介護施設の費用と年金収入の不足額を計算する方法

介護施設を検討するとき、「年金だけで払えるのか」「毎月いくら不足するのか」を先に計算しておくと、無理のない施設予算を決めやすくなります。

大切なのは、パンフレットの月額料金と年金額をそのまま比べないことです。実際には介護保険の自己負担、医療費、日用品などもあるため、本人の実質的な月支出を出してから不足額を計算します。

まず結論|「月の総支出-月平均年金」で不足額を出し、資産で何年補えるかまで計算する

介護施設の費用と年金収入の不足額は、①年金の年間受取額を12か月で割って月平均収入を出す、②施設の家賃・管理費・食費・介護保険自己負担・医療費・日用品などを合計して月の総支出を出す、③総支出から月平均年金を引く、という順番で計算します。毎月の不足額が分かったら、施設費に使える預貯金をその不足額で割り、何年程度補えるかまで確認することが重要です。

最初に年金の「月平均額」を出す

介護施設の費用と比較するため、まず本人の年金収入を月単位へそろえます。

年間の年金受取額を12か月で割る

年金は毎月同じように振り込まれるわけではないため、通帳や源泉徴収票などで年間の受取額を確認し、12で割ると月平均を出せます。

たとえば年間の年金受取額が180万円なら、月平均は15万円です。

年金以外の定期収入も加える

企業年金、個人年金、家賃収入など、継続的な収入がある場合は月平均へ直して加えます。

一時的な贈与や不定期の収入は、毎月の施設費を支える基本収入としては慎重に扱ってください。

次に施設の「実質月額」を出す

次に、毎月実際に必要になる支出を合計します。

01

家賃・居住費は実際の月額を使う

居室の利用料として毎月支払う費用です。

前払金を支払っている場合は、その後に実際に請求される月額を使って計算します。

02

管理費・食費を月額支出へ加える

管理費や食費は施設の月額表示に含まれている場合があります。

欠食時の減額や料金改定があるかも確認してください。

03

介護保険の自己負担

介護保険サービスを利用する場合、本人の負担割合やサービス内容に応じて自己負担が発生します。

施設の基本料金とは別に請求される場合があるため、見落とさないようにします。

04

医療費・薬代は平均額を加える

訪問診療、外来受診、薬代などの平均月額を入れます。

月ごとの差が大きい場合は、直近3か月から6か月の平均を使うと現実的です。

05

日用品・追加サービス費

理美容、衣類、日用品、通院付き添い、買い物代行などの費用を見込みます。

小さな金額でも積み重なるため、月平均で一定額を入れておくことが大切です。

POINT

「施設の月額料金」ではなく、「本人が1か月生活するために実際に出ていく総額」を計算に使います。

不足額は「月の総支出-月平均収入」で計算する

収入と支出が同じ月単位になったら、不足額を計算します。

毎月の不足額は総支出から月平均収入を引く

毎月の不足額 = 月の総支出 - 月平均収入です。

総支出が20万円、月平均収入が15万円なら、毎月5万円の不足です。

不足がない場合も余裕額を確認する

総支出が14万円、月平均収入が15万円なら、単純計算では月1万円の余裕があります。

ただし、医療費や料金改定などで支出が増える可能性があるため、余裕額が小さい場合は「年金だけで十分」と断定しないほうが安全です。

年間の不足額に直す

毎月の不足額が分かったら、年間でどの程度資産を取り崩すか確認します。

月の不足額を12倍する

毎月5万円不足するなら、年間では60万円です。

月単位では小さく見えても、長期になると大きな差になります。

5年分・10年分も計算する

年間60万円の不足が続けば、5年で300万円、10年で600万円の取り崩しになります。

施設の値上げや医療費増加を含めなければならないため、これは最低限の目安として考えてください。

預貯金で何年補えるかを計算する

毎月不足する場合は、現在の資産でどの程度補えるかを確認します。

施設費に使える資産額を決める

預貯金のすべてを使うのではなく、急な入院や住み替えに備える予備費を残します。

そのうえで、施設費不足に充てられる金額を出してください。

使える資産を年間不足額で割る

施設費に使える資産が600万円で、年間不足額が60万円なら、単純計算では10年分です。

ただし、料金改定や医療費の増加を考えると、実際には10年より短くなる可能性があります。

資産が0円になるまでの年数を「住める年数」と考えない

最後まで資産を使い切る計画にすると、急な医療費や住み替え費用に対応できません。予備費を残したうえで、余裕を持って何年継続できるかを見てください。

計算例|年金15万円・施設費20万円の場合

実際の計算手順を簡単な例で確認します。

年金15万円・総支出20万円なら月5万円不足する

月平均年金が15万円、施設生活にかかる総支出が20万円なら、毎月の不足額は5万円です。

年間では60万円の不足になります。

預貯金500万円なら何年補えるか

仮に施設費へ使える資産が500万円なら、500万円÷60万円で約8.3年です。

