特別養護老人ホーム(特養)の料金を見ていると、「所得が低ければどこまで安くなる?」「年金が多いと何が上がる?」「加算も所得で変わる?」と分かりにくく感じることがあります。
特養の利用料は、すべてが所得に応じて変わるわけではありません。所得によって大きく変わるのは、介護保険サービスの自己負担割合、食費・居住費の負担限度額、高額介護サービス費の上限です。一方、施設が算定する介護報酬上の加算そのものは、本人の所得で付いたり外れたりする仕組みではありません。
そのため、「所得が低いから月額全体が一律に半額になる」「加算がなくなる」と考えるのではなく、どの費用にどの軽減制度が使えるかを分けて確認することが重要です。
まず結論|所得で変わるのは主に「自己負担割合・食費居住費・上限額」
特養の利用料で所得の影響を受ける主な項目は、①介護保険サービスの1〜3割の自己負担割合、②低所得者向けの食費・居住費の負担限度額、③高額介護サービス費の月額上限です。施設サービス費の基本単位や各種加算は本人の所得で決まるのではなく、施設の体制や提供サービス等に基づいて算定され、その自己負担部分に本人の負担割合が反映されます。2026年8月には補足給付の基準が見直されているため、古い所得基準ではなく最新の認定証・料金表で確認してください。
特養の料金で所得が影響する部分
所得の影響を受ける費用は、大きく3つに分けて考えると分かりやすくなります。
介護保険サービスの自己負担割合
介護サービス費は原則1割負担ですが、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割または3割負担になります。
食費・居住費の負担限度額
一定の低所得者は、市区町村から負担限度額認定を受けることで、食費・居住費の自己負担を抑えられる場合があります。
高額介護サービス費の上限
介護保険サービスの自己負担が一定額を超えた場合、所得区分に応じた上限を超える分が支給される制度があります。
POINT
「所得が低いと特養料金が安くなる」という説明だけでは不十分です。何が軽減されるのかを、介護費・食費・居住費・その他実費に分けて確認してください。
介護保険の自己負担は1割・2割・3割
特養で受ける介護保険サービスには、本人の所得に応じた利用者負担割合が適用されます。
原則は1割負担
多くの利用者は1割負担です。
一定以上所得者は2割負担
本人の合計所得金額に加え、公的年金等収入とその他の合計所得金額などを使って判定されます。
特に所得が高い人は3割負担
2割負担の対象者のうち、さらに所得が高い場合は3割負担になります。
厚生労働省の現行基準では、第1号被保険者について、本人の合計所得金額と年金収入等の組合せで判定されます。最終的な負担割合は、市区町村から交付される介護保険負担割合証で確認するのが確実です。
1割・2割・3割で「加算の有無」が変わるわけではない
特養の料金表には、基本サービス費のほかにさまざまな加算が記載されています。
加算は施設の体制・サービス内容で決まる
看取り介護、日常生活継続支援、夜勤職員配置、栄養管理など、加算にはそれぞれ算定要件があります。
本人の所得で加算が消えるわけではない
所得が低いから加算が算定されない、高所得だから加算が増えるという仕組みではありません。
自己負担額には負担割合が反映される
施設が同じ加算を算定していても、本人が1割負担か2割・3割負担かによって、その介護保険部分の自己負担額は変わります。
食費・居住費は「負担限度額認定」で変わる
特養の食費・居住費には、低所得者の負担を軽減する補足給付があります。
市区町村への申請が必要
原則として、本人または家族が市区町村へ申請し、介護保険負担限度額認定証の交付を受けます。
所得段階ごとに上限が決まる
第1段階、第2段階、第3段階①、第3段階②などに区分され、食費・居住費の1日当たりの負担限度額が設定されます。
第4段階は原則として補足給付の対象外
市区町村民税課税世帯などは原則として負担限度額認定の対象外となり、施設との契約額を負担します。
2026年8月から所得基準が見直された
補足給付の所得判定は制度改正によって変わることがあります。
第2段階の基準は82.65万円以下
2026年8月から、補足給付の所得区分の一部は、従来の80.9万円から82.65万円へ見直されました。
第3段階①との境目も変わる
世帯全員が市区町村民税非課税で、本人の公的年金等収入金額とその他の合計所得金額が82.65万円を超え120万円以下の場合は、第3段階①に該当する区分があります。
古い80万円・80.9万円の記事に注意する
インターネット上には過去の基準が多数残っています。2026年8月以降の判定では最新基準を確認してください。
所得区分は自己判断せず認定証で確認する
年金の種類、非課税年金、合計所得金額、配偶者の課税状況なども判定に関係します。「年金が○万円だから第2段階」と自己判断せず、市区町村の判定を確認してください。
預貯金等が多いと負担限度額認定を受けられない場合がある
補足給付は所得だけで判定される制度ではありません。
預貯金等の要件がある
