老人ホームや介護施設を探し始めると、「結局いくら用意すればよいのか」が最も気になる方は多いでしょう。
ただし、老人ホームの費用は施設種別、居室、要介護度、医療の必要性、料金プランなどによって大きく異なります。「老人ホームは月○万円」と一つの金額で考えるより、入居時に必要な費用と、入居後に毎月かかる費用を分けて確認することが大切です。
まず結論|費用は「入居時」と「毎月」に分け、本人条件を入れて総額で確認する
老人ホーム・介護施設の費用は、入居時の前払金・敷金などと、毎月の家賃・管理費・食費・介護保険自己負担・医療費・生活実費などで構成されます。施設種別によって費用の仕組みが異なるため、広告の月額料金だけでは比較できません。本人の要介護度、必要な介護・医療、希望する居室を施設へ伝え、「入居時にいくら」「通常月にいくら」「状態が変わったら何が増えるか」まで確認してください。
老人ホームの費用は大きく2種類に分けて考える
最初に、費用を「入居時に必要なお金」と「入居後に毎月必要なお金」に分けます。
01
入居時に必要な費用
有料老人ホームなどでは、料金プランによって前払金が設定されている場合があります。賃貸住宅に近い仕組みの住まいでは、敷金などが必要になることもあります。
一方、前払金を設けず、月払いを中心とする施設もあります。入居時費用がゼロだから総額も安いとは限りません。
02
入居後に毎月かかる費用
家賃相当額、管理費、食費などの基本料金に、介護保険の自己負担、医療費、薬代、日用品、理美容、個別サービスなどが加わります。
毎月必ず同じ金額になるとは限らず、介護量や通院、医療の状況によって変動します。
入居時費用には何が含まれる?
入居時費用は、施設の料金方式によって内容が異なります。
前払金がある場合
有料老人ホームでは、将来の家賃やサービス費用の全部または一部を前払いする料金方式が設けられている場合があります。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、前払金を受け取る場合、その算定根拠を入居契約書等で明示し、入居者へ十分に説明することが示されています。
敷金が必要な場合
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでは、契約内容によって敷金が設定される場合があります。
敷金と前払金は性質が異なるため、名称だけでなく「何のために支払うお金か」「退去時にどのように精算されるか」を確認してください。
入居時費用ゼロでも月額負担を確認する
初期負担を抑えられる料金プランは選択肢になりますが、その分、月々の家賃相当額などが高くなることがあります。
入居時の金額だけでなく、一定期間住んだ場合の総支払額も比較する必要があります。
POINT
「入居金0円」と「費用が安い」は同じ意味ではありません。
初期費用、毎月の固定費、前払金の返還条件を一緒に確認してください。
月額料金には何が含まれる?
老人ホームの月額料金には、主に住まいと生活に関する費用が含まれます。ただし、含まれる項目は施設ごとに違います。
家賃相当額
居室を利用するための費用です。同じ施設でも、居室の広さ、設備、位置などによって料金が異なる場合があります。
管理費
共用部分の維持管理や施設運営などに関する費用として設定されます。
水道光熱費や生活支援サービスの一部が含まれる場合もありますが、別料金の施設もあるため内訳を確認します。
食費
施設で提供される食事の費用です。1日単位や1食単位で計算する施設もあれば、月額で設定される施設もあります。
外泊や入院で食事を取らなかった場合の扱い、特別食や行事食の追加料金も確認しておくと安心です。
月額表示に介護費が含まれているとは限らない
施設の広告に表示される月額利用料と、介護保険サービスの自己負担は分けて考える必要があります。
介護付き有料老人ホームの場合
介護付き有料老人ホームでは、施設が特定施設入居者生活介護として介護サービスを提供するのが基本です。
本人の要介護度、自己負担割合、各種加算などに応じて介護保険の自己負担が発生します。
住宅型有料老人ホームの場合
住宅型有料老人ホームでは、必要に応じて外部の訪問介護などを利用するのが基本です。
介護サービスを多く利用する人ほど、介護保険自己負担が増える可能性があります。
介護保険外サービスにも注意する
