老人ホームへ入居すると、「選挙の日に投票所まで行けない場合はどうするのか」「施設の中で投票できるのか」「住民票を老人ホームへ移したら、どこで投票するのか」と疑問に思うことがあります。
結論からいうと、老人ホームへ入居していても選挙権がなくなるわけではありません。入居先が都道府県選挙管理委員会から「不在者投票指定施設」の指定を受けていれば、一定の手続きにより施設内で不在者投票ができます。
一方、すべての老人ホームで施設内投票ができるわけではありません。また、住民票を施設所在地へ移した時期によっては、現在の住所地ではなく以前の住所地の選挙人名簿で投票する場合があります。
最初に確認したい3点
- 入居先が不在者投票指定施設か
- 自分がどの市区町村の選挙人名簿に登録されているか
- 施設で投票する場合、いつまでに申し出ればよいか
老人ホーム入居後も投票できる?まず確認すること
できます。
老人ホームへ入居したこと自体を理由に選挙権がなくなることはありません。
ただし、実際に投票するためには、選挙人名簿に登録されている必要があります。
選挙人名簿への登録が必要
選挙人名簿は、市区町村が投票できる人を登録する名簿です。
一般に、満18歳以上の日本国民で、その市区町村に住所を有し、住民票が作成された日または転入届をした日から引き続き3か月以上、住民基本台帳に記録されていることなどが登録要件になります。
老人ホームへ転居して住民票を移した直後は、この「3か月」の住所要件との関係で、どの市区町村の名簿に登録されているか確認することが重要です。
「老人ホームにいるから投票できない」のではなく、「どの選挙人名簿に登録されているか」と「どの投票方法を使うか」を確認します。
老人ホームの中で不在者投票できるのはどんな場合?
入居している老人ホームが、都道府県選挙管理委員会から不在者投票を行う施設として指定されていれば、その施設内で不在者投票を行えます。
すべての老人ホームが対象ではない
老人ホームという名称だけで、自動的に施設内の不在者投票ができるわけではありません。
施設ごとに都道府県選挙管理委員会による指定が必要です。
まず施設の相談員、事務担当者、施設長などへ「この施設は不在者投票指定施設ですか」と確認してください。
指定施設かどうか分からない場合
施設側で分からない場合は、施設所在地の都道府県または市区町村の選挙管理委員会へ確認できます。
都道府県によっては、不在者投票指定施設の一覧や指定関係の案内を公開しています。
指定老人ホームで不在者投票する方法
指定施設での不在者投票は、一般に次の流れで進みます。
選挙があることが分かったら、施設の不在者投票担当者へ早めに伝えます。
施設長(不在者投票管理者)が、本人の選挙人名簿登録地の市区町村選挙管理委員会へ投票用紙等を請求する方法が一般的です。
選挙管理委員会から施設長へ投票用紙や不在者投票用封筒等が交付されます。
公示・告示日の翌日以降、施設長である不在者投票管理者の管理のもとで投票します。
投票済みの投票用紙等を、施設側が選挙人名簿登録地の選挙管理委員会へ送ります。
本人が直接投票用紙を請求することもできる
指定施設では施設長が代理で請求する方法が一般的ですが、本人が自分の選挙人名簿登録地の選挙管理委員会へ直接投票用紙等を請求する方法もあります。
ただし、郵送を伴う手続きでは時間がかかります。
どちらの方法を使う場合でも、選挙期日が近づいてからでは間に合わないことがあるため、早めに施設担当者へ相談してください。
施設内でいつ投票する?
指定施設での不在者投票は、原則として選挙の公示日または告示日の翌日から選挙期日の前日までの間に行われます。
実際の投票日は施設側が調整することがある
制度上の不在者投票期間の中で、施設側が投票日や時間帯を設定して実施することがあります。
「選挙期日の前日までなら、いつでも自由に投票できる」とは限らないため、施設が設定する申出期限と実施日を確認してください。
申出期限は施設へ早めに確認する
施設長が投票用紙を選挙管理委員会へ請求し、受け取ったうえで投票を行うため、準備期間が必要です。
選挙の案内が出たら、「投票希望の締切日はいつですか」と施設へ確認してください。
住民票を老人ホームへ移したらどこで投票する?
