老健の認知症短期集中リハビリテーションとは?

老健(介護老人保健施設)には、認知症のある入所者に対して、生活機能の改善を目指して集中的に行う「認知症短期集中リハビリテーション」があります。

これは、認知症があれば誰でも自動的に受けられるものではありません。医師が認知症であると判断し、さらにリハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断した人が対象です。

まず結論|認知症の人に一律で行う訓練ではない

老健の認知症短期集中リハビリテーションは、認知症のある入所者のうち、リハビリで生活機能の改善が見込まれる人に対して、医師または医師の指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が個別に行うものです。算定期間は入所日から3か月以内、1週3日までで、1回20分以上の個別リハビリが算定要件です。

老健の認知症短期集中リハビリテーションとは?

認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、認知症のある入所者に対し、生活機能の改善を目的として集中的に個別リハビリテーションを行った場合に評価される介護報酬上の加算です。

「認知症そのものを治す訓練」というより、記憶、日常生活動作、生活上の困りごとなどを踏まえ、その人が実際の生活でできることを増やしたり、維持しやすくしたりするための支援として考えると分かりやすいでしょう。

対象は医師が認知症と判断した人

制度上は、医師が認知症であると判断し、さらにリハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断した入所者が対象です。

認知症の診断だけでは対象が決まらない

認知症があるという理由だけで自動的に対象になるわけではありません。本人の状態を確認し、個別リハビリによって生活機能の改善が期待できるかを医師が判断します。

認知機能の評価も対象判断の目安になる

厚生労働省の留意事項では、対象者はMMSEまたはHDS-Rでおおむね5点から25点に相当する人とされています。

ただし、この点数だけで家族が対象可否を決めるものではありません。実際には医師の判断と本人の状態を踏まえて施設側が確認します。

注意:「認知症がある=必ず認知症短期集中リハビリを受けられる」「点数が範囲内なら必ず対象になる」という意味ではありません。本人が対象になるかは、施設の医師やリハビリ担当者へ確認してください。

どんなリハビリを行う?

認知症短期集中リハビリテーションでは、本人の認知機能や生活上の課題に合わせて個別に内容を組み立てます。

記憶の訓練だけではない

厚生労働省の留意事項では、記憶の訓練や日常生活活動の訓練などを組み合わせたプログラムが、認知症に対して効果が期待できるものとして示されています。

日常生活に直結する課題を設定する

たとえば、着替え、移動、道具の使い方、日課の理解など、その人が実際の生活で困っていることを踏まえて目標を設定します。

「認知機能の点数を上げること」だけを目的にするのではなく、本人が日常生活でできることや、支援があれば行えることを具体的に見ることが大切です。

原則として1対1の個別リハビリ

この加算は、1人の医師、または医師の指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、1人の入所者に対して個別に行った場合に算定されます。

集団体操だけではこの加算の対象ではない

施設内の集団体操やレクリエーションにも意味はありますが、認知症短期集中リハビリテーション実施加算として評価されるのは、制度要件に沿った個別リハビリです。

施設へ確認するときは、「認知症向けの体操がありますか」ではなく、「認知症短期集中リハビリは個別にどの職種が担当しますか」と聞くと違いが分かりやすくなります。

どのくらいの期間・頻度で受ける?

認知症短期集中リハビリテーションは、名称のとおり期間と頻度が限定されています。

入所日から3か月以内

制度上、算定できるのは入所の日から起算して3か月以内です。

3か月でリハビリ自体が終わるという意味ではない

3か月というのは、この「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」を算定できる期間です。3か月を過ぎると一切のリハビリを受けられなくなる、という意味ではありません。

その後のリハビリ内容は、本人の状態や施設サービス計画などに基づいて検討されます。

1週に3日まで

この加算は、1週につき3日を限度として算定されます。

「毎日必ず3回」ではない

1週3日は算定上の上限です。本人の状態に応じて実際の実施日や頻度は異なるため、「週3回必ず行う」とは限りません。

1回20分以上の個別実施が算定要件

厚生労働省の留意事項では、この加算は個別に20分以上実施した場合に算定するものとされています。

この20分という数字は、家族が「長ければ長いほどよい」と判断するための基準ではありません。重要なのは、本人の状態や目標に合った内容が設定され、その結果を評価しているかです。

数字の見方

「3か月以内・週3日まで・20分以上」は制度上の算定条件です。本人にとって適切な内容・頻度かどうかは、リハビリ計画や実際の状態を見て判断します。

認知症短期集中リハビリテーション実施加算ⅠとⅡの違い

令和6年度介護報酬改定で、老健の認知症短期集中リハビリテーション実施加算はⅠ・Ⅱの2区分になりました。

区分 主な違い
加算Ⅰ 退所後の生活場所を訪問し、生活環境を踏まえてリハビリ計画を作成
加算Ⅱ 適切なリハビリ職配置のもと、個別の認知症短期集中リハビリを実施

加算Ⅰは退所後の生活環境まで確認する

加算Ⅰでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が適切に配置されていることなどに加え、入所者が退所後に生活する居宅または社会福祉施設等を訪問し、そこで把握した生活環境を踏まえてリハビリテーション計画を作成することが施設基準に含まれます。

