払総額を正しく比べられません。
「込み」と「別途」の範囲を確認する
水道光熱費、生活支援、洗濯、通院同行、買い物代行などが基本料金に含まれる施設もあれば、別料金の施設もあります。
同じ金額でも含まれるサービスが違えば、実際の負担は変わります。
POINT
料金比較では「月額いくらか」より先に「その月額に何が含まれているか」をそろえます。
比較表を作るときは、施設ごとに同じ費目を並べてください。
比較1|家賃・管理費・食費を分けて見る
まず、毎月ほぼ固定で発生する費用を分けて確認します。
01
家賃相当額
居室を利用するための費用です。
部屋の広さ、設備、立地、階数などで金額が異なる場合があります。同じ施設内でも居室タイプによって差があるため、比較対象となる部屋をそろえてください。
02
管理費
共用部の維持管理、事務管理などに関わる費用として設定されることがあります。
水道光熱費や生活支援費が含まれるかは施設によって異なるため、名称だけで判断せず内訳を確認します。
03
食費
1日3食分が固定で含まれるのか、利用した食事だけ請求されるのかを確認します。
外泊や入院で食事を取らない場合に減額されるか、特別食や行事食が追加料金になるかも見てください。
比較2|介護保険の自己負担を入れる
介護が必要な人では、施設の基本料金に加えて介護保険サービスの自己負担が発生します。
介護付き有料老人ホームは要介護度などで負担が変わる
介護付き有料老人ホームでは、特定施設入居者生活介護として施設が介護サービスを提供するのが基本です。
本人の要介護度や自己負担割合、各種加算などによって介護費が変わります。
住宅型有料老人ホームはサービス利用量を見る
住宅型有料老人ホームでは、訪問介護など外部の介護保険サービスを必要に応じて利用します。
そのため、同じ基本料金でも、介護サービスの利用量が多い人ほど自己負担が増える可能性があります。
現在だけでなく将来の介護量も考える
入居時は介護量が少なくても、数年後に介助が増えることがあります。
「現在の介護費」だけでなく、「要介護度やサービス量が増えたらどの費用が変わるか」を確認してください。
比較3|医療費・薬代を別枠で考える
医療費は、老人ホームの月額料金に含まれないことが一般的です。
訪問診療でも医療費は別
施設に医師が定期訪問する場合でも、診察、処方薬、検査などについて医療保険の自己負担が発生します。
「訪問診療あり」という説明を「医療費込み」と受け取らないようにしてください。
通院の多い人は交通・同行費も見る
専門外来や透析などで外部の医療機関へ通う人は、診療費のほか、交通費や職員の通院同行費がかかることがあります。
持病がある場合は、現在の通院回数をもとに比較してください。
比較4|「追加料金」を具体的に確認する
施設の料金差が大きく出やすいのが、基本料金に含まれない追加サービスです。
通院同行・買い物代行
一定範囲までは基本料金内、それを超えると時間単位で課金されるなど、施設独自の料金設定があります。
家族が頻繁に対応できない場合は、利用回数を想定して比較する必要があります。
洗濯・清掃・個別対応
洗濯や居室清掃が基本料金に含まれる施設もあれば、別契約や追加料金になる施設もあります。
何を「標準サービス」として提供しているかを確認してください。
理美容・日用品
訪問理美容、衣類、ティッシュ、歯ブラシなどの日用品は実費になることがあります。
一つひとつは小さな金額でも、毎月積み重なるため、生活費として別枠を設けておくと安心です。
比較5|入居一時金・前払金を月額と一緒に考える
有料老人ホームには、入居時に前払金を支払うプランと、月払い中心のプランが用意されている場合があります。
月額が低い施設ほど初期費用が高い場合がある
一定期間分の家賃相当額などを前払いすることで、毎月の支払いが低く見えることがあります。
「A施設は月額18万円、B施設は月額21万円」といった比較だけでは、総額が逆転する可能性があります。
何年住むとどちらが有利か確認する
前払金と月額料金を合わせ、一定期間暮らした場合の総支払額を比較します。
ただし、実際の入居期間は予測できないため、早期退去時の返還条件も必ず確認してください。
月額が安くても初期費用を含めると安いとは限らない
前払金がある施設では、入居時費用・月額費用・返還条件を一緒に確認してください。
比較6|退院・入院中に続く費用を見る
老人ホーム入居後に病院へ入院することもあります。
入院中も家賃・管理費が続く場合がある
居室を確保している間は、本人が施設にいなくても家賃相当額や管理費などが発生する場合があります。
一方、食費などは利用しなければ減額される場合があります。
病院費との二重負担を考える
入院中は病院側でも医療費や食事に関する負担などが発生します。
