感染症がある人の老人ホーム入居で確認すること

感染症がある家族の老人ホームを探すとき、「感染症があると入居できないのでは」「ほかの入居者へうつす心配があると断られるのでは」と不安になることがあります。

ただし、「感染症がある」というだけでは入居可否は判断できません。病原体の種類、現在の症状、感染性がある時期か、治療状況、必要な感染対策、医療処置の内容によって施設側の対応は変わります。

まず結論|病名だけでなく「今の感染性・必要な対策・治療状況」を施設へ伝える

感染症がある人の老人ホーム入居では、病名だけで「入居できる・できない」と決めるのではなく、現在症状があるか、治療中か、ほかの人へ感染させる可能性がある時期か、どのような感染対策が必要かを医師に確認して施設へ伝えることが重要です。施設側には、個室対応の可否、手袋・マスク等の感染対策、服薬・処置、通院、急変時対応、症状悪化時の入院・再入居条件まで確認してください。

感染症があると老人ホームへ入居できない?

感染症があるという理由だけで、すべての老人ホームへの入居が一律に難しくなるとは限りません。

感染症によって必要な対策が違う

感染症には、飛沫、接触、空気など感染経路が異なるものがあり、必要な予防策も変わります。

厚生労働省の介護現場における感染対策の手引きでも、標準予防策を基本に、感染経路や感染症の特徴に応じた対策を行う考え方が示されています。

「感染している」と「今うつしやすい」は同じとは限らない

過去に感染した病気がある人、治療が終了している人、慢性的に管理している人、現在発症中の人では、施設が必要とする対応は異なります。

本人や家族だけで感染性を判断せず、主治医から現在の状態と必要な感染対策を確認してください。

施設へ最初に伝える情報

入居相談では「感染症があります」だけでは情報が足りません。

01

感染症の診断名

医師から診断されている感染症名を正確に伝えます。

02

現在の症状

発熱、咳、下痢、嘔吐、皮膚症状など、現在みられる症状を伝えます。

03

治療状況

治療中か、治療終了後か、継続的な服薬や処置が必要かを伝えます。

04

医師から指示されている感染対策

個室、マスク、手袋、接触時の注意など、具体的な指示があれば共有します。

05

通院・再検査の予定

次回受診日、検査予定、治療終了の判断時期などを伝えます。

入居前に主治医へ確認したいこと

施設へ問い合わせる前に、可能であれば主治医から現在の状態を整理してもらいます。

現在ほかの人へ感染させる可能性があるか

病気によって感染性が高い時期は異なります。本人の現在の状態について医師へ確認します。

集団生活で必要な対策

個室対応が必要か、共有スペースを利用できるか、食事を居室で取る必要があるかなどを確認します。

治療をどこまで継続するか

服薬期間、処置、再検査、通院頻度などを確認し、施設へ伝えます。

状態悪化時の受診基準

どのような症状が出たら医療機関へ連絡・受診するかを確認しておくと、施設側も対応しやすくなります。

「感染症対応可」の意味を具体的に確認する

施設から「感染症の方も相談可能です」と案内されても、対応内容は施設ごとに違います。

どの感染症でも対応できるわけではない

感染経路、症状、必要な治療、施設の設備や職員配置によって受け入れ可否は変わります。

症状がある時期でも入居できるか

治療が安定してから入居できるのか、感染対策を行いながら入居できるのかを確認します。

個室が必要な場合に確保できるか

感染対策上、一時的に個室で過ごす必要がある場合、施設内で対応可能か確認してください。

POINT

「感染症がありますが入れますか」ではなく、「現在この診断で治療中です。医師からはこの感染対策が必要と言われています。この条件で受け入れできますか」と具体的に相談すると判断しやすくなります。

