特別養護老人ホーム(特養)へ入所した後、介護状態が改善して要介護2や要介護1になった場合、「入所条件を外れるので、すぐ退所しなければならないのでは」と心配になることがあります。
特養は原則として要介護3以上の人を入所対象としていますが、入所後に要介護2以下になっただけで自動的に即退所になるわけではありません。施設は本人の心身状態や生活環境、家族の状況などを踏まえ、居宅で生活できるかどうかを検討します。
要介護2以下になってもすぐ退所とは限らない
まず結論|介護度だけで一律に退所が決まるわけではない
特養入所後に要介護2や要介護1へ改善しても、介護度だけを理由に直ちに退所が決まるわけではありません。施設は本人の心身状態、生活環境、家族の支援状況などを踏まえ、居宅で日常生活を営めるかどうかを定期的に検討します。
特養の運営基準では、入所者が居宅で日常生活を営むことができるかどうかを定期的に検討することが求められています。その検討は、生活相談員、介護職員、看護職員など複数職種で行います。
なぜ要介護2以下でも入所継続になることがある?
要介護度は重要な判断材料ですが、実際の生活を一つの数字だけで判断できるわけではありません。
01
認知症などで常時の見守りが必要な場合
身体機能が改善して要介護2になっても、認知症による見当識障害や帰宅願望、夜間の不穏などがあり、在宅生活で常時見守りが必要な場合があります。
このような場合は、要介護度だけでなく、実際にどの程度の支援や見守りが必要かが検討されます。
02
家族による在宅介護が難しい場合
本人の状態が改善しても、独居である、介護者が高齢や病気である、家族が遠方に住んでいるなどの事情で、居宅生活へ戻ることが難しい場合があります。
施設側は、本人の状態だけでなく、退所後にどのような生活環境になるかも考慮します。
03
在宅サービスだけでは生活維持が難しい場合
訪問介護、通所介護、ショートステイなどを組み合わせても、安全な生活が維持できないことがあります。
退所を検討するときは、「介護保険サービスを使えば自宅へ戻れるか」だけではなく、夜間や緊急時も含めて現実的に生活を続けられるかを確認します。
入所時に要介護3以上だった人と特例入所では考え方が違う?
特養は2015年4月以降、原則として要介護3以上が新規入所の対象です。一方、要介護1・2でも、居宅で日常生活を営むことが困難なやむを得ない事情がある場合は、特例入所の対象になり得ます。
すでに特養へ入所している人が更新認定で要介護1・2になった場合も、本人の生活状況や家族の支援状況を確認しながら、入所継続の必要性を検討することになります。
注意
入所継続の具体的な判断や手続きは、施設や自治体の運用によって異なります。更新認定の結果だけで自己判断せず、施設の生活相談員やケアマネジャーに確認してください。
要支援になった場合はどうなる?
要支援1・2は、特養の介護保険サービスである介護福祉施設サービスの対象となる「要介護者」には含まれません。そのため、更新認定で要支援になった場合は、要介護1・2になった場合よりも退所や次の住まいを検討する必要性が高くなります。
ただし、その場合も突然退所を求めて終わるのではなく、本人と家族の希望、健康状態、退所後の住まい、利用できるサービスなどを整理しながら移行先を検討することが重要です。
退所を検討するとき施設は何を確認する?
特養では、本人が居宅で生活できるかどうかを定期的に検討することが求められています。
本人の心身状態
食事、排せつ、移動、入浴、服薬、認知症症状、夜間の見守りなど、現在どの程度の支援が必要かを確認します。
要介護度の数字だけでなく、実際の生活でどの程度の介助が必要かを確認することが重要です。
家族や住環境
自宅へ戻る場合は、介護者の有無、家族の健康状態、住宅の段差、トイレや浴室の使いやすさなども確認します。
本人の状態が改善していても、受け入れる家族や住まいの準備が整っていなければ、すぐの退所が現実的とは限りません。
退所後に使えるサービス
訪問介護、通所介護、訪問看護、福祉用具、ショートステイなどを組み合わせ、在宅生活が現実的に維持できるかを検討します。
必要なサービス量を確保できるか、担当ケアマネジャーなどと具体的に調整します。
退所が決まった場合も支援なしで退所するわけではない
運営基準では、居宅で日常生活を営むことができると認められる入所者に対し、本人・家族の希望や退所後の環境を考慮し、円滑な退所のために必要な援助を行うことが求められています。
退所時には、居宅介護支援事業者などへ情報提供し、保健医療サービスや福祉サービスとの連携にも努めることとされています。
大切なポイント
介護度が改善したことは喜ばしい変化ですが、退所後に安全な生活を続けられるかは別問題です。退所を検討するときは、本人の希望と生活環境を含めて考える必要があります。
自宅へ戻れない場合は次の住まいを比較する
要介護度が下がって特養を退所する方向になっても、自宅へ戻ることが最適とは限りません。
01
サービス付き高齢者向け住宅
比較的自立度が高く、必要に応じて外部の介護サービスを利用しながら生活したい人の候補になります。介護度が再び上がった場合に住み続けられるかは施設ごとに確認が必要です。
02
住宅型有料老人ホーム
生活支援を受けながら、必要に応じて外部の訪問介護などを利用する仕組みです。利用する介護サービス量によって費用が変わることがあります。
03
介護付き有料老人ホーム
施設内で介護サービスを受けられるため、将来介護度が再び上がる可能性も含めて住まいを選びたい場合の候補です。受け入れ条件や医療対応は施設ごとに異なります。
04
ケアハウス
比較的自立した生活ができる人向けの軽費老人ホームです。外部介護サービスを利用する施設や、特定施設入居者生活介護の指定を受けて介護を提供する施設もあります。
家族が確認しておきたいこと
要介護度が下がったときの確認項目
- 介護度が下がっただけで退所になるのか
- 施設ではどのような基準で入所継続を判断するのか
- 本人の認知症や見守りの必要性はどう評価されるか
- 家族の介護力や住環境はどう考慮されるか
- 退所を検討する場合、いつから話し合いが始まるか
- 自宅へ戻る場合に利用できる介護サービスは何か
- 自宅が難しい場合、どのような住まいが候補になるか
- 次の住まいが決まるまでどのような支援を受けられるか
まとめ|要介護2以下になっても介護度だけで即退所にはならない
特養入所後に要介護2や要介護1になっても、介護度だけを理由に自動的に即退所が決まるわけではありません。施設は本人の心身状態、生活環境、家族の状況などを踏まえ、居宅で生活できるかどうかを定期的に検討します。
一方で、本人の状態が改善し、自宅や別の住まいで安全に生活できると判断される場合は、退所を検討することがあります。その際は本人・家族の希望を確認し、退所後の生活へ円滑に移れるよう支援を受けながら次の生活場所を決めることが大切です。