介護付き有料老人ホームを選ぶとき、「居室は何畳くらいあるのか」「トイレや洗面台は室内にあるのか」「自宅で使っていたタンスやテレビを持ち込めるのか」と、毎日過ごす部屋の環境が気になる人は多いでしょう。
介護付き有料老人ホームの居室は、単に広ければよいわけではありません。ベッドからトイレまで安全に移動できるか、車いすで方向転換できるか、介護職員が介助できるスペースがあるか、緊急時に職員を呼べるかなど、本人の身体状態に合っていることが重要です。
結論|居室は「面積」だけでなく、設備・介護動線・家具を置いた後の使いやすさまで確認する
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、一般居室・介護居室などは個室とし、入居者1人当たりの床面積を13㎡以上とすることが示されています。一方、介護保険の特定施設入居者生活介護の設備基準では、介護居室は原則1人用で、プライバシーに配慮し、介護を行える適当な広さを確保することが求められています。実際の面積、トイレ・洗面・収納などの設備、家具の持ち込み可否は施設ごとに異なるため、内覧時は「家具を置いた後に安全に生活できるか」まで確認してください。
最初に確認する3点
- 居室面積の数字だけで判断しない
- トイレ・洗面・収納・動線を見る
- 持込家具と転倒リスクを一緒に確認する
介護付き有料老人ホームの居室はどのくらいの広さ?
有料老人ホームの居室については、厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」で、一般居室・介護居室・一時介護室は個室とし、入居者1人当たりの床面積を13㎡以上とすることが示されています。
13㎡は約8畳という単純計算では判断しない
13㎡という数字だけを見ても、実際にどの程度使いやすいかは分かりません。
同じ面積でも、柱の位置、収納、洗面台、トイレ、扉の開き方などによって、家具を置いた後に使えるスペースは変わります。
特定施設の介護保険基準は「介護できる適当な広さ」
介護付き有料老人ホームが指定を受ける「特定施設入居者生活介護」の設備基準では、介護居室について、プライバシーの保護に配慮し、介護を行える適当な広さであることが求められています。
そのため、施設選びでは13㎡という数字だけでなく、本人に必要な介助を実際に行える空間かを見ることが重要です。
13㎡は厚生労働省の標準指導指針上の基準
実際の有料老人ホームは、自治体の指導指針、既存建物の活用に関する特例、開設時期などによって扱いが異なる場合があります。「13㎡未満だから直ちに違法」と自己判断せず、施設の重要事項説明書や自治体への届出内容を確認してください。
居室は原則個室?夫婦で使える部屋もある?
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、一般居室・介護居室などは個室とすることが基本です。
特定施設入居者生活介護の介護居室も、1室の定員は原則1人とされています。
例外的に2人で利用する場合がある
特定施設の設備基準では、利用者の処遇上必要と認められる場合は2人とすることができるとされています。
また、有料老人ホームによっては夫婦向けの2人居室を用意している場合があります。
2人部屋は面積だけでなく介護のしやすさも確認する
夫婦2人で使う場合は、ベッドを2台置いた後に車いすで移動できるか、片方が介護状態になったときに職員が介助できるかを確認します。
居室内にはどんな設備がある?
居室に標準装備されている設備は施設ごとに異なります。
ベッド、収納、トイレ、洗面台、エアコンなどが最初から設置されている施設もあれば、一部を自分で準備する施設もあります。
緊急通報装置
指定特定施設の介護居室では、非常通報装置またはこれに代わる設備を設けることが基準で求められています。
ただし、ボタンがベッド脇にあるだけでは本人が使えない場合があります。ベッド上、トイレ、床に転倒した状態など、本人が実際に操作できる位置かを確認してください。
トイレ
すべての居室に必ず専用トイレが付いているとは限りません。
厚生労働省の有料老人ホーム標準指導指針では、居室内に設置しない場合には、全入居者が利用できる適当な規模・数の便所を設けることとされています。
要介護者が使用する便所については、居室内または居室のある階の居室に近い場所に設け、緊急通報装置等を備え、身体の不自由な人が使いやすい設備とすることが示されています。
洗面設備
洗面台も居室内に設ける施設と共用にする施設があります。
車いす利用者なら、洗面台の下に足が入るか、水栓を操作しやすいかも確認します。
収納
クローゼットや収納棚が備え付けられている場合があります。
収納量が少ないと家具を追加する必要があり、その分、移動スペースが狭くなるため注意が必要です。
エアコン・照明・カーテン
エアコンや照明が備え付けか、カーテンは防炎製品を指定されるかなどを確認します。
特にカーテンや寝具などは消防・防火上のルールに関わるため、自己判断で持ち込まず施設へ確認してください。
家具は持ち込める?