買い物代行、長時間の付き添い、個別の生活支援など、介護保険の対象外となるサービスを利用すると自費が発生する場合があります。
料金表では「自費」「実費」「別途」と記載されていることがあるため、具体的な内容を確認してください。
医療費・薬代も別に必要になる
老人ホームへ入居しても、医師の診察や薬が無料になるわけではありません。
訪問診療でも医療費は発生する
施設に医師が訪問して診療する場合も、医療保険上の自己負担が発生します。
診察、検査、処方薬などの費用は本人の病気、治療内容、医療保険の自己負担割合によって変わります。
通院同行費が別にかかる場合もある
施設職員が外部の医療機関へ付き添う場合、同行料金や交通費などが別途必要になることがあります。
家族が通院対応できない場合は、施設の通院支援の範囲と料金を確認しておきましょう。
日用品・理美容などの生活費も予算に入れる
老人ホームでの生活には、施設料金以外にも日常生活の支出があります。
日用品
歯ブラシ、ティッシュ、洗面用品、衣類などが必要です。
施設が用意して請求する場合と、家族が購入して持参する場合があります。
理美容・嗜好品
訪問理美容の利用料、新聞、雑誌、お菓子、飲み物、趣味用品なども本人の生活費になります。
施設料金だけで予算を使い切らず、本人が生活を楽しむためのお金も見込んでください。
施設種別によって費用の仕組みが違う
「老人ホーム」と一括りにすると費用を比べにくいため、施設の種類ごとに仕組みを確認します。
01
介護付き有料老人ホーム
家賃相当額、管理費、食費などの施設費に加え、特定施設入居者生活介護の自己負担、医療費、生活実費などを考えます。
前払金方式と月払い方式を用意している施設もあります。
02
住宅型有料老人ホーム
住まいに関する費用に加え、必要な訪問介護などの外部サービス費を考えます。
基本料金が低く見えても、介護サービス利用量が多い場合は総支出が増えることがあります。
03
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
高齢者向けの賃貸住宅として、家賃、共益費、生活相談・安否確認などの費用を支払うのが基本です。
介護が必要な場合のサービス提供方法は住宅によって異なるため、介護費を別に確認してください。
04
特別養護老人ホーム(特養)
介護保険サービスの自己負担に加え、食費、居住費、日常生活費などを負担します。
新規入所は原則として要介護3以上ですが、要介護1・2でもやむを得ない事情がある場合は特例的に入所対象となることがあります。
05
介護老人保健施設(老健)
介護保険サービスの自己負担、食費、居住費などが必要です。
老健はリハビリ、介護、看護などを提供して在宅復帰・在宅療養を支援する施設で、長期居住を第一目的とする有料老人ホームとは役割が異なります。
06
介護医療院
長期的な医療と介護の両方を必要とする要介護者を対象とする施設です。
介護保険サービスの自己負担、食費、居住費、日常生活費などを考えます。医療ニーズや施設の体制によって実際の負担は異なります。
特養・老健・介護医療院では食費・居住費の軽減制度も確認する
所得や資産が一定以下の人が介護保険施設などを利用する場合、食費・居住費について「特定入所者介護サービス費(補足給付)」の対象になることがあります。
市区町村への申請が必要
対象になる場合も自動的に軽減されるわけではなく、市区町村で介護保険負担限度額認定を受ける必要があります。
本人・配偶者の課税状況や預貯金等について要件があるため、入所予定が決まったら市区町村の介護保険窓口で確認してください。
有料老人ホーム等は原則として補足給付の対象外
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の家賃・食費は、原則としてこの補足給付の対象ではありません。
同じ「高齢者施設」でも利用できる制度が異なる点に注意が必要です。
前払金がある場合は返還条件を見る
入居時にまとまった前払金を支払う施設では、「いくら払うか」だけでなく、退去時の扱いが重要です。
算定根拠と償却方法を確認する
厚生労働省の標準指導指針では、前払金の算定根拠を書面で明示し、十分に説明することが示されています。
どの期間を想定して計算しているのか、毎月どのように償却されるのかを確認してください。
短期間で退去した場合を確認する
