特別養護老人ホーム(特養)の費用を調べると、「要介護3ならいくら」「要介護5ならいくら」といった金額だけが目に入りやすくなります。しかし、実際に支払う金額は要介護度だけでは決まりません。
特養では、介護保険の対象となる施設サービス費の自己負担に加えて、居住費、食費、日常生活費、施設によっては各種加算などが加わります。また、介護保険の自己負担割合が1割・2割・3割のどれに該当するかによっても金額は変わります。
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特養の介護保険自己負担は、要介護度が高いほど基本となる施設サービス費が上がります。ただし、実際の月額負担は「要介護度」だけでなく、1〜3割の負担割合、居室の種類、各種加算、居住費、食費などを合わせて確認する必要があります。
特養の介護保険自己負担は何に対して支払う?
特養では、入浴、排せつ、食事などの介護、日常生活上の支援、健康管理などを施設サービスとして受けます。このうち介護保険の対象となる部分について、利用者は所得に応じた自己負担割合で支払います。
一方で、居住費や食費などは施設サービス費とは別に考える必要があります。「介護保険の自己負担額」と「特養へ毎月支払う総額」は同じではありません。
確認のポイント
見積書を見るときは、介護保険対象分だけでなく、居住費・食費・日常生活費まで含めた月額総額を確認しましょう。
要介護度が上がると施設サービス費も上がる
特養の施設サービス費は、要介護1から要介護5まで段階的に設定されています。一般に、要介護度が高いほど必要となる介護量が増えるため、基本となるサービス費も高くなります。
現在公表されている介護老人福祉施設の例では、1割負担の場合、従来型個室・多床室の基本部分は要介護1で1日589円、要介護5で1日871円、ユニット型個室などでは要介護1で1日670円、要介護5で1日955円が目安として示されています。
ただし、これはあくまで基本部分です。施設の形態や職員配置、算定している加算などによって実際の請求額は変わります。
要介護1・2でも特養の費用が発生する場合がある
特養の新規入所は原則として要介護3以上が対象です。ただし、要介護1・2であっても、やむを得ない事情があり在宅生活が著しく困難な場合には、特例的に入所対象となることがあります。
そのため、要介護1・2の料金設定が存在していても、「要介護1・2なら通常どおり誰でも新規入所できる」という意味ではありません。入所条件と費用は分けて理解する必要があります。
自己負担割合は1割とは限らない
介護保険サービスの利用者負担は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかになります。
たとえば、同じ要介護度・同じ居室で同じサービスを利用していても、自己負担割合が2割なら介護保険対象部分の負担は1割負担者より大きくなります。3割負担の場合も同様です。
自分の負担割合は、自治体から交付される介護保険負担割合証で確認できます。入所前には、有効期間も含めて確認しておきましょう。
介護保険自己負担だけでは月額費用は分からない
特養で毎月支払う費用を考えるときは、施設サービス費以外も含めます。
- 介護保険の施設サービス費自己負担
- 介護保険上の各種加算の自己負担
- 居住費
- 食費
- 医療費・薬代
- 理美容代
- 日用品費や個人的に必要な費用
そのため、「介護保険分が月3万円程度だから、毎月3万円で入居できる」と考えるのは適切ではありません。
居室の種類によって費用が変わる
特養には、多床室、従来型個室、ユニット型個室などがあります。施設サービス費だけでなく、居住費も居室形態によって異なります。
一般にユニット型個室はプライバシーを確保しやすい一方、居住費を含めた総額が多床室より高くなることがあります。
要介護度が同じでも、部屋の種類が違えば月額総額は変わるため、料金比較では必ず同じ居室条件で比べましょう。
加算が付くと自己負担額も増える
特養では、施設の人員配置や提供しているケアの内容などに応じて、さまざまな加算が算定されることがあります。
加算は、一定の体制やサービスを評価する介護報酬上の仕組みです。加算が算定されれば、そのうち利用者負担割合に応じた分が自己負担に加わります。
施設を比較するときは、基本料金だけではなく、現在どの加算が算定され、月にどの程度の負担になるのかを料金表や重要事項説明書で確認してください。
