老人ホームへの入居を考えるとき、月額費用や入居時費用をどう準備するかは大きな課題です。預貯金や年金だけでは長期の支払いに不安がある場合、自宅を資産として活用する方法も選択肢になります。
ただし、自宅は単なる資産ではなく、本人や家族の生活基盤でもあります。売却すれば資金化しやすくなる一方、戻る場所がなくなることがあります。賃貸に出せば家賃収入を得られる可能性がありますが、空室や修繕などの負担もあります。
まず結論|自宅活用は「いくら必要か」と「家を今後どうしたいか」を先に整理する
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老人ホーム費用のために自宅を活用するなら、最初に売却方法を決めるのではなく、入居時費用と毎月の不足額、想定する支払い期間、自宅に今後住む人がいるかを整理することが重要です。そのうえで、売却・賃貸・リースバック・担保型の資金調達などを比較します。
「老人ホームに入るなら家は不要」とすぐに結論づける必要はありません。本人が将来自宅へ戻る可能性、配偶者や家族が住み続ける可能性、相続の希望などによって適した方法は変わります。
また、自宅を活用してまとまった資金ができても、老人ホームの費用が何年続くかは事前に確定できません。資産の処分方法だけでなく、入居後の毎月の収支まで合わせて考えることが大切です。
最初に老人ホーム費用の不足額を把握する
自宅活用を検討する前に、まず老人ホームに入居した場合の資金計画を整理します。自宅をいくらで売れるかより先に、「毎月いくら不足するのか」を把握したほうが判断しやすくなります。
入居時に必要な費用を分けて考える
老人ホームによっては、入居時に前払い金や敷金などが必要です。入居時費用が0円の施設もありますが、その場合でも引っ越し費用、家具・家電、日用品などの準備費用が発生することがあります。
毎月の支出と収入を確認する
月額費用では、家賃・管理費・食費だけではなく、介護保険の自己負担、医療費、日用品、おむつ代、理美容、個別サービスなども考慮します。
そこから年金などの定期収入を差し引くと、毎月どの程度を預貯金やその他の資産から補う必要があるかが見えてきます。
CHECK
「自宅をいくらで現金化できるか」だけでなく、「その資金で毎月の不足額をどれくらいの期間補えるか」まで試算しておきましょう。
自宅を売却して老人ホーム費用に充てる方法
自宅に今後住む予定がなく、本人や家族も手放すことに納得している場合は、売却によってまとまった資金を確保する方法があります。
売却のメリット
売却の大きな利点は、自宅という資産を現金化できることです。固定資産税、火災保険、修繕、草木の管理など、空き家を維持する負担もなくせます。
入居時費用が大きい施設を選ぶ場合や、月々の不足額が長期に続くと考えられる場合には、資金計画を立てやすくなることがあります。
売却前に確認したいこと
一方で、自宅を売却すると、本人が退去して自宅に戻りたいと考えても元の家には戻れません。施設入居後すぐに売却するか、一定期間を置いてから売却するかも検討が必要です。
また、売却価格は査定額どおりになるとは限りません。不動産会社への仲介手数料や登記関係の費用などが発生する場合もあります。譲渡によって税負担が生じるかどうかも個別条件によって異なるため、手取り額で考える必要があります。
自宅を賃貸に出して家賃収入を老人ホーム費用に充てる
自宅を手放したくない場合は、賃貸に出し、家賃収入を老人ホーム費用の一部に充てる方法もあります。
賃貸なら所有権を残せる
賃貸のメリットは、自宅を所有したまま収入を得られる可能性があることです。将来家族が住む予定がある場合や、売却を急ぎたくない場合には検討しやすい方法です。
家賃がそのまま手取りになるわけではない
賃貸に出す場合、管理委託費、修繕費、設備交換、固定資産税などの負担が続くことがあります。入居者が決まらない期間は家賃収入がなくなるため、毎月確実に老人ホーム費用へ充てられるとは限りません。
古い住宅では、賃貸前にリフォームや設備修理が必要になることもあります。
家賃収入だけを前提に施設費を組まない
空室、家賃滞納、修繕などによって想定より収入が少なくなる可能性があります。賃貸を活用する場合も、一定の予備資金を残しておくと安心です。
リースバックを利用する方法もある
リースバックは、自宅を事業者へ売却して資金を受け取り、その後は賃貸借契約を結んで同じ家に住み続ける仕組みです。
本人がまだ自宅に住みながら、将来の老人ホーム費用を準備したい場合などに検討されることがあります。
