住宅型有料老人ホームに入居中、病気やけがで長期入院することがあります。そのとき家族が最も気になるのが、「居室はそのまま残せるのか」「入院が長引くと退去になるのか」「家賃は払い続けるのか」という点です。
結論からいうと、長期入院したら全国一律で自動退去になるわけではありません。居室を維持できる期間、契約解除の条件、家賃・管理費・食費の扱いなどは、入居契約書や管理規程で定められています。
まず結論|長期入院時の居室・退去・費用は「契約書」で確認する
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、入居契約書に契約解除の要件とその場合の対応、費用負担、前払金の返還方法などを明示することが求められています。したがって「30日入院したら必ず退去」「3か月までは必ず居室を残せる」といった全国共通ルールがあるわけではありません。実際には、長期入院を契約解除事由としているホームもあるため、入院したらまず契約書の解除条項、居室維持条件、家賃・管理費・食費の扱い、退院後の再入居条件を確認することが重要です。
長期入院したら居室はどうなる?
入院しただけで直ちに居室が失われるとは限りません。
多くの場合、入居契約が継続している間は居室を確保し続けます。
居室を維持できる契約なら、そのまま残る
本人が入院中でも契約を解除していなければ、居室は本人のために確保されます。
家具や衣類なども、そのまま残せる場合があります。
長期入院を契約解除事由としているホームもある
一方で、ホームによっては「一定期間以上の入院が続き、退院後に施設生活へ戻る見込みがない」などを契約解除の条件としている場合があります。
実際に介護サービス情報公表システムで公開されている有料老人ホームの契約例には、長期入院と病状回復の見込みを条件に、契約解除条項を設けているケースもあります。
入院日数だけで判断しない
「30日」「90日」などの数字だけを見るのではなく、その日数が契約解除の絶対条件なのか、退院見込みや本人の状態も含めた条件なのかを確認してください。
入院が長引くと退去になる?
長期入院したら必ず退去になる、という全国一律のルールはありません。
退去になるかどうかは、入居契約書に定められた契約解除条件によります。
厚生労働省は契約解除条件の明示を求めている
有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、入居契約書に契約解除の要件と、その場合の対応を明示することが求められています。
さらに、施設側の契約解除条件は、入居者の権利を不当に狭める内容にならないよう配慮する考え方が示されています。
「長期入院」の定義はホームごとに違う
長期入院について、施設ごとに次のような条件が設定されることがあります。
- 一定期間以上入院している
- 退院の見込みが立たない
- 退院してもホームでの生活継続が困難
- 必要な医療・介護が施設の対応範囲を超える
そのため、「入院期間」だけでなく「退院後に戻れる状態か」という点も重要です。
長期入院中も家賃はかかる?
入院中も居室を確保している場合、家賃相当額は継続することが一般的です。
ホテルのような日割り利用ではない
住宅型有料老人ホームは、居室を生活の拠点として契約する住まいです。
本人が病院にいる間も居室を確保しているなら、「使っていないから家賃0円」とは限りません。
管理費も継続する場合がある
管理費や共益費には、共用部維持、事務管理、建物管理など固定的な費用が含まれることがあります。
そのため、入院中も全部または一部が継続する料金体系があります。
光熱水費は扱いが分かれる
定額制なら入院中も同額、実費なら利用が減る、管理費に含まれるなど、施設ごとに違います。
長期入院が見込まれたら、家賃・管理費・光熱水費を項目ごとに確認しましょう。
食費は入院中もかかる?
食費は、入院によって施設の食事を利用しない場合、減額・停止されることがあります。
食数精算なら減額されやすい
朝・昼・夕の食数で料金を計算する施設では、事前に欠食連絡をすれば請求されない場合があります。
月額定額では一部固定費が残ることもある
厨房運営費などを含む月額料金の場合、入院中でも一定額が必要になる場合があります。
欠食連絡の期限を確認する
急な入院では、入院当日や翌日分の食事費が発生することがあります。
入院が決まったら、家族または施設職員がいつまでに食事停止手続きを行うか確認してください。
介護保険サービス費は入院中どうなる?
