老人ホームへ入居中に肺炎や骨折などで入院すると、「長期入院になったら施設を退去しなければならないのでは?」と不安になることがあります。
結論からいうと、長期入院しただけで、すべての老人ホームから自動的に退去になるわけではありません。
退去になるかどうかは、施設種別、入居契約書の解除条件、入院期間、退院後に施設生活へ戻れる見込み、本人の医療・介護状態などによって異なります。
そのため、入院が長引きそうなときは、「何日入院すると退去か」だけでなく、「どの条件で契約解除になるのか」「居室を確保できる期間」「入院中にかかる費用」「退院後に戻れる条件」まで確認することが重要です。
まず結論|長期入院だけで自動退去とは限らない
老人ホーム入居中に長期入院しても、一律に「○か月で必ず退去」と決まっているわけではありません。有料老人ホームでは、入居契約書・重要事項説明書・管理規程に定められた解除条件や居室確保期間を確認します。特養では、入所者が入院し、おおむね3か月以内に退院することが明らかに見込まれる場合、本人・家族の希望等を踏まえ、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後に再び円滑に入所できるようにする基準があります。「3か月入院したら必ず退所」と単純に考えないことが重要です。
長期入院したら老人ホームは必ず退去になる?
老人ホームでの長期入院の扱いは、施設によって異なります。
全国一律の「○日で退去」というルールはない
有料老人ホームについては、長期入院を理由とする契約解除条件を全国一律の日数で定めた仕組みではありません。
実際には各施設の入居契約書、重要事項説明書、管理規程などに、入院時の取扱いや契約解除条件が定められています。
契約書上の解除条件を確認する
施設によっては、「一定期間以上の入院が続き、施設へ戻れる見込みがない場合」などを解除条件として定めていることがあります。
入院期間だけでなく、「退院・復帰の見込み」が条件に含まれている場合もあるため、条文をそのまま確認してください。
POINT
「3か月で退去らしい」など口コミや一般論だけで判断せず、自分が入居している施設の契約書にある解除条項を確認してください。
有料老人ホームは契約書の内容を確認する
介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームでは、設置者と入居者との契約が基本になります。
契約解除の要件が明示されているか確認する
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、入居契約書に契約解除の要件と、その場合の対応を明示することが求められています。
施設側の解除条件は無制限ではない
同指針では、施設側からの契約解除条件は、信頼関係を著しく害する場合に限るなど、入居者の権利を不当に狭める内容としないことが示されています。
「長期入院」の定義は施設ごとに確認する
30日、3か月、6か月など、施設ごとに契約上の期間が異なる場合があります。
また、単に期間を超えただけでなく、「施設への復帰が困難」「病状回復の見込みがない」などの条件と組み合わせている契約もあります。
特養は「3か月で必ず退所」ではない
特別養護老人ホームについて、「3か月入院すると必ず退所になる」と聞くことがありますが、制度上はそのように単純ではありません。
おおむね3か月以内に退院が見込まれる場合の基準がある
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準では、入所者が病院・診療所へ入院する必要が生じ、おおむね3か月以内に退院することが明らかに見込まれる場合、本人・家族の希望等を踏まえて必要な便宜を提供し、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後に再び円滑に入所できるようにすることが定められています。
「3か月経過=自動的に退所」ではない
この基準は、「3か月を1日でも超えたら必ず退所」という意味ではありません。
実際の取扱いは、退院見込み、本人の状態、施設の運営状況、契約・施設規程等を確認する必要があります。
特養の3か月を「強制退所期限」と誤解しない
制度上のポイントは、入院後おおむね3か月以内に退院が見込まれる場合の再入所への配慮です。入院が長引いた場合の扱いは、施設へ個別に確認してください。
入院したらまず何を施設へ確認する?
入院期間がまだ決まっていない段階でも、施設へ早めに確認しておくと安心です。
01
居室はそのまま確保できるか
入院中も居室を確保するのか、一定期間を超えると契約上の扱いが変わるのかを確認します。
02
何日・何か月で再確認になるか
施設側が入院期間の節目を設けている場合、その時点で何を確認するのかを聞きます。
03
入院中の料金
家賃、管理費、食費、介護サービス費などがどう扱われるか確認します。
04
退院後に戻れる条件
医療処置が増えた場合やADLが低下した場合でも、施設で再び生活できるか確認します。
05
契約解除の条件
長期入院が契約解除に関係する場合は、契約書の該当条項を確認します。
入院中も家賃・管理費はかかる?
