老人ホームへ入居した後も、持病の診察、歯科、眼科、整形外科などで外部の医療機関へ通院することがあります。
そのときに見落としやすいのが、診察代そのものではなく、病院までの交通費や付き添い費用です。
施設によっては、協力医療機関への送迎・付き添いを月額料金に含む場合があります。一方で、指定外の病院への通院、長時間の付き添い、タクシー利用などは別料金になることがあります。
そのため、施設選びでは「通院できますか」ではなく、「誰が付き添い、どこまでが基本料金で、何が別料金なのか」を確認することが重要です。
まず結論|通院費は「移動費」と「付き添い費」を分けて見積もる
老人ホーム入居後の通院費用は、①病院までのタクシー・介護タクシー等の交通費、②施設職員等の付き添い費、③家族が同行する場合の交通費、④長時間受診や時間外対応の追加費用に分けて考えます。施設によっては協力医療機関への送迎等を基本料金に含むこともありますが、すべての通院が無料とは限りません。重要事項説明書・個別サービス料金表で対象医療機関、対応時間、付き添い範囲、追加料金を確認してください。
老人ホーム入居後も通院費用はかかる
老人ホームへ入れば、医療に関する費用がすべて施設料金へ含まれるわけではありません。
診察代・薬代は施設費とは別に考える
外来受診、訪問診療、歯科、処方薬などは、原則として医療保険による自己負担が発生します。
さらに外部の病院へ通う場合には、病院までの移動費や付き添い費用が加わることがあります。
「医療連携あり」でも通院費が無料とは限らない
協力医療機関がある施設でも、すべての診療科へ対応できるとは限りません。
専門外来や本人が以前から通っている病院を継続する場合には、施設外への通院が必要になることがあります。
POINT
通院費は「医療費」だけでなく、「病院までどう行くか」「誰が付き添うか」まで含めて考えると、入居後の実際の負担を把握しやすくなります。
通院にかかる費用は4つに分けて考える
01
病院までの交通費
タクシー、介護タクシー、福祉車両などを利用する場合の費用です。
02
付き添い費用
施設職員や外部サービス事業者が病院まで付き添う場合、時間に応じた料金などが設定されることがあります。
03
家族側の交通費
家族が付き添う場合は、電車、車、高速道路、駐車場などの費用がかかります。
04
診察・検査・薬の費用
医療保険の自己負担や薬代など、通院そのものに伴う医療費です。
施設職員の通院付き添いは無料とは限らない
老人ホームによっては、職員が病院まで付き添うサービスを提供しています。
基本料金に含む範囲が施設ごとに違う
協力医療機関への通院は基本料金に含むものの、それ以外の病院は有料とする施設があります。
逆に、通院同行自体を個別選択サービスとして、利用ごとに費用を設定している場合もあります。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、サービス提供の都度、個別に費用を受領する場合は、サービス内容に応じて人件費や材料費等を踏まえた適切な額とする考え方が示されています。
時間単位の追加料金がある場合もある
病院での待ち時間が長い場合、一定時間までは基本料金、その後は30分または1時間ごとに追加料金という仕組みを設ける施設があります。
本人が大病院や専門外来へ通っている場合は、待ち時間を含めた料金を確認してください。
協力医療機関への通院なら無料とは限らない
「協力医療機関だから送迎も付き添いも無料」と思い込まないことが重要です。
協力内容は施設ごとに異なる
協力医療機関との連携内容には、健康相談、診療、緊急時対応などがありますが、送迎費や付き添い費の負担方法は施設ごとに異なります。
重要事項説明書で協力医療機関と協力内容を確認し、通院時の料金は別途料金表で確認します。
診療科によって別の病院が必要になる
内科は協力医療機関で対応できても、眼科、歯科、皮膚科、整形外科などは別の医療機関へ行く場合があります。
本人の持病や定期受診先を一覧にし、それぞれどのように通院するのか確認しておくと費用を見積もりやすくなります。
タクシー代は本人負担になることがある
施設が職員の付き添いを行っても、病院までの移動に使うタクシー代は本人負担というケースがあります。
施設車両を使えるか確認する
施設の送迎車を利用できる場合は、無料なのか、距離や時間に応じた費用がかかるのかを確認します。
