住宅型有料老人ホームを選ぶとき、料金や介護体制だけでなく、「どの契約方式で入居するのか」も重要です。パンフレットや重要事項説明書には、居住の権利形態として「利用権方式」「建物賃貸借方式」「終身建物賃貸借方式」などが記載されています。
契約方式が違うと、居住部分と生活支援サービスの契約関係、退去手続き、死亡時の契約終了の扱いなどが変わります。名称だけで判断せず、契約書で「何を借りる契約なのか」「サービス契約は別か」「いつ・どの条件で終了するのか」を確認することが重要です。
結論|利用権・賃貸借・終身賃貸は「居住権とサービス契約の関係」が違う
厚生労働省の有料老人ホーム表示事項では、利用権方式は、建物賃貸借・終身建物賃貸借以外の契約形態で、居住部分と介護・生活支援等のサービス部分が一体となった契約です。建物賃貸借方式は、一般の賃貸住宅と同様に居住部分の契約と介護等のサービス契約が分かれています。終身建物賃貸借方式は、高齢者住まい法に基づく認可制度で、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する一代限りの賃貸借です。契約前には、退去条件、解約予告、前払金・敷金、死亡時の扱い、残置物処理まで確認してください。
最初に確認する3点
- 居住の権利形態を確認する
- サービス契約が一体か別かを見る
- 退去・死亡時の契約終了と精算を確認する
住宅型有料老人ホームの契約方式は主に3種類
有料老人ホームの居住の権利形態は、主に次の3つです。
| 契約方式 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 利用権方式 | 居住部分と介護・生活支援等のサービス部分が一体 |
| 建物賃貸借方式 | 居住部分の賃貸借とサービス契約が別 |
| 終身建物賃貸借方式 | 認可を受けた終身の賃貸借で、死亡時終了が有効 |
料金の支払方式とは別の話
「利用権方式・賃貸借方式」は居住の権利形態です。一方、「月払い・前払い」は料金の支払方法です。利用権方式でも月払いの場合があり、両者を混同しないことが重要です。
利用権方式とは?
利用権方式は、厚生労働省の表示事項上、建物賃貸借契約や終身建物賃貸借契約以外で、居住部分と介護・生活支援等のサービス部分の契約が一体となっている方式です。
「部屋を借りるだけ」の契約ではない
居室の利用だけでなく、食事、生活支援、健康管理などを含むホームでの生活全体を一体的に契約する形です。
前払金を組み合わせる施設もある
利用権方式では、一定期間分の家賃相当額等を前払金として支払う料金設計が見られます。
ただし、利用権方式だから必ず前払金があるわけではありません。
死亡・退去時の終了条件は契約書で確認する
利用権方式では、契約の終了条件は入居契約書の定めが重要です。
「死亡時」「長期入院時」「本人からの解約」「事業者からの契約解除」がそれぞれどう扱われるか確認してください。
建物賃貸借方式とは?
建物賃貸借方式は、賃貸住宅と同様に居室を借りる契約を結ぶ方式です。
居住契約とサービス契約が別
厚生労働省の表示事項では、建物賃貸借方式は、居住部分と介護等のサービス部分が別々の契約になっている方式とされています。
食事・生活支援を変更できる場合がある
契約構造上、居住契約とは別に生活支援等のサービス契約が設けられます。
ただし、実際にどのサービスを外せるか、変更できるかは各ホームの契約内容によります。
入居者の死亡だけで当然に賃貸借終了とはならない
厚生労働省の表示事項では、建物賃貸借方式について、入居者の死亡をもって契約を終了するという内容は有効にならないとされています。
確認の核心
建物賃貸借方式では、本人死亡後の明け渡し・契約終了・残置物整理がどう進むのかを、本人が元気なうちに契約書で確認しておくことが重要です。
終身建物賃貸借方式とは?
終身建物賃貸借方式は、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく特別な賃貸借契約です。
認可を受けた事業者が利用できる制度
国土交通省によると、終身建物賃貸借は、所定の認可を受けた事業者が締結できる制度です。
本人が生きている限り契約が続く
借家人が生きている限り賃貸借が存続し、本人の死亡時に終了します。
賃借権は原則として相続されない
通常の建物賃貸借とは異なり、一代限りの借家契約として設計されています。
同居者には一定の継続居住制度がある
国土交通省は、一定の同居者について、借家人の死亡を知った日から1か月以内に申し出ることで継続居住できる仕組みを案内しています。
「終身」とは事業者が無条件で一生介護を保証する意味ではない
終身建物賃貸借は居住契約の仕組みです。介護・医療対応や退去条件などのサービス面は別に契約内容を確認する必要があります。
利用権方式と賃貸借方式は何が違う?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 居住とサービス|利用権方式 | 一体契約 |
| 居住とサービス|建物賃貸借方式 | 別契約 |
| 居室の権利|利用権方式 | 契約に基づく利用権 |
| 居室の権利|建物賃貸借方式 | 賃借権 |
| 死亡時|利用権方式 | 契約内容を確認 |
| 死亡時|建物賃貸借方式 | 死亡だけで当然終了とする内容は不可 |
| サービス変更|利用権方式 | 一体契約のため契約内容による |
| サービス変更|建物賃貸借方式 | 居住契約とは別に確認しやすい |
どちらが良いとは一概に言えない
契約方式だけでホームの良し悪しは決まりません。
本人が重視する居住の安定性、料金、サービス内容、退去・死亡時の手続きなどを比較してください。
契約方式と前払金・月払いは別に確認する
契約方式と料金の支払方式は別の項目です。
月払い方式
家賃、管理費、食費等を毎月支払います。
前払い方式
将来の家賃等の全部または一部を前もって支払います。
併用方式
一部を前払いし、残りを月額で支払う方式もあります。
前払金があるなら返還式まで確認する
入居後短期間で退去する場合と、長期間入居した後では、前払金の返還方法が異なることがあります。
敷金は契約方式によってどう確認する?
