介護付き有料老人ホームへ入居すると、介護サービスは本人の状態や希望に合わせた「特定施設サービス計画」に基づいて提供されます。
この計画は一般にケアプランと呼ばれますが、在宅介護で居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作るケアプランとは仕組みが異なります。
まず結論|介護付き有料老人ホームのケアプランは施設内の計画作成担当者が作る
介護付き有料老人ホームで提供される特定施設入居者生活介護では、施設の管理者が「計画作成担当者」に特定施設サービス計画の作成業務を担当させます。現行基準では、この計画作成担当者は介護支援専門員(ケアマネジャー)です。計画は本人の能力、生活環境、困りごと、本人・家族の希望を把握し、介護職員・看護職員など他の職種と協議して作成します。完成前には内容を本人または家族へ説明し、本人の文書による同意を得たうえで、本人へ交付することが必要です。
介護付き有料老人ホームのケアプランは誰が作る?
介護付き有料老人ホームのケアプランにあたるものは、正式には「特定施設サービス計画」といいます。
厚生労働省の基準では、施設の管理者が、施設内の計画作成担当者に特定施設サービス計画の作成業務を担当させることになっています。
計画作成担当者は介護支援専門員
現行の人員基準では、計画作成担当者は介護支援専門員で、特定施設サービス計画の作成を担当するのに適当と認められる人を配置することとされています。
一般に「施設ケアマネ」「施設のケアマネジャー」などと呼ばれることがあります。
外部の居宅ケアマネが作る仕組みとは違う
自宅で訪問介護やデイサービスなどを利用する場合は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが居宅サービス計画を作成するのが一般的です。
一方、介護付き有料老人ホームでは、ホームが特定施設入居者生活介護として介護サービスを一体的に提供するため、施設の計画作成担当者が特定施設サービス計画を作成します。
入居前のケアマネジャーがそのまま担当するとは限らない
在宅時に担当していた居宅ケアマネジャーがいても、介護付き有料老人ホームへ入居して特定施設入居者生活介護を利用する場合は、施設内の計画作成担当者がサービス計画を作成する仕組みです。入居前の情報は重要なので、これまでのケアプランや生活状況を施設へ引き継ぎましょう。
計画作成担当者は何人配置される?
厚生労働省の人員基準では、計画作成担当者は1人以上を配置し、利用者100人またはその端数を増すごとに1人を標準としています。
| 利用者数 | 計画作成担当者の標準 |
|---|---|
| 100人まで | 1人以上 |
| 101~200人 | 2人を標準 |
| 201~300人 | 3人を標準 |
実際の配置人数は施設規模や運営体制によって異なります。
他の仕事を兼務する場合もある
計画作成担当者は、原則としてその職務に従事する介護支援専門員ですが、利用者の処遇に支障がない場合には、施設内の他の職務を兼務できる取扱いがあります。
そのため、施設によってはケアマネジャーが別の役割を兼ねている場合があります。
見学時は人数だけでなく担当体制も確認する
「ケアマネジャーはいますか」だけでなく、次の点まで聞くと実際の体制が分かります。
- 計画作成担当者は何人いるか
- 1人あたり何人程度を担当しているか
- 他の職務と兼務しているか
- 本人・家族から相談したいとき直接話せるか
ケアプランには何を書く?
特定施設サービス計画は、単に「入浴週2回」「食事介助あり」とサービス内容を並べるだけの書類ではありません。
本人がどのように暮らしたいかを踏まえ、課題、目標、具体的な支援をつなげることが重要です。
本人が抱えている課題を整理する
計画作成担当者は、本人の能力や生活環境などを評価し、本人が自立した日常生活を送るうえで解決すべき課題を把握します。
たとえば、次のような点を確認します。
- 移動や立ち上がりはどこまで自分でできるか
- 食事や排せつにどの程度の介助が必要か
- 認知症による生活上の困りごとはあるか
- 転倒や誤嚥などのリスクはあるか
- 本人が続けたい生活習慣や趣味は何か
- 家族が心配していることは何か
目標と具体的なサービス内容を決める
把握した課題や希望をもとに、サービスの目標と達成時期、具体的なサービス内容、支援する際の注意点などを計画へ盛り込みます。
たとえば「転ばないように見守る」だけではなく、本人ができる動作を残しながら安全に移動できるよう、歩行時の見守り方法や福祉用具、機能訓練などを組み合わせて考えます。
本人や家族の希望はケアプランに反映される?
