てんかんがある高齢者の老人ホーム選びでは、病名だけで「入れる・入れない」を判断するのではなく、どのような発作が、どのくらいの頻度で起こり、発作時に何が必要なのかを施設へ具体的に伝えることが重要です。
てんかん発作には、けいれんを伴うものだけでなく、突然反応がなくなる、身体の一部だけが固くなる、感覚や認知の変化が出るなどさまざまなタイプがあります。高齢者では脳卒中や認知症などを背景に発症することもあるため、日常の介護だけでなく医療連携も確認しておきたいポイントです。
てんかんがあっても老人ホームに入居できる?
てんかんがあることだけを理由に、老人ホームへ入居できないと一律に決まっているわけではありません。実際の受け入れ可否は、発作の頻度や重症度、必要な見守り、服薬管理、医療連携、夜間体制などによって施設ごとに異なります。
発作が落ち着いている人
抗てんかん発作薬で発作が長期間抑えられており、日常生活も安定している場合は、通常の介護体制で対応できる施設もあります。ただし、服薬を継続できること、万一発作が起きた際の対応方法が共有されていることは重要です。
発作が繰り返す人
発作が比較的多い場合や、発作後に強い眠気・混乱が続く場合、転倒や外傷の危険が高い場合は、見守り体制や看護職員の配置、医療機関との連絡方法まで確認しておく必要があります。
入居前に施設へ伝えておきたい発作の情報
発作の様子は一人ひとり異なります。施設へは病名だけでなく、本人固有の発作パターンを伝えることが大切です。
全身けいれん、意識が途切れる、身体の一部が動く、反応がなくなるなど、実際にどのような症状が出るかを伝えます。
年に数回なのか、月に複数回あるのか、最後に発作が起きた時期などを共有します。
本人が「においがする」「頭が変な感じがする」など前兆を自覚できる場合は、その内容と安全確保の方法を伝えます。
通常何分程度で治まるのか、発作後に眠る、混乱する、歩けなくなるなどの変化があるかを伝えます。
主治医から指示されている対応があれば、その内容を文書でも共有しておくと安心です。
服薬管理をどこまで任せられるか確認する
てんかんでは、抗てんかん発作薬を決められた方法で継続することが重要です。飲み忘れや自己中断は、発作再発のきっかけになることがあります。
服薬時間と回数
朝夕だけでなく、1日3回や就寝前など服薬時間が細かい場合は、施設がそのスケジュールで管理できるか確認します。薬剤変更が多い人では、主治医や薬局との連携方法も見ておきたい点です。
頓服薬や発作時薬の扱い
発作が長引くときなどに使用する薬が処方されている場合は、誰が、どの条件で、どのように使用するのかを事前に確認します。施設職員が実施できる範囲は薬の種類や施設体制によって異なります。
発作が長期間起きていなくても、抗てんかん発作薬を本人や家族の判断で中止するのは避けます。減量・中止は主治医の判断で行う必要があります。
発作が起きたときの対応を確認する
多くのてんかん発作は数秒から数分で治まりますが、発作が長く続く場合や繰り返す場合には緊急対応が必要になることがあります。施設見学や入居相談では、実際に発作が起きた場合の手順を確認しておきましょう。
安全確保をどう行うか
発作時には、転倒や頭部打撲などの二次的なけがを防ぐことが重要です。ベッドや車いすからの転落、浴室での発作、食事中の発作など、生活場面ごとの安全対策を確認します。
救急搬送の基準が決まっているか
いつもより発作が長い、意識が戻らない、短時間に発作を繰り返す、けがをしたなど、救急要請が必要となる状況を施設と家族で共有します。主治医から個別の指示がある場合は、その内容を施設へ渡しておきます。
発作記録を残してもらえるか
発作の時刻、持続時間、症状、発作後の状態を記録してもらえると、受診時の重要な情報になります。施設がどのように記録し、家族や主治医へ共有するかも確認しておくとよいでしょう。
夜間の発作に対応できる体制か確認する
発作が夜間や早朝に起こる人では、日中の看護体制だけではなく、夜間に誰が状態確認を行うのかが重要です。
夜勤職員の人数、看護職員の夜間配置またはオンコール体制、発作時に医師へ連絡できるか、救急搬送時に誰が同行するか、家族への連絡方法まで確認します。
「看護師24時間常駐」と書かれていない施設でも、夜間は介護職員が状態を確認し、必要時に看護職員や医師へ連絡する体制を設けている場合があります。表示だけでなく、実際の手順を聞くことが大切です。
転倒・入浴・食事中の発作リスクも確認する
てんかんのある高齢者では、発作そのものだけでなく、発作に伴う転倒や誤嚥、入浴中の事故などにも注意が必要です。
転倒しやすい人
意識消失や姿勢保持が難しくなる発作がある場合は、歩行時の見守り、居室環境、ベッド周囲の安全対策を確認します。過剰に行動を制限するのではなく、本人の生活を保ちながら事故を防ぐ方法を相談します。
入浴中に発作が起きる可能性がある人
浴室は発作時の事故につながりやすい場所です。個浴・機械浴の別、見守りや介助の方法、発作歴に応じた入浴方法を施設と相談します。
食事中の発作がある人
食事中に意識が途切れる、姿勢保持が難しくなるなどの発作がある場合は、食事時の見守りや嚥下状態も確認します。必要に応じて医師や言語聴覚士などと連携できるかも確認します。
高齢者では認知症や脳卒中などの併存疾患も見る
高齢者のてんかんでは、脳卒中、認知症、頭部外傷などが背景にある場合があります。そのため、てんかんだけでなく、認知機能や麻痺、嚥下、歩行状態、服薬数なども含めて施設を選ぶ必要があります。
認知症がある場合
本人が発作の前兆をうまく伝えられない、服薬を拒否する、発作後の混乱が強いなど、認知症によって対応が難しくなることがあります。認知症ケアの経験があるかも確認しましょう。
脳卒中後の場合
片麻痺や失語、嚥下障害などがある場合は、発作対応に加えて日常介護やリハビリの必要性も見ます。発作の有無だけでなく、生活全体を支えられる施設かで判断します。
施設見学・相談時に確認したい質問
まとめ|発作の特徴と必要な対応を具体的に伝えて選ぶ
てんかんがある高齢者の老人ホーム選びでは、病名だけで施設を選ぶのではなく、発作の種類・頻度・前兆・持続時間・発作後の状態・服薬・救急対応まで具体的に伝えることが重要です。
発作が十分にコントロールされている人まで過度に生活を制限する必要はありません。一方で、発作が長引く、転倒リスクが高い、夜間発作があるなどの場合は、施設の見守り体制と医療連携をより丁寧に確認する必要があります。
本人の発作パターンを施設が理解し、服薬・見守り・緊急時対応まで具体的に説明できるかを確認してください。主治医の診療情報や発作時の対応指示がある場合は、入居前に施設と共有しておくと安心です。