まとまった資金を得ながら住み続けられる可能性がある
売却後も同じ家に住める点は通常の売却との大きな違いです。引っ越しをせずに資金化したい場合には選択肢になります。
売却後は家賃の支払いが必要になる
リースバックでは、自宅の所有権は売却先へ移り、その後は賃借人として家賃を支払います。売却価格、家賃、契約期間、更新条件、買い戻し条件などは契約によって異なります。
老人ホームへ入居するまでの期間が長い場合、売却によって得た資金が家賃支払いで減っていく可能性もあります。「いくら受け取れるか」だけでなく、その後の家賃負担まで含めて比較する必要があります。
自宅を担保に資金を確保する方法もある
自宅を売却せず、不動産を担保として資金を借りる方法が検討されることもあります。代表的なものとして、一定の条件で自宅を担保に資金を受け取る仕組みがあります。
ただし、対象年齢、物件の所在地や評価額、資金の使途、返済方法、相続時の取り扱いなどは商品や制度ごとに異なります。
所有権を維持できる場合がある
売却とは異なり、条件を満たせば自宅の所有権を残しながら資金を確保できることがあります。
借入れなので返済や最終精算を確認する
一方で、これは資産の売却ではなく借入れです。利息や手数料が発生する場合があり、契約終了時や本人の死亡後に自宅を売却して返済する仕組みもあります。
相続人に家を残したい場合には特に、将来どのように精算されるかを確認しておく必要があります。
配偶者や家族が自宅に住んでいる場合は慎重に考える
本人だけが老人ホームへ入居し、配偶者や子どもなどが自宅に住み続けるケースでは、自宅の資金化を本人だけの問題として考えることはできません。
売却すると家族の住まいが変わる
自宅を売却する場合、同居家族は新しい住まいを確保する必要があります。売却代金が得られても、転居費用や新居の家賃が増えることがあります。
名義と権利関係を確認する
自宅の所有者が誰なのか、共有名義になっていないかも重要です。本人だけの判断で処分できないケースもあります。
認知機能が低下して契約内容を理解することが難しい場合には、不動産取引や金融契約をどのように進められるかについて、専門家への確認が必要になることがあります。
IMPORTANT
自宅活用は老人ホーム費用だけでなく、配偶者の住まい、家族の生活、相続にも影響します。本人だけの資金問題として決めないことが大切です。
自宅を残す場合にも維持費はかかる
老人ホームに入居したあとも自宅を残す場合は、施設費に加えて自宅の維持費が続きます。
固定資産税、火災保険、庭の管理、修繕、光熱費の基本料金などが発生することがあります。空き家期間が長くなるほど、建物の劣化や防犯面の問題も生じやすくなります。
二重負担が続く期間を試算する
「しばらく残して様子を見る」という選択自体は問題ありません。ただし、その期間に老人ホーム費用と自宅維持費を同時に負担できるか確認しておきましょう。
売却を急がない場合でも、いつ再検討するか期限を決めておくと判断が先延ばしになりにくくなります。
老人ホーム費用のために自宅を活用するときの確認項目
自宅を活用する方法を比較するときは、資金化できる金額だけでなく、長期的な影響まで見ます。
1
老人ホーム費用の不足額
入居時と毎月の不足額を確認します。
2
本人が自宅へ戻る可能性
一時的な入居なのか、長期入居を前提にするのかを考えます。
3
家族が住み続けるか
配偶者や家族の生活への影響を確認します。
4
売却・賃貸後の手取り
税、手数料、管理費、修繕費などを差し引いて考えます。
5
相続への影響
家を残したいのか、現金化して介護費へ充てるのかを家族で確認します。
特に売却、リースバック、担保型の資金調達は、一度契約すると簡単に元の状態へ戻せないことがあります。契約を急がず、条件を書面で比較することが重要です。
自宅活用だけで老人ホーム費用を決めない
自宅は大きな資産ですが、老人ホーム費用のために必ず処分しなければならないわけではありません。預貯金、年金、保険、家族の支援、公的な負担軽減制度なども含めて全体で考える必要があります。
老人ホームの費用は、入居時だけではなくその後も続きます。自宅を資金化して一時的に余裕ができても、施設の月額費用が収入を大きく上回れば資産は減っていきます。
大切なのは、自宅をどう現金化するかではなく、本人が安心して生活できる費用をどのように長く確保するかです。自宅の活用方法は、その資金計画の一部として検討すると判断しやすくなります。