標準予防策を実施している施設か確認する

高齢者施設では、特定の感染症がある人だけに対策を行うのではなく、日頃から基本的な感染対策を行うことが重要です。

手指衛生

ケアの前後に手洗いや手指消毒を適切に行っているか確認します。

手袋・マスク等の個人防護具

血液、体液、排せつ物、嘔吐物などへ触れる可能性がある場面で、必要な防護具を使用できる体制かを見ます。

汚染物の処理

排せつ物や嘔吐物、使用済み物品などを適切に処理できる手順があるか確認してください。

職員研修

感染症発生時だけでなく、平時から感染対策に関する研修や訓練を行っているかも確認材料になります。

施設内で感染症が発生したときの体制を見る

厚生労働省は、介護施設で感染症が発生した場合や疑われる場合、有症者の状況、受診状況、診断、検査、治療内容などを把握し、職員間で報告できる体制を整えることを重視しています。

感染対策担当者がいるか

症状が出た場合に、誰が情報を集め、施設内の対応を判断するのか確認します。

看護職員と介護職員が連携しているか

介護職員が入居者の変化に気づいた際、看護職員へ速やかに報告できる体制が重要です。

医療機関へ相談できるか

協力医療機関、訪問診療医、かかりつけ医など、感染症が疑われる場合の相談先を確認してください。

発熱・咳などの症状が出たときの対応を確認する

入居時には症状がなくても、施設生活中に感染症を発症することがあります。

どの段階で看護職員へ報告するか

発熱、咳、息苦しさ、食欲低下など、体調変化があった場合の報告手順を確認します。

受診方法

施設内で医師に診てもらうのか、外来受診するのか、救急搬送するのかを確認してください。

家族への連絡

感染症が疑われた段階で連絡するのか、診断後に連絡するのかなど、施設のルールを聞いておきます。

嘔吐・下痢がある場合

嘔吐や下痢を伴う感染症では、接触した人や環境を介して施設内へ広がることがあります。

排せつ物・嘔吐物を適切に処理できるか

処理時の手袋や防護具、周囲の消毒、汚染物の廃棄などについて施設内の手順があるか確認します。

本人の脱水にも注意する

高齢者は体調悪化が早い場合があります。食事・水分摂取量を確認し、必要時に医療へつなげられる体制が重要です。

共用スペースの利用方法を確認する

症状がある間、食堂や浴室等をどのように利用するか、施設側の感染対策を確認してください。

呼吸器感染症がある場合

インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの急性呼吸器感染症では、高齢者は重症化リスクが高いことがあります。

