介護付き有料老人ホームへ入居すると、「家族と買い物や外食に行けるのか」「自宅へ泊まりに帰れるのか」「外泊すると施設費はどうなるのか」と気になることがあります。
介護付き有料老人ホームは、介護を受ける場所であると同時に入居者の生活の場です。厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、家族との交流や外出の機会を確保するよう努めることが示されています。
結論|介護付き有料老人ホームでも外出・外泊はできるのが基本。ただし手続きと安全確認が必要
介護付き有料老人ホームでは、家族との外食、買い物、通院、自宅への一時帰宅、家族宅への宿泊など、外出・外泊が可能な施設が一般的です。ただし、外出届・外泊届、帰宅予定時刻、付き添い、服薬、食事キャンセル、緊急連絡先などのルールは施設ごとに異なります。また、認知症による道迷い、転倒リスク、医療処置の必要性などから、一人での外出が難しい場合があります。契約前には「外出できますか?」だけでなく、本人の場合に誰と・どの時間帯なら可能か、外泊時の費用がどうなるかまで確認してください。
最初に確認する3点
- 外出・外泊の可否は契約と施設ルールを見る
- 外泊中に発生する費用を確認する
- 薬・食事・送迎・緊急連絡の扱いを確認する
介護付き有料老人ホームでも外出・外泊はできる?
介護付き有料老人ホームへ入居したからといって、原則として施設の中だけで生活しなければならないわけではありません。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、有料老人ホームの設置者に対し、入居者と家族との交流などの機会を確保するよう努めるとともに、入居者の外出の機会を確保するよう努めることを示しています。
家族との外食・買い物
家族が迎えに来て、一緒に食事や買い物へ出かけることができます。本人の体調や移動能力によっては、車いすや介助者の準備が必要です。
自宅や家族宅への一時帰宅
以前住んでいた自宅へ戻ったり、家族宅で過ごしたりする外出も考えられます。
長時間施設を離れる場合は、食事や薬の時間、排泄介助、移動方法などを事前に確認します。
家族宅や旅行先への外泊
施設のルールと本人の状態に問題がなければ、家族宅への宿泊や旅行などの外泊ができる場合があります。
ただし、外泊時は施設職員が同行して介護するわけではないため、家族側で必要な介助を行えるかも重要です。
POINT
「外出・外泊できるか」と「一人で自由に出かけられるか」は別の問題です。本人の身体状態や認知機能によって、家族等の付き添いが必要になることがあります。
外出するときはどんな手続きが必要?
外出の手続きは全国一律ではなく、各ホームの管理規程や入居契約、運用ルールに従います。
外出届を提出する施設がある
施設によっては、外出日時、行き先、同行者、帰宅予定時刻、緊急連絡先などを外出届へ記入します。
これは入居者の行動を不必要に制限するためではなく、災害・急変などがあった際に、誰が施設内にいるのかを把握するためにも必要です。
当日の体調確認を行うことがある
外出予定があっても、発熱、血圧の大きな変化、強い倦怠感などがある場合は、安全のため外出を延期するよう相談されることがあります。
帰宅予定時刻を伝える
予定より帰宅が遅くなる場合は、施設へ連絡するルールを設けているホームがあります。
夜間は玄関が施錠される施設もあるため、帰宅可能な時間や夜間の出入り方法を事前に確認してください。
門限や手続きは施設ごとに確認
「有料老人ホームは○時までに帰らなければならない」という全国共通の門限があるわけではありません。外出届、帰宅時間、夜間出入口、家族への連絡方法などは、管理規程・入居契約書・施設からの説明で確認します。
一人で外出できるかは本人の状態で判断が変わる
外出そのものが可能でも、本人だけで出かけられるか、家族等の付き添いが必要かは別に考えます。
歩行・転倒リスク
施設内では手すりや職員の見守りがあるため歩けていても、屋外では段差、横断歩道、人混みなどがあります。
杖や歩行器を使っている人は、屋外で安全に移動できるかを確認してください。
認知症による道迷い
認知症があり、道に迷う可能性や帰宅場所が分からなくなる可能性が高い場合は、一人での外出が難しいことがあります。
「認知症だから外出禁止」と一律に考えるのではなく、本人がどこまで安全に行動できるかを確認し、家族の付き添いなどで外出の機会を確保できるか相談します。
医療処置が必要な場合
酸素療法、インスリン注射、吸引などが必要な人は、外出時間中に処置が必要になるかを確認します。
施設外ではホームの看護職員が通常どおり処置できるとは限らないため、本人・家族がどのように対応するか事前に相談してください。
「外出中に必要な介護」を具体的に洗い出す
移乗、トイレ、食事、服薬、車いす介助など、施設内では職員が行っている支援を家族側で行えるか確認します。
外泊するときは何を確認すればいい?