住宅型有料老人ホームでは、訪問介護、訪問看護、デイサービスなど外部の介護保険サービスを個別に利用するのが基本です。
入院中は、それらの居宅サービスを通常どおり利用できないため、サービス予定の変更・中止が必要になります。
訪問介護
本人が病院に入院している間、ホームの居室で訪問介護を受けることはありません。
予定していたサービスはキャンセル・休止手続きを行います。
デイサービス
入院中はデイサービスも利用できないため、送迎予定を含めて中止連絡が必要です。
訪問看護
入院中は病院の医療管理下に入るため、ホームで利用していた訪問看護も通常の居宅サービスとしては休止します。
ケアマネジャーへ連絡する
入院したら担当ケアマネジャーへ連絡し、各サービス事業所への調整方法を確認してください。
POINT
住宅型では「施設利用料」と「外部介護サービス費」が別です。入院しても家賃等は残る一方、利用しない訪問介護等は休止するため、請求の変化を項目ごとに確認しましょう。
入院中の居室に荷物は置いておける?
契約を継続し居室を維持している場合、家具や衣類などをそのまま置けることが一般的です。
ただし、長期化する場合は施設ごとのルールを確認してください。
貴重品は家族が管理する
現金、通帳、印鑑、貴金属などの貴重品は、入院中に居室へ置いたままにしない方が安全です。
冷蔵庫や食品を確認する
急な入院では、居室内に食品や生ものが残っていることがあります。
長期入院になる場合、施設職員や家族が処分・整理する必要があります。
郵便物の扱いも確認する
郵便物をホームで預かるのか、家族へ転送するのかを決めておくと安心です。
入院中に施設側が居室へ入ることはある?
居室は本人の生活空間ですが、安全管理や設備点検などのため、職員が入室する場合があります。
設備点検
空調、水回り、消防設備、漏水などの確認が必要になることがあります。
衛生管理
長期間不在になる場合、換気や清掃などを行う施設があります。
家族の同意・契約上のルールを確認する
入院中の居室管理について、管理規程や入居契約書にどのような定めがあるか確認しましょう。
退院したら元の居室へ戻れる?
入居契約が継続し、居室を維持していれば、退院後に元の居室へ戻れる場合があります。
ただし、本人の状態が入院前と大きく変わっている場合は、戻れるかどうかを再確認する必要があります。
介護量が増えていないか確認する
入院をきっかけに歩行能力が低下し、排せつ・移乗・食事などの介助が増えることがあります。
退院前に、病院の看護師・リハビリ職・ケアマネジャー・施設職員で必要な支援を共有します。
医療処置が増えていないか確認する
退院後に酸素、吸引、経管栄養、インスリン、褥瘡処置などが必要になる場合があります。
現在の住宅型と訪問看護等の体制で対応できるか確認します。
退院前カンファレンスを活用する
病院側が退院支援カンファレンスを行う場合、施設職員やケアマネジャーに参加してもらい、退院後の支援内容を調整するとスムーズです。
退院できても施設へ戻れないケースはある?
病院としては退院可能でも、元の住宅型で必要な介護・医療を安全に提供できない場合、すぐに戻れないことがあります。
必要な介護量が大幅に増えた
入院前は一人で歩けていた人が、退院時には全介助になっているなど、支援量が大きく変わった場合です。
夜間医療が必要になった
夜間にも頻回な吸引、注射などが必要になった場合、看護体制によっては対応できないことがあります。
認知症・せん妄後の状態が変化した
長期入院後に認知機能や行動面の変化がみられることがあります。
施設側が現在の職員体制で対応可能か再確認します。
病院の「退院可能」と施設の「受入可能」は別
医療的に入院継続が不要でも、退院後の介護・医療を住宅型で安全に提供できるとは限りません。退院日を決める前に施設と支援者で受入条件を確認しましょう。
長期入院を理由に退去を求められたら何を確認する?
施設から「長期入院なので退去を検討してほしい」と言われた場合は、すぐに居室を明け渡す前に契約内容を確認します。
契約書の解除条項
どの条項を根拠に退去を求めているのか確認します。
条件を満たしているか
「○日以上入院」だけなのか、「退院の見込みがない」「施設での生活再開が難しい」など複数条件があるのかを確認します。
予告期間
施設側から契約解除する場合、契約で予告期間が設定されていることがあります。
本人・家族への説明
なぜ施設生活の継続が難しいのか、医学的・介護的な理由を具体的に説明してもらいます。
退院後の受入先
退去が避けられない場合は、ケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカー、地域包括支援センターなどと連携し、次の施設を探します。
前払金を支払っている場合はどうなる?
