介護老人保健施設(老健)を検討していると、「短期集中リハビリテーション」という言葉を目にすることがあります。名前だけを見ると、入所直後に誰でも集中的なリハビリを受けられるように思えますが、実際には介護報酬上の算定要件があり、対象期間や実施頻度も定められています。
また、「短期集中リハビリテーション」と「認知症短期集中リハビリテーション」は別の加算です。対象者や要件が異なるため、混同しないことが大切です。
結論|老健の短期集中リハビリは、入所後3か月以内に行う個別リハビリを評価する仕組み
老健の短期集中リハビリテーション実施加算は、医師または医師の指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、入所日から3か月以内に集中的な個別リハビリを行った場合に算定される加算です。現在は(Ⅰ)と(Ⅱ)があり、いずれも1回20分以上、1週につき3日以上の個別リハビリが基本です。(Ⅰ)では、これに加えて入所時および月1回以上のADL評価、LIFEへのデータ提出、必要に応じたリハビリテーション計画の見直しが求められます。
最初に確認する3点
- 対象となる入所後3か月以内か確認する
- 1回20分以上・週3日以上等の要件を確認する
- 通常リハビリとの違いと終了後の計画を見る
老健の短期集中リハビリテーションとは
短期集中リハビリテーションは、老健に入所した人の身体機能や日常生活動作の改善を目指して、入所初期に集中的な個別リハビリを行う取り組みです。
介護報酬では「短期集中リハビリテーション実施加算」として評価されます。老健の通常のリハビリとは別に、一定の要件を満たして集中的なリハビリを実施した日に加算されます。
対象期間は入所日から3か月以内
算定できるのは、原則として老健へ入所した日から起算して3か月以内です。
ここでいう「3か月」は、リハビリそのものが3か月で終わるという意味ではありません。短期集中リハビリテーション実施加算として評価される期間が3か月以内という意味です。
3か月を過ぎたらリハビリがなくなるわけではない
短期集中リハビリの算定期間が終了しても、本人の状態や目標に応じたリハビリや機能訓練は続きます。ただし、短期集中期間中と同じ回数・時間の個別リハビリがそのまま続くとは限りません。
個別リハビリを集中的に行う
短期集中リハビリテーションの対象となるのは、医師または医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が行う個別リハビリです。
1回20分以上
算定上の要件では、1日あたり20分以上の個別リハビリを行います。
1週につき3日以上
短期集中リハビリとして扱うためには、1週間に3日以上の実施が基本です。単に「週3回」という回数だけではなく、1回の時間と個別実施であることも重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 入所日から3か月以内 |
| 実施方法 | 個別リハビリテーション |
| 1回の時間 | 20分以上 |
| 頻度 | 1週につき3日以上 |
| 主な担当 | 医師、PT、OT、ST |
短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
現在の介護報酬では、老健の短期集中リハビリテーション実施加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)に分かれています。
| 区分 | 主な違い |
|---|---|
| (Ⅰ) | 集中的な個別リハビリに加え、ADL評価・LIFE提出・必要に応じた計画見直しを実施 |
| (Ⅱ) | 集中的な個別リハビリを実施 |
(Ⅰ)は258単位/日
短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)は258単位/日です。
1週につき3日以上、1日20分以上の個別リハビリを入所後3か月以内に実施することに加え、原則として入所時と月1回以上、ADLなどを評価します。その評価結果をLIFEへ提出し、必要に応じてリハビリテーション計画を見直すことが求められています。
LIFEはケアの質改善に使う情報基盤
LIFEは、介護サービス事業所から提出された利用者の状態やケアに関する情報を蓄積し、フィードバックなどを通じてケアの質向上につなげる仕組みです。
(Ⅰ)では、単にリハビリを一定回数実施するだけでなく、評価結果をもとに計画を確認・見直していく点が重要です。
(Ⅱ)は200単位/日
短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)は200単位/日です。
入所後3か月以内に、1週につき3日以上、1日20分以上の個別リハビリを行うことが基本となります。
POINT
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは「リハビリの回数が多いか少ないか」ではありません。どちらも集中的な個別リハビリを行う点は共通し、(Ⅰ)ではADL評価やLIFEへのデータ提出、計画の見直しまで含めた取り組みが追加されています。
短期集中リハビリは誰でも必ず受けられるわけではない
老健へ入所したからといって、すべての人が自動的に短期集中リハビリテーション実施加算の対象になるわけではありません。
本人に集中的なリハビリが必要かを判断する
実際のリハビリ内容は、本人の身体機能、日常生活動作、疾患、認知機能、退所後の生活環境などを踏まえて検討されます。
リハビリ専門職がいるからといって、全員に同じ訓練を同じ回数行うわけではありません。
過去の老健入所歴が影響する場合がある
短期集中リハビリテーション実施加算には、直近の老健入所歴に関する要件があります。原則として、過去3か月の間に介護老人保健施設へ入所したことがないことが要件の一つです。
再入所でも算定できる例外がある
一方で、入院を挟んで再入所した場合などには例外があります。たとえば、4週間以上入院した後に再入所し、短期集中リハビリが必要と認められる場合や、4週間未満の入院でも脳梗塞など一定の状態に該当する場合には、再び対象になることがあります。
再入所の場合は自己判断しない
再入所時の算定可否には入院期間や本人の状態など細かな条件があります。「以前に老健へ入ったから対象外」「退院後だから必ず対象」と決めつけず、入所予定の施設へ確認してください。
短期集中リハビリでは何をする?