本人が施設になじめない、医療ニーズが変化したなどの理由で早期退去する可能性もあります。
その場合に未償却分がどのように返還されるのか、返還時期も含めて入居契約書で確認します。
前払金は口頭説明だけで判断しない
算定根拠、償却、返還方法、保全措置などについて、重要事項説明書や入居契約書で確認してください。
今の費用だけでなく将来いくらになるかを見る
老人ホームは数年単位で暮らす可能性があります。
介護度が上がった場合
要介護度や利用サービス量が変われば、介護保険の自己負担や自費サービスの利用が変わることがあります。
現在の見積もりだけでなく、介護量が増えた場合に何が変わるかを施設へ確認してください。
医療が増えた場合
通院回数や薬が増えれば、医療費だけでなく通院同行・交通費などが増える場合があります。
施設内で対応できない医療が増えると、住み替えが必要になる可能性もあるため、費用と受け入れ範囲を一緒に確認します。
料金改定の可能性
食材費や人件費などの変化により、食費や管理費等が将来改定されることがあります。
過去の改定状況や、料金変更時にどのような説明が行われるかを確認しておくと安心です。
長期入院すると施設費と病院費が重なることがある
老人ホーム入居後に病気やけがで入院した場合、施設に住んでいなくても一部の費用が続くことがあります。
居室を確保する費用を確認する
家賃相当額や管理費などは、入院中も継続する場合があります。
食費など利用しない項目がどう扱われるかも施設によって異なります。
退院後に戻れる条件も確認する
長期入院後に介護量や医療ニーズが増えた場合、元の施設へ戻れない可能性があります。
入院時の費用と合わせて、居室を確保できる期間や再入居条件も確認してください。
費用を確認するときは3つの見積もりを作る
01
入居時の見積もり
前払金、敷金、初月利用料、引っ越し、家具・家電など、入居までに必要な費用を整理します。
02
通常月の見積もり
家賃、管理費、食費、介護費、医療費、日用品など、本人が現在の状態で暮らした場合の毎月の総支出を出します。
03
状態が変化した場合の見積もり
介護度が上がる、通院が増える、個別サービスが必要になるなどの場合に、何の費用が増えるか確認します。
この3つを確認すると、「今は払えるが数年後は難しい」という問題を見つけやすくなります。
老人ホーム費用の確認チェックリスト
入居前に確認したい費用
- 前払金・入居時費用
- 敷金
- 前払金の算定根拠
- 前払金の返還条件
- 家賃相当額
- 管理費
- 食費
- 水道光熱費
- 介護保険の自己負担
- 介護保険外サービス
- 医療費・薬代
- 通院同行・交通費
- 日用品・理美容費
- 入院中も続く施設費
- 介護度が上がった場合の費用
- 料金改定の扱い
- 退去月の料金
- 利用できる負担軽減制度
重要事項説明書と料金表で最終確認する
有料老人ホームを検討する場合は、パンフレットだけでなく重要事項説明書と入居契約書を確認してください。
料金とサービス内容を照らし合わせる
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、重要事項説明書に事業主体、建物、サービス内容、職員体制、利用料金などの重要事項を記載し、入居希望者へ説明することが示されています。
基本料金に何が含まれているか、追加料金はどの条件で発生するかを書面で確認します。
契約前に分からない項目を残さない
「実費」「別途」「必要に応じて」と書かれている項目は、本人の場合にどの程度発生しそうか質問してください。
料金説明を受けたら、本人の状態を前提とした見積もりと一致しているかも確認します。
まとめ|老人ホームの費用は「一つの相場」ではなく本人ごとの総額で見る
老人ホーム・介護施設の費用は、施設種別や料金プラン、本人の要介護度、医療状態などによって変わります。
入居時には前払金や敷金など、入居後は家賃・管理費・食費に加えて、介護保険の自己負担、医療費、生活実費などが必要になることがあります。
特養、老健、介護医療院などでは、所得・資産の要件を満たせば食費・居住費の負担軽減制度を利用できる場合もあります。
「老人ホームはいくらか」と一つの数字を探すのではなく、本人がその施設で暮らした場合に、入居時・通常月・将来の3つの時点でいくら必要かを確認することが、無理のない施設選びにつながります。