敷金を設定しているホームでは、入居時の金額だけでなく退去時の精算方法を確認します。
標準指導指針では6か月分以内
厚生労働省の標準指導指針では、有料老人ホームが敷金を受領する場合、6か月分を超えないことが示されています。
原状回復費を除いて返還する
退去時には、原状回復費用を除き敷金を返還する考え方が示されています。
通常損耗との区別を確認する
長期間生活したことによる通常の経年変化と、本人の故意・過失による損傷をどのように区別するか確認してください。
死亡したときの契約はどうなる?
契約方式の違いが特に表れやすいのが死亡時です。
利用権方式
本人死亡時に契約がどう終了するか、入居契約書の条項を確認します。
建物賃貸借方式
通常の建物賃貸借では、本人の死亡だけを理由に当然終了させる契約にはできません。
実際の解約・明け渡しは、相続関係や契約内容を踏まえた手続きが必要になるため、施設へ具体的な流れを確認してください。
終身建物賃貸借方式
本人死亡時に契約終了することが制度上認められた方式です。
居室内の荷物を誰が片付けるか
どの契約方式でも、死亡後の残置物の処理、明け渡し期限、費用負担を確認しておくことが重要です。
長期入院したら契約はどうなる?
入院が長引いた場合の扱いも、契約方式とホームの契約条項によって異なります。
入院中も家賃・管理費がかかる場合がある
居室を確保している期間は、家賃や一部管理費等が継続することがあります。
長期入院だけで直ちに退去とは限らない
何日・何か月の入院で契約見直しになるのか、基準を確認します。
退院後に戻れる条件を確認する
退院後の介護量や医療ニーズが増えた場合、同じホームへ戻れるかは施設体制によります。
事業者から契約解除される条件も確認する
契約方式にかかわらず、事業者側からどのような場合に契約解除できるかを確認します。
利用料の長期滞納
一定期間の未払いが続いた場合、契約解除の対象になることがあります。
重大な契約違反
共同生活の秩序を著しく乱す行為など、契約上の解除理由が定められている場合があります。
介護・医療対応が困難になった場合
本人の状態変化を理由に退去を求める条件がある場合、判断手続き、医師意見、本人・家族への説明などを確認してください。
「重度化したら退去」という一文だけで判断しない
どの程度の状態を指すのか、誰が判断するのか、改善・調整の機会があるのか、住み替え支援を行うのかまで確認してください。
契約更新・解約予告期間を確認する
退去を決めたとき、いつまでに申し出ればよいかは重要です。
本人からの解約
1か月前などの解約予告期間を設けている契約があります。
解約日までの料金
居室を早く明け渡しても、契約上の解約日までは家賃等が発生する場合があります。
終身建物賃貸借には独自ルールがある
国土交通省は、終身建物賃貸借について、療養や老人ホームへの入所、親族との同居等を理由とする場合には、借家人からの解約申入れ後1か月で終了する仕組みなどを案内しています。
重要事項説明書のどこを見る?
契約書だけでなく、重要事項説明書でも居住の権利形態を確認します。
01
居住の権利形態
利用権・建物賃貸借・終身建物賃貸借のどれか確認します。
02
利用料金の支払方式
月払い、前払い、併用のどれか確認します。
03
敷金・前払金
金額、算定根拠、返還方法を確認します。
04
契約解除条件
本人側・事業者側の双方の解約条件を確認します。
05
死亡時の契約終了
契約がいつ終了し、料金がいつまで発生するか確認します。
06
残置物・原状回復
居室内の荷物処理、明け渡し期限、費用負担を確認します。
契約前に施設へ聞きたい10項目
契約方式チェックリスト
- 居住の権利形態は利用権・賃貸借・終身賃貸のどれか
- 居住契約と生活支援サービス契約は一体か別か
- 料金は月払い・前払い・併用のどれか
- 敷金・前払金はいくらか
- 本人から退去する場合の予告期間は何日前か
- 事業者から契約解除できる条件は何か
- 長期入院中も何の費用が発生するか
- 本人死亡時に契約はいつ終了するか
- 死亡後の荷物撤去・明け渡し期限はいつか
- 原状回復費はどの範囲まで本人負担か
最終確認
- 居住の権利形態を確認する
- サービス契約が一体か別かを見る
- 退去・死亡時の契約終了と精算を確認する
まとめ|契約方式は「退去・死亡時まで」を見て選ぶ
住宅型有料老人ホームの契約方式には、主に利用権方式、建物賃貸借方式、終身建物賃貸借方式があります。
利用権方式は居住部分と介護・生活支援等のサービス部分が一体となった契約です。建物賃貸借方式は居住契約とサービス契約が別で、本人死亡だけをもって賃貸借を終了させる内容は有効になりません。終身建物賃貸借方式は認可制度に基づく一代限りの賃貸借で、本人死亡時に終了する契約が認められています。
また、契約方式と月払い・前払いなどの料金方式は別の項目です。利用権方式だから前払金が必ずあるわけではなく、賃貸借方式だから月払いだけとも限りません。
契約前には、居住権の名称を見るだけでなく、「本人が退去するとき」「長期入院したとき」「本人が亡くなったとき」に契約と費用がどう動くかを確認してください。最後まで具体的に読める契約であることが、安心して住宅型有料老人ホームを選ぶための重要な条件です。