老健(介護老人保健施設)を退所して自宅へ戻ったあとも、リハビリを続けたい場合は、介護保険の通所リハビリテーション(デイケア)を利用できることがあります。
ただし、老健を退所すれば自動的にデイケアへ切り替わるわけではありません。退所後の生活を想定し、主治医、ケアマネジャー、老健、利用予定のデイケアなどで事前に調整しておくことが重要です。
まず結論|退所前からケアマネ・主治医と相談し、デイケア利用を居宅サービス計画につなげる
老健退所後にデイケアを利用する場合は、①退所後もリハビリが必要か確認する、②ケアマネジャーへ希望を伝える、③主治医が通所リハビリの必要性を判断する、④利用する事業所を選び受入可否を確認する、⑤退所後の居宅サービス計画やリハビリ計画につなげる、という流れが基本です。退所してから探し始めるとリハビリが途切れることがあるため、在宅復帰の見通しが立った段階で相談を始めましょう。
老健退所後もデイケアを利用できる
デイケアの正式名称は「通所リハビリテーション」です。介護老人保健施設、病院、診療所などへ通い、心身機能の維持・回復や日常生活の自立を目指してリハビリテーションを受けます。
老健を退所して自宅で生活する人も、利用条件を満たせば通所リハビリテーションを利用できます。
老健の入所リハビリから在宅のリハビリへつなぐ
老健入所中は、施設生活の中でリハビリを受けます。退所後は、自宅での生活そのものが始まるため、必要な支援も変わります。
たとえば、施設内では安全に歩けても、自宅では玄関の段差や屋外移動に課題が残ることがあります。退所後のデイケアでは、こうした在宅生活上の課題を踏まえてリハビリを続けることが重要です。
「老健にいた人だけ」が利用するサービスではない
デイケアは老健退所者専用のサービスではありません。自宅などで生活している要介護者のうち、主治医が病状が安定しており、通所リハビリテーションが必要と認めた人が利用するサービスです。
そのため、老健を退所したという事実だけで利用が決まるのではなく、退所後の状態とリハビリの必要性を確認して利用につなげます。
老健退所後にデイケアを利用する5つの手順
退所後の利用をスムーズに始めるには、退所日が決まってから慌てて探すのではなく、在宅復帰の見通しが立った段階から準備を始めるのがポイントです。
01
退所後もリハビリが必要か確認する
老健の医師やリハビリ職などに、退所後も継続して取り組むべき課題を確認します。歩行、移乗、着替え、家事、外出など、自宅でどの動作を維持・改善したいのかを具体的にします。
02
ケアマネジャーへデイケア利用の希望を伝える
要介護1~5の人は、退所後の居宅サービスを調整するケアマネジャーへ「デイケアでリハビリを続けたい」と伝えます。退所後に担当するケアマネジャーがまだ決まっていない場合は、老健の支援相談員や施設ケアマネジャーへ早めに相談します。
03
主治医に通所リハビリの必要性を確認してもらう
通所リハビリテーションは、主治医が本人の病状が安定しており、サービス利用が必要と認めた場合に利用します。退所後の主治医が誰になるのかも含め、医療情報を途切れなくつなぐことが重要です。
04
利用するデイケアを決める
ケアマネジャーなどと相談し、通える範囲の通所リハビリテーション事業所を探します。同じ老健にデイケアが併設されている場合でも、自動的に利用できるわけではないため、空き状況や受入条件を確認します。
05
退所後のケアプランとリハビリ計画につなげる
利用する事業所が決まったら、退所後の生活目標や必要なサービスを居宅サービス計画へ反映し、デイケア側でも本人の状態に応じたリハビリテーション計画を作成します。
退所前に相談を始めるのが重要
老健からの退所後にデイケアを使いたい場合、最も重要なのは「退所してから相談する」のではなく、退所前から調整を始めることです。
老健には退所後のサービスへつなぐ役割がある
老健の運営基準では、入所者の退所時に本人・家族へ適切な指導を行い、居宅介護支援事業者への情報提供や、退所後の主治医・保健医療サービス・福祉サービスとの連携に努めることが求められています。
また、介護報酬上も、一定の場合には退所後に利用する居宅サービスについて、本人の同意を得て居宅介護支援事業者へ診療状況などの情報を提供し、利用調整を行う仕組みがあります。
「退所後もリハビリを続けたい」と具体的に伝える
家族から希望を伝えるときは、「何となくリハビリを続けたい」だけでなく、退所後の生活で何に困りそうかを伝えると調整しやすくなります。
- 自宅内を一人で歩ける状態を維持したい
- 玄関の段差を安全に上り下りしたい
- トイレ動作をできるだけ自分で続けたい
- 屋外歩行を練習して買い物へ行きたい
- 着替えや家事動作を練習したい
- 家族の介助量が増えないよう身体機能を維持したい
目的が明確になると、デイケアが適しているのか、訪問リハビリなど別のサービスが合うのかも検討しやすくなります。
同じ老健のデイケアを退所後も利用できる?
老健には、入所サービスと通所リハビリテーションを併設している施設があります。この場合、退所後に同じ施設のデイケアを利用できる可能性があります。
併設されていても自動的に利用できるわけではない
入所していた老健が通所リハビリテーション事業所を運営していても、退所者がそのまま自動的に利用者へ移行する仕組みではありません。
通所リハビリとして利用するためには、本人が利用対象となることに加え、主治医による必要性の判断、居宅サービス計画上の調整、事業所側の受入れなどが必要です。
同じ施設を利用するメリットがある場合もある
入所中の状態やリハビリ目標を把握している職員と情報共有しやすいことは、同一施設のデイケアを利用する利点になり得ます。
一方、自宅からの距離、送迎範囲、利用曜日、リハビリ内容などが本人に合わない場合は、別の通所リハビリテーション事業所を選ぶこともあります。
POINT
「入所していた老健だから」という理由だけで決めず、退所後の生活目標、送迎、利用時間、リハビリ内容などが本人に合うかで選びましょう。
主治医の確認が必要なのはなぜ?
