ペースメーカーを使用している家族の老人ホームを探すとき、「医療機器を入れていると入居できないのでは」と心配になることがあります。
ペースメーカーを使用していることだけで、老人ホームへの入居が一律に難しくなるわけではありません。ただし、本人の心臓の状態、定期受診の必要性、夜間の急変リスク、他の病気や医療処置の有無によって、必要な施設体制は変わります。
まず結論|ペースメーカーの有無より「現在の心臓の状態」と「通院・急変時対応」を確認する
ペースメーカーを使用していても、状態が安定し、施設側が必要な健康管理や通院支援に対応できれば入居できる老人ホームはあります。施設へは、ペースメーカーの種類だけでなく、植込み時期、定期受診先、次回受診時期、失神・息切れ・胸痛など最近の症状、遠隔モニタリングの有無、他に必要な医療処置を伝えてください。見学時には、夜間急変時の対応、協力医療機関、通院同行、ペースメーカー手帳等の情報管理まで確認することが大切です。
ペースメーカーを使用していても老人ホームに入れる?
ペースメーカーを使用しているという理由だけで、老人ホームへ入れないとは限りません。
入居可否は本人の状態と施設体制で判断される
施設が確認するのは、ペースメーカーの有無だけではありません。心疾患の状態が安定しているか、定期的な受診が必要か、急変時にどの程度の医療対応が必要かなどを含めて判断します。
日常生活が安定しており、定期受診で管理できている人であれば、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなどを検討できる場合があります。
心不全など他の病状も重要
ペースメーカーを使用していても、本人の状態が安定している人と、心不全や不整脈などで入退院を繰り返している人では必要な体制が異なります。
「ペースメーカー対応可」という表示だけで決めず、現在の病状まで施設へ伝えてください。
施設へ最初に伝える情報
施設へ問い合わせるときは、「ペースメーカーを入れています」だけでは情報が不足します。
01
植込み時期と機器情報
いつ植え込んだか、分かる範囲で機種・メーカー等の情報を伝えます。
02
定期受診先
どの病院の循環器科へ通っているか、どの程度の頻度で受診しているかを伝えます。
03
最近の症状
息切れ、むくみ、胸痛、失神、動悸などがある場合は隠さず伝えます。
04
他の医療処置
在宅酸素、インスリン、抗凝固薬の管理など、ペースメーカー以外の医療ニーズも伝えます。
ペースメーカー手帳等を施設と共有する
ペースメーカー使用者には、機器情報を確認できる手帳やカード等が発行されていることがあります。
機種・メーカー情報を確認できる
急な受診や検査時に、どの機器が植え込まれているか確認するために役立ちます。
施設側の保管方法を決める
本人が管理するのか、家族が原本を保管してコピーを施設へ渡すのかなど、紛失しない方法を決めてください。
救急搬送時に持参できるようにする
夜間に救急搬送となった場合でも、救急隊や医療機関へ機器情報を伝えられるようにしておくと安心です。
定期受診を続けられるか確認する
ペースメーカーは、植え込んだ後も定期的な確認が必要です。
受診先を継続できるか
入居前から通っている循環器科へそのまま通えるか確認します。
施設から遠い場合は、近隣の医療機関へ変更するかどうかを主治医と相談することがあります。
通院同行を誰が行うか
家族が付き添うのか、施設職員が対応できるのか、介護タクシーを利用するのかを確認してください。
追加費用も確認する
施設職員による通院同行には、時間単位の自費料金や交通費がかかる場合があります。
POINT
「定期受診が必要です」だけでなく、「年に何回、どの病院へ、誰の付き添いで通うか」まで決めておくと入居後の負担を把握しやすくなります。
遠隔モニタリングを利用している場合
近年のペースメーカーなどには、遠隔モニタリングに対応する機種があります。
遠隔モニタリングはデバイス情報を医療機関へ送る仕組み
日本不整脈心電学会は、心臓植込み型デバイスの遠隔モニタリングについて、リードや電池の状態、不整脈イベントなどの情報を医療従事者へ転送する仕組みを案内しています。
施設の通信環境を確認する
専用機器や通信端末を居室へ置く必要がある場合は、設置場所や電源、通信環境を確認します。
遠隔モニタリングだけで受診不要になるわけではない
遠隔で情報を確認できても、対面診療が必要になることがあります。
受診頻度や遠隔モニタリングの運用方法は、主治医の指示に従ってください。
夜間の急変時対応を確認する
ペースメーカーが正常に作動していても、心疾患そのものによる体調変化が起きることがあります。
夜間に誰が最初に対応するか
介護職員が状態を確認するのか、看護職員が施設内にいるのか、オンコールで連絡するのかを確認します。
救急搬送の流れを確認する
失神、強い胸痛、呼吸苦などが起きた場合、施設がどのように救急要請し、家族へいつ連絡するか聞いてください。
協力医療機関との連携を見る
協力医療機関に循環器科があるのか、急変時にどの病院へ搬送する可能性があるのかを確認します。
看護師が24時間常駐していないと入れない?