施設側の固定費と病院側の費用が重なる可能性があるため、長期入院時の扱いを契約前に確認してください。
比較7|退去時にかかる費用も確認する
施設費用の比較は、入居中だけでなく退去時まで考えるとより正確になります。
原状回復費
通常の使用を超える汚損や破損などについて、原状回復費を求められる場合があります。
どの範囲が本人負担になるのか、契約書で確認してください。
前払金の返還
前払金がある場合は、退去時に未償却分が返還される仕組みがあるか、その計算方法を確認します。
短期間で退去した場合の返還条件は、施設比較で重要な項目です。
退去月の料金計算
退去月の家賃・管理費などが日割りになるのか、1か月分必要なのかも施設によって異なります。
契約解除の通知期限と合わせて確認してください。
安い施設を探す前に「払える上限」を決める
費用比較では、最も安い施設を探すことより、本人が無理なく支払い続けられる範囲を決めることが大切です。
毎月の固定収入を確認する
年金などの収入を確認し、そこから施設費用へ充てられる金額を整理します。
すべての収入を施設費へ使うのではなく、医療費や生活費の余裕も残してください。
預貯金の取り崩しも試算する
毎月不足する金額がある場合は、その不足分を預貯金から何年間補えるかを考えます。
一時点の「払える」ではなく、「数年間続けられる」を基準にしてください。
安さだけで施設の種類を変えない
施設種別によって費用の仕組みは異なりますが、料金だけで選ぶと本人に必要な介護や医療が合わない場合があります。
特養は入居条件を確認する
特別養護老人ホーム(特養)は、原則として新規入所は要介護3以上が対象です。
要介護1・2でも、やむを得ない事情がある場合は特例的に入所対象となることがあります。費用面だけでなく本人が入所条件を満たすか確認してください。
老健は長期居住を第一目的とする施設ではない
介護老人保健施設(老健)は、リハビリ、介護、看護などを提供し、在宅復帰・在宅療養を支援する施設です。
「有料老人ホームより安そうだから長く住む」といった目的だけで比較するのではなく、施設の役割を理解して選ぶ必要があります。
見積もりは「本人の条件」を伝えて出してもらう
料金表を見るだけでなく、本人の状態を施設へ伝えて概算を出してもらうと比較しやすくなります。
伝えたい情報
要介護度、移動・排せつ・食事の介助状況、認知症、医療処置、通院頻度などを伝えます。
本人の状態によって必要な介護サービスや追加対応が変わるためです。
同じ前提で複数施設へ質問する
A施設には「要介護3で通院月2回」と伝え、B施設には要介護度だけを伝えると正しく比較できません。
同じ本人情報、同じ利用条件で見積もりを依頼すると、費用差の理由が分かりやすくなります。
比較するときは「現在・将来・退去時」の3時点で見る
01
現在の費用
今の要介護度・医療状態で入居した場合の毎月の総支出を確認します。
02
将来の費用
介護度が上がる、医療が増える、個別サービスを多く使うなどの場合に、何の費用が増えるかを確認します。
03
退去時の費用
前払金の返還、原状回復、退去月の料金などを確認します。
この3時点をそろえると、月額料金だけでは見えなかった施設ごとの違いが分かります。
老人ホームの費用比較チェックリスト
同じ条件で比較したい項目
- 家賃相当額
- 管理費
- 食費
- 水道光熱費
- 介護保険の自己負担
- 介護保険外サービス
- 医療費・薬代
- 通院同行費・交通費
- 日用品
- 理美容費
- 入居一時金・前払金
- 前払金の返還条件
- 長期入院中に続く費用
- 介護度が上がった場合の費用
- 居室変更時の費用
- 退去月の料金
- 原状回復費の扱い
重要事項説明書・料金表で最終確認する
費用に関する説明は、営業担当者の口頭説明だけで決めないことが重要です。
「別途」「実費」の項目を見る
料金表に「別途」「実費」と書かれている項目は、どのような場合にいくらかかるのか質問してください。
本人が頻繁に利用しそうなサービスであれば、年間の負担にも影響します。
重要事項説明書と入居契約書を照らし合わせる
基本料金、追加サービス、前払金、契約解除、退去時の扱いなどを書面で確認します。
説明内容と書面の記載が違って見える場合は、契約前に確認してください。
まとめ|月額表示ではなく「本人が暮らした場合の総額」で比較する
老人ホームの費用を比較するときは、「月額○万円」という表示だけで判断しないことが大切です。
家賃、管理費、食費に加えて、介護保険自己負担、医療費、日用品、通院同行などの追加費用を含めて考えます。
さらに、入居一時金、長期入院中の費用、介護度が上がった場合、退去時の負担まで確認すると、長期的な比較ができます。
一番安く見える施設ではなく、同じ本人条件で計算したときに、無理なく支払い続けられる施設を選ぶことが重要です。