住民票を老人ホーム所在地へ移した場合でも、すぐに新住所地の選挙人名簿へ登録されるとは限りません。
新住所地では原則として3か月の住所要件がある
選挙人名簿へ登録されるためには、住民票が作成された日や転入届の日から、引き続き3か月以上その市区町村の住民基本台帳に記録されていることが基本的な要件です。
そのため、老人ホームへ転居した直後に選挙が行われる場合、新住所地の選挙人名簿にはまだ登録されていないことがあります。
以前の住所地で投票できる場合がある
転居時期や選挙の種類によっては、以前の住所地の選挙人名簿に登録された状態で、その住所地の選挙について投票できる場合があります。
ただし、国政選挙、都道府県・市区町村の地方選挙では、転出・転入による扱いが同じとは限りません。
住所を移した直後は、「今の老人ホームの住所で投票できる」と自己判断しないでください。投票案内が届かない場合も含め、自分がどの選挙人名簿に登録されているかを以前の住所地または現在の住所地の選挙管理委員会へ確認してください。
住民票を元の自宅に残している場合は?
選挙人名簿は住民基本台帳を基礎として作られます。
そのため、住民票をどこに置いているかは、選挙人名簿の登録地を判断する重要な情報になります。
投票用紙の請求先は選挙人名簿登録地
老人ホームの指定施設不在者投票を利用する場合も、施設長が投票用紙等を請求する相手は、本人が選挙人名簿に登録されている市区町村の選挙管理委員会です。
施設所在地と選挙人名簿登録地が異なっていても、この制度を利用できる場合があります。
住所届出自体は選挙だけで決めない
住民票の異動には住民基本台帳上のルールがあります。
「以前の地域で投票したいから住民票を移さない」という選挙だけを理由に判断せず、実際の生活の本拠に応じて必要な住所届出を確認してください。
入居先が不在者投票指定施設でない場合はどうする?
指定施設でない場合、その老人ホーム内で「指定施設としての不在者投票」はできません。
ただし、それだけで投票方法がなくなるとは限りません。
投票所や期日前投票所へ行く
本人が外出できる場合は、通常の投票所や期日前投票所で投票する方法があります。
外出方法、送迎、付き添いについては、老人ホーム側の外出ルールや本人の身体状態を確認してください。
滞在地での不在者投票が使える場合
選挙人名簿登録地とは別の市区町村に滞在している場合、必要な手続きを行い、滞在先の市区町村選挙管理委員会で不在者投票できる制度があります。
ただし、施設内で完結する指定施設不在者投票とは手続きが異なります。
一定の条件なら郵便等による不在者投票もある
身体に一定の重度の障害がある人や、介護保険の要介護5の人など、法令上の一定条件を満たす場合は、郵便等による不在者投票制度を利用できる場合があります。
この制度は「老人ホームに入居していること」だけで利用できる制度ではありません。
事前に選挙管理委員会への手続きが必要になるため、対象になる可能性がある場合は早めに本人の選挙人名簿登録地の選挙管理委員会へ相談してください。
投票に支援が必要な場合はどうする?
病気や障害などにより自分で候補者名等を書けない場合には、「代理投票」という制度があります。
代理投票は家族が代わりに書く制度ではない
代理投票では、本人の意思を確認したうえで、法令に基づいて投票事務に従事する職員等が記載を補助します。
家族や友人が「本人の代わりに候補者を選んで投票する」ことはできません。
本人の投票意思が前提
代理投票は、本人が文字を書けない場合に記載を補助する制度です。
本人の意思にかかわらず家族や施設職員が候補者を決める制度ではありません。
投票の秘密も守られます。
必要な支援を早めに伝える
文字を書くことが難しい、視覚障害がある、意思を伝えるのに時間がかかるなど、投票時に支援が必要な場合は、施設の不在者投票担当者や選挙管理委員会へ事前に相談してください。
認知症があると投票できない?
認知症の診断があることだけを理由に、一律に投票できなくなるわけではありません。
重要なのは、本人自身の意思に基づいて投票することです。
家族や施設が投票先を決めてはいけない
本人に代わって家族や施設職員が「この候補者へ投票する」と決めることはできません。
投票時にどのような支援が可能か判断に迷う場合は、施設の不在者投票管理者または選挙管理委員会へ確認してください。
成年被後見人も選挙権がある
成年被後見人であることだけを理由として選挙権を失う制度は現在ありません。
ただし、実際の投票は本人の意思に基づいて行う必要があります。
施設へ届く投票案内状がなくても投票できる?
