生活保護を受給している人が介護医療院を検討すると、「生活保護のまま入所できるのか」「介護サービス費は自己負担になるのか」「食費や居住費はどうなるのか」と不安になることがあります。
介護医療院は、長期にわたり療養が必要な要介護者へ、医療と介護を一体的に提供する介護保険施設です。生活保護を受給していることだけを理由に、制度上、介護医療院を利用できないわけではありません。
結論|生活保護受給中でも介護医療院を利用できる可能性がある
生活保護には「介護扶助」があり、必要な介護サービスの費用は原則として介護事業者へ直接支払われ、本人負担はありません。また、介護保険施設の食費・居住費の負担軽減制度では、生活保護受給者は第1段階に位置づけられます。ただし、介護医療院へ実際に入所できるかは、要介護度、長期療養の必要性、医療・介護ニーズ、空床状況、施設の受入体制に加え、その施設が生活保護法による介護を担当できるかなどを確認する必要があります。入所契約の前に、担当ケースワーカーと施設の相談窓口の双方へ相談してください。
最初に確認する3点
- 介護扶助・医療扶助・生活扶助を分けて考える
- 施設独自の実費が何か確認する
- ケースワーカーと施設へ契約前に確認する
生活保護を受給していても介護医療院は利用できる?
生活保護受給者も、必要性が認められれば介護医療院を利用できます。
生活保護法では、介護医療院も介護扶助の対象となる「施設介護」を担当する介護機関として位置づけられています。
生活保護だから入所対象外になるわけではない
入所可否でまず確認されるのは、生活保護の受給有無ではなく、本人が介護医療院の対象となる状態かどうかです。
介護医療院は要介護1~5の人が対象で、長期療養のための医学的管理、看護、介護、機能訓練などを必要とする人を受け入れます。
要支援1・2では介護医療院を利用できない
介護医療院は介護保険施設のため、要支援1・2の人は利用できません。生活保護を受給していても、この利用条件は同じです。
生活保護の受給=必ず入所できる、ではない
生活保護を受給していても、空床がない、本人の医療ニーズに対応できない、施設の入所基準に合わないなどの理由で入所できない場合があります。生活保護の利用可否と介護医療院の入所判定は分けて考えてください。
介護サービス費は「介護扶助」の対象
生活保護には、生活扶助、住宅扶助、医療扶助などと並んで「介護扶助」があります。
厚生労働省は、介護サービスの費用について、介護扶助として介護事業者へ直接支払い、本人負担はないと案内しています。
介護扶助は介護サービスに必要な費用を支える
介護医療院の施設サービス費について、生活保護受給者本人が通常の1割・2割・3割負担をそのまま自己負担する仕組みではありません。
本人の介護保険資格や年齢などによって制度上の処理は異なる場合がありますが、必要な介護サービスについては介護扶助で支えられます。
介護扶助の費用は原則として施設へ直接支払われる
介護扶助は、本人へ現金を渡して本人が施設へ支払うのではなく、原則として介護事業者へ直接支払われます。
POINT
「生活保護だから介護サービス費をいったん自分で立て替える」と考える必要はありません。ただし、介護保険外の日用品や本人希望の追加サービスまで介護扶助で無条件に支払われるわけではないため、費用項目ごとの確認が必要です。
食費・居住費はどうなる?
