介護付き有料老人ホームの職員離職率は確認できる?

介護付き有料老人ホームを選ぶとき、「職員がすぐ辞める施設ではないか」「ベテラン職員が長く働いているか」は気になるポイントです。職員が頻繁に入れ替わると、入居者の状態や生活習慣が十分に引き継がれにくいのではないかと不安に感じる家族もいるでしょう。

まず結論|「離職率○%」より退職者数・職員数・経験年数を組み合わせて確認する

介護付き有料老人ホームの職員の定着状況は、厚生労働省の介護サービス情報公表システムで確認できます。ただし、すべての施設について「離職率○%」がそのまま表示されるわけではありません。主に前年度の退職者数、現在の職員数、介護業務の経験年数、資格者数などを確認します。

退職者数と現在の職員数は集計時点が異なるため、単純に割り算して正式な離職率と断定するのは適切ではありません。施設比較では、退職者数だけでなく、経験年数の長い職員がどの程度いるか、常勤職員がどの程度いるか、見学時に職員が落ち着いて働いているかまで合わせて判断することが重要です。

この記事では、介護付き有料老人ホームの職員離職率・定着状況をどこで確認できるのか、介護サービス情報公表システムの見方、数字をどう解釈すればよいか、見学時に確認したいポイントまで解説します。

介護付き有料老人ホームの職員離職率は公開されている?

施設ごとの職員の定着状況は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で確認できます。

このシステムは、介護保険法に基づき、利用者が介護サービス事業所を比較・検討できるよう、全国の事業所情報を公表するものです。

「離職率」より「前年度の退職者数」を見る

公表システムでは、介護職員や看護職員などについて、前年度の退職者数が公表されます。

あわせて、現在の常勤・非常勤の従業者数、業務経験年数なども確認できます。

厚生労働省の「基本情報の読み解き方」でも、前年度の退職者数と従業者数を合わせて見ることで、事業所・施設における従業者の定着状況をうかがえると説明されています。

公表システムの退職者数は、施設を比較する有力な材料です。ただし、正式な「離職率」を単純計算するための数字としてではなく、他の職員情報と合わせて読むことが重要です。

介護サービス情報公表システムでは何を確認できる?

介護付き有料老人ホームの職員体制を見るときは、退職者数だけでなく複数の項目を確認できます。

確認項目 分かること
常勤・非常勤の職員数 職種別の人員構成
常勤換算人数 勤務時間を常勤職員数へ換算した人員量
前年度の退職者数 直近年度に退職した職員数
経験年数 介護業務等の経験が長い職員がどの程度いるか
資格者数 介護福祉士などの資格保有状況
看護職員数 看護職員の常勤・非常勤構成

退職者数は職種別に見る

介護付き有料老人ホームでは、介護職員だけでなく看護職員などについても退職者数が公表される場合があります。

たとえば、介護職員は安定していても看護職員の入れ替わりが多い、ということもあります。

本人に医療的な支援が必要なら、看護職員の定着状況も確認してください。

退職者数から離職率を計算してもいい?

目安として状況を考えることはできますが、単純な割り算を正式な離職率として扱うのは避けたほうがよいでしょう。

退職者数と現在の職員数は時点が違う

厚生労働省の公表システムでは、「前年度の退職者数」と「調査時点の従業者数」が公表されています。

前年度1年間の退職者数と、ある一時点の職員数では、集計期間・時点が異なります。

そのため、単純に「前年度退職者数÷現在の職員数」で計算した値を、その施設の正式な離職率と断定するのは適切ではありません。

採用・増員があると数字の見え方が変わる

たとえば、新規フロア開設などで職員を増員している施設では、現在の職員数が前年より大きく増えていることがあります。

反対に、退職後の求人が埋まっていなければ、現在の職員数は少なくなります。

数字の背景を知らずに割り算だけで比較すると、実際の職員定着状況を誤って評価する可能性があります。

「退職者数が多いか少ないか」だけでなく、現在の職員数・採用状況・施設規模・増床の有無まで確認すると、数字の意味を判断しやすくなります。

退職者数が何人なら多い?

