介護が必要になったとき、「介護老人保健施設(老健)」と「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」のどちらが合うのか迷うことがあります。
どちらも高齢者が利用する住まい・施設ですが、目的は大きく異なります。
老健は、リハビリや医療・介護を受けながら在宅復帰・在宅療養を支援する介護保険施設です。一方、サ高住は、バリアフリー構造の住まいに安否確認・生活相談を備えた高齢者向け住宅です。
まず結論|老健は「在宅復帰を支える施設」、サ高住は「高齢者向けの住まい」
老健は、病院退院後などにリハビリ・看護・介護を受けながら、自宅などへの復帰を目指す介護保険施設です。サ高住は、高齢者向けの住宅として生活を続ける場所で、必須サービスは安否確認と生活相談です。長期的な住まいを探すならサ高住、在宅復帰に向けて一定期間リハビリや療養支援を受けたいなら老健が候補になりやすくなります。
老健とサ高住の違い
最も大きな違いは、「何のために利用する場所なのか」です。
01
介護老人保健施設(老健)|在宅復帰・在宅療養を支援する
介護老人保健施設(老健)は、要介護者に対して、看護、医学的管理のもとでの介護、機能訓練、必要な医療、日常生活上の支援を提供する介護保険施設です。
制度上の目的は、入所者が自立した生活を送れるよう支援し、自宅などでの生活へ戻ることを目指すことです。
02
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)|高齢者向けの住まい
サ高住は、高齢者住まい法に基づいて登録される高齢者向け住宅です。
一定の居室面積やバリアフリーなどの基準を満たし、すべての入居者に安否確認と生活相談サービスを提供します。
違い1|老健は要介護1〜5が対象、サ高住は住宅ごとに入居条件が異なる
老健は要支援1・2では入所できない
老健の入所対象は、介護保険で要介護1〜5と認定された人です。
要支援1・2の人は、老健の施設サービスの対象にはなりません。
実際の入所では、要介護度だけでなく、病状が安定しているか、施設で必要なリハビリや療養支援を行えるかなどを確認します。
サ高住は比較的自立した人から要介護者まで住宅差が大きい
サ高住は介護保険施設ではなく住宅なので、入居条件は住宅ごとに異なります。
自立して生活できる高齢者を中心に受け入れる住宅もあれば、要介護者が多く、訪問介護や訪問看護との連携を強化している住宅もあります。
「サ高住」という名称だけで、どの程度の介護が必要な人まで暮らせるかは判断できません。
違い2|老健はリハビリが施設の重要な役割
老健の大きな特徴は、在宅復帰を目指してリハビリテーションを提供することです。
医師・リハビリ専門職などが連携して支援する
老健には医師、看護職員、介護職員のほか、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職が配置されます。
入所者の状態に応じてリハビリテーションを行い、歩行、移乗、食事、排せつなど、退所後の生活を意識した機能の維持・改善を支援します。
病院での治療が終わったものの、すぐ自宅へ戻ることに不安がある場合などに、老健が退院後の選択肢になることがあります。
サ高住はリハビリ施設ではない
サ高住は住宅なので、登録制度上、リハビリの提供は必須ではありません。
リハビリを希望する場合は、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、訪問看護など、利用できる外部サービスを確認します。
住宅内で独自の機能訓練や体操を行っている場合もありますが、老健のようにリハビリ機能そのものが施設の制度上の役割になっているわけではありません。
POINT
「リハビリを重視したい」という場合でも、目的を確認します。在宅復帰に向けた集中的な支援を求めるなら老健、住み続けながら外部のリハビリを利用したいならサ高住という違いがあります。
違い3|老健は長期居住を第一目的とした施設ではない
老健については、「3か月で必ず退所しなければならない」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。
一律に3か月で退所する制度ではない
老健では、入所後も本人の心身の状態や家庭環境などを踏まえ、在宅復帰の可能性や今後の生活について検討します。
入所期間が3か月を超えることもあり、すべての人が同じ時期に退所する仕組みではありません。
一方で、老健の制度上の目的は在宅復帰・在宅療養支援なので、特養や高齢者向け住宅のように長期居住そのものを第一目的としているわけではありません。
「老健ならずっと住み続けられる」とも考えない
老健は在宅復帰を支援する施設です。状態が安定し、自宅復帰や別の住まいへの移行が可能と判断された場合は、退所後の生活を検討します。入所時に、退所支援の考え方や今後の見通しを確認してください。
サ高住は住まいとして長期生活を想定する
サ高住は高齢者向け住宅なので、基本的にはその場所で生活を続けることを前提に契約します。
ただし、「サ高住なら介護度が上がっても必ず住み続けられる」という意味ではありません。
必要な介護量や医療処置が増えた場合に、どこまで対応できるかは住宅ごとに異なります。契約前に退去条件を確認する必要があります。
違い4|老健は施設内で介護・看護を受け、サ高住は介護サービスの提供方法が住宅ごとに違う
老健では施設サービスとして介護・看護を提供する
老健では、入所者に必要な介護、看護、リハビリ、医療、食事などを施設サービスとして提供します。
介護保険の「介護保健施設サービス」として、一つの施設内で多職種が連携して支援します。
そのため、外部の訪問介護事業所と個別に契約して毎日の身体介護を組み立てる仕組みとは異なります。
一般的なサ高住では外部介護サービスを個別に利用する
