住宅型有料老人ホームを選ぶとき、「協力医療機関あり」と書かれていると安心に感じます。
しかし、協力医療機関の名前が載っているだけでは、実際にどこまで対応してくれるのかは分かりません。急変時に相談できるのか、診療してもらえるのか、訪問診療があるのか、入院が必要なときにどう動くのかまで確認する必要があります。
まず結論|「病院名」ではなく「協力内容」まで確認する
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、入居者の病状急変等に備え、あらかじめ医療機関と協力する旨と協力内容を取り決めること、協力医療機関の診療科目や協力内容を入居者へ周知することが示されています。また、協力医療機関はあくまで選択肢であり、入居者が医療機関を自由に選ぶことを妨げてはならないとされています。施設選びでは、名称だけでなく、診療科目、訪問診療、健康相談、急変時の相談・診療、通院介助、入院時の流れ、歯科連携まで確認しましょう。
住宅型有料老人ホームの協力医療機関とは?
協力医療機関とは、有料老人ホームが入居者の病状の急変などに備えて、あらかじめ協力関係を取り決めている病院・診療所などです。
住宅型有料老人ホームは病院ではないため、施設だけですべての医療を完結できるわけではありません。
急な体調変化に備えるための医療連携
発熱、転倒、呼吸苦、意識状態の変化などがあったとき、医療機関への相談や受診につなげる必要があります。
その際に、施設がどの医療機関とどのような連携をしているかが重要になります。
日常的な健康管理に関わることもある
協力内容によっては、医師の訪問、健康相談、健康診断、定期的な診療などに関わる場合があります。
ただし、協力医療機関があるからといって、すべての入居者を定期的に診察するとは限りません。
「協力医療機関あり」だけでは医療体制は判断できない
協力内容は施設と医療機関の取り決めによって異なります。病院名の有無だけでなく、何を協力してもらえるのかを確認してください。
まず重要事項説明書の「医療連携」を確認する
協力医療機関を確認するとき、最初に見るべき書類が有料老人ホームの重要事項説明書です。
厚生労働省の重要事項説明書の標準様式には、医療連携について確認する項目が含まれています。
協力医療機関の名称
どの病院・診療所と協力しているのかを確認します。
住所
施設からどの程度の距離にあるかを確認します。急変時に搬送する可能性を考えるなら、地図上の距離だけでなく、通常の移動時間も確認するとよいでしょう。
診療科目・協力科目
内科、循環器内科、整形外科など、本人の持病に関係する科があるか確認します。
医療機関に複数の診療科があっても、そのすべてが施設との協力対象とは限りません。協力の対象となる科目まで確認してください。
協力内容
最も重要なのがここです。
健康相談、医師の訪問、急変時の相談、受診支援など、具体的に何を行う取り決めなのかを確認します。
協力医療機関が近ければ安心?
施設から近いことは便利ですが、距離だけで医療体制を評価するのは十分ではありません。
近くても夜間対応できるとは限らない
徒歩数分の診療所でも、夜間や休日は診療していない場合があります。
遠くても連携内容が明確な場合がある
多少距離があっても、施設の入居者について相談方法や受診時の連携手順が明確なら、実際の医療連携は機能しやすい場合があります。
距離と役割の両方を確認する
- 施設から協力医療機関まで通常何分かかるか
- 夜間・休日に相談できるか
- 急変時は誰が医療機関へ連絡するか
- 救急搬送時も協力医療機関が候補になるか
急変時の相談・受診体制を確認する
高齢者は夜間や休日に急に体調が変化することがあります。
協力医療機関との連携を見るときは、日中の外来時間だけではなく、急変時の対応を確認してください。
誰が最初に状態を確認するか
夜間に職員が異変へ気づいたとき、施設職員、看護職員、訪問看護師など誰が状態を確認するのかを聞きます。
医師へどう相談するか
電話、オンコール、訪問診療など、どのような経路で医師へ相談するのかを確認します。
診療が必要になった場合
施設内で対応できない場合、外来受診、往診、救急搬送のどれにつなげるのか、基本的な流れを確認します。
救急車を呼ぶ判断
意識障害や呼吸困難など緊急性が高い場合は、協力医療機関への通常連絡より救急要請が優先されることがあります。
家族への連絡順序も確認しておくと安心です。
協力医療機関なら必ず入院できる?
