介護医療院では、単に「3食を提供する」だけではなく、入所者の病状、栄養状態、食べる力、好みを踏まえて食事と栄養管理を行います。長期療養する人が多いため、低栄養や体重減少、嚥下機能の低下などを早めに把握し、必要に応じて食事内容や支援方法を見直すことが重要です。
まず結論|介護医療院では病状と「食べる力」に合わせて食事・栄養を調整する
介護医療院には、入所者の栄養状態を維持・改善するため、本人の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことが求められています。食事も一律ではなく、病状や身体状況、嗜好を考慮して提供します。通常食だけでなく、必要に応じて食べやすい形態への調整、療養食、経口摂取を続けるための多職種支援などが行われます。ただし、対応できる食形態や経管栄養、専門職の関わり方には施設差があるため、本人の状態を具体的に伝えて確認することが大切です。
介護医療院の食事はどのように提供される?
厚生労働省の介護医療院の運営基準では、入所者の食事について、栄養だけでなく、身体状況、病状、嗜好を考慮し、適切な時間に提供することが求められています。
病状や身体状態に合わせて内容を調整する
高齢者では、糖尿病や腎疾患などの病気、食欲低下、かむ力の低下、嚥下機能の低下などにより、同じ食事を全員に提供することは適切ではありません。
そのため、本人の状態に応じて食事量、栄養量、食形態などを調整します。
嗜好にも配慮する
長期療養では、食事は栄養を取るだけでなく生活の楽しみにもなります。
運営基準でも嗜好を考慮することが示されており、本人が食べやすいもの、好み、これまでの食習慣なども栄養管理を考える材料になります。
できるだけ離床して食事することにも配慮する
介護医療院では、本人の自立を支える観点から、できるだけベッドを離れ、食堂などで食事を行うよう努めることとされています。
ただし、病状や体力によって離床が難しい場合もあるため、本人の状態を優先して食事場所を判断します。
栄養管理は入所者ごとに計画的に行う
介護医療院には、入所者の栄養状態の維持・改善を図り、自立した日常生活につなげるため、各入所者の状態に応じた栄養管理を計画的に行うことが求められています。
体重や食事摂取量だけで判断しない
栄養状態を見るときは、体重だけではなく、食事をどの程度食べているか、食欲が落ちていないか、病状に変化がないか、むせや食べにくさがないかなどを総合的に確認します。
体重が大きく減っていなくても、食事量が徐々に落ちている場合や、食事に時間がかかるようになっている場合は注意が必要です。
状態が変われば食事内容も見直す
高齢者の状態は一定ではありません。感染症、発熱、入院、薬の変更、認知機能の変化などをきっかけに食欲や嚥下機能が変わることがあります。
そのため、栄養管理は入所時だけ行うものではなく、状態の変化に応じて評価し、必要なら計画を見直します。
POINT
「食べている量」だけではなく、「以前より減っていないか」「食べるのに時間がかかっていないか」「むせが増えていないか」など、変化を見ることが重要です。
管理栄養士・栄養士はどのように関わる?
介護医療院では、施設規模に応じて栄養士または管理栄養士の配置基準があります。
厚生労働省の人員基準では、入所定員100人以上の介護医療院では、栄養士または管理栄養士を1人以上配置することが求められています。
食事の栄養量や内容を管理する
栄養士・管理栄養士は、入所者の病状や栄養状態を踏まえて食事内容を考えます。
本人の食事摂取量が落ちた場合には、食べやすい食品への変更や量の調整、補助食品の活用などを検討することがあります。
多職種と情報を共有する
食事に関する問題は、栄養だけで解決できないことがあります。
たとえば、食べにくさの原因が嚥下機能にある場合は、医師、看護職員、言語聴覚士、歯科専門職などとの連携が必要です。食事姿勢や介助方法が原因の場合は、介護職員やリハビリ職との情報共有も重要になります。
かみにくい・飲み込みにくい人の食事はどうする?
