がん治療中でも入れる老人ホームの探し方

がん治療中の高齢者が老人ホームを探すとき、「治療を続けながら入居できるのか」「抗がん剤治療の通院に対応してもらえるのか」「痛みが強くなったらどうなるのか」と不安になることがあります。

がん治療中でも入居できる老人ホームはあります。ただし、受け入れ可否は「がんであるかどうか」だけでは決まりません。治療内容、通院頻度、副作用、必要な医療処置、本人の生活動作、夜間の医療ニーズなどを施設へ具体的に伝える必要があります。

まず結論|「がん対応可」ではなく、今の治療と生活をその施設で続けられるか確認する

がん治療中の老人ホーム探しでは、現在の治療内容、通院頻度、薬、医療処置、副作用、緊急時対応を具体的に伝え、施設の看護体制・医療連携と照合することが重要です。抗がん剤治療や放射線治療を病院へ通いながら続けられる場合もありますが、通院送迎や付き添いを誰が担うか、治療後に発熱・倦怠感・食欲低下などが起きたとき施設でどこまで対応できるかを確認してください。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、介護施設などに入所している場合に訪問診療による緩和ケアを受けられることがあると案内されています。

がん治療中でも老人ホームへ入居できる?

がん治療中であることだけを理由に、すべての老人ホームへ入居できないわけではありません。

治療内容と施設の医療体制で判断される

施設側は、病名だけでなく、本人が現在どのような治療を受け、どの程度の医療支援を必要としているかを確認して受け入れ可否を判断します。

同じがんでも、定期通院のみの人と、頻回の医療処置や急変リスクが高い人では必要な体制が異なります。

状態が安定していれば選択肢が広がることがある

通院治療を継続しながら日常生活を送れている人は、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームなど複数の選択肢を検討できる場合があります。