施設内へ持ち込まない対策

厚生労働省は、高齢者等の重症化リスクが高い人が多く利用する施設では、感染症を施設内へ持ち込まないことと、持ち込まれた場合にまん延を防止することを重視しています。

症状がある時期の入居日を確認する

現在発症中の場合は、入居日を延期する必要があるのか、個室等で対応可能なのかを施設と主治医へ確認してください。

呼吸状態が悪化した場合

息苦しさ、意識状態の変化などがある場合に、どの医療機関へ相談・搬送するかを確認します。

結核については診断・感染性を正確に伝える

結核の既往がある場合、「昔結核になった」という情報だけでは現在の感染性は判断できません。

過去の治療歴を伝える

治療終了時期や、その後の経過について分かる範囲で共有します。

現在治療中なら主治医の判断を確認する

現在の感染性や集団生活上の注意について医師から説明を受け、施設へ正確に伝えてください。

既往歴だけで自己判断しない

過去の感染歴と現在ほかの人へ感染させる状態かどうかは分けて考える必要があります。

B型肝炎・C型肝炎など血液を介する感染症の場合

血液を介して感染する病気では、日常生活上の接触と、血液へ触れる場面を分けて考えることが大切です。

血液へ触れるケアで標準予防策を行う

傷の処置、採血後の対応など血液へ触れる可能性がある場合は、手袋等を適切に使用することが基本です。

必要な通院・治療を確認する

肝疾患の状態によっては定期通院や薬物療法が必要です。

病名だけで生活を必要以上に制限しない

日常生活でどのような注意が必要かは感染経路によって異なります。医師から必要な対策を確認して施設と共有してください。

薬剤耐性菌が指摘されている場合

検査で薬剤耐性菌が確認されている場合も、現在の症状、感染部位、保菌状態、必要な感染対策などを医療機関へ確認して施設へ伝えます。

「菌がいる」という情報だけで判断しない

症状を伴う感染症なのか、検査で保菌が確認されている状態なのかで医療上の対応が異なる場合があります。

処置内容を伝える

創部処置、尿道カテーテル、気管切開などがある場合は、感染対策とあわせて施設の医療対応力を確認してください。

皮膚の感染症がある場合

皮膚症状がある人では、患部の処置と他の人への感染対策の両方を確認します。

患部の処置方法

ガーゼ交換、塗り薬など、毎日必要な処置を施設で行えるか確認します。

入浴方法

共有浴室を利用できるか、入浴順や個別対応が必要かを主治医の指示と施設ルールで確認してください。

衣類・寝具の管理

洗濯等に特別な対応が必要か、医療機関から指示がある場合は施設へ共有します。

個室隔離が必要な場合

感染症や症状によっては、一時的に他の入居者との接触を減らす対応が必要になる場合があります。

個室を確保できるか

施設が多床室中心の場合、一時的な個室対応が難しい場合があります。

隔離中の介護量を維持できるか

居室で過ごす間も、食事、排せつ、清潔、服薬など必要な介護が続けられるか確認します。

長期化した場合の扱い

感染対策が長期間必要になった場合、追加費用や居室変更、継続入居条件がどうなるかを確認してください。

面会制限の考え方も確認する

施設内で感染症が流行した場合、面会方法が一時的に変わることがあります。

一律に長期間禁止するのかを聞く

感染状況に応じて面会時間、人数、場所、マスク着用等を調整するのか確認します。

看取り期の対応

感染症流行中でも、看取り期の面会について個別に検討する施設があります。

オンライン面会等の代替策

対面面会が難しい期間に、電話やオンライン面会などを利用できるか確認してください。

認知症がある人は感染対策を守れない場合がある

認知症がある人では、マスクを外す、居室から出る、隔離の理由を理解できないなどの状況があります。

本人を叱るだけの対応にならないか

本人が感染対策の必要性を理解できない場合、繰り返し強く注意しても不安が増すことがあります。

環境で支える

居室で過ごしやすいよう活動を用意する、職員の声かけを工夫するなど、本人に合わせた対応ができるか確認します。

身体拘束を前提にしない

感染対策を理由に安易に身体を拘束するのではなく、本人の安全と感染拡大防止を両立する方法を検討することが重要です。

服薬・点滴・処置が必要な場合

感染症の治療が続いている人では、施設内でどこまで治療を継続できるか確認します。

内服薬の管理

決められた期間、薬を確実に服用できるよう施設で管理できるかを確認します。

注射・点滴等

看護職員による医療処置が必要な場合、施設の看護体制や訪問看護の利用可否を確認してください。

処置の時間帯

早朝・夜間を含め決まった時間に処置が必要な場合、看護職員の勤務時間と合うかを確認します。

通院を継続できるか確認する

感染症の経過確認や治療のために定期受診が必要な場合があります。