施設車両を使える時間帯や対象医療機関が限定されている場合もあります。
一般タクシーを利用する場合
本人が一人で乗降できる場合は、一般タクシーを利用することがあります。
往復料金だけでなく、診療中に待機させる場合の料金や、迎車料金が発生する可能性も考えます。
介護タクシーを利用する場合の確認ポイント
車いす利用や乗降介助が必要な人では、福祉車両やいわゆる介護タクシーを利用することがあります。
料金体系は一律ではない
運賃のほかに、乗降介助、車いす、ストレッチャー、階段介助などの費用が加わる場合があります。
利用する事業者や本人の介助内容によって費用が変わるため、施設へ「普段どの事業者を利用し、どのような料金になるか」を確認します。
介護保険が使えるケースと使えないケースを分ける
訪問介護の「通院等乗降介助」など、一定の要件を満たして介護保険サービスとして利用できる場合があります。
ただし、誰でもすべての移動費が介護保険で安くなるわけではありません。運賃そのものや保険外サービスが別に必要になる場合もあります。
本人が対象になるかは、担当ケアマネジャーや利用する事業者へ確認してください。
「介護タクシーなら全部1〜3割負担」ではない
介護保険が適用されるサービス部分と、タクシー運賃・機材費など別に負担する部分がある場合があります。予約前に、保険適用部分と全額自己負担部分を分けた見積もりを確認してください。
家族の付き添いを求められる施設もある
施設職員がすべての通院へ同行できるとは限りません。
定期受診は家族対応というルールもある
協力医療機関以外の受診や、本人が以前から通っている専門病院への受診について、家族の付き添いを原則としている施設があります。
家族が遠方に住んでいる場合、この条件は施設選びに大きく影響します。
家族の移動費も年間で考える
電車賃、高速道路料金、ガソリン代、駐車料金など、1回の負担は小さくても定期受診が毎月続けば年間では大きくなります。
本人の施設費とは別に、家族側の介護関連費として予算に入れておきます。
遠方の病院を継続する場合は費用が増えやすい
入居前から長く通っている病院を継続したい人もいます。
距離が長いと移動費と付き添い時間が増える
病院まで片道1時間かかれば、交通費だけでなく付き添い職員の拘束時間も長くなります。
時間単位の付き添い費を設定する施設では、近隣受診より費用が高くなる可能性があります。
転院可能か主治医へ相談する方法もある
同じ診療内容を施設近隣の医療機関へ引き継げる場合もあります。
本人の病状や専門性によっては継続通院が必要なため、費用だけを理由に変更せず、主治医や施設と相談して判断してください。
複数の診療科へ通う人は年間回数を出す
通院費用を見積もるときは、1回分の料金だけでなく年間の受診回数を見ることが重要です。
定期受診を一覧にする
内科は月1回、眼科は3か月に1回、歯科は必要時など、現在の受診頻度を一覧にします。
そのうえで、各病院までの移動費と付き添い費を掛ければ、年間のおおよその通院関連費を把握できます。
臨時受診の予備費も残す
転倒、発熱、皮膚トラブルなどで予定外の受診が必要になることもあります。
定期受診分だけでなく、年に数回の臨時受診を想定した予備費も考えておくと安心です。
認知症がある人は待ち時間も確認する
認知症がある人では、長い待ち時間や慣れない病院環境で不安が強くなることがあります。
付き添い職員が診察終了まで対応するか
送迎だけ行い、病院内は家族対応なのか、受付・診察・会計まで職員が付き添うのかを確認します。
「付き添いあり」という表現でも範囲は施設ごとに異なります。
長時間になった場合の追加料金を見る
待ち時間が長い大病院では、予定していた時間を超えて付き添い費が増える可能性があります。
本人の通院先が混雑しやすい場合は、超過料金の単位と上限の有無を確認してください。
車いす・ストレッチャー利用者は追加費用を確認する
身体状態によっては、一般的な車両での移動が難しいことがあります。
車いすのまま乗れる車両が必要か
車いすから車の座席へ移乗できない場合、リフト付き車両などが必要になります。
車両料金や介助料金が一般タクシーと異なることがあります。
ストレッチャーは費用が増えることがある
寝た状態で移動する必要がある場合、ストレッチャー対応車両や複数人介助が必要になることがあります。