短期集中リハビリの内容は本人の課題によって異なります。単に筋力トレーニングを繰り返す制度ではありません。
起き上がり・立ち上がり・歩行
ベッドから起き上がる、椅子から立つ、屋内を歩くなど、退所後の生活に必要な基本動作を練習します。
着替え・排泄・入浴などの日常生活動作
自宅で生活するためには、歩行だけでなく着替え、トイレ、入浴、食事などの動作も重要です。本人がどの部分を自分で行え、どこに介助が必要かを評価しながら練習します。
手や腕を使う動作
食事動作、整容、家事などに必要な上肢機能について、作業療法士が関わることがあります。
ことば・嚥下の訓練
会話や意思伝達、食べる・飲み込む機能に課題がある場合は、言語聴覚士が評価やリハビリに関わることがあります。
退所後の生活を想定した練習
老健は在宅復帰支援を担う施設です。そのため、単に身体機能を上げることだけでなく、退所後にどのような住環境で生活するかを踏まえて目標を設定することが重要です。
「短期集中」と「認知症短期集中」は別の制度
名前が似ていますが、「短期集中リハビリテーション実施加算」と「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」は別の制度です。
短期集中リハビリテーション
入所初期に身体機能や日常生活動作の改善を目指して、集中的な個別リハビリを実施する仕組みです。
認知症短期集中リハビリテーション
認知症であると医師が判断し、リハビリによって生活機能の改善が見込まれる人を対象として、認知症の特性を踏まえた集中的なリハビリを行う別の加算です。
「認知症がある=通常の短期集中リハビリを受けられない」ではない
両制度は対象・要件が異なります。認知症がある人について、どの加算やリハビリが適用されるかは本人の状態と施設の判断によって決まるため、具体的な適用関係は入所予定の老健へ確認してください。
短期集中リハビリの費用はどう考える?
短期集中リハビリテーション実施加算は、介護保険サービス費に上乗せされる加算です。そのため、対象となる日に算定されると、利用者は介護保険の負担割合に応じた自己負担を負います。
加算(Ⅰ)は258単位/日、(Ⅱ)は200単位/日
制度上の単位数は、(Ⅰ)が258単位/日、(Ⅱ)が200単位/日です。
ただし、「258単位=258円をそのまま支払う」という意味ではありません。実際の金額は地域区分による1単位あたりの単価や、本人の介護保険負担割合によって変わります。
自己負担額は施設へ確認する
入所前に、本人が(Ⅰ)(Ⅱ)のどちらの対象になる見込みか、何日程度算定する予定か、自己負担額がどの程度になるかを施設へ確認してください。
数字の見方
単位数だけを見て費用を判断せず、「どの区分を何日算定するのか」「自分の負担割合ではいくらになるのか」まで確認することが重要です。
入所前に確認したい6つのポイント
短期集中リハビリの有無だけでは、本人に合う老健かどうかは判断できません。次の点まで確認します。
01
本人は短期集中リハビリの対象ですか?
入所予定者の状態や過去の老健入所歴を踏まえて、対象になる見込みを確認します。
02
(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらを算定しますか?
施設が届け出ている区分と、本人についてどちらを予定しているかを確認します。
03
週何日・1回何分行いますか?
「短期集中を行います」という説明だけでなく、予定する頻度と時間を具体的に聞きます。
04
PT・OT・STの誰が担当しますか?
本人の課題に合う専門職が関わるかを確認します。
05
どのような目標を設定しますか?
歩行、排泄、着替え、食事、嚥下など、退所後の生活につながる具体的な目標があるかを聞きます。
06
3か月後はどうなりますか?
短期集中期間が終了した後、個別リハビリの頻度や内容をどのように見直す予定か確認します。
まとめ|「3か月間リハビリが多い制度」とだけ覚えない
老健の短期集中リハビリテーション実施加算は、入所後3か月以内に、医師または医師の指示を受けたPT・OT・STが集中的な個別リハビリを行った場合に算定される制度です。
(Ⅰ)は258単位/日、(Ⅱ)は200単位/日で、いずれも1日20分以上、1週につき3日以上の個別リハビリが基本です。(Ⅰ)ではさらにADL評価、LIFEへのデータ提出、必要に応じたリハビリテーション計画の見直しが求められます。
ただし、入所者全員が自動的に対象になるわけではなく、再入所では過去の入所歴や入院状況が関係する場合もあります。入所前は、対象になるかどうか、(Ⅰ)(Ⅱ)のどちらか、実施頻度、担当職種、目標、3か月後のリハビリまで確認してください。