入院して施設サービスを利用していない期間でも、すべての費用がゼロになるとは限りません。
居室を確保する費用が続く場合がある
本人の居室をそのまま確保する場合、家賃・居室料・管理費などが継続して発生する契約があります。
食費は停止できる場合がある
入院中は施設で食事を取らないため、事前に食事停止の手続きをすれば食費が発生しない、または利用実績で精算する施設があります。
ただし、締切日やキャンセル規定がある場合があるため確認が必要です。
水道光熱費等の扱いも施設ごとに違う
定額の管理費に含まれている場合、入院していても同額となることがあります。
何が固定費で、何が利用実績に応じて減るのかを確認してください。
介護保険の自己負担は入院中どうなる?
医療機関へ入院している間は、施設で実際に介護保険サービスを受けていない期間について、施設入居時と同じ形で介護サービス費が発生するとは限りません。
施設種別によって仕組みが異なる
介護付き有料老人ホームの特定施設入居者生活介護と、特養などの介護保険施設では、報酬の仕組みや入院中の取扱いが異なります。
請求書で費目を分けて確認する
家賃、管理費などの住居契約上の費用と、介護保険サービスの自己負担を分けて確認してください。
入院月・退院月は日数によって請求内容が変わることがあるため、施設の請求担当者へ確認します。
入院が長引きそうと分かったら何をする?
主治医から「退院まで時間がかかりそう」と説明されたら、施設にも早めに共有します。
退院見込みを施設へ伝える
正確な退院日が決まっていなくても、「数週間程度」「リハビリが必要」「当面退院の見通しが立たない」など、病院から説明された範囲で共有します。
施設側がいつ判断するか確認する
長期入院が契約解除条件に関係する場合、どの時点で施設側が継続可否を判断するのかを確認します。
契約解除の前に説明・手続きがあるか確認する
施設側から契約解除の可能性を伝えられた場合は、口頭だけでなく、契約書上の根拠、予告期間、退去・荷物の扱い等を確認してください。
退院できても元の施設へ戻れないケース
問題になるのは入院期間だけではありません。
医療ニーズが大きく増えた
退院後にたん吸引、経管栄養、頻回の医療処置などが必要になり、現在の施設体制では対応できない場合があります。
介助量が大きく増えた
骨折や脳血管疾患等でADLが低下し、移乗や排せつでより多くの介助が必要になることがあります。
認知症症状が変化した
入院をきっかけに混乱が強くなり、施設の環境では安全に対応できないと判断される場合があります。
看護・夜間体制と合わない
必要な処置時間と施設の看護職員配置時間が合わない場合、以前は入居できていても退院後の受入れが難しくなることがあります。
施設へ戻れるかは退院前に再確認する
病院から「退院できます」と言われても、すぐに元の施設へ戻れるとは限りません。
退院時の状態を施設へ共有する
病院から診療情報提供書、看護サマリー、薬剤情報などを施設へ共有し、現在必要な支援を確認してもらいます。
施設側の再面談がある場合もある
長期入院中に状態が大きく変わった場合、施設職員が病院で本人を確認することがあります。
受入日を確定してから退院日を調整する
病院の退院予定日と施設の再受入日がずれないよう、病院・施設・家族で調整します。
施設側から退去を求められたら確認すること
長期入院を理由に施設側から契約解除・退去の話が出た場合は、まず契約内容を確認します。
施設へ確認する項目
- 契約書のどの解除条項に該当しますか
- 入院期間だけが理由ですか
- 退院後に戻れない医学的・介護上の理由は何ですか
- 解除を決める前に本人・家族と話し合う機会はありますか
- 契約解除の予告期間はありますか
- いつまで居室を確保できますか
- 荷物はいつまでに搬出する必要がありますか
- 前払金・敷金の精算はどうなりますか
- 退院後の生活先について相談支援はありますか
「長期入院だから退去」と言われても契約書を確認する
施設の担当者から「長期入院なら退去です」と説明されても、期間や手続きの根拠を確認することが重要です。
重要事項説明書と入居契約書を照合する
契約解除条件、予告期間、長期入院時の扱いについて記載を確認します。
施設独自の運用と正式な契約条件を区別する
担当者の説明が、契約書に定められた内容と一致しているか確認します。
納得できなければ外部へ相談する
有料老人ホームについては、都道府県・政令市・中核市などの担当部署へ相談できる場合があります。
契約上のトラブルであれば、消費生活センターや法律専門家へ相談する方法もあります。
退去する場合は前払金・敷金を確認する
長期入院をきっかけに契約終了となる場合、退去時の金銭精算も確認します。
前払金
前払金を支払っている場合、未償却分の返還があるか、返還金の算定方法を契約書で確認します。
敷金
未払い利用料や本人負担となる原状回復費用等を差し引き、残額が返還される場合があります。
入院中に発生した費用
契約終了日までの居室料・管理費等がいくらになるのか、最終精算書で確認します。
荷物をすぐに搬出する必要がある?