介護医療院では、施設サービス費とは別に食費・居住費が設定されています。
ただし、低所得者については「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という負担軽減制度があり、生活保護受給者は利用者負担第1段階に位置づけられます。
生活保護受給者は第1段階
2026年8月以降の厚生労働省資料でも、生活保護受給者は補足給付の第1段階として示されています。生活保護受給者については、この第1段階の判定に預貯金額の要件はありません。
第1段階の食費負担限度額
2026年10月時点で、第1段階の食費の負担限度額は1日300円です。
これは食費の基準費用額をそのまま支払うという意味ではなく、補足給付が適用された場合の本人側の負担限度額です。
居住費は居室タイプで異なる
第1段階の居住費負担限度額は、利用する居室タイプによって異なります。
| 居室タイプ | 第1段階の負担限度額(日額) |
|---|---|
| 多床室 | 0円 |
| 従来型個室 | 550円 |
| ユニット型個室的多床室 | 550円 |
| ユニット型個室 | 880円 |
「第1段階の負担限度額」=最終的に本人が必ず現金で支払う額、とは限らない
生活保護受給者の施設入所では、介護扶助だけでなく生活扶助などとの関係もあります。本人の収入や保護費の認定状況によって実際の支払い・給付の扱いが決まるため、「食費300円×日数を必ず自費で用意する」と自己判断せず、担当ケースワーカーへ確認してください。
日用品費や追加費用はすべて生活保護で出る?
介護医療院で発生する費用には、介護サービス費、食費、居住費だけでなく、本人の日常生活に必要な物品や、本人が希望して利用するサービスなどが含まれる場合があります。
介護保険給付に含まれるものを別料金にできない場合がある
介護医療院は、介護保険給付の対象となるサービスについて、施設が自由に追加料金として請求できるわけではありません。
一方、介護保険給付に含まれない日常生活費などについては、内容に応じて利用者負担となる場合があります。
本人希望の追加サービスは契約前に確認する
理美容、私物の購入、特別な日用品、個人的な嗜好品などは、施設サービス費とは別に費用が発生することがあります。
これらが生活保護でどのように扱われるかは費用の内容によって異なるため、施設側だけでなく福祉事務所にも確認してください。
「生活保護なら全部無料」と考えない
介護扶助は必要な介護サービスを保障する制度です。本人が自由に選択する追加サービスや個人的な支出まで、すべて介護扶助の対象になるわけではありません。
入所先は生活保護の取り扱いを確認する
生活保護法では、介護扶助を担当する介護機関について指定の仕組みがあります。
そのため、介護医療院を探すときは、「生活保護受給中でも相談可能か」だけでなく、介護扶助による施設介護を取り扱える施設かを確認することが重要です。
施設へ生活保護受給中であることを事前に伝える
入所相談の段階で生活保護を受給していることを伝え、介護扶助の取り扱い、費用の請求方法、福祉事務所との連絡方法を確認します。
福祉事務所にも候補施設を伝える
施設だけで話を進めるのではなく、候補が決まった段階で担当ケースワーカーへ伝えてください。
介護扶助の適用や入所に伴う保護費の認定変更など、福祉事務所側で必要な手続きが発生する場合があります。
介護医療院への入所で生活保護の内容はどう変わる?
介護医療院へ入所すると、自宅や賃貸住宅で生活していたときとは生活費の構造が変わります。
介護施設入所者向けの生活扶助の基準がある
生活保護の基準には、介護施設へ入所する人について算定する「介護施設入所者基本生活費」が設けられています。
そのため、在宅時の生活扶助がそのまま同額で続くとは限りません。
現在借りている住居の住宅扶助も確認する
介護医療院への入所後も、それまで住んでいた賃貸住宅を長期間維持できるとは限りません。
家財の整理や退去時期なども含め、現在の住宅扶助をいつまでどのように扱うかは担当ケースワーカーへ早めに相談してください。
重要
施設入所後の保護費を「今までの生活保護費+施設費」と考えないことが重要です。入所によって生活状況が変わるため、扶助の種類や認定額も見直されます。具体的な金額は福祉事務所で確認してください。
まだ生活保護を受けていない場合はどうする?
