兄弟姉妹で親の介護費用を分担するときの考え方

親の介護が始まると、兄弟姉妹の間で「施設費を誰がどこまで負担するか」という問題が出てくることがあります。

長男だから多く払うべき、きょうだいだから均等に3分の1ずつ負担すべき、と単純に決めると、収入差や子育て・住宅ローン、親の近くで介護している人の負担などが反映されず、不満が残ることがあります。

介護費用の分担で大切なのは、最初から子ども同士で割り勘にすることではありません。まず親本人の年金・預貯金・利用できる制度でどこまで賄えるかを確認し、不足分だけを家族でどう支えるかを整理することです。

まず結論|「人数で均等割り」ではなく、親の資金・各人の負担能力・介護実務まで含めて決める

兄弟姉妹で親の介護費用を分担するときは、①親本人の年金・預貯金で支払える額、②介護保険や負担軽減制度を使った後の不足額、③兄弟姉妹それぞれの収入・家庭事情、④通院同行や手続きなど金銭以外の介護負担を整理します。そのうえで「毎月誰がいくら出すか」「臨時費用はどうするか」「いつ見直すか」を決め、記録を残しておくとトラブルを減らしやすくなります。

最初に親本人のお金でどこまで払えるか確認する

介護費用の分担を話し合うとき、最初から兄弟姉妹の負担額を決める必要はありません。

親の年金・預貯金・その他収入を整理する

まず、親本人の年金、預貯金、企業年金、家賃収入など、毎月・毎年入ってくるお金を確認します。

老人ホームへ入居する場合は、入居一時金や月額利用料だけでなく、介護保険自己負担、医療費、薬代、日用品、理美容なども含めて考えます。

親本人の資産をどのように使うかについて、本人が判断できる状態なら本人の意思も確認してください。

自宅を残す場合の費用も含める

親が施設へ入居しても、自宅をそのまま残す場合は固定資産税、管理費、修繕費、火災保険などの費用が続くことがあります。

「施設費だけ」を見て予算を決めると、後から家計が足りなくなることがあります。

POINT

子どもが負担する額を決める前に、「親本人のお金で月いくらまで賄えるか」を明確にします。不足額が分かって初めて、兄弟姉妹で話し合う金額が見えてきます。

兄弟姉妹で必ず均等に払う必要があるとは限らない

家族内の話し合いでは、「3人兄弟だから3等分」という方法が分かりやすく見えます。

しかし、実際の負担能力や介護への関わり方が大きく違う場合、均等割りが公平とは限りません。

民法では一律の負担割合までは定めていない

民法では、直系血族及び兄弟姉妹には互いに扶養する義務があるとされています。

一方、扶養の程度や方法について当事者間で協議が整わない場合は、扶養を受ける人の必要性、扶養義務者の資力、その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が定める仕組みです。