契約解除が決まった場合でも、本人は入院中で、家族だけで居室整理を進めることがあります。
居室明渡し期限を確認する
契約終了日と荷物の搬出期限が同じなのか、猶予があるのかを確認します。
本人の意思を確認する
本人が意思表示できる場合、私物の処分を家族だけで決めないようにします。
貴重品を先に確認する
通帳、印鑑、現金、保険証関係、契約書、写真などを先に整理します。
退院後に別の施設へ移る場合
元の施設へ戻れない場合は、新しい施設探しを病院の退院支援と並行して進めます。
退院支援看護師・医療ソーシャルワーカーへ相談する
病院側に、元の施設へ戻れないことを伝え、退院後に必要な介護・医療条件を整理します。
現在の状態に対応できる施設を探す
以前の施設選びの条件ではなく、退院後の医療処置、ADL、認知症の状態を基準に候補を探します。
元施設を解約する前に新施設を決められるか確認する
契約上の猶予がある場合は、新しい施設の入居審査・入居日を確認してから旧施設の解約を進める方が住まいの空白を防ぎやすくなります。
長期入院中に家族が確認したいスケジュール
01
入院直後
施設へ入院したことを伝え、食事停止、居室確保、料金の扱いを確認します。
02
退院見込みが分かった時点
主治医から聞いた退院時期と退院後に必要な医療・介護を施設へ共有します。
03
入院が長期化しそうな時点
契約解除条件、居室確保期間、費用、再受入条件を改めて確認します。
04
退院前
施設へ戻れるか最終確認し、病院から医療・看護情報を引き継ぎます。
05
戻れない場合
病院の退院支援担当者と次の生活先を探し、旧施設の契約終了・荷物・精算を進めます。
入居前に長期入院時の扱いを確認しておく
長期入院の問題は、実際に入院してから初めて考えると判断を急ぐことになります。
契約解除条件
入院期間や退院見込みが、施設側からの契約解除にどう関係するか確認します。
居室確保期間
入院中に何か月まで居室を維持できるか、費用はいくらか確認します。
入院中の料金
家賃、管理費、食費、介護サービス費など、どの費用が残るのかを確認します。
退院後の再受入条件
医療依存度や要介護度が上がった場合でも戻れるか確認します。
契約前にそのまま聞ける質問
- 長期入院した場合、何日・何か月まで居室を確保できますか
- 入院が長引くと契約解除になる条件は何ですか
- 「退院見込みがない」とは誰がどのように判断しますか
- 入院中も家賃・管理費はかかりますか
- 食費は止められますか
- 入院中の介護保険自己負担はどうなりますか
- 退院後に医療処置が増えても戻れますか
- 要介護度が上がっても継続入居できますか
- 元の居室へ戻れない場合はどうなりますか
- 契約解除時の前払金・敷金の精算方法はどうなりますか
まとめ|入院期間より「契約条件と退院後の状態」を確認する
老人ホームへ入居中に長期入院しても、それだけで一律に退去になるわけではありません。
有料老人ホームでは、入居契約書・重要事項説明書・管理規程にある長期入院時の取扱いと契約解除条件を確認します。厚生労働省の標準指導指針でも、施設側の契約解除条件は入居者の権利を不当に狭めないことが示されています。
特養についても、「3か月で必ず退所」という制度ではありません。おおむね3か月以内に退院することが明らかに見込まれる場合には、本人・家族の希望等を踏まえ、退院後に再び円滑に入所できるようにする基準があります。
最も重要なのは、「何か月入院したか」だけでなく、「契約上どう定められているか」「退院後に施設で必要な介護・医療を受けられるか」を確認することです。
入院が長引きそうなときは、施設・病院・家族で早めに情報を共有し、元の施設へ戻る場合と別の生活先を探す場合の両方を想定して準備してください。


