介護老人保健施設(老健)を検討するとき、「リハビリは週に何回受けられるのか」「毎日できるのか」「入所後しばらくすると回数が減るのか」は、入所前に確認しておきたい重要なポイントです。
老健ではリハビリテーションや機能訓練が重要な役割を持ちますが、すべての入所者が同じ回数・同じ時間の個別リハビリを受けるわけではありません。本人の状態、リハビリテーション計画、短期集中リハビリテーションの対象になるか、施設の実施体制などによって内容は変わります。
結論|老健の機能訓練は少なくとも週2回程度が基準だが、「個別リハが週2回」とは限らない
厚生労働省の介護老人保健施設の基準解釈では、入所者への機能訓練は1人につき少なくとも週2回程度行うこととされています。ただし、この「機能訓練」と、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などがマンツーマンで行う個別リハビリは同じ意味ではありません。さらに、入所後3か月以内に行う短期集中リハビリテーションでは、20分以上の個別リハビリを1週につきおおむね3日以上行うことが算定上の「集中的なリハビリ」の目安です。入所前は、回数だけでなく「誰が・何分・個別か集団か・入所3か月後にどう変わるか」まで確認することが大切です。
最初に確認する3点
- 週何回かだけでなく1回の内容と時間を見る
- 短期集中リハビリの対象期間を確認する
- PT・OT・STの関わり方と施設差を確認する
老健のリハビリは週に何回受けられる?
老健のリハビリ頻度を考えるときは、まず「機能訓練の基準」と「個別リハビリの実施回数」を分けて考える必要があります。
機能訓練は少なくとも週2回程度が基準
厚生労働省の「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」では、機能訓練は医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの指導のもと、目標を設定して計画的に行い、定期的に評価することとされています。
そのうえで、入所者1人について「少なくとも週2回程度」機能訓練を行うことが示されています。
POINT
「週2回程度」という基準だけを見て、「理学療法士がマンツーマンで20分ずつ週2回リハビリしてくれる」と判断しないことが重要です。実際の内容・時間・担当職種は、本人の状態や施設のリハビリテーション計画によって異なります。
個別リハビリの頻度は一律ではない
老健では、身体機能、日常生活動作、認知機能、食事や嚥下、退所後の生活環境などを踏まえてリハビリテーション計画を作成します。そのため、個別リハビリを何回行うかは全入所者で同じではありません。
施設によっては「通常は週2回の個別リハビリ」などの実施体制を設けている例がありますが、それは全国共通の固定回数ではなく、その施設の運用です。
「毎日リハビリ」と書かれていても内容を確認する
施設案内で「毎日リハビリ」「毎日運動」と書かれている場合でも、毎日PT・OT・STによる個別リハビリを行う意味とは限りません。集団体操、レクリエーション、歩行練習、介護職による生活動作の支援などを含めていることがあります。
入所後3か月以内は短期集中リハビリを受ける場合がある
老健では、入所直後の在宅復帰支援を強化する仕組みとして「短期集中リハビリテーション実施加算」があります。対象となる人に対し、入所後の一定期間に集中的なリハビリを行った場合に評価されるものです。
短期集中リハビリは入所日から3か月以内
短期集中リハビリテーション実施加算は、医師または医師の指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、入所日から起算して3か月以内の期間に集中的なリハビリを行う場合の加算です。
「集中的」の目安は20分以上を週おおむね3日以上
厚生労働省の留意事項では、老健の短期集中リハビリテーションにおける「集中的なリハビリテーション」とは、20分以上の個別リハビリテーションを1週につきおおむね3日以上実施する場合を指します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 原則として入所日から3か月以内 |
| 実施方法 | 個別リハビリテーション |
| 1回の時間 | 20分以上 |
| 頻度の目安 | 1週につきおおむね3日以上 |
入所すれば全員が短期集中リハビリの対象になるわけではない
短期集中リハビリテーション実施加算には算定要件があります。本人の状態や過去の老健入所歴、再入所の場合の条件なども関係するため、「老健なら最初の3か月は必ず週3回以上」とは考えず、本人が対象になるか施設へ確認してください。
短期集中リハビリの区分によって評価方法も異なる
令和6年度介護報酬改定では、短期集中リハビリテーション実施加算が(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられました。(Ⅰ)では、原則として入所時と月1回以上、ADLなどを評価し、必要に応じてリハビリテーション計画を見直すことなどが求められています。
入所前に加算名だけを聞くのではなく、「本人にはどのような目標を設定し、いつ評価・見直しをする予定か」まで確認すると、リハビリの考え方が分かりやすくなります。
3か月を過ぎるとリハビリ回数が変わることがある
短期集中リハビリテーションは入所後3か月以内の集中的な実施を評価する仕組みです。そのため、短期集中の対象期間が終了した後は、個別リハビリの回数や時間が変わることがあります。
「3か月後にリハビリがなくなる」という意味ではない
短期集中リハビリの対象期間が終了することと、老健でリハビリや機能訓練を行わなくなることは同じではありません。
老健では、入所者の状態や目標に応じてリハビリテーション計画を作成し、必要な機能訓練を継続します。ただし、短期集中の期間中と同じ頻度・同じ個別訓練時間がそのまま続くとは限りません。