つまり、法律上「子ども全員が必ず同額を負担する」と一律に決められているわけではありません。

収入・家族状況の違いを考える

兄弟姉妹の一人は高収入でも、別の人は子育て中、住宅ローン返済中、病気療養中ということがあります。

毎月出せる金額には差があるため、同額負担だけを公平の基準にしないことが大切です。

お金だけでなく介護の実務負担も整理する

親の介護では、実際にお金を支払う以外にも多くの負担があります。

01

通院同行

病院への送迎、診察の付き添い、薬の受け取りなどには時間と交通費がかかります。

02

施設との連絡・面談

ケアマネジャーや施設職員との面談、入退院時の対応、緊急連絡の窓口を一人が担っている場合があります。

03

買い物・衣類・日用品の補充

施設によっては家族が衣類や日用品を補充する必要があります。近くに住む家族へ負担が集中しやすい部分です。

04

行政・金融・契約手続き

要介護認定、各種申請、施設契約、公共料金、郵便物などの手続きを一人が担う場合があります。

例えば、兄は毎月の費用を多めに負担し、妹は近くに住んでいるため通院や施設対応を多く担うなど、お金と実務を合わせて分担する方法があります。

まず「毎月の不足額」を計算する

兄弟姉妹で話し合うときは、感覚ではなく数字にします。

月額総費用を出す

施設入居の場合は、家賃・居住費、管理費、食費、介護保険自己負担、医療費、薬代、日用品などを合計します。

住宅型有料老人ホームやサ高住では、外部の介護サービス利用量によって費用が変わる場合があります。

親本人の月収を差し引く

月額総費用から、親の年金など毎月の収入を差し引きます。

例えば、月額総費用が25万円で親の収入が18万円なら、単純計算では月7万円の不足です。

ただし、医療費や臨時費用は月によって変動するため、毎月の不足額とは別に予備費も考えておきます。

介護保険の自己負担と施設費は分けて考える

老人ホームの費用を考えるとき、「介護保険があるから大部分を払わなくてよい」と考えるのは適切ではありません。

介護保険サービスには1〜3割の利用者負担がある

介護保険サービスの利用者負担は、所得に応じて原則1割、一定以上所得者は2割または3割です。

介護保険施設では、この自己負担とは別に居住費、食費、日常生活費などが必要になります。

民間施設では介護保険外の費用も大きい

有料老人ホームなどでは、家賃相当額、管理費、食費、追加サービス費など、介護保険の対象外となる費用があります。

兄弟姉妹で負担額を考えるときは、介護保険自己負担だけでなく、月額総額で見ることが重要です。

負担軽減制度を確認してから家族負担を決める

所得や利用額によっては、介護保険の負担軽減制度を利用できる場合があります。

高額介護サービス費

介護保険サービスの自己負担が一定額を超えた場合、所得区分等に応じて超過分が支給される高額介護サービス費があります。

ただし、食費、居住費、日常生活費などは原則としてこの仕組みの対象外です。

介護保険施設の食費・居住費軽減

特養、老健、介護医療院などでは、所得や資産など一定の要件を満たす人について、食費・居住費の負担限度額認定の対象になる場合があります。

民間の有料老人ホームの家賃や食費が同じ仕組みで軽減されるわけではありません。

制度の対象になるかは、市区町村の介護保険窓口やケアマネジャーへ確認してください。

家族で払う前に利用できる制度を確認する

介護保険の負担軽減制度には所得・資産・サービス種別などの条件があります。兄弟姉妹の負担額を固定する前に、本人が利用できる制度を市区町村へ確認してください。

分担方法は大きく3つある

01

均等に分ける

兄弟姉妹それぞれの収入や家庭事情に大きな差がなく、介護実務の負担も同程度なら、人数で均等に分ける方法が分かりやすいでしょう。

メリット
計算が簡単で分担内容が明確
注意点
収入差や介護実務の差が大きいと不満が出やすい

02

収入・家計に応じて割合を変える

兄弟姉妹それぞれの収入や扶養家族、住宅費などを考え、無理なく継続できる割合を決めます。

メリット
実際の負担能力に合わせやすい
注意点
収入情報をどこまで共有するか事前に決める必要がある

03

金銭負担と介護実務を組み合わせる

遠方の兄弟姉妹は費用を多めに負担し、近くに住む人は通院や手続きを多く担当するなど、役割全体でバランスを取ります。

メリット
金銭以外の負担も考慮できる
注意点
介護実務が見えにくいため内容を共有する必要がある

話し合うときは「誰が悪いか」ではなく数字と役割を並べる

介護費用の話し合いは、過去の家族関係まで持ち出すとまとまりにくくなります。

まず同じ情報を見る

施設の料金表、親の年金額、毎月の医療費、預貯金残高など、判断に必要な情報をできる範囲で共有します。

一人だけが情報を持っている状態では、「本当にその金額が必要なのか」という不信感につながります。

毎月の負担額と担当業務をセットで書き出す

「兄は月3万円」「姉は月2万円と月2回の通院同行」「弟は月2万円と行政手続き」など、具体的にします。

完全に金額換算する必要はありませんが、誰が何を担っているか見えるようにします。

立て替えたお金は記録を残す