介護医療院への入所費用を年金や資産だけでは賄えず、生活そのものが困難になる場合は、生活保護の相談をすることができます。
相談・申請窓口は福祉事務所
生活保護の相談・申請窓口は、現在住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。
福祉事務所を設置していない町村では、町村役場でも申請手続きを行える場合があります。
施設が生活保護を決めるわけではない
介護医療院が「生活保護を受けたほうがよい」と判断しても、施設が生活保護の受給を決定することはできません。
生活保護は、世帯の収入、資産、他制度の利用状況などを福祉事務所が確認したうえで決定します。
年金があっても相談できる
生活保護は、収入がまったくない人だけの制度ではありません。年金などの収入があっても、厚生労働大臣が定める最低生活費に満たない場合は、その差額が保護費として支給される仕組みです。
入所前に確認したい7項目
生活保護を利用して介護医療院へ入所する場合は、施設と福祉事務所の両方へ確認することが重要です。
01
生活保護受給者の入所に対応していますか?
施設へ、介護扶助による施設介護を取り扱えるか確認します。
02
本人は介護医療院の入所対象ですか?
要介護度、病状、医療処置、介護量などを伝え、入所判定の対象になるか確認します。
03
施設サービス費はどう処理されますか?
介護扶助の手続きと、本人に請求される費用があるかを確認します。
04
食費・居住費はいくらになりますか?
第1段階の負担限度額を踏まえ、本人の場合の実際の請求・保護費上の扱いを確認します。
05
介護保険外の実費は何がありますか?
日用品、理美容、嗜好品など、別途必要になる費用を料金表で確認します。
06
福祉事務所へ何を提出しますか?
施設の料金表や入所予定日など、ケースワーカーへ共有する書類を確認します。
07
入所後の保護費はどう変わりますか?
介護施設入所者基本生活費、現在の住宅扶助、本人の年金収入などを含め、入所後の認定内容をケースワーカーに確認します。
施設との契約前にケースワーカーへ相談する
生活保護受給者の介護医療院入所では、施設だけで契約を進めず、担当ケースワーカーと連携することが重要です。
費用の認識違いを防ぐ
施設が案内する料金の中に、介護扶助・補足給付で扱われるものと、本人の生活費から支払うものが混在している場合があります。
契約前に料金表をケースワーカーにも確認してもらい、どの費用をどの制度で扱うのか整理しておくと安心です。
追加費用が発生するときのルールを確認する
入所後に本人希望の物品を購入したり、理美容などを利用したりする場合、誰が支払いを管理するのかも確認します。
状態が変わった場合の連絡先を共有する
入院、転院、退所などで生活状況が変わると、生活保護の認定内容にも影響する場合があります。施設と福祉事務所の双方へ速やかに連絡できるようにしておきます。
入所前の最終チェック
- 生活保護受給者の入所を取り扱える施設か
- 本人が介護医療院の入所基準に合うか
- 介護扶助の手続き方法
- 負担限度額認定の扱い
- 食費・居住費の実際の扱い
- 介護保険外の日用品・追加費用
- 入所後の生活扶助の扱い
- 現在の住宅扶助をどうするか
- 入院・退所時の福祉事務所への連絡方法
まとめ|生活保護でも介護医療院は利用できるが、施設と福祉事務所の両方への確認が必要
生活保護を受給している人も、介護医療院の入所対象となる状態であれば利用できる可能性があります。生活保護には介護扶助があり、必要な介護サービス費は原則として介護事業者へ直接支払われ、本人負担はありません。
また、生活保護受給者は、介護保険施設の食費・居住費を軽減する補足給付では第1段階に位置づけられます。2026年10月時点の第1段階の負担限度額は、食費が1日300円、居住費は居室タイプに応じて0円、550円、880円などに設定されています。
ただし、介護扶助、食費・居住費、日用品などの実費、入所後の生活扶助はすべて同じ仕組みではありません。「生活保護なら施設費が全部無料」と考えず、費用項目ごとに確認してください。
入所候補が見つかったら、施設へ生活保護受給中であることを伝えるとともに、契約前に担当ケースワーカーへ相談し、介護扶助の手続き、食費・居住費、追加費用、入所後の保護費まで整理しておくことが大切です。