介護施設に入居している人は、介護費だけでなく、通院・入院・薬などの医療費が高くなることがあります。
負担を軽くする制度として「高額療養費」と「高額介護合算療養費」がありますが、名前が似ているため違いが分かりにくい制度です。
まず結論|高額療養費は「医療費の上限」、高額介護合算療養費は「医療+介護の年額上限」を見る
高額療養費は、医療保険の自己負担が年齢・所得に応じた上限を超えたときに負担を軽減する制度で、月額上限に加え、2026年8月からは新たに年単位の上限も設けられています。一方、高額介護合算療養費は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間について、医療保険と介護保険の対象自己負担を医療保険上の世帯単位で合算し、年額の限度額を超えた場合に負担を軽減します。医療だけの負担軽減と、医療・介護を合わせた負担軽減を分けて考えることが重要です。
高額療養費と高額介護合算療養費の違いを最初に整理
2つの制度は、対象となる費用と計算期間が異なります。
01
高額療養費
医療保険の対象となる医療費について、原則として1か月の自己負担が上限を超えた場合に負担を軽減する制度です。
病院・診療所・薬局などで支払う保険診療の自己負担が中心です。
02
高額介護合算療養費
医療保険と介護保険の両方に自己負担がある世帯について、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間の対象負担を合算する制度です。
医療と介護を合わせても負担が重い世帯を、年単位でさらに支える仕組みです。
POINT
高額療養費は「医療保険の自己負担を軽減する制度」、高額介護合算療養費は「医療+介護の自己負担を年単位で合算する制度」と整理すると違いが分かりやすくなります。
高額療養費とは
高額療養費は、医療保険の自己負担が大きくなったときに負担を軽減する制度です。基本は月ごとの自己負担上限で計算し、2026年8月からは長期療養者等への配慮として年単位の上限も設けられています。
1か月の医療費で判定する
厚生労働省では、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度として高額療養費を案内しています。
基本となる計算単位は月ごとです。
上限額は年齢・所得で変わる
自己負担上限は一律ではありません。
年齢や所得区分などによって異なり、制度改正によって金額が変わることもあります。
2026年8月から高額療養費制度の見直しが行われているため、実際の上限額は申請時点の厚生労働省・加入医療保険の最新案内で確認してください。
高額介護合算療養費とは
高額介護合算療養費は、医療だけではなく介護保険の自己負担も重なっている世帯を対象とする制度です。
計算期間は8月1日から翌年7月31日
厚生労働省では、高額介護合算療養費の計算期間を毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間としています。
1月から12月ではないため、領収書や自己負担額を整理するときは期間を間違えないようにしてください。
医療保険上の世帯単位で判定する
医療と介護の対象自己負担を、医療保険上の世帯単位で合算します。
住民票上は同じ家族でも、加入している医療保険が異なれば、同じ合算世帯として扱われない場合があります。
違い1|計算する期間が違う
高額療養費は月額上限が基本で、2026年8月から年間上限もある
高額療養費は、原則として1日から月末までの1か月ごとに医療費を計算し、月額上限を超えた部分を支給する仕組みが基本です。さらに2026年8月からは、8月から翌年7月までを対象とする年間上限も設けられています。
ある月に入院や手術があり医療費が大きくなった場合、その月について上限を超えた部分が支給対象となります。
高額介護合算療養費は年単位
高額介護合算療養費は、8月から翌年7月までの1年間で計算します。
毎月の負担は上限以内でも、1年間を通して医療費と介護費の両方が続いた結果、年間の合算額が高くなった場合に役立つ制度です。
違い2|対象になる費用が違う
高額療養費は医療保険の自己負担
対象となるのは、原則として医療保険が適用される診療等の自己負担です。
診察、検査、手術、入院、処方薬などの保険診療が中心です。
高額介護合算療養費は医療保険+介護保険
高額介護合算療養費では、医療保険の対象自己負担と、介護保険サービスの対象自己負担を合算します。