一方、常時の医療管理が必要な場合は、より医療対応の手厚い施設や療養先を検討する必要があります。

最初に主治医へ「施設入居を検討している」と伝える

老人ホーム探しを始める前に、がん治療を担当する主治医や病院の相談員へ施設入居を検討していることを伝えてください。

治療を今後も続ける予定か確認する

手術後の経過観察なのか、薬物療法を継続するのか、放射線治療を予定しているのかによって、施設に求める条件は変わります。

通院頻度を確認する

週単位・月単位でどの程度通院するのか、採血や画像検査がどの程度必要なのかを整理します。

通院回数が多い場合は、家族・施設・介護タクシー等の誰が移動を支えるかまで考える必要があります。

今後起こり得る状態変化も聞く

治療による倦怠感、食欲低下、発熱、吐き気、痛みなど、施設生活で注意すべき症状を主治医・看護師へ確認します。

施設へ伝える医療情報を整理する

施設へ「がん治療中です」とだけ伝えても、受け入れ可否は判断しにくくなります。

01

がんの種類と現在の病状

診断名、治療経過、現在の状態、転移の有無など、医師から説明を受けている範囲で伝えます。

02

現在の治療

薬物療法、放射線治療、手術後の経過観察など、現在行っている治療を伝えます。

03

必要な医療処置

在宅酸素、中心静脈ポート、ストーマ、尿道カテーテル、疼痛管理などがあれば具体的に伝えます。

04

通院頻度と移動能力

何週間ごとの通院か、車いす移動か、付き添いが必要かを伝えます。

抗がん剤治療を続けながら入居する場合

薬物療法を外来で受けながら老人ホームで生活する人もいます。

治療を行うのは基本的に医療機関

老人ホームは病院ではないため、抗がん剤治療そのものを施設内で行えるとは限りません。

通院中のがん診療病院で治療を継続し、施設では治療前後の生活支援や体調観察を行う形になることがあります。

治療日の送迎・同行を確認する

家族が通院同行するのか、施設職員が対応できるのか、介護タクシー等を利用するのかを確認します。

施設職員の同行には別料金がかかる場合があります。

治療後の体調変化へ対応できるか確認する

治療後に倦怠感、吐き気、食欲低下などが強く出ることがあります。

食事量が落ちたときの対応や、発熱したときの医療機関連絡方法を確認してください。

放射線治療中は通院回数を確認する

放射線治療は治療計画によって通院頻度が高くなることがあります。

通院期間と頻度を施設へ伝える

何週間程度、週何回程度の通院が必要かを事前に整理します。

毎回家族が付き添えるか考える

家族が遠方の場合、頻回の通院付き添いが難しいことがあります。

施設送迎、付き添いサービス、介護タクシー等を組み合わせられるか確認してください。

治療後の疲労も考える

通院そのものが高齢者の負担になることがあります。

治療後に居室で休める環境や食事調整が可能かも確認します。

がん治療中に重要な看護体制

がん治療中の人では、治療日だけでなく普段の体調変化を観察できる体制が重要です。

看護職員が勤務する時間帯を見る

日中のみなのか、夜間も看護職員が施設内にいるのかを確認します。

「24時間看護対応」という表現でも、夜間はオンコールの場合があるため、実際の勤務体制を聞いてください。

夜間の発熱・痛みへの対応を聞く

夜間に発熱や強い痛みが出た場合、誰が状態を確認し、誰へ連絡するかを確認します。

医師との連携方法を見る

訪問診療医、協力医療機関、がん治療を担当する病院の間で、どのように情報共有するか確認してください。

POINT

「看護師がいますか」だけでなく、「治療後の発熱や痛みが夜間に出たら、誰が何をしてくれますか」と具体的に聞くことが大切です。

訪問診療を利用できるか確認する

施設で生活しながら、訪問診療を利用できる場合があります。

施設と連携する医師を確認する

定期的に施設を訪問する医師がいるのか、本人がこれまでの主治医を継続できるのか確認します。

がん診療病院との役割分担を見る

抗がん剤治療等は専門病院、日常的な体調管理や症状緩和は訪問診療医というように、医療機関同士で役割を分けることがあります。

急変時の対応を確認する

定期訪問だけでなく、夜間・休日に状態が変わったときの連絡先や往診体制を確認してください。

訪問看護を利用できる施設もある

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでは、外部の訪問看護を利用できる場合があります。

施設職員の看護と外部訪問看護は分けて確認する

「看護対応あり」と案内されていても、施設所属の看護職員が対応するのか、外部訪問看護を利用するのかで仕組みが異なります。

訪問回数と緊急対応を確認する

定期訪問の回数、24時間連絡体制の有無、緊急訪問の条件などを確認してください。

医療保険・介護保険の扱いを確認する

訪問看護の保険適用は本人の状態や利用するサービスによって異なります。

具体的な費用は訪問看護事業所、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー等へ確認してください。

痛みがある人は緩和ケア体制を確認する

がんの痛みや息苦しさなどがある場合、治療継続だけでなく症状を和らげる支援も重要です。

緩和ケアは治療終了後だけのものではない

国立がん研究センターのがん情報サービスでは、緩和ケアはがんと診断されたときから始まり、がん治療と並行して受けられると案内しています。

施設入居中でも緩和ケアを受けられる場合がある

同サービスでは、介護施設などに入所している場合でも、訪問診療による緩和ケアを受けられる場合があるとしています。

痛み止めの管理方法を確認する

定時薬だけでなく、痛みが強くなったときに使用する薬がある場合は、誰が管理し、どのように医師と連絡するかを確認します。

医療用麻薬を使っていても入居できる?