将来の重度化も考え、「車いす・ストレッチャーになった場合の通院方法」を施設へ確認しておくと安心です。
施設の付き添い費用は重要事項説明書・料金表で確認する
口頭説明だけでなく、料金表や重要事項説明書を確認します。
個別選択サービスの料金を見る
有料老人ホームでは、個別に利用する生活支援サービスについて、別途料金が設定される場合があります。
通院同行や買い物代行などが有料の場合、時間単価、交通費、対象範囲などを確認します。
「無料」と書かれている場合も条件を見る
協力医療機関のみ、月○回まで、平日日中のみなどの条件が付いている場合があります。
本人の通院パターンで実際に無料になる回数を確認してください。
通院費用を月額換算する方法
通院は毎月同じ回数とは限らないため、年間費用から月平均を出すと資金計画へ組み込みやすくなります。
通院費の月平均を出す考え方
年間の交通費 + 年間の付き添い費 + 家族交通費 = 年間通院関連費
年間通院関連費 ÷ 12か月 = 月平均の通院予算
診察代・薬代は別に医療費として計算します。
予定外の受診を考え、月平均額とは別に一定の医療・移動予備費を残しておくと安心です。
施設見学でそのまま聞きたい質問
通院費・付き添い費の確認項目
- 協力医療機関への送迎は無料ですか
- 職員の付き添いはどこまで月額料金に含まれますか
- 協力医療機関以外への通院は有料ですか
- 付き添い費は1時間いくらですか
- 待ち時間が長い場合の追加料金はどうなりますか
- タクシー代・介護タクシー代は本人負担ですか
- 車いすやストレッチャーの場合は追加料金がありますか
- 病院内で受付・診察・会計まで付き添ってもらえますか
- 定期通院は家族の同行が必要ですか
- 夜間・休日の受診時はどのように対応しますか
施設ごとの比較では同じ通院条件を当てはめる
通院関連費を比較するときは、施設ごとに違う質問をするのではなく、同じ本人条件で比べます。
01
現在の病院
どの診療科へ、何か月ごとに通っているかを伝えます。
02
移動方法
歩行、車いす、ストレッチャーなど、本人に必要な移動方法を伝えます。
03
家族が対応できる範囲
平日は難しい、月1回なら可能、遠方で同行できないなど現実的な条件を伝えます。
04
年間費用を試算する
送迎・付き添い・タクシー等を含め、1年間でどの程度かかるかを比較します。
通院回数が多い人は立地も費用条件になる
老人ホームの立地は、面会しやすさだけでなく、通院費用にも影響します。
病院に近い施設は移動負担を抑えやすい
定期通院が多い人では、病院までの距離が短いほど、タクシー代や付き添い時間を抑えられる可能性があります。
特に専門病院へ頻繁に通う人では、立地条件を重要な比較項目にします。
施設内・訪問診療で代替できる受診も確認する
現在通っている診療の一部を、施設の協力医療機関や訪問診療へ切り替えられる場合があります。
ただし、本人の病状によっては専門医への継続受診が必要なため、主治医と相談して判断してください。
通院付き添いだけで施設の良し悪しを決めない
「通院同行無料」は魅力的ですが、それだけで施設を選ぶのは適切ではありません。
介護・医療体制とのバランスを見る
夜間の介護、看護職員の配置、認知症ケア、看取り方針など、本人の生活全体に関わる条件を確認します。
月額総額で比較する
通院費が無料でも管理費等が高い施設もあれば、基本料金が低く通院同行を都度払いにする施設もあります。
本人の実際の受診頻度を当てはめ、年間総費用で比較すると判断しやすくなります。
まとめ|通院は「誰が・どこまで・いくらで付き添うか」を確認する
老人ホーム入居後の通院には、診察代や薬代だけでなく、病院までの交通費と付き添い費用が発生することがあります。
施設によって、協力医療機関への送迎を基本料金に含む、職員同行を時間単位で有料にする、定期通院は家族対応とするなど、ルールは異なります。
そのため施設選びでは、「通院できますか」ではなく、「どの病院なら、誰が、どこまで付き添い、交通費と付き添い費はいくらか」まで確認してください。
本人の現在の通院先と受診頻度を一覧にし、車いす等の移動条件、家族が対応できる範囲を候補施設へ伝えると、実際に近い費用を試算しやすくなります。
最後は、家賃・管理費・食費・介護保険自己負担・医療費に、年間の通院交通費と付き添い費を加えた月額総額で比較すると、入居後の資金計画を立てやすくなります。