老人ホームで個人情報はどう扱われる?家族が確認したいこと

老人ホームへ入居すると、氏名や住所だけでなく、病歴、服薬内容、要介護度、家族構成、財産に関する連絡先など、多くの個人情報を施設へ伝えることになります。

介護を安全に行うためには情報共有が必要ですが、「家族なら何でも教えてもらえるのか」「病院へどこまで情報が渡るのか」「写真を広報誌やSNSへ載せてもよいのか」など、気になる点もあります。

まず結論|入居前に「何のために、誰と、どこまで情報を共有するか」を確認する

老人ホームでは、介護・医療・生活支援のために本人の個人情報を取り扱います。厚生労働省・個人情報保護委員会のガイダンスでは、利用目的を特定し、その範囲内で利用すること、個人データを安全に管理すること、第三者へ提供する場合は原則として本人の同意を得ることなどが求められています。家族であっても、本人の情報を無条件にすべて受け取れるとは限りません。入居時には、個人情報利用同意書や重要事項説明書などで、家族・医療機関・介護事業者への情報共有、写真利用、緊急時対応、開示窓口を確認してください。

老人ホームではどんな個人情報を扱う?

施設が扱う情報は、本人確認に必要な基本情報だけではありません。

氏名・住所・生年月日などの基本情報

氏名、住所、生年月日、電話番号、緊急連絡先などは、契約や日常的な連絡に使われます。

介護・医療に関する情報

要介護度、認知症の症状、既往歴、服薬、アレルギー、食事制限、排せつ状況、移動能力などは、安全な介護・医療連携のために必要になります。

家族・身元引受人等の情報

家族の氏名、住所、連絡先、本人との関係なども施設が保有することがあります。

本人の個人情報だけでなく、家族自身の情報も適切に扱われる必要があります。

金銭・契約に関する情報

利用料の支払方法、口座情報、預り金、保証人等に関する情報を施設へ伝える場合があります。

個人情報は何のために使われる?

施設は、個人情報を好きな目的で使えるわけではありません。

利用目的を特定する必要がある

2026年4月改正の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」では、医療・介護関係事業者は個人情報の利用目的をできる限り特定し、その目的の達成に必要な範囲内で取り扱うことが基本とされています。

利用目的を本人へ知らせる

施設内掲示、書面交付、契約時の説明などにより、どのような目的で個人情報を使うか通知・公表されます。

入居時に個人情報利用同意書へ署名する場合は、内容を読まずにまとめて署名せず、共有先や利用目的を確認してください。

家族なら本人の情報を何でも聞ける?

家族であっても、本人の個人情報を無条件にすべて受け取れるとは限りません。

本人の意思が基本になる

本人に判断能力があり、情報提供について意思を示せる場合は、誰へどこまで情報を伝えるか本人の意向を確認することが基本です。

「長男だから」「身元引受人だから」という理由だけで、本人の病状や生活状況を無制限に開示できるとは限りません。

連絡を受ける家族を決めておく

兄弟姉妹が複数いる場合は、施設から誰へ連絡するかをあらかじめ決めておくと混乱を防げます。

緊急連絡先の第1順位、第2順位などを確認し、変更があれば施設へ届けてください。

本人の判断能力が低下している場合

本人が意思を示すことが難しい場合は、本人の利益を守る観点から家族等への情報提供が必要になる場面があります。

ただし、認知症があるだけで本人の意思を一切確認しなくてよいわけではありません。理解できる範囲で本人の意向を確認することが大切です。

POINT

家族への情報提供は「家族だから全部」ではなく、「本人の意思」「情報提供の目的」「必要な範囲」を確認して考えます。

医療機関との情報共有はどうなる?

老人ホームでは、協力医療機関、かかりつけ医、薬局などと情報を共有することがあります。

診療や安全確保に必要な情報を共有する

病歴、服薬内容、アレルギー、日常の体調変化などは、受診や急変時の対応に必要です。

必要な情報が共有されていないと、適切な診療や薬の確認が難しくなることがあります。

情報共有の範囲を確認する

どの医療機関・薬局と情報を共有するのか、入居時の同意書や施設の個人情報保護方針で確認してください。

緊急時は通常と異なる扱いになる場合がある

生命・身体の保護のために緊急に情報提供が必要で、本人の同意を得ることが困難な場合など、個人情報保護法上、本人同意なしで情報提供できる例外があります。

「同意がないと救急搬送先へ何も伝えられない」という仕組みではありません。

ケアマネジャーや介護事業者との情報共有

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでは、外部のケアマネジャー、訪問介護、訪問看護等と連携することがあります。

サービス担当者会議で情報を使うことがある

介護サービスを調整するため、本人の身体状況や生活状況を複数の事業者間で共有することがあります。

介護分野では文書同意が必要な場面がある

厚生労働省等のガイダンスでは、介護関係事業者がサービス担当者会議等で利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、家族の個人情報を用いる場合は家族の同意を、あらかじめ文書で得ることが必要とされています。

共有する情報は必要な範囲にする

介護サービス調整に必要な情報と、本人の私生活上の情報を区別し、目的に必要な範囲で共有することが重要です。

施設内では誰が個人情報を見る?