一般的なサ高住では、安否確認と生活相談が住宅側の必須サービスです。
介護が必要な場合は、訪問介護、通所介護、訪問看護などを必要に応じて個別に契約します。
同じ建物や敷地内に介護事業所が併設されている場合もありますが、サ高住に入居しただけで介護保険サービスが自動的に付くわけではありません。
特定施設の指定を受けたサ高住は介護の仕組みが異なる
サ高住の中には「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、住宅側が介護保険サービスを提供する住宅があります。その場合は一般的なサ高住と介護の利用方法が異なるため、個別に指定状況を確認してください。
違い5|医療体制は老健の方が施設内に組み込まれている
老健には医師や看護職員が配置され、医学的管理のもとで必要な医療や介護を行います。
老健には医師の配置基準がある
老健には医師の配置が義務付けられており、看護職員・介護職員などと連携して入所者の健康管理や必要な医療を行います。
病状が比較的安定していても、継続的な医学的管理が必要な人にとって、施設内に医療職がいることは老健の特徴です。
老健でもすべての医療に対応できるわけではない
老健は病院ではありません。
高度な治療や施設では対応できない急変が生じた場合は、医療機関への受診・入院が必要になります。
本人に継続的な医療処置が必要な場合は、処置内容を具体的に伝え、受け入れ可能かを確認します。
サ高住の医療体制は住宅ごとの差が大きい
サ高住の登録基準では、医師や看護師の常時配置は必須ではありません。
訪問診療や訪問看護と積極的に連携している住宅もあれば、比較的自立した人を対象としている住宅もあります。
医療ニーズが高い場合は、訪問診療の頻度、看護職員の配置時間、訪問看護の利用、夜間の緊急対応などを確認します。
違い6|費用の仕組みが異なる
老健は介護保険施設として施設サービス費・居住費・食費などを支払う
老健では、介護保険の施設サービス費について、本人の所得に応じて原則1割、一定以上の所得がある人は2割または3割を自己負担します。
それに加えて、居住費、食費、日常生活費などが必要です。
所得や資産など一定の要件を満たす人は、居住費・食費の負担を軽減する「負担限度額認定」の対象になる場合があります。
サ高住は家賃・共益費・サービス費に介護費などが加わる
サ高住では、家賃、共益費、安否確認・生活相談に関するサービス費などが基本的な住居費になります。
食事を利用する場合は食費、介護サービスを利用する場合は介護保険自己負担、医療を利用すれば医療費などが別に必要です。
そのため、家賃だけを見て老健と比較することはできません。
CHECK
費用を比べるときは、老健では「施設サービス費+居住費+食費+実費」、サ高住では「家賃+共益費+サービス費+食費+介護・医療費」を含めた月額総額を確認します。
老健が候補になりやすい人
老健を検討しやすいケース
- 要介護1〜5である
- 退院後すぐ自宅へ戻ることに不安がある
- 在宅復帰に向けたリハビリを受けたい
- 看護・介護・医学的管理を受けながら生活機能を整えたい
- 退所後の在宅生活や次の住まいを検討する期間が必要
サ高住が候補になりやすい人
サ高住を検討しやすいケース
- 高齢者向けのバリアフリー住宅で長期的に暮らしたい
- 安否確認・生活相談がある住まいを希望する
- 現在必要な介護サービスを個別に組み合わせたい
- 施設より住宅に近い生活を希望する
- 将来の介護・医療体制を確認したうえで住まいを選びたい
老健からサ高住へ移る選択肢もある
老健とサ高住は、必ずどちらか一つを最初から選ぶものとは限りません。
たとえば、病院を退院したあと一度老健へ入所し、リハビリや生活機能の調整を行ったうえで、自宅へ戻ることが難しければサ高住などの住まいへ移ることも考えられます。
老健の退所支援を次の住まい選びにつなげる
老健には在宅復帰・在宅療養支援の役割があるため、退所後の生活場所についても支援相談員などと相談できます。
自宅へ戻るのか、高齢者向け住宅へ移るのか、別の介護施設を利用するのかを、本人の状態や家族の介護力を踏まえて検討します。
サ高住へ移る場合は、老健退所時点で必要な介護や医療を整理し、その住宅で継続できるか確認することが重要です。
比較するときに確認するポイント
01
本人の目的は「リハビリ」か「住まい」か
在宅復帰に向けて身体機能や生活動作を整えたいなら老健、長期的な生活場所を探しているならサ高住が候補になりやすくなります。
02
今後どこで暮らしたいかを確認する
自宅へ戻ることを目指すのか、自宅以外の住まいへ移るのかで選択肢が変わります。
03
必要な介護・医療が継続できるか確認する
サ高住を選ぶ場合は、老健で受けていた介護や医療を退所後も受けられるか、利用する事業所と費用を具体的に確認します。
04
月額総費用を同じ条件で比べる
施設・住宅の基本料金だけでなく、介護保険自己負担、食費、居住費・家賃、医療費、日用品などを含めて比較します。
05
将来状態が変わった場合まで確認する
サ高住では、介護度や医療ニーズが上がったときに住み続けられるか、退去条件と支援体制を確認します。老健では、退所後の生活をどのように支援するかを確認します。
まとめ|在宅復帰を目指すなら老健、長期の住まいならサ高住
老健とサ高住は、見た目にはどちらも高齢者が生活する場所ですが、役割は大きく異なります。
老健は、要介護1〜5の人が看護・介護・リハビリ・必要な医療を受けながら、在宅復帰・在宅療養を目指す介護保険施設です。
サ高住は、安否確認・生活相談を必須サービスとする高齢者向け住宅で、一般的には必要な介護・医療サービスを外部事業所から利用します。
比較するときは、今必要なのが在宅復帰のためのリハビリ・療養支援なのか、それとも長期的に暮らせる住まいなのかを最初に整理してください。