介護医療院では、入所者の摂食・嚥下機能に配慮して栄養管理を行うことが求められています。
本人の状態に合わせて食形態を調整する
通常の食事をそのまま食べることが難しい場合、食べやすさや飲み込みやすさを考えて形態を調整します。
施設によって呼び方は異なりますが、きざみ食、やわらかい食事、ペースト状の食事などを用意している場合があります。
食形態の名前だけで判断しない
同じ「きざみ食」「ソフト食」という名称でも、実際の硬さや大きさは施設によって異なることがあります。
入所前に現在の食事形態を伝えるときは、名称だけではなく、どの程度の硬さなら食べられるか、とろみが必要か、むせがあるかまで伝えることが重要です。
食事姿勢や介助方法も重要
食べ物の形だけを変えても、安全に食べられるとは限りません。
姿勢、一口量、食べる速度、声かけなども食べやすさや誤嚥リスクに影響します。
食事中の見守りや介助が必要な場合は、どのような方法で対応しているか施設へ確認しましょう。
「やわらかい食事なら安全」とは限らない
嚥下状態は人によって異なります。現在むせが多い、誤嚥性肺炎を繰り返している、食事量が急に減っている場合は、食形態だけで判断せず、医師や専門職による評価が必要です。
病気に合わせた療養食を受けられることもある
病気によって食事内容の管理が必要な人には、医師の指示などに基づいて療養食が提供される場合があります。
療養食加算の対象となる食事がある
介護報酬には「療養食加算」があり、管理栄養士または栄養士によって食事提供を管理し、一定の基準を満たす療養食を提供した場合に施設が算定できます。
本人に食事制限がある場合は、現在の病名や医師からの指示内容を施設へ伝え、対応できる食事を確認してください。
家庭での食事制限をそのまま持ち込めるとは限らない
自宅で「塩分をかなり控えている」「特定の食品を避けている」といった対応をしていても、施設では医師の指示や栄養管理の方針に基づいて食事を提供します。
入所前に、現在行っている食事制限の理由と内容を伝え、施設でどのように対応するか確認しましょう。
口から食べ続けるための支援もある
介護医療院では、本人が口から食事を続けられるよう、多職種で支援する仕組みがあります。
経口維持加算
摂食機能に障害があり、誤嚥が認められる入所者について、医師や歯科医師の指示のもと、医師、歯科医師、管理栄養士、看護職員、介護支援専門員などが協力し、食事の観察や会議を行いながら経口摂取を続けるための計画を作成する仕組みがあります。
これは「誤嚥があれば必ず口から食べ続ける」という意味ではありません。本人の状態や安全性を踏まえて、医療・栄養・介護の各職種で検討します。
経口移行加算
現在、経管栄養で栄養を取っている人について、医師の指示のもとで多職種が経口移行計画を作成し、口から食べることを目指す支援も制度上設けられています。
ただし、すべての経管栄養の人が経口摂取へ戻れるわけではありません。病状や嚥下機能などを評価し、可能性と安全性を確認しながら進めます。
POINT
「口から食べること」を目標にする場合でも、安全性を無視して進めることはできません。本人の希望と医学的な評価の両方を踏まえて支援方法を決めます。
経管栄養の人は介護医療院で対応できる?
介護医療院は医療ニーズを持つ人の長期療養を支える施設ですが、経管栄養への対応可否は施設ごとに確認が必要です。
経管栄養の方法と実施条件を具体的に伝える
「経管栄養です」とだけ伝えるのではなく、現在の方法や管理内容を施設へ伝えます。
- 胃ろうか経鼻経管栄養か
- 1日の注入回数
- 注入する時間帯
- 併用して口から食べているものがあるか
- チューブ管理で注意が必要なこと
- 誤嚥や嘔吐などの既往があるか
施設の看護体制や医療対応によって、受入可否が変わる場合があります。
経管栄養でも栄養状態の評価は必要
経管栄養を行っていれば栄養面の問題が起きないとは限りません。
体重、全身状態、水分摂取、排便状況などを見ながら、本人に適した栄養量や管理方法を検討します。
食事量が減ったときはどう対応する?