がん性疼痛のため医療用麻薬を使用している人もいます。

使用していること自体で一律に判断しない

入居可否は、薬の種類、投与方法、本人の状態、施設の看護・薬剤管理体制などによって判断されます。

薬の保管・投与方法を確認する

内服、貼付剤など、現在の使用方法を施設へ正確に伝えます。

自己管理か施設管理かも確認してください。

痛みが増えたときの連絡先を確認する

薬の調整は医師の判断が必要です。

夜間や休日に痛みが強くなった場合、どの医師へ連絡するかを決めておくことが重要です。

ストーマがある場合の確認ポイント

人工肛門・人工膀胱などのストーマがある人は、日常的な装具管理が必要です。

本人が自己管理できるか伝える

自分で装具交換できるのか、職員の支援が必要なのかで必要な体制が変わります。

皮膚トラブル時の対応を確認する

漏れや皮膚障害が起きた場合、看護職員がどこまで対応できるか確認します。

用品の購入・保管方法を確認する

装具を家族が用意するのか、施設で発注できるのか、保管場所はどこかも確認してください。

中心静脈ポートなどがある場合

抗がん剤治療等のため、中心静脈ポートを使用している人もいます。

普段の管理が必要か確認する

現在どのようなケアが必要か、病院から施設へ情報提供してもらいます。

施設内で処置する前提にしない

施設に看護職員がいても、すべての医療処置を実施できるとは限りません。

ポートを使用した治療や処置をどこで受けるのかを主治医・施設と確認してください。

食欲低下・体重減少への対応を見る

がんや治療の影響で食欲が低下する人もいます。

食事量を観察してもらえるか

食事摂取量や体重変化を継続的に確認できるか聞きます。

食べやすい形に調整できるか

少量食、やわらかい食事など、本人の状態に応じてどこまで調整できるか確認してください。

食べられなくなったときの方針を確認する

食事量が大きく低下した場合、医師へ相談するタイミングや、点滴・経管栄養等をどこまで希望するかについて、本人・家族・医療者で話し合っておくことが大切です。

感染リスクが高い時期の対応を確認する

がん治療によって感染症への注意が必要になる時期があります。

発熱時の連絡基準を確認する

主治医から「何度以上の発熱で連絡する」などの指示がある場合は、施設と共有します。

施設内の感染対策を見る

手指衛生、面会ルール、感染症発生時の対応などを確認します。

治療スケジュールと体調変化を共有する

治療後に特に注意が必要な期間がある場合は、病院から施設へ情報を伝えられるよう調整してください。

通院できなくなったときの選択肢も確認する

入居時は通院できていても、体力低下によって病院へ通うことが難しくなる場合があります。

治療継続の方法を主治医と相談する

今後も通院治療を続けるのか、治療方針を見直すのかは本人と医師の相談で決めます。

訪問診療へ切り替えられるか確認する

積極的ながん治療ではなく症状緩和を中心にする場合など、訪問診療へ移行できることがあります。

入院が必要になる場合も想定する

症状が不安定になった場合、病院への入院が必要になることがあります。

どの病院へ相談するか、施設へ戻れる条件は何かを確認しておくと安心です。

看取りまで希望するなら確認すること

本人が最期まで老人ホームで暮らしたいと希望している場合は、入居時から看取り方針を確認します。

施設が看取りに対応しているか

「看取り可」という表示だけでなく、どのような状態まで対応するかを確認します。

医師・看護職員との連携を見る

訪問診療医の対応、夜間の看護体制、痛み・呼吸苦等への対応を確認してください。

家族への連絡方法を決める

状態が変化したときの連絡基準、夜間面会、付き添いの可否なども確認します。

本人の希望を共有する

救急搬送、入院、治療、看取りについて本人が希望を表明できるうちに話し合い、施設・医療者と共有することが大切です。

がん診療連携拠点病院の相談支援も活用する

老人ホーム側だけで施設探しを進める必要はありません。

がん相談支援センターへ相談できる

厚生労働省は、全国のがん診療連携拠点病院等で、がん患者・家族への相談支援や情報提供を行う体制を整えています。

国立がん研究センターのがん情報サービスでも、療養生活、病院選び、緩和ケアなどについて相談できる窓口が案内されています。

医療ソーシャルワーカーへ相談する

通院先の病院に医療ソーシャルワーカーがいる場合、退院後の療養先や施設探し、介護サービス利用について相談できます。

病院から施設へ医療情報を引き継ぐ

診療情報提供書、看護サマリー、薬剤情報などがあると、施設が受け入れ可否を判断しやすくなります。

見学前に電話で医療条件を確認する

がん治療中の場合、一般的な施設見学を先にするより、医療条件を電話等で確認してから見学した方が効率的です。

病名だけで問い合わせない

「がん患者でも入れますか」ではなく、治療内容、通院頻度、処置、移動能力まで伝えます。

現在だけでなく今後の可能性も聞く

状態が悪化した場合、どこまで施設で対応できるかを確認してください。

書面で受け入れ条件を確認する

重要な条件は、重要事項説明書、入居契約書、医療対応一覧などで確認します。

がん治療中の施設選びチェックリスト

見学・相談時に確認したいこと

  • 現在のがん治療を続けながら入居できるか
  • 通院頻度に対応できるか
  • 通院送迎を誰が行うか
  • 通院同行の追加料金
  • 看護職員の勤務時間
  • 夜間の看護体制
  • 訪問診療を利用できるか
  • 訪問看護を利用できるか
  • 現在必要な医療処置へ対応できるか
  • 医療用麻薬等の薬剤管理
  • ストーマ等の管理
  • 治療後の発熱・倦怠感への対応
  • 夜間急変時の連絡先
  • 協力医療機関
  • 救急搬送時の対応
  • 入院後に戻れる条件
  • 緩和ケアへの対応
  • 看取り対応
  • 医療関連の追加費用

老人ホームと緩和ケア病棟は役割が違う

がんが進行している場合、「老人ホーム」と「緩和ケア病棟」のどちらがよいか迷うことがあります。

老人ホームは生活の場

老人ホームは、介護や生活支援を受けながら暮らす場所です。

訪問診療等と連携して緩和ケアを受けられる場合はありますが、病院と同じ医療体制ではありません。

緩和ケア病棟は医療機関

国立がん研究センターのがん情報サービスでは、緩和ケア病棟を、がんの進行などに伴う心身のつらさに対して専門的な緩和ケアを行う病棟として案内しています。

本人の治療・生活の希望で選ぶ

今後も通院治療を続けながら生活したいのか、症状緩和を中心とした医療を必要としているのかで適する療養場所は変わります。

主治医、病院の相談員、本人・家族で早めに相談してください。

まとめ|がん治療中の老人ホーム探しは病名より「必要な支援」で選ぶ

がん治療中でも、本人の状態と施設の医療・看護体制が合えば、老人ホームへ入居しながら治療や療養を続けられる場合があります。

ただし、「がん対応可」「医療対応充実」といった表示だけでは、本人の治療を継続できるかは分かりません。

現在の治療内容、通院頻度、医療処置、薬、治療後に起こりやすい体調変化を具体的に施設へ伝え、看護体制、訪問診療、訪問看護、通院支援、急変時対応、看取りまで確認してください。

国立がん研究センターのがん情報サービスでは、緩和ケアはがんと診断されたときから治療と並行して受けられ、介護施設などに入所している場合でも訪問診療による緩和ケアを受けられる場合があると案内しています。

施設探しで迷ったら、老人ホームだけでなく、現在の主治医、医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターにも相談し、「治療を続ける場所」と「生活する場所」を一緒に調整することが大切です。

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