ペースメーカーを使用しているだけで、必ず24時間看護師がいる施設を選ばなければならないわけではありません。
状態が安定している人
日常的な医療処置がなく、定期受診で管理できている場合は、日中の看護体制と夜間オンコール等でも生活できる可能性があります。
急変リスクが高い人
心不全の悪化を繰り返している、失神がある、夜間にも医療的な観察が必要といった場合は、夜間看護体制の手厚い施設が適することがあります。
主治医にも必要な体制を確認する
施設選びに迷ったら、「夜間も看護師がいる施設が必要な状態か」を主治医へ確認する方法があります。
スマートフォンなど磁気を発する機器に注意する
ペースメーカーなどの心臓植込み型電気デバイスでは、一部の電子機器や磁石との距離に注意が必要です。
スマートフォンはデバイス本体から離す
日本不整脈心電学会は、スマートフォンなど携帯電話回線を使用する機器について、デバイス電池部から15cm離すよう案内しています。
胸ポケットなど、植込み部位のすぐ近くに入れないようにしてください。
磁石付きアクセサリーにも注意する
磁気式スマートフォンケース、磁石付きリング、ワイヤレスイヤホンケース、スマートウォッチ等にも磁石が使われている場合があります。
学会は、製品の安全情報を確認し、磁石をデバイス本体へ近づけすぎないよう注意を呼びかけています。
施設職員にも共有する
本人が認知症等で注意事項を忘れやすい場合は、職員にもペースメーカー使用者であることを伝え、居室で使う電子機器の置き場所に配慮してもらいます。
磁気機器をすべて避ける必要があるわけではない
日常の電子機器には、それぞれ安全に使用するための距離や注意事項があります。過度に怖がるのではなく、ペースメーカーのメーカー、主治医、日本不整脈心電学会等の最新の安全情報に従ってください。
MRI検査は「ペースメーカーだから絶対に不可」ではない
以前はペースメーカー使用者のMRI検査が難しいケースが多くありましたが、現在は条件付きMRI対応の心臓植込みデバイスがあります。
機種によって対応可否が異なる
条件付きMRI対応機器であっても、決められた条件を満たして検査する必要があります。
実施できる医療機関にも条件がある
日本不整脈心電学会などの運用指針では、MRI検査を行う医療機関側にも安全管理体制や所定の条件が定められています。
施設側で判断せず医療機関へ確認する
老人ホーム職員が「ペースメーカーならMRI不可」「この機種なら必ず可能」と判断するのではなく、機器情報を医療機関へ伝えて確認することが必要です。
転倒時はペースメーカーだけでなく抗凝固薬にも注意する
ペースメーカーを使用する人の中には、心房細動などのため血液を固まりにくくする薬を服用している人もいます。
薬の内容を施設へ伝える
抗凝固薬や抗血小板薬を使用している場合は、薬剤名と服用状況を施設へ共有してください。
転倒時の対応を確認する
頭を打った場合などは、薬の使用状況によって医療機関への相談が必要になることがあります。
どのような場合に受診・救急搬送するかは、主治医の指示や本人の状態に応じて判断されます。
ペースメーカー本体の植込み部位を確認する
一般的には胸部に植え込まれることが多いですが、本人によって植込み位置は異なります。
介助時に強く圧迫しない
着替え、移乗、入浴介助などで植込み部位に強い圧迫や衝撃を与えないよう、職員へ位置を伝えておきます。
皮膚状態も確認する
植込み部位の赤み、腫れ、痛みなどに気づいた場合は、主治医や医療機関へ相談してください。
入浴はできる?
植込み後の傷が治り、主治医から日常生活上の制限を受けていなければ、一般的には入浴を含む通常生活へ戻れる人もいます。
植込み直後は主治医の指示を確認する
手術後間もない場合は、創部の状態や腕の動かし方について指示があることがあります。
長期間使用している人も現在の指示を確認する
施設入居時には、過去の一般的な注意事項ではなく、現在の本人にどのような制限があるかを主治医へ確認してください。
運動・リハビリはできる?
ペースメーカー使用者でも、医師から禁止されていなければ運動やリハビリを行える場合があります。
心臓の状態に合わせる
歩行訓練や体操の可否は、ペースメーカーの存在だけでなく、心不全や他の持病、体力を含めて判断します。
上肢運動の制限が残っていないか確認する
植込み直後など、時期によっては腕の動きに注意が必要なことがあります。
リハビリ担当者へ植込み時期と主治医の指示を共有してください。
停電や災害時は何を確認する?