協力医療機関があるからといって、入院が必要になったとき必ずその病院へ入院できるとは限りません。
病床の空き状況に左右される
入院が必要と判断されても、満床なら受け入れが難しいことがあります。
必要な診療科によって搬送先が変わる
骨折、脳卒中、心疾患など、必要な専門診療によって別の医療機関へ搬送される場合があります。
救急隊が搬送先を調整することもある
救急搬送では、本人の状態や各医療機関の受入状況を踏まえて搬送先が決まることがあります。
POINT
「協力医療機関=入院保証」ではありません。入院が必要なとき、施設が診療情報の提供や受診・救急搬送をどのように支援するかを確認しましょう。
訪問診療を受けられるか確認する
住宅型有料老人ホームでは、通院が難しくなった人が訪問診療を利用することがあります。
協力医療機関が訪問診療を行うとは限らない
協力医療機関は急変時の相談等を担い、日常の訪問診療は別のクリニックが担当する施設もあります。
そのため、「協力医療機関はどこですか」と「日常の訪問診療はどこが担当しますか」は分けて聞く必要があります。
訪問頻度を確認する
定期訪問が月何回あるのか、病状変化時に臨時往診を相談できるのかを確認します。
本人が現在の主治医を継続できるか
厚生労働省の標準指導指針では、入居者が医療機関を自由に選択することを妨げないこととされています。
現在の主治医を継続したい場合は、通院距離や訪問診療の対応地域も含めて確認してください。
協力医療機関と主治医は同じ?
必ずしも同じではありません。
協力医療機関は施設と連携する医療機関で、主治医は本人の診療を継続して担当する医師です。
以前からの主治医へ通院する場合
持病を長く診てもらっている場合などは、本人が以前からの病院へ通い続けることがあります。
入居を機に訪問診療へ変更する場合
通院が難しい場合は、施設へ訪問する医師へ主治医を変更するケースがあります。
専門科だけ別の病院へ通う場合
日常の健康管理は訪問診療の内科医、眼科や整形外科などは別の医療機関という場合もあります。
通院介助は誰がする?
協力医療機関への受診が必要になっても、施設職員が無料で毎回付き添うとは限りません。
家族が付き添う施設
定期通院は原則として家族対応としているホームがあります。
施設の有料サービスを利用する施設
職員による通院付き添いを、時間単位の有料サービスとして設定している場合があります。
別の支援を利用する場合
本人の状態やサービス内容に応じて、介護タクシーなどを利用することもあります。
重要事項説明書で医療支援を確認する
施設が救急車の手配、通院介助、入退院時の付き添いなどをどこまで行うか、費用を含めて確認してください。
歯科の協力医療機関も確認する
高齢者の健康管理では、歯科との連携も重要です。
厚生労働省の標準指導指針では、歯科医療機関についても、あらかじめ協力する旨と協力内容を取り決めておくよう努めることが示されています。
訪問歯科があるか
通院が難しい人に対して、歯科医師や歯科衛生士がホームへ訪問できるか確認します。
義歯の調整
入れ歯が合わなくなると、食事量が減る原因になることがあります。義歯の作製・調整を相談できるか確認しましょう。
口腔ケア
歯科衛生士による口腔ケアや指導を受けられるかも確認ポイントです。
認知症や精神症状がある場合は診療科目まで見る
認知症がある人では、内科だけでなく精神科、脳神経内科などへの相談が必要になることがあります。
本人に必要な診療科があるか
「総合病院と連携しています」と説明されても、本人が必要とする診療科が協力対象とは限りません。
症状変化時に誰へ相談するか
夜間不眠、幻視、強い不安、介護拒否などが目立つようになった場合、施設職員からどの医師へ相談するのか確認します。
専門科がない場合の受診方法
協力医療機関に必要な専門科がなければ、別の医療機関へ通院することがあります。その場合の付き添い、送迎、家族負担まで確認しましょう。
医療処置が必要な人は協力医療機関だけ見ても足りない
インスリン、喀痰吸引、経管栄養、在宅酸素などが必要な人は、協力医療機関だけでなく、施設内や訪問看護の体制も確認する必要があります。
看護職員の勤務時間
日中だけなのか、夜間もいるのかを確認します。
訪問看護
どの訪問看護事業所と連携しているか、夜間オンコールがあるかを確認します。
処置の頻度と時間帯
「吸引対応可」といった表示だけでは判断できません。
本人が1日何回、どの時間帯に処置を必要とするかを伝え、その体制で対応可能か確認してください。
医師への報告経路
状態変化があったとき、施設職員・訪問看護師・医師がどのように情報共有するかも重要です。
協力医療機関がある=24時間看護ではない
医療機関との協力体制と、ホーム内の看護職員配置は別です。夜間の医療処置が必要な人は、看護職員の配置時間、訪問看護、オンコールまで確認してください。
看取りを希望するなら何を確認する?