本人の預貯金、有価証券等が一定額を超える場合は、所得が低くても対象外になることがあります。
配偶者がいる場合は基準が異なる
夫婦の場合は単身とは別の預貯金基準が設定されています。
世帯分離した配偶者も判定に関係する
住民票上の世帯を分けている配偶者がいる場合でも、配偶者の課税状況等が確認されます。
2026年8月の食費・居住費の目安
厚生労働省の2026年8月からの補足給付見直しでは、介護保険施設の食費の基準費用額は1日1,545円とされています。
低所得者の食費には上限がある
特養入所の場合、負担限度額は第1段階300円、第2段階390円、第3段階①680円、第3段階②1,420円とされています。
多床室の居住費も段階で異なる
特養多床室では、2026年8月以降、第1段階0円、第2段階430円、第3段階①430円、第3段階②530円という負担限度額が示されています。
個室は別の限度額
従来型個室、ユニット型個室的多床室、ユニット型個室では別の金額が設定されています。
実際の請求額は、施設との契約額と負担限度額認定の状況を確認してください。
基準費用額と実際の請求額は同じとは限らない
「基準費用額」という言葉は、施設の料金表を見るときに誤解しやすい項目です。
基準費用額は標準的な費用の基準
介護保険制度上、食費・居住費の標準的な費用として設定されている額です。
施設の契約額とは別
第4段階の人などは、施設が設定する契約額を負担します。必ずしも基準費用額と同額になるとは限りません。
補足給付は差額を給付する仕組み
低所得者について、基準費用額と負担限度額との差額を介護保険から給付することで負担を軽減します。
高額介護サービス費で介護費の上限が変わる
介護保険サービスの自己負担が高くなった場合には、高額介護サービス費があります。
所得区分ごとに月額上限がある
市区町村民税非課税世帯などには低い上限が設定され、課税所得が高い世帯では上限額が高くなります。
2026年時点の第2段階
介護サービス情報公表システムでは、市区町村民税非課税で公的年金等収入金額とその他の合計所得金額が82.65万円以下の場合、世帯24,600円・個人15,000円という上限が示されています。
一般的な課税世帯
市区町村民税課税世帯で一定範囲の所得の場合、世帯上限44,400円の区分があります。より所得が高い場合は93,000円、140,100円の上限区分があります。
高額介護サービス費に食費・居住費は含まれない
「介護費の上限が24,600円なら、それ以上は払わなくてよい」と考えるのは誤りです。
対象は主に介護保険サービスの自己負担
施設サービス費や加算の1〜3割負担などが高額介護サービス費の対象になります。
食費・居住費は原則対象外
食費、居住費、日常生活費等は別に負担します。
医療費にも別制度がある
医療費が高くなる場合は、医療保険の高額療養費など別の制度を確認します。
加算はいくら増える?
特養では、施設の体制や本人へのサービス内容によって複数の加算が算定される場合があります。
加算は一つではない
夜勤職員配置、看取り介護、栄養、口腔、療養食など、施設・本人の状況に応じて種類が異なります。
毎月同じとは限らない
本人の状態やサービス提供期間によって、その月だけ算定される加算もあります。
単位数だけで見ない
地域区分や本人の負担割合があるため、実際の自己負担額は単位数の単純な円換算と完全には一致しません。
料金表で実際の算定項目を見る
候補施設の重要事項説明書・料金表に、現在どの加算を算定しているか記載されていることがあります。
所得が変わるといつ料金に反映される?
所得や課税状況が変化すると、翌年度以降の負担割合・負担段階に影響することがあります。
介護保険負担割合証を確認する
負担割合は市区町村が判定し、交付された負担割合証に記載されます。
負担限度額認定証を更新する
補足給付には認定期間があり、更新時には新しい所得・資産状況で判定されます。
遺族年金等も判定に影響する場合がある
補足給付の所得判定では、非課税年金を含める仕組みがあります。一般の課税所得だけを見て判断しないようにします。
住民税非課税なら必ず最も安くなる?
市区町村民税非課税世帯であることは重要な条件ですが、それだけで第1段階になるわけではありません。
年金・所得額で段階が分かれる
第2段階、第3段階①、第3段階②などに分かれます。
預貯金等も確認される
補足給付には資産要件があります。
居室タイプでも金額が変わる
同じ負担段階でも、多床室とユニット型個室では居住費の負担限度額が異なります。
夫婦の場合はどう考える?
夫婦の一方または双方が特養へ入居する場合、本人だけの収入を見ればよいとは限りません。
補足給付では配偶者も確認される
配偶者の課税状況や夫婦の預貯金等が判定に関係します。
高額介護サービス費には世帯上限がある
同じ世帯で介護サービスを利用している人が複数いる場合、世帯合算による上限判定が行われる場合があります。
二人分の食費・居住費は別にかかる
高額介護サービス費の世帯上限があっても、二人分の食費・居住費がその上限に含まれるわけではありません。
世帯分離をすれば必ず安くなる?