長期療養中は、食事量が徐々に減ることがあります。
まず原因を確認する
食欲低下の原因は一つとは限りません。
- 病気や発熱
- 薬の影響
- 口腔内の痛みや義歯の不具合
- 嚥下機能の低下
- 便秘や脱水
- 認知機能の変化
- 食事形態が本人に合っていない
- 好みに合わず食べにくい
食べないからすぐに量を増やすのではなく、なぜ食べられないのかを確認することが重要です。
体重減少や低栄養リスクを多職種で共有する
食事摂取量の低下や体重減少がみられた場合は、管理栄養士だけでなく、医師、看護職員、介護職員などで情報を共有し、必要な対応を検討します。
補助食品を利用する、食事の回数や量を調整する、食形態を変えるなど、本人の状態に応じた方法を考えます。
看取り期の食事は「栄養量だけ」で考えない
介護医療院では、終末期の療養や看取りに対応する場合があります。
看取り期には、病気の進行や身体機能の低下によって、食べられる量そのものが少なくなることがあります。
本人の苦痛や希望も含めて考える
この時期の食事は、必要な栄養量を満たすことだけが唯一の目標になるとは限りません。
本人の苦痛、食べたいという希望、誤嚥リスク、全身状態などを踏まえて、医師・看護職員・管理栄養士・介護職員などが家族と相談しながら方針を考えます。
「食べられないから必ず経管栄養にする」「少しでも食べさせればよい」と一律に決めるのではなく、本人にとって何を大切にするかを確認する必要があります。
施設選びで確認したい食事・栄養管理のポイント
介護医療院の食事・栄養管理を確認するときは、献立の豪華さだけで判断しないことが大切です。
01
本人に必要な食形態に対応できるか
現在の食事の硬さ、刻み方、とろみの有無などを伝え、同等または適切な形で対応できるか確認します。
02
低栄養や体重減少をどう評価するか
体重や摂取量をどのように確認し、状態が悪化した場合に誰が見直すのかを聞きます。
03
療養食や経管栄養に対応できるか
本人に必要な療養食、経管栄養の方法、注入時間などへ対応できるか個別に確認します。
04
多職種で食事の問題を検討できるか
管理栄養士だけでなく、医師、看護職員、介護職員、リハビリ職、歯科専門職などへ必要に応じてつなげられる体制を確認します。
入所相談時に確認したい質問
食事・栄養管理のチェックリスト
- 現在の食事形態に対応できますか
- とろみの濃さなどを個別に調整できますか
- 食事介助が必要な場合、どのように対応しますか
- 食事中のむせがある場合は誰が評価しますか
- 管理栄養士・栄養士はどのように関わりますか
- 体重や食事摂取量はどのように確認していますか
- 食事量が減った場合はどの職種で検討しますか
- 本人に必要な療養食へ対応できますか
- 現在の経管栄養の方法に対応できますか
- 経口維持・経口移行の支援を行っていますか
- 義歯や口腔内の問題がある場合は歯科へつなげられますか
- 看取り期の食事について本人・家族とどのように相談しますか
入所前には、本人が現在食べている食事の写真や食形態、病院・施設からの栄養情報などを用意すると、受入後の食事を具体的に相談しやすくなります。
まとめ|食事内容だけでなく「状態変化への対応」まで確認する
介護医療院では、入所者の病状、身体状況、嗜好を考慮して食事を提供し、栄養状態の維持・改善を目的に個別の栄養管理を計画的に行います。
かむ力や嚥下機能が低下している人では、食形態、姿勢、介助方法などを調整し、必要に応じて多職種で支援します。病状によっては療養食を提供したり、経口維持・経口移行を目指した栄養管理を行ったりする場合もあります。
一方で、対応可能な食形態、療養食、経管栄養、専門職の関わり方は施設ごとに異なります。
介護医療院を選ぶときは、「今食べられている食事に対応できるか」だけでなく、「食事量が減ったとき、嚥下機能が変化したとき、経管栄養が必要になったときにどう対応するか」まで確認することが大切です。