食費と居住費には負担軽減制度がある
所得や資産など一定の条件を満たす人には、介護保険施設の食費・居住費について負担を軽減する仕組みがあります。一般に「負担限度額認定」や「補足給付」と呼ばれる制度です。
対象になるかどうかは、本人や世帯の所得状況、預貯金などの条件によって判断されます。自動的にすべての人へ適用されるわけではないため、対象になりそうな場合は市区町村の介護保険窓口へ確認しましょう。
介護保険の自己負担が高い場合は高額介護サービス費も確認
介護保険サービスの自己負担が一定額を超えた場合、所得区分などに応じて負担を軽減する高額介護サービス費の仕組みがあります。
ただし、食費・居住費や日常生活費など、すべての支払いがこの制度の対象になるわけではありません。「毎月施設へ支払った総額」がそのまま上限の対象になると考えないようにしましょう。
医療費と介護保険自己負担は別に考える
特養入所後も、病院や診療所を受診した場合の医療費、薬代などが発生することがあります。これらは介護保険の施設サービス費とは別です。
持病があり定期通院が必要な人、複数の薬を使用している人、専門外来への受診が続く人は、介護費だけでなく医療費も含めて資金計画を立てる必要があります。
おむつ代は特養では基本的に施設サービスに含まれる
介護保険施設である特養では、施設サービスとして必要なおむつに関する費用は、基本的に別途おむつ代として徴収する扱いではありません。
ただし、個人的な希望で特別な物品を求める場合などは、施設ごとの取扱いを確認してください。料金表に「日用品費」と書かれていても、その中身を具体的に確認することが大切です。
月額費用を比較するときは30日分だけで決めない
施設の説明では「1日あたり」の単価が示されることがあります。月額を考える場合は日数を掛けて概算できますが、それだけで年間費用を判断するのは不十分です。
医療費、理美容、衣類、日用品、通院に伴う費用などは月によって変動します。入院した場合の居住費の扱いや外泊時の費用についても施設ごとに確認しておくと安心です。
料金表では「基本額」と「実際の請求額」を分けて見る
入所前に確認したい費用項目
- 本人の介護保険負担割合は1割・2割・3割のどれか
- 要介護度ごとの施設サービス費はいくらか
- 希望する居室の居住費はいくらか
- 食費はいくらか
- 毎月算定される主な加算は何か
- 日用品費や理美容代など保険外費用は何か
- 負担限度額認定などの軽減制度を利用できるか
できれば施設から月額のモデルケースを出してもらい、「最低限かかる金額」と「通常想定される金額」を分けて確認すると比較しやすくなります。
要介護度が変わると翌月以降の負担も変わることがある
入所後に要介護度が変更されれば、施設サービス費も変わる可能性があります。たとえば要介護3から要介護4へ変更された場合、基本となる介護報酬も変わります。
長期的な資金計画では、「現在の要介護度の費用だけで今後も変わらない」と考えず、介護度が上がった場合の月額も確認しておくとよいでしょう。
特養の費用を比較するときに安さだけで決めない
特養は比較的費用を抑えやすい施設ですが、料金だけで選ぶと、本人に必要な医療対応や認知症ケア、通院支援、看取り体制などが合わないことがあります。
費用の確認と同時に、本人が必要とするケアを継続できるかも確認してください。安い居室を選んでも、必要な支援が受けられなければ長く暮らす施設としては適切とは限りません。
見学時は直近の料金表をもらう
介護報酬や居住費・食費の基準、施設が算定する加算は将来変更される可能性があります。インターネット上の古い金額だけで判断せず、見学や申込みの際には施設から現在使用している料金表と重要事項説明書を受け取りましょう。
分からない項目があれば、「この金額は介護保険の対象か」「毎月必ず発生するか」「本人の負担割合ではいくらになるか」を一つずつ確認すると整理しやすくなります。
まとめ|要介護度別の金額より月額総額で確認する
特養の介護保険自己負担は、要介護度が高くなるほど基本的に増えます。ただし、実際に支払う金額は、本人の自己負担割合、居室形態、加算、食費、居住費などによって変わります。
「要介護度別の基本額」は費用確認の入口であり、最終的には毎月の総額で判断することが重要です。 入所候補が決まったら、本人の要介護度と負担割合を伝え、現在の条件で月額がどの程度になるかを施設へ具体的に確認してください。