費用軽減のために世帯分離を検討する人もいますが、「世帯を分ければ必ず負担限度額認定を受けられる」とは限りません。
配偶者は別世帯でも判定対象
補足給付では、世帯分離している配偶者も課税状況等の確認対象です。
資産要件も残る
住民票上の世帯だけを変えても、預貯金等の条件を満たさなければ対象にならない場合があります。
他制度への影響も確認する
世帯分離は介護保険以外の行政手続き等にも関係する場合があるため、市区町村へ相談して判断してください。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度も確認する
一定の条件を満たす低所得者について、社会福祉法人等が利用者負担を軽減する制度が利用できる場合があります。
すべての施設で同じではない
制度を実施している社会福祉法人・施設かどうかを確認します。
自治体の認定が必要な場合がある
対象要件や申請手続きは自治体の案内を確認してください。
負担限度額認定とは別制度
補足給付、高額介護サービス費、社会福祉法人による軽減は、それぞれ仕組みが異なります。
生活保護を受給している場合
生活保護受給者が特養へ入所する場合は、介護扶助・医療扶助等との調整が必要になります。
ケースワーカーへ事前相談する
候補施設の利用料や居室タイプについて担当ケースワーカーと確認します。
第1段階に該当する扱いがある
補足給付では生活保護受給者は第1段階の対象です。
施設にも受給状況を伝える
請求・契約方法を確認するため、申込時から施設へ相談します。
施設の料金表で見る場所
01
基本サービス費
要介護度・居室タイプごとの単位数や目安額を確認します。
02
加算
施設が通常算定している加算と、本人の状態で追加される可能性がある加算を確認します。
03
食費・居住費
第4段階の契約額と、負担限度額認定を使った場合の金額を確認します。
04
実費
理美容、通院、日用品、特別なサービス等の別料金を確認します。
施設へそのまま聞ける質問
所得・負担軽減の確認項目
- 本人の負担割合証が1割ですが、施設サービス費はいくらですか
- 2割・3割負担になった場合の月額見積りも出せますか
- 現在算定している主な加算を教えてください
- 加算を含めた介護保険自己負担はいくらになりますか
- 負担限度額認定証がある場合、食費・居住費はいくらですか
- 第4段階の食費・居住費はいくらですか
- 高額介護サービス費の対象になる部分はどこですか
- 高額介護サービス費の対象外となる費用は何ですか
- 社会福祉法人による利用者負担軽減制度を実施していますか
- 所得区分が変わった場合、いつから料金が変わりますか
- 負担限度額認定証を更新したら施設へ提出が必要ですか
市区町村へ確認したいこと
介護保険窓口への確認項目
- 現在の介護保険負担割合
- 負担限度額認定の対象になるか
- 現在の利用者負担段階
- 預貯金等の要件
- 申請に必要な書類
- 高額介護サービス費の上限区分
- 高額介護サービス費の申請方法
- 社会福祉法人による軽減制度の対象になるか
所得だけで施設を選ばない
負担軽減制度によって特養の費用を抑えられる場合がありますが、費用だけで施設を決めることはおすすめできません。
医療対応
現在必要な医療処置や、将来増える可能性のある医療ニーズへ対応できるか確認します。
認知症ケア
本人の症状・生活リズムに合う支援があるか見ます。
居室環境
多床室の方が費用を抑えやすくても、本人が共同生活へ強いストレスを感じることがあります。
看取り
長く暮らす予定なら、終末期まで対応できるかも確認します。
まとめ|所得で変わる費用と変わらない費用を分けて確認する
特養の利用料は所得によって変わりますが、すべての料金が所得連動ではありません。
所得の影響を受ける主な項目は、介護保険サービスの1〜3割の自己負担割合、低所得者向けの食費・居住費の負担限度額、高額介護サービス費の上限です。
2026年8月からは補足給付の所得区分の一部が見直され、第2段階に関する基準は80.9万円から82.65万円へ変更されています。また、食費の基準費用額や一部の負担限度額も改定されています。
一方、施設の基本サービス費や加算は、本人の所得そのものによって有無が決まるわけではありません。施設が算定した介護報酬に、本人の1〜3割の負担割合が反映されます。
最も重要なのは、「年金が少ないから月○万円」と平均額だけで判断せず、負担割合証・負担限度額認定証・高額介護サービス費の区分を確認し、候補施設から本人条件に合わせた見積りを出してもらうことです。
市区町村の介護保険窓口で利用できる軽減制度を確認し、施設の料金表では介護費、食費・居住費、加算、実費を分けて確認しましょう。