投票案内状そのものが選挙権を発生させるわけではありません。
投票の可否は、選挙人名簿に登録されているかどうかで判断されます。
案内状が旧住所へ届いている場合
老人ホーム入居後に住所変更や郵便転送の時期が重なると、投票案内状が以前の住所へ届くことがあります。
案内状が見当たらなくても、まず選挙人名簿登録地の選挙管理委員会へ登録状況を確認してください。
施設で不在者投票する場合は施設担当者へ相談する
指定施設で不在者投票を希望する場合は、「案内状が手元にないから投票できない」と判断せず、施設担当者へ申し出てください。
家族は何を手伝える?
家族は、制度確認や施設への相談などを手伝えます。
家族ができる主な支援
- 施設が不在者投票指定施設か確認する
- 投票希望の申出期限を確認する
- どの市区町村の選挙人名簿に登録されているか本人と確認する
- 必要に応じて選挙管理委員会への問い合わせを手伝う
- 投票所へ行く場合の移動方法を施設と相談する
家族ができないこと
本人の代わりに投票先を決めたり、通常の代理投票で家族が投票用紙へ候補者名を記載したりすることはできません。
本人が自分の意思で投票できるよう、制度面・移動面を支援する役割と考えてください。
選挙が近づいたら施設へ確認したいこと
投票方法を確認する
- □ この老人ホームは不在者投票指定施設ですか
- □ 今回の選挙で施設内の不在者投票を実施しますか
- □ 投票希望はいつまでに申し出ますか
- □ 投票用紙の請求は施設がしてくれますか
- □ 自分はどの市区町村の選挙人名簿に登録されていますか
支援方法を確認する
- □ 施設内での投票予定日はいつですか
- □ 文字を書けない場合に代理投票を利用できますか
- □ 点字やその他の支援が必要な場合は誰へ伝えますか
- □ 指定施設でない場合、期日前投票所へ行く支援はありますか
- □ 送迎・付き添いが必要な場合の費用や対応範囲はどうなっていますか
老人ホーム入居後の投票方法を決める手順
住民票を移した直後なら、以前の住所地か現在の住所地かを選挙管理委員会へ確認します。
指定施設なら施設内投票の手続きを確認します。
投票用紙の郵送に時間がかかるため、施設独自の申出期限を確認します。
自筆が難しい、点字が必要などの場合は事前に相談します。
期日前投票、滞在地での不在者投票、条件を満たす場合の郵便等投票を検討します。
まとめ|まず「名簿登録地」と「指定施設か」を確認する
老人ホームへ入居していても、選挙で投票することはできます。
入居先が都道府県選挙管理委員会から不在者投票指定施設として指定されていれば、施設内で不在者投票を行えます。
一般的には、本人が施設へ希望を伝え、施設長が本人の選挙人名簿登録地の選挙管理委員会へ投票用紙を請求し、施設長の管理のもとで本人が投票します。
住民票を老人ホーム所在地へ移した直後は、新住所地での選挙人名簿登録に必要な3か月の住所要件との関係で、以前の住所地で投票する場合があります。選挙の種類や転居時期によって扱いが異なるため、住所変更直後の選挙では選挙管理委員会への確認が重要です。
また、文字を書けない場合には代理投票制度がありますが、家族や施設職員が本人の代わりに投票先を決められるわけではありません。
選挙が近づいたら、「自分はどの選挙人名簿に登録されているか」「施設は不在者投票指定施設か」「施設への申出期限はいつか」の3点から確認してください。
制度確認:本記事は2026年10月21日時点で、地方自治体選挙管理委員会が公開する指定病院・老人ホーム等での不在者投票案内、選挙人名簿の登録要件、代理投票・郵便等による不在者投票等の現行案内を確認して作成しています。実際に投票できる選挙、選挙人名簿登録地、請求期限、施設内投票日などは選挙ごとに変わるため、入居施設と本人の選挙人名簿登録地の市区町村選挙管理委員会へ確認してください。