回数だけでなく内容が変わる場合もある
個別リハビリの割合を減らし、日常生活の中で立つ・歩く・着替える・トイレへ移動するといった動作を練習する「生活リハビリ」を重視することもあります。
入所時点で3か月後の見通しを聞く
「最初は週3回、その後は週2回」など具体的な予定が決まっているとは限りませんが、施設がどのような考え方で頻度を見直すのかは確認できます。入所前に、短期集中期間中と終了後の違いを聞いておくと、期待とのずれを防ぎやすくなります。
個別リハビリ以外にも老健で行われる訓練がある
老健のリハビリを「リハビリ室でPTと運動する時間」だけで評価すると、実際の支援内容を見落とすことがあります。在宅復帰を考える老健では、生活そのものを訓練の機会として活用することも重要です。
理学療法
立ち上がり、歩行、バランス、筋力、関節の動きなど、移動に必要な基本動作を中心に支援します。退所後に自宅で安全に移動できるかという視点も重要になります。
作業療法
着替え、食事、トイレ、入浴などの日常生活動作や、手を使う活動などを通じて、本人が生活で必要とする動作を練習します。
言語聴覚療法
ことばによるコミュニケーションや、食べる・飲み込む機能に課題がある場合に、言語聴覚士が評価や訓練に関わることがあります。
生活リハビリ
居室から食堂まで歩く、自分でできる部分は自分で着替える、立位を保って排泄動作を行うなど、毎日の生活動作を利用して能力を維持・向上させる考え方です。
確認のポイント
個別リハビリの回数が多いか少ないかだけでなく、個別訓練以外の時間に介護職や看護職とどのように動作練習を行うのかまで確認すると、施設全体のリハビリ体制を判断しやすくなります。
リハビリ頻度に施設差が出る理由
老健にはリハビリ専門職の配置基準がありますが、実際のリハビリ提供体制は施設によって同じではありません。
PT・OT・STの配置人数や職種構成が違う
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の人数や職種構成によって、対応できる訓練内容は変わります。たとえば、嚥下やコミュニケーションの訓練を希望していても、言語聴覚士の配置・勤務日によって対応状況が異なることがあります。
入所者の状態と目標が違う
同じ施設に入所していても、歩行の再獲得を目標にする人と、現在の能力を維持することを目標にする人では、必要なリハビリ内容が異なります。
在宅復帰支援の方法が違う
リハビリ室での訓練を重視する施設もあれば、居室・食堂・トイレなど実際の生活場面での練習を組み合わせる施設もあります。そのため、「個別リハビリの回数」だけでは施設の支援力を比較しきれません。
入所前に確認したいリハビリの7項目
見学や入所相談では「リハビリは週何回ですか?」だけで終わらせず、次のように具体的に確認します。
01
個別リハビリは週に何回ですか?
本人の場合の想定回数を確認します。施設全体の平均や標準回数だけでなく、本人の状態ではどの程度になる見込みかを聞きます。
02
1回は何分ですか?
「週3回」でも1回の時間によって内容は変わります。個別訓練の時間を確認します。
03
誰が担当しますか?
PT・OT・STのうち誰が関わるのか、本人の課題に必要な専門職が配置されているかを確認します。
04
短期集中リハビリの対象になりますか?
対象になる場合は、期間、週の実施日数、1回の時間、目標を聞きます。
05
入所3か月後はどうなりますか?
短期集中期間終了後に、個別リハビリの頻度や内容をどのように見直すのか確認します。
06
生活リハビリはどのように行いますか?
食事、排泄、移動、着替えなど、日常生活の中で介護職とどのように動作練習を行うかを聞きます。
07
評価結果を家族にどう説明しますか?
リハビリの目標、経過、計画変更、退所の見通しなどを、いつ・誰から説明してもらえるか確認します。
回数だけで老健を選ばないための判断ポイント
リハビリ頻度は重要ですが、「週3回なら良い施設、週2回なら悪い施設」という単純な比較はできません。
本人の目標に必要な内容があるかを見る
自宅の階段を上がれるようになりたい人、トイレ動作を自立したい人、食事を安全に続けたい人では、必要な専門職と訓練内容が違います。
施設を比較するときは、回数の多さよりも「本人の退所後の生活に必要な課題を評価し、その課題に合った訓練を組めるか」を確認します。
個別訓練と生活場面での支援がつながっているかを見る
リハビリ室で歩行練習をしていても、普段の生活ではほとんど歩く機会がなければ、生活へのつながりが弱くなる場合があります。
リハビリ専門職と介護職・看護職が情報を共有し、施設生活の中でも本人の能力を活かす支援をしているかを確認してください。
見学時の最終チェック
- 本人の個別リハビリは週何回・1回何分か
- PT・OT・STの誰が担当するか
- 短期集中リハビリの対象になるか
- 入所3か月後に頻度や内容がどう変わるか
- 個別訓練以外の生活リハビリがあるか
- 目標と評価結果を家族へ説明する機会があるか
- 退所後の自宅生活を想定した訓練を行うか
まとめ|「週何回」だけでなく3か月後まで確認する
老健の機能訓練は、厚生労働省の基準解釈で入所者1人につき少なくとも週2回程度行うこととされています。ただし、これはPT・OT・STによる20分以上の個別リハビリが必ず週2回提供されるという意味ではありません。
短期集中リハビリテーションの対象になる場合は、入所後3か月以内に20分以上の個別リハビリを1週につきおおむね3日以上行うことが、算定上の「集中的なリハビリ」の目安です。ただし、対象要件があるため、入所者全員に一律で実施されるわけではありません。
入所前は、「本人の場合は週何回か」「1回何分か」「誰が担当するか」「短期集中の対象か」「3か月後にどう変わるか」「生活リハビリをどう行うか」まで確認してください。回数だけでなく、本人の在宅復帰や生活目標につながる内容になっているかを見ることが大切です。