介護付き有料老人ホームでは、自宅で使っていた家具を持ち込める施設があります。
ただし、家具持ち込みの可否やサイズ、種類に全国一律のルールがあるわけではありません。施設の管理規程や入居契約、消防・安全上のルールに従います。
持ち込みやすい家具の例
- 小型のタンス
- テレビ台
- 椅子
- サイドテーブル
- 写真立て
- 小型収納家具
実際に持ち込めるかは施設へ確認してください。
大きな家具は介護動線を狭くすることがある
自宅で使っていた大きなタンスや棚をそのまま置くと、ベッド脇の介助スペースや車いすの通路が狭くなることがあります。
今は歩けていても、将来車いすや歩行器が必要になる可能性まで考えて配置することが大切です。
家具を置いた状態で必要な介助ができるか確認する
ベッドから車いすへの移乗で職員が立つ場所、車いすが方向転換する場所、トイレまでの通路が確保できるかを確認します。
POINT
「家具を持ち込めるか」だけでなく、「持ち込んだあとも安全な介護スペースが残るか」が重要です。入居前に居室の寸法を測り、持ち込む家具の幅・奥行き・高さと照合すると失敗を防ぎやすくなります。
持ち込みできない・制限されやすいもの
施設では、火災や転倒、衛生管理などの理由から、持ち込みを制限している物があります。
火を使うもの
石油ストーブ、ろうそく、線香など、火災リスクのある物は持ち込みを禁止・制限している施設があります。
高出力の電化製品
電気ストーブ、電気ポット、IH調理器などは、やけどや火災のリスクから使用方法を制限している場合があります。
転倒しやすい家具
背が高く固定できない棚や、通路を塞ぐ家具などは安全上持ち込めない場合があります。
食品・冷蔵庫
小型冷蔵庫を持ち込める施設もありますが、食品の衛生管理や認知症による誤食などの観点から制限されることがあります。
禁止物は施設ごとに違う
「有料老人ホームでは○○は禁止」と全国一律に決まっているわけではありません。持ち込み予定の家具・家電は一覧にして、契約前に施設へ確認してください。
介護ベッドは自分で持ち込む?施設のものを使う?
介護ベッドについては、施設側が居室設備として用意している場合と、別途準備が必要な場合があります。
施設備え付けなら仕様を確認する
電動背上げ、高さ調整、サイドレールなど、本人に必要な機能があるか確認します。
自宅の介護ベッドをそのまま持ち込めるとは限らない
サイズ、電源、安全基準、施設内の介護方法などの理由から、持ち込みを制限する場合があります。
入居前にベッドを処分せず、施設側の設備と持ち込み可否を確認してから判断してください。
居室選びではトイレまでの動線を見る
高齢者にとっては、居室全体の広さよりも、日常的に使う場所まで安全に移動できることが重要です。
ベッドからトイレまでの距離
夜間に何度もトイレへ行く人は、ベッドからトイレまでの距離が長いと転倒リスクが高くなることがあります。
手すりの位置
本人が立ち上がる方向や利き手に合う位置に手すりがあるか確認します。
扉の開閉方法
車いすを使用する場合は、開き戸より引き戸のほうが扱いやすいことがあります。
ただし、実際の使いやすさは本人の身体状態によるため、見学時に動作を想定してください。
夜間の照明
足元灯やトイレまでの照明があるか、暗い時間帯でも安全に移動できるかを確認します。
車いすを使うなら「空いている床面積」を確認する
介護付き有料老人ホームの設備基準では、施設全体について利用者が車いすで円滑に移動できる空間と構造を確保することが求められています。
しかし、居室に家具を追加すると、入居前より使えるスペースは狭くなります。
ベッド横の介助スペース
移乗介助が必要な人は、ベッド横に職員が立ち、車いすを近づけるスペースが必要です。
車いすの方向転換
居室入口からベッド、トイレ、洗面台まで、車いすが無理なく移動・転回できるか確認します。
将来の介護度上昇まで考える
入居時は杖歩行でも、将来歩行器や車いすが必要になることがあります。
「今の身体状態で困らない」だけでなく、介護量が増えた場合でも使いやすい部屋かを確認すると、住み替えのリスクを減らせます。
居室の設備は重要事項説明書でも確認する
内覧で見た部屋だけで判断せず、重要事項説明書や契約書でも居室条件を確認します。
専用居室の面積
モデルルームではなく、本人が実際に契約する居室番号・タイプの面積を確認します。
居室内設備
トイレ、洗面、収納、浴室、キッチン、緊急通報装置など、何が専用設備で何が共用設備なのか確認します。
家具・家電の持ち込み条件
持ち込み可能な家具、禁止されている家電、壁への穴開け、家具固定のルールなどを確認します。
退去時の原状回復
家具設置による傷や設備変更があった場合、退去時にどこまで原状回復費用が必要になるかも契約書で確認してください。
見学時に居室で確認したい10項目
居室は数分見るだけでなく、本人が朝から夜まで生活する場面を想定して確認します。
01
実際の居室面積は何㎡ですか?