「年間○人以上なら悪い施設」と全国共通の人数で判断することはできません。

職員50人の施設で5人退職した場合と、職員10人の施設で5人退職した場合では意味が大きく異なります。

施設規模と合わせて見る

退職者数を見るときは、少なくとも次の数字を並べて確認してください。

  • 介護職員の現在人数
  • 看護職員の現在人数
  • 前年度の退職者数
  • 常勤・非常勤の内訳
  • 入居者数

前年だけでなく継続的な傾向を確認できるとよい

一年度だけ退職者が多かったとしても、事業拡大、管理者交代、定年退職など事情がある場合があります。

見学時には、「昨年度は退職者が多いようですが、何か背景がありますか」「現在は欠員がありますか」と具体的に聞いてみましょう。

勤続年数は公表システムで分かる?

公表システムでは、職員の「その施設での勤続年数」そのものではなく、主に当該職種として介護サービス業務に従事した経験年数を確認できます。

そのため、「このホームで10年以上働いている職員が何人いるか」を、公表情報だけで完全に把握できるとは限りません。

経験年数が長い職員の割合を見る

公表情報では、経験年数について、たとえば次の区分で職員数を確認できます。

  • 1年未満
  • 1年以上3年未満
  • 3年以上5年未満
  • 5年以上10年未満
  • 10年以上

経験年数の長い職員が一定数いる施設は、介護経験の蓄積という点では参考になります。

「経験年数」と「この施設での勤続年数」は違う

10年以上の経験がある職員でも、その施設へ転職して1年目ということがあります。

職員の定着状況をより詳しく知りたい場合は、見学時に「平均勤続年数」「長く勤務している職員の割合」などを施設へ直接確認してください。

常勤職員の割合も確認したほうがいい?

確認する価値があります。

介護サービス情報公表システムでは、職種ごとに常勤・非常勤の人数が分かります。

常勤比率だけで質を決めない

常勤職員が多い施設は、日常的な情報共有や継続的な関わりという点で一つの参考になります。

一方、経験豊富な非常勤職員が長期間勤務している施設もあります。

そのため、「非常勤が多い=悪い」と単純化せず、勤務時間、経験年数、夜間体制などと合わせて確認してください。

常勤換算人数も見る

非常勤職員を含む施設では、実人数だけでなく常勤換算人数を見ることが重要です。

常勤換算人数は、職員の勤務延べ時間を、その施設における常勤職員の勤務時間で換算した人数です。

たとえば非常勤職員が多く実人数が多く見えても、勤務時間が短ければ常勤換算人数は小さくなることがあります。

介護福祉士などの資格者数も見るべき?

職員体制を確認するときは、退職者数だけでなく資格者数も参考になります。

介護サービス情報公表システムでは、介護職員が保有する資格について確認できます。

資格と経験年数を合わせて見る

資格者が多いことは一つの参考になりますが、資格だけで介護の質が決まるわけではありません。

厚生労働省も、公表システムの読み解き方として、資格取得状況を介護サービス業務の経験年数と合わせて確認することを案内しています。

施設比較では、次のように組み合わせて見るとよいでしょう。

  • 介護福祉士の人数
  • 介護経験5年以上・10年以上の職員数
  • 前年度の退職者数
  • 常勤・非常勤の構成

職員がよく辞めると介護にどんな影響がある?

退職者が多いからといって、必ずサービスが悪いと断定することはできません。

ただし、職員の入れ替わりが非常に多い状態が続けば、入居者への影響を確認する必要があります。

本人の生活習慣の引継ぎ

介護付き有料老人ホームでは、食事、排泄、睡眠、認知症による不安への対応など、本人ごとの細かな情報が重要です。

職員が交代したときに、こうした情報を申し送り・記録で適切に引き継げる体制があるか確認します。

新人教育の仕組み

退職者が一定数いても、新任職員への教育やOJT、研修が整っていれば、サービスの継続性を支えることができます。

介護サービス情報公表システムでは、従業者の研修・資質向上の取組についても確認できます。

夜間体制への影響

人手不足が続く場合、夜勤や残業の負担が大きくなる可能性があります。

見学では、現在の夜勤人数、欠員状況、派遣職員の利用状況なども確認すると実態が見えやすくなります。

退職者ゼロなら良い施設?