特定施設サービス計画は、施設側だけで一方的に決めるものではありません。
厚生労働省の基準では、利用者または家族の希望と、本人について把握した課題を踏まえて原案を作成することが求められています。
まず本人の希望を確認する
大切なのは、介護する側が考える「安全」だけではなく、本人がどのような生活を望んでいるかです。
たとえば、本人に次のような希望があるかもしれません。
- できる限り自分で歩きたい
- 朝はゆっくり起きたい
- 毎日好きな服を選びたい
- 家族と外出したい
- 趣味を続けたい
- トイレで排せつを続けたい
こうした希望を介護・安全面とすり合わせて、具体的な支援方法を検討します。
家族の希望も伝える
家族は本人の生活歴やこれまでの介護方法を知っている重要な情報源です。
入居前に「こうしてほしい」という要望だけでなく、本人が落ち着く声かけ、嫌がる介助方法、これまで続けてきた生活習慣なども伝えると、計画へ反映しやすくなります。
POINT
家族が伝えるときは、「転倒させないでください」だけではなく、「本人は自分で歩きたい気持ちが強いので、安全を確保しながら歩く機会を残してほしい」のように、本人の希望と家族の心配を両方伝えると具体的な支援につながりやすくなります。
介護職員や看護職員もケアプラン作成に関わる?
最終的に計画をまとめる中心は計画作成担当者ですが、ケアマネジャー一人だけで内容を決めるわけではありません。
厚生労働省の基準では、本人・家族の希望と把握した課題に基づき、他の特定施設従業者と協議したうえで計画原案を作成することが求められています。
介護職員から日常生活の情報を集める
日々本人と関わる介護職員は、食事、排せつ、移動、睡眠、認知症の症状などの変化を把握しています。
「最近立ち上がりが不安定になった」「食事中のむせが増えた」といった情報は、支援内容を見直す重要な材料になります。
看護職員から健康状態を共有する
看護職員は血圧や体温だけでなく、病状、服薬、皮膚状態、食事量など健康面の変化を確認します。
医療上の注意点がある場合は、ケアプランへ反映し、介護職員と共有する必要があります。
機能訓練指導員などの意見も確認する
歩行や移乗など身体機能に課題がある場合は、機能訓練指導員など専門職の意見も重要です。
ケアプランは、一つの職種だけではなく、本人を支える複数の職種の情報をつなぐ役割も持っています。
完成したケアプランは説明してもらえる?
施設側が作成したケアプランが、説明なしでそのまま決定されるわけではありません。
原案について本人または家族へ説明する
厚生労働省の基準では、計画作成担当者は特定施設サービス計画の原案について、利用者またはその家族へ説明することが求められています。
分からない言葉や納得できない支援内容があれば、この段階で質問してください。
本人の文書による同意が必要
計画の作成にあたっては、利用者本人の文書による同意を得ることが定められています。
本人の意思確認が難しい場合の具体的な手続きは、本人の状態や代理権の有無などによって扱いが変わるため、施設へ確認してください。
作成後は本人へ交付される
完成した特定施設サービス計画は、利用者へ交付することが必要です。
家族も内容を確認したい場合は、本人の意向や施設の個人情報の取扱いを踏まえて、写しを受け取れるか施設へ確認しましょう。
ケアプランは一度作ったらそのまま?
特定施設サービス計画は、入居時に一度作って終わるものではありません。
厚生労働省の基準では、作成後も他の職員と継続的に連絡を取り、計画の実施状況や本人の課題を把握し、必要に応じて計画を変更することが求められています。
状態が変われば見直す
たとえば次のような変化があれば、ケアプランを見直すきっかけになります。
- 歩行が難しくなった
- 転倒が増えた
- 食事量が減った
- 嚥下機能が低下した
- 認知症の症状が変化した
- 要介護度が変わった
- 退院後に医療処置が増えた
- 本人の生活上の希望が変わった
本人・家族から変更を相談することもできる
施設からの見直しを待つだけではなく、本人や家族が「今の支援方法が合っていない」と感じた場合は、計画作成担当者へ相談してください。
たとえば、本人が自分でできることまで介助されている、逆に必要な見守りが不足している、といった場合は具体的な場面を伝えると見直しにつながりやすくなります。
ケアプランと実際の介護内容が違うときはどうする?