通所リハビリテーションは、単に運動をする場所ではなく、医師の関与のもとで行う介護保険のリハビリテーションサービスです。
病状が安定し、通所リハビリが必要かを判断する
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、通所リハビリテーションを利用できるのは、居宅で生活する要介護者のうち、主治医が病状が安定しており、サービス利用が必要と認めた場合とされています。
退所直後は、入所前と比べて身体状態や服薬内容が変わっていることがあります。退所後の主治医へ必要な情報を引き継ぎ、現在の状態を踏まえてリハビリの必要性を確認することが大切です。
老健の医師と退所後の主治医が同じとは限らない
老健入所中は施設の医師が医学的管理を行いますが、退所後は自宅で診療を受ける主治医へ戻る、または新たな主治医へつながる場合があります。
そのため、「退所後は誰が主治医になるのか」「診療情報はどのように引き継がれるのか」を退所前に確認しておきましょう。
要介護と要支援で利用するサービス名が異なる
退所時の要介護認定によって、介護保険上のサービス区分が異なります。
| 認定区分 | 利用するサービス |
|---|---|
| 要介護1~5 | 通所リハビリテーション |
| 要支援1・2 | 介護予防通所リハビリテーション |
要支援1・2の場合は、介護予防サービスとして利用します。相談窓口や計画作成の担当が要介護者とは異なる場合があるため、地域包括支援センターなどへ確認してください。
退所前後に要介護度が変わる場合は確認が必要
老健入所中に更新申請や区分変更が行われ、退所時の認定区分が以前と変わっていることがあります。退所後のサービス計画は現在の認定結果をもとに調整するため、有効期間と要介護度を確認しておきましょう。
退所後すぐにデイケアを始めたいときの確認ポイント
退所後のリハビリをできるだけ途切れさせたくない場合は、開始希望日から逆算して準備します。
利用開始日を決める
「退所後できるだけ早く」という希望だけでなく、具体的にいつから利用できるかを確認します。
事業所の契約、受入れのための確認、居宅サービス計画との調整などが必要になるため、退所翌日から必ず利用できるとは限りません。
送迎範囲と乗り降りを確認する
デイケアは自宅から事業所へ通うサービスです。送迎範囲に自宅が含まれているかだけでなく、玄関から送迎車まで本人が安全に移動できるかも確認します。
集合住宅の階段や玄関段差などがある場合は、どこまで送迎職員が介助できるのか事前に伝えておきましょう。
入所中のリハビリ内容を引き継げるか確認する
退所後のデイケアでは、老健入所中とまったく同じリハビリをそのまま続けるとは限りません。
退所時の身体機能、できるようになった動作、残っている課題、自宅環境などの情報を共有し、在宅生活に合った目標へ組み直します。
デイケアを選ぶときは「退所後の生活目標」で見る
通所リハビリテーションは事業所によって、利用時間、リハビリ専門職の体制、得意とする支援、食事や入浴の有無などが異なります。
老健でのリハビリ量だけを基準にしない
「老健では毎日リハビリをしていたから、デイケアでも同じように受けたい」と考えることがありますが、入所サービスと通所サービスでは生活の形が違います。
退所後は自宅で過ごす時間が中心になるため、デイケアでの訓練だけでなく、自宅で本人がどのように動くかまで含めて計画することが重要です。
見学時は具体的な課題を伝える
事業所を見学・相談するときは、「リハビリできますか」と聞くだけでは十分ではありません。
「自宅のトイレまで歩きたい」「一人で着替えを続けたい」「屋外を安全に歩きたい」など、退所後の具体的な目標を伝え、その課題に対してどのような支援ができるか確認しましょう。
退所前に確認しておきたいチェックリスト
デイケア利用を希望する場合は、退所直前ではなく、在宅復帰の準備段階で次の項目を確認しておくとスムーズです。
老健退所後のデイケア利用チェック
- 退所後もリハビリを続ける必要性があるか
- 退所後の主治医は誰になるか
- ケアマネジャーへデイケア利用の希望を伝えたか
- 本人が自宅で何をできるようになりたいか整理したか
- 候補のデイケアに空きがあるか
- 自宅が送迎範囲に入っているか
- 希望する曜日・利用時間で通えるか
- 必要なリハビリ内容に対応できるか
- 老健でのリハビリ内容や医療情報をどう引き継ぐか
- 退所後のケアプランに利用が位置づけられているか
- 利用開始日が決まっているか
まとめ|老健退所後のデイケアは「退所前からつなぐ」ことが大切
老健を退所して自宅へ戻ったあとも、必要性が認められれば通所リハビリテーション(デイケア)を利用できます。
要介護者が利用する場合は、主治医が病状の安定と通所リハビリの必要性を確認し、ケアマネジャーと相談しながら退所後の居宅サービスとして調整するのが基本です。要支援1・2の場合は介護予防通所リハビリテーションを検討します。
入所していた老健にデイケアが併設されていても、自動的に利用へ切り替わるわけではありません。受入れ、送迎、利用曜日、リハビリ内容などを確認する必要があります。
退所後のリハビリを途切れさせたくない場合は、退所前の段階で「自宅に戻って何をできるようにしたいか」を整理し、老健・主治医・ケアマネジャー・デイケアの間で情報をつなぐことが重要です。