退職者ゼロは職員定着を見るうえでプラス材料になり得ますが、それだけで良い施設と判断することはできません。

小規模施設では数字が大きく動く

職員数が少ない施設では、1人の退職でも割合としては大きく見えます。

一方、大規模施設では数人退職していても、職員全体から見れば影響が小さい場合があります。

新設施設は経験年数の見え方が違う

開設して間もない施設では、「この施設で長く働いている職員」がまだ存在しません。

それでも、他施設で10年以上の介護経験がある職員を採用していることがあります。

施設の開設年数と職員経験を合わせて判断してください。

見学時に職員定着について何を聞けばいい?

公表情報で気になる数字があれば、見学時に理由を確認してください。

職員定着の確認チェック

  • 昨年度の介護職員の退職者は何人ですか
  • 昨年度の看護職員の退職者は何人ですか
  • 現在、介護職員・看護職員に欠員はありますか
  • 職員の平均勤続年数はどの程度ですか
  • 5年以上勤務している職員はどの程度いますか
  • 介護福祉士は何人いますか
  • 新人職員はどのように教育しますか
  • 入職後の研修はありますか
  • 夜勤は何人体制ですか
  • 派遣・応援職員をどの程度利用していますか
  • 職員が交代した際、入居者情報をどう引き継ぎますか

数字への反応も確認する

退職者数について質問したとき、施設が理由や改善策を具体的に説明できるかも確認材料です。

「介護業界だから仕方ありません」とだけ説明するのか、「前年は新棟開設に伴う異動がありました」「現在は教育担当者を配置しています」など具体的な背景を説明できるのかで、施設の情報開示姿勢も見えます。

見学中の職員の様子から何を確認する?

数字だけでは分からない部分は、見学時の様子から確認します。

職員同士の連携を見る

見学できる範囲で、次のような点を確認してください。

  • 職員同士で落ち着いて声を掛け合っているか
  • 入居者への声かけが丁寧か
  • 呼出しに対応できているか
  • 職員が極端に慌ただしく走り回っていないか
  • 新人らしい職員が一人で困っていないか

一度の見学だけで断定しない

見学した時間帯がたまたま忙しかった可能性もあります。

食事前後など忙しい時間帯と、それ以外の時間帯では雰囲気が異なるため、可能であれば職員配置について数値でも確認してください。

判断するときの順番

1
公表情報の元データを見る
離職率という加工値だけでなく、前年度退職者数と現員数等を確認します。
2
介護職と看護職を分ける
職種別の離職・経験年数を確認します。
3
新設施設かどうか確認する
開設直後は在籍年数や退職者数が単純比較しにくい点に注意します。
4
現場の継続性を見学で確認する
引継ぎ、教育、夜間体制、管理者の説明まで見て総合判断します。

離職率を見るなら「退職者数+経験年数+人員体制」で判断する

介護付き有料老人ホームの職員定着状況は、厚生労働省の介護サービス情報公表システムで確認できます。

主に確認できるのは、前年度の退職者数、現在の常勤・非常勤職員数、常勤換算人数、介護業務の経験年数、資格者数などです。

ただし、前年度の退職者数と現在の職員数は集計時点が異なるため、単純に割り算した数字をその施設の正式な離職率と断定するのは避けてください。

施設選びでは、退職者数、現在の職員数、経験年数、常勤比率、資格者数、夜勤人数、研修体制を組み合わせて確認することが大切です。

気になる数字があれば、見学時に「なぜ退職者がこの人数だったのか」「現在欠員はあるか」「長く働いている職員はどの程度いるか」を具体的に尋ねてください。

制度確認:本記事の介護サービス情報公表制度、前年度退職者数、常勤・非常勤職員数、常勤換算人数、経験年数、資格情報等に関する記述は、2026年10月20日時点で厚生労働省「介護サービス情報の公表制度」「介護サービス情報公表システム『基本情報』の読み解き方」、2026年6月末時点の公表オープンデータ等を確認しています。公表項目・更新時期は施設ごとに確認し、最新の公表情報と見学時の説明を併用してください。

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