ケアプランに書かれた内容と、実際に受けている介護が合っているかを確認することも重要です。
まず計画作成担当者へ具体的に伝える
「ケアが悪い」と抽象的に伝えるより、具体的な日時や場面を整理します。
- 計画では歩行見守りだが、毎回車いすになっている
- トイレ誘導の予定があるが実施されていない
- 本人の希望していた活動が支援内容に反映されていない
- 状態変化後も以前の計画のままになっている
そのうえで、現在のケアプランの内容と実際のサービス提供を一緒に確認します。
安全上の理由で方法が変わっていることもある
本人の状態が急に変化し、安全上の理由から一時的に介助方法が変わることもあります。
重要なのは、変更理由が本人・家族へ説明され、必要に応じてケアプラン自体も見直されているかです。
ケアプランは「契約時の説明資料」ではなく実際の介護の基準
介護付き有料老人ホームのサービスは特定施設サービス計画に基づいて提供することが求められています。計画と実際の介護に大きなズレがある場合は、内容を確認し、必要なら見直しを相談しましょう。
入居前の情報はどこまで施設へ伝える?
本人に合うケアプランを作るには、入居後の短い観察だけでなく、これまでの生活を知ることが重要です。
以前のケアプランや介護情報を引き継ぐ
在宅で介護保険サービスを利用していた場合は、これまでの居宅ケアプランやサービス利用状況が参考になります。
病院や他施設から移る場合は、看護サマリーや退院時の情報など、施設が求める資料を準備します。
生活歴も重要な情報
介護サービスの量だけでなく、本人がこれまでどのように暮らしてきたかを伝えます。
- 起床・就寝時間
- 食事の好み
- 入浴の習慣
- 趣味
- 仕事や家庭で担ってきた役割
- 大切にしていること
- 苦手なこと・嫌がること
認知症がある人では、こうした生活歴が声かけや日常ケアの方法を考える手掛かりになることがあります。
家族はケアプランのどこを確認すればいい?
家族がケアプランを見るときは、介助回数だけでなく「本人の生活目標と支援がつながっているか」を確認します。
01
本人の希望が書かれているか
施設側の都合だけではなく、本人がどう暮らしたいかが計画へ反映されているか確認します。
02
目標が具体的か
「安全に過ごす」だけでなく、何ができる状態を目指すのか確認します。
03
誰が何をするか分かるか
介護、看護、機能訓練など、どの職種がどのように支援するのか確認します。
04
本人ができることを奪っていないか
安全を優先しすぎて、本人が自分でできる動作まで介助する計画になっていないか確認します。
05
状態変化時の見直しがされているか
入院、転倒、要介護度変更などがあった後に、現在の状態に合う内容へ更新されているか確認します。
施設へ確認したいケアプランの質問
ケアプラン作成・見直しのチェックリスト
- ケアプランを作る計画作成担当者は誰ですか
- 計画作成担当者は介護支援専門員ですか
- 計画作成担当者は何人いますか
- 一人で何人程度を担当していますか
- 入居後いつ頃ケアプランを作りますか
- 本人の希望はどのように聞き取りますか
- 家族は作成前に希望を伝えられますか
- 介護職員・看護職員などはどのように計画作成へ参加しますか
- 作成した計画は本人・家族へ説明されますか
- ケアプランの写しを確認できますか
- 定期的な見直しはどのように行いますか
- 状態が変わった場合は随時見直しますか
- 家族からケアプラン変更を相談できますか
- 計画と実際のケアに違いがある場合は誰へ相談しますか
入居相談の段階で、現在困っていることだけではなく、本人が続けたい生活やできることも伝えておくと、入居後のケアプラン作成に役立ちます。
まとめ|施設ケアマネが中心になり、本人・家族・多職種で作る
介護付き有料老人ホームでは、施設内の計画作成担当者が「特定施設サービス計画」を作成します。
現行基準では、計画作成担当者は介護支援専門員で、利用者100人またはその端数ごとに1人を標準として配置します。
計画作成担当者は、本人の能力や生活環境、困りごとを評価し、本人・家族の希望を踏まえ、介護職員・看護職員など他の職種と協議して、目標、サービス内容、注意点などを計画にまとめます。
作成した原案は本人または家族へ説明し、本人の文書による同意を得たうえで、本人へ交付することが必要です。また、入居後も実施状況や本人の状態を確認し、必要に応じて内容を変更します。
施設選びでは「ケアマネジャーがいるか」だけでなく、本人の希望をどう聞き、他職種とどう共有し、状態変化時にどのように計画を見直すのかまで確認することが大切です。