通常のペースメーカー本体は体内の電池で作動しますが、遠隔モニタリング機器など周辺機器には電源が必要な場合があります。
遠隔モニタリング機器の電源
停電時の扱いや、復旧後に再接続が必要かを説明書や医療機関へ確認します。
避難時に機器情報を持ち出せるようにする
ペースメーカー手帳・カード等のコピーを非常持出品と一緒に保管する方法があります。
薬も忘れない
心疾患の薬を継続している場合は、災害時の備蓄や薬剤情報の保管も確認してください。
本人の状態が悪化したら退去になる?
ペースメーカーを使用していること自体ではなく、将来的な医療ニーズの増加によって施設生活の継続が難しくなる場合があります。
心不全が悪化した場合
頻回な酸素管理、点滴、入院治療等が必要になると、一般の老人ホームでは対応できないことがあります。
長期入院になった場合
入院期間が長くなったときに契約がどうなるか、居室をどの程度確保できるかを確認します。
退去条件を契約前に見る
重要事項説明書や入居契約書で、「医療ニーズが高くなった場合」「長期入院した場合」の契約解除条件を確認してください。
施設見学で確認したいこと
ペースメーカー使用者の施設選びチェックリスト
- ペースメーカー使用者の受け入れ実績
- 看護職員の勤務時間
- 夜間の看護体制
- 夜間急変時に誰が対応するか
- 協力医療機関に循環器科があるか
- 現在の主治医へ通院を続けられるか
- 通院同行を誰が行うか
- 通院同行の追加費用
- 遠隔モニタリング機器を設置できるか
- ペースメーカー手帳等の保管方法
- 救急搬送時の連絡方法
- 服薬管理
- 他の医療処置への対応
- 長期入院時の契約
- 状態悪化時の退去条件
入居時に施設へ渡しておきたい情報
医療情報の引き継ぎ
- ペースメーカー手帳・カード等の情報
- 植込み時期
- メーカー・機種情報
- 主治医・医療機関の連絡先
- 次回の定期受診予定
- 遠隔モニタリング利用の有無
- 現在の内服薬
- 抗凝固薬等の使用
- 心不全等の既往歴
- 最近の失神・胸痛・息切れ等の有無
- 救急時に家族へ連絡する順番
どの施設種別が向いている?
ペースメーカーを使用している人に、特定の施設種別だけが適しているわけではありません。
介護付き有料老人ホーム
施設が介護を提供し、看護職員も配置されます。看護職員の勤務時間や医療連携は施設ごとに異なるため確認が必要です。
住宅型有料老人ホーム
外部の訪問介護・訪問看護等を組み合わせることがあります。本人に必要な医療支援を外部サービスで補えるか確認します。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
高齢者向け住宅であり、介護・看護の提供方法は住まいごとに異なります。ペースメーカー使用者を受け入れられるかは、併設・外部サービスを含めて確認してください。
特別養護老人ホーム(特養)
常時介護が必要な人の生活を支える介護保険施設です。ペースメーカーの有無だけでなく、要介護度や医療ニーズ等を含めて入所判定されます。
施設選びで「医療対応可」だけを見ない
ペースメーカー使用者の施設探しでは、「医療対応が充実」という広告だけでは十分ではありません。
本人に必要な支援を具体化する
必要なのが定期通院だけなのか、夜間の状態観察まで必要なのかで、選ぶ施設は変わります。
今後の変化も想定する
現在は安定していても、心不全や他の病気によって医療ニーズが高まる可能性があります。
長く住める条件を確認する
体調が変化したときにどこまで対応できるかを確認しておくと、将来の急な住み替えを減らしやすくなります。
まとめ|ペースメーカーより本人の現在の病状と施設の対応力を見る
ペースメーカーを使用していても、状態が安定し、必要な健康管理・通院支援に対応できる老人ホームであれば入居できる場合があります。
施設へは、ペースメーカーを使用していることだけでなく、植込み時期、定期受診先、最近の症状、遠隔モニタリング、服薬、他の医療処置まで伝えてください。
日本不整脈心電学会は、スマートフォン等を心臓植込み型デバイスの電池部から一定距離離すなど、日常機器の使用上の注意を案内しています。また、MRIについても機器と医療機関の条件に応じた安全管理が必要です。
老人ホーム選びで重要なのは「ペースメーカー対応可」という表示ではありません。本人が必要な定期受診を続けられ、夜間に体調が変化したときも適切に医療機関へつなげられる施設かどうかを確認することです。