最期まで同じ住宅型有料老人ホームで暮らしたい場合、協力医療機関の存在だけでなく、実際の看取り体制を確認します。
訪問診療医が看取りに対応するか
終末期に定期診療や臨時往診を行い、死亡確認まで対応できる医師がいるか確認します。
夜間連絡体制
夜間に状態が変化したとき、誰へ連絡するのかを確認します。
訪問看護との連携
終末期の症状観察や医療的支援で訪問看護を利用する場合があります。
家族への連絡方法
状態悪化時の連絡基準、夜間連絡、面会や付き添いの扱いを確認しておきます。
介護サービス情報公表システムでも確認する
厚生労働省は、有料老人ホームの情報を「介護サービス情報公表システム」の生活関連情報として公表する仕組みを整備しています。
公表項目は、有料老人ホーム設置運営標準指導指針の重要事項説明書の項目を基礎としているため、施設比較の入口として利用できます。
協力医療機関の情報を見る
医療機関の名称や協力内容など、掲載されている情報を確認します。
最新の重要事項説明書と照合する
公開情報だけで実際の最新運用をすべて把握できるとは限りません。
最終的には施設から最新の重要事項説明書を受け取り、現在も同じ医療機関と同じ内容で連携しているか確認してください。
協力医療機関を確認するときの5つの視点
01
何科に対応するか
病院名だけでなく、本人の持病に必要な診療科・協力科目を確認します。
02
いつ対応するか
平日日中だけか、夜間・休日の相談経路もあるか確認します。
03
何をしてくれるか
医師の訪問、健康相談、急変時相談、受診対応など具体的な協力内容を確認します。
04
受診時に誰が付き添うか
家族、施設職員、有料サービスなど通院支援の方法と費用を確認します。
05
本人の主治医を選べるか
現在の主治医を継続できるか、協力医療機関以外を選べるか確認します。
見学・契約前に確認したい質問
協力医療機関の確認チェックリスト
- 協力医療機関の名称と所在地はどこですか
- 診療科目と協力科目は何ですか
- 具体的な協力内容を教えてください
- 定期的な訪問診療はありますか
- 訪問診療は協力医療機関が担当しますか
- 本人が今の主治医を継続できますか
- 夜間・休日に病状が変化したら誰へ相談しますか
- 夜間の医師への連絡経路はありますか
- 診療が必要になった場合はどのように受診しますか
- 救急搬送時は協力医療機関へ搬送されますか
- 協力医療機関なら入院を受け入れてもらえますか
- 満床の場合はどのように対応しますか
- 通院時の付き添いは誰が行いますか
- 通院介助に追加料金はかかりますか
- 入退院時の付き添いはありますか
- 協力歯科医療機関はありますか
- 訪問歯科に対応していますか
- 認知症・精神症状はどこへ相談しますか
- 看取り時に往診できる医師はいますか
- 訪問看護は夜間オンコールに対応しますか
- 協力医療機関が変更された場合はどう周知されますか
- 最新の重要事項説明書を確認できますか
「協力医療機関が大病院」だけで選ばない
有名な総合病院が協力医療機関になっていることは安心材料の一つですが、それだけで施設の医療体制が手厚いとは判断できません。
日常診療を誰が担うか
総合病院は急変時等の連携先で、日常の診療は別の訪問診療クリニックが担当することがあります。
夜間の現場対応を誰が担うか
協力医療機関があっても、夜間に本人を観察し、医師へ状態を伝える施設側の体制が重要です。
本人の病気に必要な科があるか
病院の規模より、本人に必要な診療科や医療支援へ実際につながれるかを確認してください。
まとめ|協力医療機関は「名称・科目・協力内容・急変時・選択の自由」を確認する
住宅型有料老人ホームを選ぶとき、協力医療機関は重要な確認項目です。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、病状の急変等に備えて医療機関との協力内容を取り決め、協力医療機関や協力歯科医療機関の診療科目、協力内容等を入居者へ周知することが示されています。
さらに、協力医療機関はあくまで入居者へ提示する選択肢であり、本人が医療機関を自由に選択することを妨げてはならないとされています。
そのため、確認するときは「○○病院と提携している」という名称だけで判断せず、診療科目、協力科目、医師の訪問、急変時の相談・診療、通院介助、入退院時の支援、歯科連携まで見てください。
また、医療処置が必要な人では、協力医療機関だけでなく、ホーム内の看護職員配置、訪問看護、夜間オンコールも合わせて確認する必要があります。
最終的には、最新の重要事項説明書で医療連携欄を確認し、「本人が夜間にこの症状になったら、誰が、どこへ連絡し、どのように診療へつなげますか」と具体的な場面を想定して質問することが、実際に機能する医療連携を見極めるポイントです。