認知症のある人が施設内を歩き続けたり、外へ出ようとしたりする行動は、一般に「徘徊」と呼ばれることがあります。
ただし、本人にとっては目的や理由がある場合が多く、単に歩くことを止めるのではなく、「どこへ行こうとしているのか」「何を探しているのか」「なぜ今歩くのか」を考えることが重要です。
結論|歩く行動を禁止するのではなく、目的と危険を分けて支援する
施設内を安全に歩けるなら、その行動自体を止める必要がない場合もあります。外へ出る、交通量の多い場所へ向かう、夜間に転倒リスクがあるなど危険があるときは、見守り・環境調整・付き添い・医療評価を組み合わせます。
なぜ歩き続けるのかを考える
帰宅しようとしている
本人の中では、今いる場所が「自宅ではない」と感じ、家へ帰ろうとする場合があります。
仕事や役割へ向かおうとしている
長年出勤していた人が、決まった時間になると玄関へ向かうことがあります。
トイレや自分の部屋を探している
場所が分からず、結果として何度も歩き回る場合があります。
不安や退屈がある
居場所がなく落ち着かない、人の多い共有スペースが苦手などの背景があることもあります。
まず危険の程度を分けて考える
| 状態 | 支援の考え方 |
|---|---|
| 施設内を安全に歩く | 動線を確保し、見守りながら続ける |
| 外へ出ようとする | 目的を確認し、必要に応じ付き添う |
| 道路へ出る危険がある | 安全対策と見守り体制を強める |
| 夜間に頻回に歩く | 睡眠・排せつ・痛み・環境を確認 |
POINT
「歩く=危険」と一括りにしないことが重要です。本人の歩行能力と場所の危険度を分けて評価します。
施設内で安全に歩ける環境を作る
段差・障害物を減らす
廊下に物を置かない、夜間照明を調整するなど、転倒しにくい動線を作ります。
トイレ・居室を分かりやすくする
文字だけでなく、色や写真など本人に分かりやすい目印を使う場合があります。
休める場所を用意する
長時間歩く人が途中で座れる椅子や落ち着ける場所を作ります。
外へ出ようとする場合の対応
最初に目的を聞く
「どこへ行きますか」「何か探していますか」と短く尋ね、本人の意図を確認します。
付き添って外へ出る方法もある
安全に歩ける状態なら、職員付き添いで散歩し、気持ちを切り替えられる場合があります。
家族と外出習慣を共有する
本人が以前よく行っていた場所や、決まった時間の外出習慣を聞くと背景理解に役立ちます。
玄関施錠だけを唯一の対策にしない
安全確保のため出入口管理が必要な場合でも、なぜ外へ出ようとするのかを確認し、本人の移動の自由を必要以上に制限しない支援を検討します。
夜間に歩く場合は睡眠以外の原因も確認する
- トイレへ行きたい
- 痛みがある
- 昼寝が長い
- 室温や照明が合わない
- 薬の影響がある
- 不安で眠れない
睡眠薬だけで対応しない
必要に応じて医師へ相談しますが、昼間の活動、便秘、痛み、生活リズムも確認します。
急に歩き回るようになった場合
普段は落ち着いていた人が突然歩き続ける場合は、体調変化も考えます。
身体疾患を確認する
感染症、脱水、便秘、痛み、薬変更などが影響することがあります。
必要に応じて看護職・主治医へ相談します。
見守り機器はどう使う?
センサー等を活用して離床や移動を把握する施設もあります。
機器があるだけでは安全とは言えない
通知を誰が受け、他の介助中でも対応できるかを確認します。
本人のプライバシーにも配慮する
機器の種類や使用方法に応じて、本人・家族へ説明があるか確認します。
家族が施設へ伝えると役立つ情報
01
外出習慣
昔よく出かけた時間・場所を伝えます。
02
仕事・役割
出勤や買い物など長年の習慣を伝えます。
03
落ち着く方法
散歩、音楽、飲み物など安心につながることを共有します。
04
過去の危険
道に迷った経験、転倒などを伝えます。
歩き回り・外出行動で確認したい7項目
- 本人は何を目的に歩いているか
- 施設内を安全に歩ける環境か
- 外へ出るときの付き添い方法
- 夜間の見守り体制
- 急な変化時に医療へつなぐか
- センサー等の使い方
- 本人の生活歴を支援に活かしているか
まとめ|歩くこと自体を問題にせず、目的と安全を確認する
グループホームで歩き回る人への支援では、行動を止めるだけでなく、本人の目的や不安を確認します。
安全に歩ける環境なら活動として続けられる場合もあり、危険がある場合は見守り、付き添い、環境調整を組み合わせます。
急な行動変化では身体疾患も確認し、本人の自由と安全の両方を考えることが大切です。