ただし、実際には料金改定や医療費増加があるため、8年以上必ず支払えるという意味ではありません。

前払金がある場合の計算方法

有料老人ホームでは、入居時に前払金を支払うことで月額が下がるプランがあります。

前払金を資産から先に差し引く

入居前に1,000万円の預貯金があり、前払金として300万円支払うなら、残り700万円から長期費用を考えます。

初期費用を支払った後の手元資金で何年持つかを見ることが重要です。

月額差と前払金を合わせて比較する

前払金ありで月額が低くなる場合は、0円プランと何年で総額が逆転するかも確認します。

単純に「月額が安いから得」とせず、初期費用を含めた総支出で比較してください。

年金だけで足りない場合に確認する順番

不足額が大きい場合は、すぐ家族援助を前提にするのではなく、順番に確認します。

01

見落としている収入がないか確認する

企業年金や個人年金など、定期収入をすべて把握します。

一方で、不定期収入を過大に見込まないようにします。

02

利用できる負担軽減制度を確認する

高額介護サービス費や、対象となる介護保険施設の食費・居住費の負担軽減などを市区町村へ確認します。

制度によって対象施設や費用が異なるため、施設種別を伝えて相談してください。

03

施設予算そのものを見直す

毎月大きな不足が続く施設は、本人の資産に合っていない可能性があります。

必要な介護・医療条件を維持しながら、より費用を抑えられる施設を比較してください。

04

家族援助は上限を決める

家族が援助する場合は、毎月いくらまで、何年程度なら続けられるかを決めます。

家族の住宅費や老後資金を圧迫する援助は長期的に継続できません。

介護度が上がった場合も試算する

入居時の費用だけで計算すると、将来の負担増を見落とすことがあります。

介護保険自己負担が増える場合を考える

介護サービスの利用量や要介護度が変わることで、自己負担が増えることがあります。

現在額だけでなく、状態が変わったときの費用について施設へ確認すると安心です。

医療費・通院費も増える可能性がある

加齢や持病の悪化で受診回数が増えれば、医療費や付き添い費用も増えます。

現在の総支出に少し余裕を持たせたケースも試算してください。

料金改定があった場合の計算もしておく

長期入居では、食費や管理費などが改定される可能性があります。

月5,000円増えた場合を確認する

月5,000円の増額でも年間では6万円の負担増です。

5年では30万円になるため、わずかな月額差でも長期では資産寿命に影響します。

複数パターンで試算する

現在額、月5,000円増、月1万円増など、複数のケースで何年持つか計算しておくと安全です。

将来を正確に予測するためではなく、余裕のある予算かを確認するために使います。

計算に入れ忘れやすい費用

月額計算へ入れたい項目

  • 家賃・居住費
  • 管理費
  • 食費
  • 介護保険自己負担
  • 医療費・薬代
  • 日用品
  • 理美容費
  • 衣類・靴
  • 通院交通費
  • 施設職員の付き添い費用
  • 買い物代行等の追加サービス
  • 通信費
  • 家族が立て替えている本人費用

不足額を計算するときに避けたい方法

パンフレットの月額だけで計算する

掲載料金に介護保険自己負担や医療費などが含まれていないことがあります。

本人の条件で実際にいくらかかるかを施設へ確認してください。

年金の額面だけを見る

資金計画では、実際に本人が受け取る収入額を基準にします。

通帳や源泉徴収票などで年間受取額を確認し、月平均へ直すと分かりやすくなります。

預貯金を全部使える前提にする

医療、住み替え、葬送など、施設費以外にも将来必要になるお金があります。

一定の予備費を残したうえで、施設費に充てられる資産額を決めてください。

施設比較では「不足額」で並べると分かりやすい

複数施設を比べるとき、月額料金だけでなく本人の年金との差額で比較すると判断しやすくなります。

施設ごとの毎月不足額を出す

A施設は月2万円不足、B施設は月5万円不足など、同じ本人収入を基準に比較します。

月3万円の差でも10年では360万円の差になるため、長期では大きな影響があります。

費用差と介護・医療条件を一緒に見る

安い施設を選べばよいわけではありません。

本人に必要な介護・医療条件を満たしているかを確認したうえで、その条件を満たす施設同士で不足額を比べてください。

まとめ|不足額を出したら「何年続けられるか」まで確認する

介護施設の費用と年金収入の不足額を計算するときは、まず年金などの年間収入を月平均へ直します。

次に、家賃・管理費・食費だけでなく、介護保険自己負担、医療費、日用品、通院などを含めた実質月額を出します。

総支出から月平均収入を引けば毎月の不足額が分かり、その金額を年間へ直せば、預貯金がどの程度減るか見通せます。

「年金だけで足りるか」だけではなく、「毎月いくら不足し、その不足を本人の資産で何年補えるか」まで計算することが、無理のない介護施設選びの基本です。

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