介護職員だけでなく、看護職員、生活相談員、ケアマネジャー、事務職員など、業務に応じて情報へアクセスすることがあります。

必要な職員が必要な情報を使う

夜勤職員には夜間の転倒リスクや緊急対応情報、看護職員には服薬・医療情報など、業務上必要な情報共有が行われます。

職員なら何でも自由に閲覧できてよいわけではない

個人データについては漏えい、滅失、毀損を防ぐための安全管理措置が求められます。

紙の記録、パソコン、タブレットなどをどのように管理しているかも施設の個人情報保護体制に含まれます。

居室前の名札・食札も個人情報になる

老人ホームでは、居室前や食堂などに本人の氏名が表示されることがあります。

氏名表示の方法を確認する

フルネーム、名字だけ、部屋番号のみなど、施設によって表示方法が異なります。

本人が表示を望まない場合は相談する

安全確認や誤配膳防止等の理由で表示が必要な場合もありますが、本人が不安を感じる場合は施設へ相談してください。

写真・動画を広報誌やSNSへ掲載するとき

施設行事では、入居者の写真や動画を撮影することがあります。

介護記録用と広報利用は目的が違う

本人の状態を記録するための写真と、ホームページ、SNS、パンフレットへ掲載する写真では利用目的が異なります。

「施設内で撮影することに同意したから、SNS掲載にもすべて同意した」とは考えず、利用目的を分けて確認することが大切です。

掲載媒体を確認する

施設内掲示、家族向け広報誌、ホームページ、SNSでは、情報が届く範囲が大きく異なります。

インターネット公開は不特定多数が閲覧できるため、顔写真や氏名の掲載について本人・家族の希望を確認してください。

後から意思が変わった場合の対応を聞く

写真利用への同意を取り下げたい場合に、誰へ申し出ればよいか確認しておくと安心です。

写真利用の同意書は「全部OK・全部NG」だけでない場合がある

施設内掲示は可、ホームページは不可、顔が分からない写真なら可など、希望を個別に確認できる施設もあります。署名前に選択肢を確認してください。

家族がSNSへ写真を投稿するときも注意する

個人情報保護は施設側だけの問題ではありません。

他の入居者が写り込んでいないか確認する

面会時の写真に他の入居者や職員、氏名が書かれた掲示物などが写り込むことがあります。

施設内の撮影ルールを確認する

共用スペースでの撮影を制限している施設もあります。

SNSへ投稿する前に、本人だけでなく周囲の人のプライバシーにも配慮してください。

電話で家族から問い合わせた場合はどうなる?

電話では相手の本人確認が難しいため、施設が簡単に入居者情報を伝えないことがあります。

家族でも本人確認を求められることがある

登録された連絡先からの電話か、氏名・続柄等を確認したうえで情報提供するなど、施設独自の確認方法があります。

連絡担当者を決めておく

複数の親族から別々に電話すると、施設側も本人情報をどこまで伝えてよいか判断しにくくなります。

主な連絡担当者を決め、家族内で情報共有する方法があります。

面会者へ本人の情報を伝える範囲

親族や知人が面会に来たとき、受付で本人の居室番号や在室状況を案内することがあります。

面会を望まない相手がいる場合は事前に伝える

本人が特定の人物との面会を希望しない場合や、安全上の事情がある場合は、事前に施設へ相談してください。

在室していること自体も情報になる

「この施設に入居している」という事実を誰にでも伝えてよいとは限りません。

面会受付の本人確認や案内方法を確認しておくと安心です。

郵便物・宅配便の扱いも確認する

施設では本人宛ての郵便物を職員が受け取ることがあります。

誰が開封するか確認する

施設が受け取っても、本人宛ての郵便物を職員が自由に開封してよいわけではありません。

本人自身が開封するのか、本人の依頼で家族へ転送するのか、重要書類の扱いを確認してください。

請求書等の送付先を整理する

本人が郵便物を管理するのが難しい場合、制度や契約先によっては家族宅等へ送付先変更ができることがあります。

住民票の住所と郵便物の送付先は必ずしも同じ扱いではないため、個別に確認します。

個人情報が漏えいしたら施設はどう対応する?

誤送信、書類紛失、パソコンへの不正アクセスなどで個人データが漏えいする可能性はゼロではありません。

安全管理措置が求められている

厚生労働省・個人情報保護委員会のガイダンスでは、個人データについて漏えい、滅失、毀損を防ぐため、必要かつ適切な安全管理措置を講じることが求められています。

一定の漏えい等では報告・本人通知が必要になる

個人情報保護法では、個人の権利利益を害するおそれが大きい一定の漏えい等が起きた場合、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要になります。

家族が疑問を感じたら窓口へ確認する

誤送付された、他人の書類が届いた、本人情報が第三者へ伝わった可能性があるなどの場合は、施設の個人情報相談窓口へ事実確認を求めてください。

本人は自分の情報を開示してもらえる?