自宅や家族宅へ泊まる場合は、数時間の外出より準備が増えます。
外泊期間と帰所日
何日から何日まで外泊するのか、何時ごろ施設へ戻るのかを伝えます。
外泊期間の上限を独自に定めている施設もあるため、連泊や長期外泊を予定する場合は早めに相談してください。
外泊中の薬
定時薬がある場合は、外泊日数分の薬をどのように準備するのか、本人・家族のどちらが管理するのかを確認します。
食前・食後・就寝前など服用時間も共有してください。
外泊先での介護
施設職員が外泊先へ同行して通常の介護を続けるわけではありません。
排泄、入浴、移乗、食事介助などが必要な場合は、家族だけで対応できるかを検討します。
福祉用具・医療機器
車いす、歩行器、酸素機器などが必要な場合は、施設から持ち出せるのか、外泊先で別に準備する必要があるのか確認します。
施設備品は自由に持ち出せるとは限らない
車いすなどが施設所有物の場合、外泊への持ち出しが認められないこともあります。本人所有の福祉用具か施設備品かも確認してください。
外泊中の介護保険サービス費はどうなる?
介護付き有料老人ホームのうち、介護保険の「特定施設入居者生活介護」を利用している場合、外泊中の介護保険サービス費には注意が必要です。
外泊期間中は特定施設入居者生活介護費を算定できない
厚生労働省の介護報酬の取扱いでは、入居者が外泊している期間中は、特定施設入居者生活介護費を算定できないとされています。
つまり、施設にいない外泊期間中について、ホームが通常どおり特定施設入居者生活介護費を算定する仕組みではありません。
家賃・管理費などは別に考える
一方、介護保険サービス費が算定されないことと、ホームへ支払う費用がすべてなくなることは同じではありません。
家賃、管理費などは、居室を確保したまま契約が続いているため、外泊中も通常どおり必要になることがあります。
食費はキャンセル期限を確認する
外泊中に食事を取らない場合でも、いつまでにキャンセルを伝えれば食費が請求されないかは施設によって異なります。
食材発注の都合などから、直前のキャンセルでは費用が発生する場合があります。
外泊時に「何が減るか」は契約書・料金表で確認
介護保険サービス費、食費、家賃、管理費、上乗せ介護費などは同じ扱いではありません。「外泊した日数分、月額費用がすべて日割りで減る」とは限らないため、費目ごとに確認してください。
外泊先で介護サービスを利用できる?
外泊中は、特定施設入居者生活介護を利用している通常の入居期間とは介護保険上の扱いが異なります。
厚生労働省の取扱いでは、特定施設入居者生活介護の入居者について、外泊期間中は他の居宅サービスに係る介護給付費の算定制限から除かれる取扱いがあります。
必要なサービスをその場で自由に使えるわけではない
外泊先で訪問介護などが必要だからといって、その日から自由に介護保険サービスを利用できるという意味ではありません。
利用するにはケアプラン、事業者との契約、サービス提供可能地域などの調整が必要になる場合があります。
長期外泊なら事前に相談する
数日以上自宅へ戻り、その間に介護サービスが必要になる場合は、施設のケアマネジャーや担当者へ早めに相談してください。
外泊先で必要になる介護内容と、介護保険上利用可能なサービスを確認したうえで調整します。
通院のための外出は誰が付き添う?