たとえば、医療機関での保険診療費と、介護施設・訪問介護などの介護保険自己負担がある場合に確認します。
違い3|老人ホームの費用をどこまで含められるか
介護施設へ支払った金額が、そのまま高額介護合算療養費へ入るわけではありません。
介護保険サービスの自己負担は対象になり得る
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院などで支払う介護保険サービスの利用者負担は、合算対象となり得ます。
介護付き有料老人ホームで特定施設入居者生活介護を利用している場合も、介護保険部分の自己負担は対象となり得ます。
家賃・食費・居住費などは対象外
施設の家賃相当額、管理費、食費、居住費、日用品、自費サービスなどは、原則として高額介護合算療養費の対象ではありません。
施設の月額請求額全体を合算する制度ではない点に注意してください。
「老人ホームへ年間200万円払った」だけでは合算額は分からない
施設の請求額には、介護保険の自己負担と、家賃・管理費・食費などの保険外費用が含まれます。合算制度では保険対象の自己負担部分だけを確認してください。
違い4|対象外となる費用
高額療養費で対象外となる主な費用
差額ベッド代、入院時の食事に関する自己負担、自由診療などは、原則として高額療養費の上限計算には含まれません。
医療機関へ支払った金額すべてが対象になるわけではありません。
高額介護合算療養費でも保険外費用は対象外
介護施設の食費・居住費、有料老人ホームの家賃・管理費、日用品、理美容、介護保険外サービスなどは合算しません。
医療側・介護側とも「保険制度上の自己負担」が基本となります。
違い5|世帯の考え方
高額療養費も高額介護合算療養費も世帯単位の考え方がありますが、住民票上の世帯だけを見ればよいわけではありません。
医療保険上の世帯を確認する
高額介護合算療養費は、医療保険上の世帯単位で計算します。
同居している夫婦でも、一方が後期高齢者医療制度、もう一方が国民健康保険など、医療保険が異なる場合は同じ計算グループにならないことがあります。
老人ホームへ住所を移している場合も保険を確認する
親が老人ホームへ入居して住所変更している場合でも、まず現在加入している医療保険を確認します。
家族が同じ住所かどうかだけで合算できる・できないを判断しないことが重要です。
2つの制度はどちらか一方しか使えない?
高額療養費と高額介護合算療養費は、どちらか一方を選ぶ制度ではありません。
まず高額療養費による医療費の負担軽減を確認する
医療費について高額療養費が適用される場合は、月額上限や2026年8月からの年間上限による支給分を反映した後の自己負担を確認します。
その後に残った自己負担を年間で合算する
高額療養費の支給後に残る医療自己負担と、介護側でも高額介護サービス費などの支給後に残る自己負担を、8月から翌年7月までの1年間で合算します。
それが高額介護合算療養費の年額限度を超えていれば、さらに支給対象となります。
POINT
順番は「医療・介護それぞれの負担軽減を反映」→「残った対象負担を年単位で医療+介護合算」と考えると分かりやすくなります。
高額介護サービス費との違いも知っておく
介護には「高額介護サービス費」という別の制度もあります。
高額介護サービス費は介護だけを月単位で見る
介護保険サービスの1か月の自己負担が一定の上限を超えた場合に、その超過分を支給する制度です。
医療の高額療養費に近い役割を介護保険側で担っています。
高額介護合算療養費は最後に医療と介護を合わせる
高額療養費、高額介護サービス費を適用してもなお年間の負担が大きい場合に、医療と介護を合算して確認します。
制度名は似ていますが、それぞれ計算期間と対象費用が異なります。
高額療養費はいつ確認する?
入院や手術などで、1か月の医療費が大きくなることが分かった時点で確認します。
入院前に限度額の適用方法を確認する
オンライン資格確認に対応している医療機関では、一定の条件のもと、窓口で限度額を超える支払いを抑えられる場合があります。
利用方法は加入する医療保険や医療機関へ確認してください。
支払後でも高額療養費を申請できる場合がある
窓口でいったん自己負担額を支払った場合でも、上限を超えていれば後から支給を受けられる場合があります。
加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村、後期高齢者医療制度の窓口などへ確認します。
高額介護合算療養費はいつ確認する?