住宅型有料老人ホームで前払金を支払っている場合、契約終了時に未償却分の返還がある契約があります。
厚生労働省の標準指導指針では、入居契約書に前払金の返還金の有無、算定方式、支払時期を明示することが求められています。
入院中は契約継続なら返還計算は通常始まらない
単に入院しただけで入居契約が続いている場合、退去・契約解除とは扱いが異なります。
契約終了する場合は返還額を確認する
長期入院をきっかけに契約を解除する場合は、未償却分がいくら返還されるか、いつ支払われるか確認してください。
解約日と居室明渡日を確認する
契約終了日と荷物を搬出する日が異なる場合、どの日まで家賃・管理費が発生するのかを確認します。
入院中に家族が確認しておきたいこと
01
契約解除条件
長期入院が契約解除事由になっているか、何日・どのような条件か確認します。
02
毎月かかる費用
家賃、管理費、光熱水費、食費、生活支援費など、入院中も残る費用を確認します。
03
外部介護サービスの休止
訪問介護、訪問看護、デイサービス等をいつから休止・変更するか確認します。
04
退院後の受入条件
介護量や医療ニーズが変わった場合でも元のホームへ戻れるか確認します。
05
退去時の手続き
契約解除予告、荷物搬出、前払金返還、原状回復などを確認します。
退院前に確認したい質問
長期入院・退院時のチェックリスト
- 何日以上の入院を「長期入院」と扱いますか
- 長期入院だけで契約解除になりますか
- 退院見込みがあれば居室を維持できますか
- 入院中も家賃は全額必要ですか
- 管理費は全額必要ですか
- 光熱水費はどうなりますか
- 食費はいつから停止・減額されますか
- 居室に荷物を置いたままにできますか
- 入院中の居室管理はどうなりますか
- 郵便物はどう管理しますか
- 訪問介護はどのように休止しますか
- 訪問看護・デイサービスの連絡は誰が行いますか
- 退院後は元の居室へ戻れますか
- 退院後に介護量が増えても戻れますか
- 新しい医療処置が必要になった場合は対応できますか
- 施設へ戻れない場合はどのような条件ですか
- 施設側から契約解除する場合の予告期間は何日ですか
- 前払金の未償却分はいくら返還されますか
- 退去時の原状回復費用はどうなりますか
- 契約終了日と居室明渡日はいつになりますか
契約前から「入院したとき」を確認しておく
長期入院は入居後に突然起こることがあります。
入院してから初めて契約書を読むのではなく、入居前から確認しておくと安心です。
重要事項説明書
費用、契約解除、医療連携などの重要事項を確認します。
入居契約書
長期入院、退去、契約解除、前払金返還など具体的な契約条件を確認します。
管理規程
入院中の居室管理、欠食、家族連絡など運用面のルールが記載されている場合があります。
口頭説明だけでなく、必ず書面と照らし合わせてください。
まとめ|長期入院時は「居室・契約・費用・退院後」の4点を確認する
住宅型有料老人ホームに入居中、長期入院したからといって全国一律で自動的に退去になるわけではありません。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、入居契約書に契約解除の要件とその場合の対応、費用負担、前払金の返還等を明示することが求められています。
そのため、入院が長引いた場合は、まず契約書で長期入院の扱いと契約解除条件を確認してください。
居室を維持するなら、入院中も家賃や管理費などの固定費が続くことがあります。一方、食費や訪問介護等の外部サービス費は、利用しない期間は扱いが変わります。
さらに重要なのが退院後です。入院によって身体機能や認知機能が低下したり、医療処置が増えたりすると、元の住宅型へ戻れるか再確認が必要になります。
長期入院時は「何日入院したか」だけではなく、①居室を維持できるか、②契約解除条件は何か、③入院中に何の費用が残るか、④退院後に現在の状態で戻れるか、の4点を確認することが大切です。