自宅で必要な動作を計画へ反映しやすい

退所後の生活場所を実際に確認すると、施設内では見えにくい課題が分かります。

たとえば、寝室からトイレまでの移動、玄関の出入り、日用品を置く場所など、本人の生活に必要な行動を具体的に計画へ反映しやすくなります。

加算Ⅱは120単位、Ⅰは240単位

現在の介護報酬では、認知症短期集中リハビリテーション実施加算Ⅰは1日240単位、Ⅱは1日120単位です。

単位数だけで施設の良し悪しを判断しない

Ⅰは退所後の生活場所を訪問して計画を作る点が追加されています。そのため、単位数だけを比較するのではなく、本人がどこへ退所する予定なのか、その生活環境を把握する必要性が高いのかまで含めて確認することが重要です。

通常の短期集中リハビリテーションとは何が違う?

老健には、認知症に限定しない「短期集中リハビリテーション実施加算」もあります。名前が似ていますが、対象や目的を混同しないことが大切です。

認知症短期集中リハビリは認知症のある人が対象

認知症短期集中リハビリテーションは、認知症であると医師が判断し、生活機能の改善が見込まれる人を対象にしています。

一般の短期集中リハビリは認知症だけを対象にした制度ではない

一方、短期集中リハビリテーション実施加算は、老健入所後の早い時期に集中的な個別リハビリを行う仕組みで、認知症があること自体を対象条件としている制度ではありません。

両方が関係する場合もある

厚生労働省の留意事項では、短期集中リハビリテーション実施加算を算定している場合でも、別途、認知症短期集中リハビリテーションを実施した場合は、その加算を算定できるとされています。

本人についてどのリハビリが行われているのか分かりにくい場合は、加算名だけでなく、具体的な訓練内容と目標を確認してください。

受ければ認知症が改善する?

認知症短期集中リハビリテーションは、認知症が必ず改善することを保証する制度ではありません。

制度上も、対象は「リハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれる」と医師が判断した人です。本人の認知症の原因、身体状態、意欲、環境などによって経過は異なります。

「症状」だけでなく「生活機能」の変化を見る

家族が確認したいのは、認知機能検査の点数だけではありません。

  • 着替えや整容がしやすくなったか
  • 声かけで行動しやすくなったか
  • 生活の手順を取り戻せているか
  • 本人ができる動作が増えたか
  • 退所後の生活に必要な動作へ近づいているか

こうした生活場面での変化を、施設がどのように評価しているか確認するとよいでしょう。

注意:認知症の症状や経過には個人差があります。「このリハビリをすれば認知症が治る」「必ず自宅復帰できる」といった説明は適切ではありません。本人の状態に合わせた目標と評価内容を確認してください。

家族は施設へ何を確認すればよい?

認知症短期集中リハビリテーションの有無だけでなく、本人にどう実施されるかまで確認することが重要です。

施設へ確認したい質問

  • 本人は認知症短期集中リハビリの対象になりますか
  • 対象になると判断した理由は何ですか
  • どの生活機能の改善を目標にしますか
  • 誰が個別リハビリを担当しますか
  • 1週間にどの程度実施する予定ですか
  • どのような内容を行いますか
  • 効果や変化をどのように評価しますか
  • 家族へ結果を説明してもらえますか
  • 加算ⅠとⅡのどちらを算定していますか
  • 加算Ⅰの場合、退所後の生活場所をいつ確認しますか
  • 3か月を過ぎた後のリハビリはどうなりますか

「やっていますか」だけで終わらせない

施設が加算を算定していることは一つの確認材料ですが、それだけでは本人に合った支援かどうかは分かりません。

本人について、何を改善目標にしているのか、どのような方法で評価するのか、退所後の生活へどうつなげるのかまで聞くことが大切です。

まとめ|認知症短期集中リハビリは「生活機能」を個別に支える仕組み

老健の認知症短期集中リハビリテーションは、認知症のある入所者のうち、リハビリによって生活機能の改善が見込まれる人に対して行う個別の集中的リハビリです。

算定期間は入所日から3か月以内、1週3日まで、個別に20分以上という要件があります。また、現在は加算Ⅰが240単位、Ⅱが120単位で、Ⅰでは退所後の生活場所を訪問し、その環境を踏まえてリハビリ計画を作成することが特徴です。

確認したい3点

  • 本人がなぜ対象になるのか
  • どの生活機能を改善目標にしているのか
  • 実施結果を退所後の生活へどうつなげるのか

「認知症向けのリハビリがある」という説明だけで判断せず、本人の目標、担当職種、実施頻度、評価方法、退所後へのつなげ方まで具体的に確認しましょう。

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