高額介護合算療養費は1年間の負担が確定してから確認する制度です。
7月31日で計算期間が終了する
毎年8月1日から翌年7月31日までが計算期間です。
その期間が終了した後、医療と介護の自己負担を合算して判定します。
対象と思われる人へ案内が届く場合がある
医療保険者や自治体によっては、対象となる可能性がある人へ申請案内を送る場合があります。
ただし、計算期間中に転居や保険変更があった場合などは、案内が届かないことがあります。
申請先にも違いがある
高額療養費は加入している医療保険へ
高額療養費については、国民健康保険、後期高齢者医療制度、協会けんぽ、健康保険組合など、自分が加入している医療保険へ確認します。
高額介護合算療養費は7月31日時点の医療保険を中心に確認
高額介護合算療養費では、基準日である7月31日時点に加入していた医療保険者が申請窓口となるのが基本です。
年度途中に医療保険や介護保険の保険者が変わった場合は、以前の保険者が発行する自己負担額証明書が必要になることがあります。
転居や75歳到達で保険が変わった人は注意
計算期間の途中で医療保険が変わると、1年間の記録が複数の保険者に分かれます。
75歳になり後期高齢者医療へ移った場合
計算期間の途中で75歳となり、国民健康保険や被用者保険から後期高齢者医療制度へ移ることがあります。
その場合も対象負担を通算できる可能性がありますが、手続きが通常より複雑になる場合があります。
施設入居に伴って市区町村をまたいだ場合
老人ホーム入居に伴い転居した人も、介護保険・医療保険の加入状況を確認してください。
住所地特例などが関係する場合もあるため、どの保険者へ申請すればよいか分からない場合は、現在加入している医療保険へ相談してください。
どの制度を確認すればよいかケース別に整理
01
入院した月の医療費が高い
まず高額療養費を確認します。
介護サービスも利用している場合は、その後の年間合算も確認します。
02
介護保険の自己負担が毎月高い
まず高額介護サービス費を確認します。
同時に医療費もある場合は、高額介護合算療養費の対象になる可能性があります。
03
医療費も介護費も1年間ずっとかかっている
高額療養費・高額介護サービス費を確認したうえで、高額介護合算療養費も確認します。
04
施設の食費・居住費が高い
高額療養費や高額介護合算療養費ではなく、特養・老健・介護医療院などであれば、所得・資産要件を満たす場合に介護保険負担限度額認定の対象にならないか確認します。
老人ホーム入居中の家族が確認したいチェックリスト
制度を取り違えないための確認項目
- 医療費が高かったのは何月か
- 高額療養費をすでに利用しているか
- 介護保険の自己負担はいくらか
- 高額介護サービス費を利用しているか
- 医療と介護の両方に自己負担があるか
- 合算期間が8月1日から翌年7月31日であることを確認したか
- 施設費のうち介護保険対象部分を把握しているか
- 食費・居住費を合算していないか
- 家賃・管理費・日用品を合算していないか
- 現在加入している医療保険は何か
- 家族が同じ医療保険上の世帯か
- 計算期間中に転居していないか
- 計算期間中に医療保険が変わっていないか
- その年に適用される最新の限度額を確認したか
2026年以降は古い高額療養費の上限額をそのまま使わない
高額療養費制度は、2026年8月から見直しが行われています。
過去の記事の固定額に注意する
インターネット上には、以前の所得区分や自己負担上限を前提とした解説が残っていることがあります。
本人の年齢・所得・診療年月によって適用される上限が異なるため、申請する診療月の制度を確認してください。
高額介護合算療養費も最新の限度額を確認する
合算制度の限度額も、所得・年齢などで区分されています。
記事中の古い金額を基準に自己判断せず、7月31日時点の医療保険者や自治体の最新案内を確認するのが安全です。
まとめ|医療費は高額療養費、年間の医療+介護負担は合算制度を確認
高額療養費と高額介護合算療養費は、どちらも高額な自己負担を軽減する制度ですが、役割が異なります。
高額療養費は、医療保険の自己負担について月額上限を設ける制度が基本で、2026年8月からは年単位の上限も加わっています。
高額介護合算療養費は、8月1日から翌年7月31日までの1年間について、高額療養費や高額介護サービス費などを適用した後に残る医療・介護の対象自己負担を合算し、年額上限を超えた場合に負担を軽減します。
介護施設入居中に医療費も介護費も高い場合は、「どちらの制度を使うか」と二者択一で考えず、高額療養費による医療側の負担軽減を確認したうえで、高額介護合算療養費も対象にならないか確認してください。