現在の医療機関へ通えるか

施設からの距離、送迎方法、家族同行が必要かを確認します。

施設の協力医へ引き継ぐ場合

診断名、検査結果、治療内容、感染対策上の注意点を引き継ぎます。

職員同行の費用

通院同行が自費サービスになる施設もあるため、長期治療の場合は費用も確認してください。

夜間・休日の急変対応を見る

感染症では、夜間に発熱や呼吸状態が悪化することがあります。

夜間の看護体制

看護職員が施設内にいるのか、オンコール対応なのかを確認します。

医師への連絡方法

夜間・休日に協力医療機関や訪問診療医へ連絡できるか確認してください。

救急搬送

意識状態の変化、強い呼吸苦など緊急性が高い場合、誰が救急要請して家族へ連絡するかを聞きます。

施設見学で確認したいチェックリスト

感染症がある人の施設選び

  • 現在の感染症・治療状況で受け入れ可能か
  • 入居可能になる条件があるか
  • 必要な感染対策へ対応できるか
  • 個室対応が必要な場合に確保できるか
  • 標準予防策を実施しているか
  • 感染対策担当者・委員会等の体制
  • 職員への感染対策研修
  • 看護職員の勤務時間
  • 服薬・処置へ対応できるか
  • 夜間・休日の医療連携
  • 感染症発生時の家族連絡
  • 共用部・入浴の利用方法
  • 面会制限の考え方
  • 通院方法・同行費用
  • 症状悪化時の入院対応
  • 退院後に再入居できる条件
  • 長期的な感染対策が必要な場合の退去条件

入居時に施設へ渡したい情報

感染症について共有したいこと

  • 感染症の診断名
  • 診断された時期
  • 現在の症状
  • 治療開始日・治療内容
  • 現在使用している薬
  • 検査結果
  • 主治医が判断した現在の感染性
  • 必要な感染対策
  • 個室対応の必要性
  • 必要な医療処置
  • 次回受診・再検査予定
  • 過去の入院歴
  • 主治医・医療機関の連絡先
  • 状態悪化時の医師からの指示

入院した場合に同じ施設へ戻れるか確認する

感染症が悪化して入院した場合、退院後に同じ老人ホームへ戻れるかも重要です。

再入居の条件を聞く

解熱後、医師の診断後、検査結果確認後など、施設側がどのような条件で戻れると判断するのか確認します。

退院時に必要な書類

診療情報提供書、退院時サマリー、検査結果など、施設が必要とする情報を確認してください。

長期入院時の契約

入院が長くなった場合の居室確保、月額費用、契約終了条件も重要事項説明書や入居契約書で確認します。

施設側の退去条件も確認する

入居できた後でも、感染症や医療ニーズの変化によって施設での対応が難しくなる場合があります。

長期間の医療処置が必要になった場合

点滴、頻回な吸引など、新たな医療ケアが加わった場合の受け入れ範囲を確認します。

集団生活上の感染対策が長期化した場合

個室管理等が長く必要になったとき、施設内で継続できるか確認してください。

書面で確認する

口頭説明だけでなく、施設側から契約解除できる条件を重要事項説明書・入居契約書で確認します。

「感染症があること」を隠して入居しない

入居を断られることを心配して、感染症や治療歴を施設へ伝えないのは避けてください。

本人に必要な医療を受けにくくなる

施設が治療内容を知らなければ、服薬・通院・症状観察を適切に引き継げません。

他の入居者・職員の安全にも関わる

必要な感染対策を事前に準備するためにも、正確な情報共有が重要です。

医師の情報を添えて相談する

病名だけを伝えるより、現在の感染性、必要な対策、治療状況について主治医の情報を共有すると、施設側が具体的に判断しやすくなります。

まとめ|感染症の施設選びは「病名」ではなく現在の状態と必要な対策で判断する

感染症がある人でも、本人の現在の状態と施設の感染対策・医療体制が合えば、老人ホームへ入居できる場合があります。

厚生労働省の介護現場における感染対策では、標準予防策を基本に、感染経路や感染症の特徴に応じた対策を行い、感染症が発生した場合には症状、受診、診断、検査、治療状況等を把握して医療職と連携することが重視されています。

施設へは感染症名だけでなく、現在の症状、治療状況、主治医が判断した感染性、必要な感染対策、服薬・処置、通院予定まで具体的に伝えてください。

また、施設側には、個室対応、日常の標準予防策、看護体制、夜間急変時の医療連携、感染症発生時の家族連絡、入院後の再入居条件まで確認します。

大切なのは「感染症があるから入れない」と一括りにすることではありません。本人に必要な治療を続けながら、ほかの入居者や職員の安全も守れる具体的な方法を、主治医と施設の双方へ確認して選ぶことです。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です