外出の中でも、医療機関への通院は家族の負担に直結しやすい項目です。
施設職員の通院付き添いが含まれるとは限らない
介護付き有料老人ホームだからといって、すべての通院へ職員が無料で付き添うとは限りません。
協力医療機関への通院は施設サービスに含む、指定範囲外の病院は家族対応、職員付き添いは別料金など、施設ごとにルールが異なります。
送迎と付き添いを分けて確認する
施設の車で病院まで送ってもらえても、診察中の付き添いまでは行わない場合があります。
「送迎してもらえるか」「病院内まで付き添ってもらえるか」「料金はいくらか」を別々に確認します。
感染症流行時は外出・外泊の扱いが変わることがある
通常は外出・外泊が可能な施設でも、感染症が流行している時期には対応が変わることがあります。
本人や施設内の感染状況で判断する
本人に発熱などの症状がある場合や、施設内で感染症が発生している場合など、安全管理上の対応が必要になることがあります。
一律のルールだと決めつけない
外出後の健康確認、マスク、帰所時の対応などは、その時点の感染状況や施設方針によって変わります。
以前のルールを前提にせず、外出・外泊の予定を立てる段階で最新の対応を確認してください。
外出・外泊で持っていくもの
長時間の外出や外泊では、本人の状態に応じて必要な物を準備します。
外出・外泊前の持ち物チェック
- 服用する薬
- お薬手帳・薬の情報
- マイナ保険証または資格確認書など受診に必要なもの
- 障害者手帳など必要な証明書
- 着替え
- おむつ・尿取りパッドなど必要な衛生用品
- 杖・歩行器・車いす
- 補聴器・眼鏡
- 医療機器・必要な消耗品
- 施設の緊急連絡先
薬は施設側と受け渡し方法を確認する
薬を施設が管理している場合は、外泊分を本人・家族へどのように渡すか確認します。
薬の内容を自己判断で変更せず、服用時間や注意点も確認してください。
入居前に確認したい外出・外泊の8項目
外出を大切にしたい人は、入居後に初めてルールを知るのではなく、見学・契約前に確認しておくことが重要です。
01
外出・外泊は自由にできますか?
原則的なルールと、本人の状態による制限があるか確認します。
02
外出届・外泊届はいつまでに必要ですか?
当日でも可能か、事前申請が必要かを確認します。
03
一人で外出できますか?
本人の歩行状態や認知機能を踏まえ、付き添いが必要になる条件を聞きます。
04
帰宅時間や門限はありますか?
夜間の玄関施錠時間や、遅くなる場合の連絡方法を確認します。
05
外泊日数に制限がありますか?
連泊や長期外泊を予定する場合の施設ルールを確認します。
06
外泊中の費用はどうなりますか?
介護保険サービス費、家賃、管理費、食費などを費目別に確認します。
07
外泊時の薬はどう受け取りますか?
薬の準備方法、家族が管理する範囲、医療処置の引継ぎを確認します。
08
通院の送迎・付き添いはどこまで対応しますか?
対象医療機関、送迎範囲、付き添い内容、追加料金を確認します。
まとめ|外出・外泊は可能でも「本人の場合の条件」まで確認する
介護付き有料老人ホームでは、家族との外食や買い物、自宅への一時帰宅、家族宅や旅行先への外泊などが可能な施設が一般的です。厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、家族との交流と外出の機会を確保するよう努めることが示されています。
ただし、外出届、外泊届、門限、付き添いの要否、薬の管理、食事キャンセルなどの具体的なルールは施設ごとに異なります。また、本人の身体状態、認知症、医療処置の必要性によって、一人での外出が難しい場合があります。
特定施設入居者生活介護を利用している場合、外泊期間中はその介護保険サービス費を算定できません。一方、家賃や管理費などは契約に基づき外泊中も必要になることがあります。
入居前には「外出できますか?」だけで終わらせず、「本人は一人で出られるか」「外泊できる日数」「外泊時に残る費用」「薬や医療処置」「通院付き添い」まで確認してください。外出や家族との時間を大切にしたい人ほど、施設選びの段階で具体的なルールを確認することが重要です。