施設が保有する本人の個人データについて、本人から開示等を求められる仕組みがあります。

開示請求の窓口を確認する

施設の個人情報保護方針などに、開示、訂正、利用停止等の申出先が記載されている場合があります。

すべてが無条件に開示されるとは限らない

法令上、本人または第三者の権利利益を害するおそれがある場合など、開示しないことが認められるケースもあります。

具体的な対応は施設へ確認してください。

家族が介護記録を見たいとき

家族が本人の日常生活や介護内容を確認したいことがあります。

本人の情報であることを意識する

介護記録は本人に関する情報です。

家族からの依頼だから当然に全文を渡してもらえると考えず、施設の開示手続きと本人の意向を確認してください。

知りたい内容を具体的に伝える

転倒時の記録、食事摂取状況、服薬状況など、確認したい理由と範囲を具体的に伝えると施設側も対応しやすくなります。

退去後の個人情報はどうなる?

施設を退去したからといって、すべての記録がその日に廃棄されるわけではありません。

法令等に基づく保存期間がある

介護サービスの記録などは、法令や自治体の条例・基準等に基づき一定期間保存する必要があります。

保存期間や廃棄方法について疑問がある場合は施設へ確認してください。

次の施設へ情報提供する場合

転居先の施設や医療機関へ、本人の介護・医療情報を引き継ぐことがあります。

何をどこへ提供するかを確認し、必要な情報が途切れないようにすることも重要です。

入居前に確認したい個人情報チェックリスト

本人・家族が確認したいこと

  • 個人情報の利用目的
  • 個人情報保護方針の掲載場所
  • 家族へ情報提供する範囲
  • 主な連絡先として登録する家族
  • 医療機関との情報共有
  • 薬局との情報共有
  • ケアマネジャー・外部介護事業者との情報共有
  • サービス担当者会議での情報利用
  • 緊急時の情報提供
  • 居室前の氏名表示
  • 広報誌への写真掲載
  • ホームページ・SNSへの写真掲載
  • 面会者への在室情報の案内
  • 電話問い合わせ時の本人確認
  • 郵便物の受取・開封ルール
  • 電子記録の安全管理
  • 個人情報に関する相談窓口
  • 開示・訂正等を求める方法
  • 退去時・退去後の情報管理

個人情報同意書に署名するときの注意点

入居時には多くの書類へ署名するため、個人情報利用同意書を十分読まないまま提出しやすくなります。

利用目的を読む

介護サービス提供、医療機関との連携、行政への届出、請求業務など、何のために使うか確認します。

提供先を読む

家族、医療機関、薬局、ケアマネジャー、外部事業者など、どこへ情報が提供される可能性があるか確認します。

写真利用は別項目か確認する

介護に必要な個人情報利用と、広告・広報の写真利用が同じ同意欄になっていないか確認してください。

不明点は署名前に聞く

「包括的に同意」と書かれていて範囲が分からない場合は、具体的な利用場面を施設へ質問してください。

家族側も情報の扱いに注意する

施設から受け取った介護記録や医療情報を、家族が不用意に他人へ共有すると本人のプライバシーを損なうことがあります。

親族全員へ転送する前に考える

本人が知らせたくない病気や生活上の情報が含まれていることがあります。

グループチャットやSNSへの投稿に注意する

介護記録、診療情報、施設からの書類を写真で共有すると、意図しない相手へ転送される可能性があります。

本人の尊厳を基準にする

家族間の情報共有でも、「本人がその共有をどう感じるか」を考えることが大切です。

疑問があるときの相談先

個人情報の扱いに疑問がある場合は、まず施設へ確認します。

施設の個人情報相談窓口

個人情報保護方針や契約書に、苦情・相談窓口が記載されている場合があります。

運営法人の本部

施設内で解決しない場合は、運営法人の個人情報担当窓口へ相談する方法があります。

個人情報保護委員会等

個人情報保護法に関する一般的な相談については、個人情報保護委員会の相談窓口があります。

介護サービスそのものの苦情は、自治体や国民健康保険団体連合会など別の相談先が適切な場合もあります。

まとめ|本人の安全とプライバシーの両方を守る

老人ホームでは、安全な介護・医療・生活支援のために多くの個人情報を扱います。

2026年4月改正の厚生労働省・個人情報保護委員会ガイダンスでは、利用目的の特定と通知・公表、安全管理、第三者提供時の本人同意、本人からの開示等への対応などが基本とされています。

家族であっても本人情報を無条件にすべて受け取れるわけではなく、本人の意思や利用目的、必要な範囲を確認することが大切です。一方、介護や医療の安全のために必要な情報共有まで止めてしまうと、本人に不利益が生じることがあります。

入居時には、個人情報利用同意書、重要事項説明書、施設の個人情報保護方針を確認し、「誰と何を共有するか」「写真やSNSはどう扱うか」「家族への連絡は誰にするか」を具体的に決めておくと安心です。

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