パンフレットの最大面積ではなく、契約予定の部屋の面積を確認します。
02
トイレは居室内にありますか?
共用の場合は、居室からの距離と夜間の移動方法を確認します。
03
洗面台は車いすでも使えますか?
高さ、足元スペース、水栓の操作性を確認します。
04
緊急通報装置はどこにありますか?
ベッド、トイレなど本人が実際に使える位置か確認します。
05
ベッドは備え付けですか?
介護ベッドの機能と、自分のベッドを持ち込めるかを確認します。
06
家具はどこまで持ち込めますか?
サイズ、個数、固定方法、禁止品を確認します。
07
家具を置いた後も車いすで動けますか?
ベッド横、トイレまでの通路、方向転換スペースを確認します。
08
収納は十分ありますか?
備え付け収納のサイズを確認し、追加家具が本当に必要か判断します。
09
コンセント・テレビ端子・通信環境はどうなっていますか?
テレビ、冷蔵庫、スマートフォン充電など、実際に使う機器を想定して確認します。
10
退去時の原状回復ルールは?
家具固定や壁への取り付けを行う前に、契約上の扱いを確認します。
家具は入居前に全部買わず、実際の部屋を測ってから決める
居室を自宅らしく整えるために家具を準備することは大切ですが、契約前に買い揃えると、実際の部屋に入らない、介護動線を塞ぐといった失敗につながります。
居室の寸法を測る
部屋の縦横だけでなく、ドア幅、収納扉の開閉範囲、トイレ入口、コンセント位置などを確認します。
必要最低限から始める
まずベッド、衣類収納、テレビ周辺など最低限の家具で生活を始め、必要になったものを追加する方法もあります。
本人になじみのある物も活用する
写真、時計、小さな家具など、本人が長年使ってきた物を置くことで、新しい環境でも落ち着きやすくなる場合があります。
居室確認の最終チェック
- 本人が契約する居室の実面積
- 個室か2人居室か
- トイレ・洗面・収納の有無
- 緊急通報装置の位置
- 介護ベッドの有無と仕様
- 家具・家電の持ち込み条件
- 車いす・歩行器の移動スペース
- ベッド横の介助スペース
- 夜間のトイレ動線
- コンセント・テレビ・通信環境
- 防火上の持ち込み制限
- 退去時の原状回復ルール
まとめ|広さの数字より「家具を置いた後に安全に暮らせるか」を確認する
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、一般居室・介護居室などを個室とし、入居者1人当たり13㎡以上とすることが示されています。また、特定施設入居者生活介護の設備基準では、介護居室は原則1人用で、プライバシーを確保し、介護を行える適当な広さが必要です。
ただし、居室の使いやすさは床面積だけでは決まりません。トイレや洗面台の位置、収納量、ベッドからの動線、緊急通報装置、車いすの転回スペースなどによって生活のしやすさは大きく変わります。
家具についても、自宅で使っていた物を持ち込める施設がありますが、持ち込み可否やサイズ、家電、防火上の制限は施設ごとに異なります。
入居前には実際の居室を確認・採寸し、持ち込む家具を置いた状態で本人と介護職員が安全に動けるかを考えてください。「何㎡あるか」だけでなく、「その部屋で介護が必要になっても暮らし続けられるか」が重要な判断ポイントです。