介護が長期化すると、「誰が何を立て替えたのか」が分からなくなりやすくなります。

領収書と支払日を残す

施設費、医療費、日用品、交通費など、家族が立て替えたものは記録します。

スマートフォンの共有表やノートなど、兄弟姉妹全員が確認できる方法にすると管理しやすくなります。

親のお金と子どものお金を混同しない

親の口座から支払った費用と、子どもが自分のお金から負担した費用を分けて記録します。

誰のお金を使ったのか分からない状態が続くと、後の精算や相続時に家族間の争いにつながることがあります。

預貯金を管理する人を一人にする場合は透明性を保つ

親の近くに住む一人が、通帳や現金を預かって支払いを行う家庭があります。

定期的に収支を共有する

毎月または数か月ごとに、収入、施設費、医療費、残高を兄弟姉妹で共有します。

「任せているから大丈夫」で終わらせず、管理する人の負担と疑われるリスクの両方を減らす仕組みを作ります。

本人の判断能力が低下している場合は専門家へ相談する

認知症などにより本人が財産管理や契約を十分に行えない場合は、状況によって成年後見制度等を検討することがあります。

制度が必要かどうかは個別事情によるため、地域包括支援センター、市区町村、法律専門職などへ相談してください。

臨時費用のルールを先に決める

介護費用は毎月同じではありません。

入院・補聴器・家具などの支出が発生する

急な入院、歯科治療、福祉用具、補聴器、施設で使う家具など、まとまった費用が発生することがあります。

そのたびに一から話し合うと、支払いが遅れることがあります。

「○万円以上は事前相談」など基準を作る

例えば、「1万円未満の生活用品は担当者判断」「3万円を超える支出は兄弟姉妹で相談」など、家庭内のルールを決めます。

緊急の医療費など事前相談できない支出についても、後から領収書と内容を共有する方法を決めておきます。

負担割合は定期的に見直す

最初に決めた分担を何年も固定する必要はありません。

親の状態が変わると費用も変わる

要介護度が上がる、医療費が増える、施設を住み替えるなどによって、毎月の費用は変化します。

兄弟姉妹の生活状況も変わる

転職、退職、病気、子どもの進学などにより、それまでと同じ金額を負担できなくなることがあります。

半年または1年に一度など、定期的に収支と分担を見直すと、誰か一人に無理が集中するのを防ぎやすくなります。

親の施設を決めるときは「誰が払えるか」だけで選ばない

兄弟姉妹で費用を出し合えるとしても、高額な施設を簡単に選んでよいとは限りません。

親の資産が何年持つか確認する

毎月の不足額が小さく見えても、5年、10年と続けば大きな金額になります。

預貯金の取り崩し額と、家族が継続して支援できる金額を合わせて考えます。

介護度が上がった場合の費用も確認する

入居時より介護サービス利用が増える、医療費が増える、追加サービスが必要になるなど、将来費用が上がる可能性があります。

現在の料金だけでなく、重度化後の費用を施設へ確認します。

兄弟姉妹で話し合う項目

最低限決めておきたいこと

  • 親本人の毎月の収入はいくらか
  • 親の預貯金をどの程度まで介護費用に充てるか
  • 毎月の介護・施設費の総額はいくらか
  • 制度利用後の不足額はいくらか
  • 兄弟姉妹それぞれが毎月いくら負担するか
  • 通院・買い物・手続きなどを誰が担当するか
  • 臨時費用はどう分けるか
  • 立替金をどう記録・精算するか
  • いつ分担内容を見直すか

話し合いがまとまらないとき

介護費用は家族関係や相続への考え方も絡み、兄弟姉妹だけでは話がまとまらないことがあります。

ケアマネジャーには介護費用全体を整理する相談をする

ケアマネジャーは、現在利用している介護サービスや今後必要になりそうな支援について相談できます。

施設費用の法律的な分担を決める立場ではありませんが、本人に必要な介護サービスや制度を整理する相談相手になります。

法律上の扶養や財産管理で争いがある場合は専門家へ

誰がどこまで扶養費を負担するか、親のお金の管理、成年後見、相続との関係などで家族間の対立が大きい場合は、弁護士や司法書士など適切な専門家へ相談することを検討します。

民法では、扶養義務者が複数いて協議が整わない場合の順序や、扶養の程度・方法について、家庭裁判所が事情を考慮して定める仕組みがあります。

まとめ|平等より「継続できる公平な分担」を考える

兄弟姉妹で親の介護費用を分担するとき、最初から「人数で均等に割る」と決める必要はありません。

まず親本人の年金・預貯金と利用できる制度を確認し、介護費用の不足額を出します。

そのうえで、兄弟姉妹それぞれの収入や家族状況、通院・施設対応などの実務負担を含め、無理なく続けられる方法を話し合います。

特に重要なのは、誰がいくら払ったか、誰が何を担当しているかを見える形にし、状況が変わったら分担を見直すことです。

同額であることだけが公平ではありません。親の生活を安定して支えながら、兄弟姉妹の誰か一人に負担が集中しない形を作ることが、長期の介護では重要です。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です