住宅型有料老人ホームに入居している人の要介護度が上がると、「このまま住み続けられるのか」「介護サービスを増やせるのか」「費用はいくら増えるのか」と不安になることがあります。
住宅型有料老人ホームは、ホーム自体が特定施設入居者生活介護として介護を包括提供する「介護付き」とは仕組みが異なります。介護が必要な場合は、入居者が訪問介護、訪問看護、通所介護など外部の介護保険サービスを必要に応じて契約して利用するのが基本です。
結論|要介護度が上がっただけで自動退去ではない。必要な介護量・費用・ホームの対応力を見直す
住宅型有料老人ホームでは、要介護1から要介護3・4・5へ上がったことだけを理由に、全国一律で退去しなければならない制度ではありません。要介護度が上がると居宅介護サービスの区分支給限度基準額も上がるため、訪問介護などを増やせる余地は広がります。一方、実際に必要な介護が増えれば自己負担も増えやすく、限度額を超えるサービスは原則として全額自己負担になります。また、夜間に頻回の介助が必要になる、医療処置が増える、認知症症状への対応が難しくなるなど、ホームと外部サービスの体制では安全な生活を支えきれない場合は、ケアプラン変更や他施設への住み替えを検討することがあります。
最初に確認する3点
- 要介護度上昇だけで自動退去とは限らない
- 外部介護サービスを増やした後の総額を見る
- 夜間介護・医療・認知症対応が限界を超えないか確認する
要介護度が上がっても住宅型有料老人ホームに住み続けられる?
要介護度が上がっただけで、自動的に住宅型有料老人ホームを退去する仕組みではありません。
住宅型有料老人ホームは、介護が必要になった場合に、入居者自身が外部の訪問介護事業所などと契約して介護保険サービスを利用する類型です。
要介護3・4・5でも生活できるホームはある
住宅型有料老人ホームの中には、要介護度の高い人を多く受け入れ、併設・近隣の訪問介護事業所や訪問看護事業所と連携して生活を支えているホームがあります。
そのため、「要介護3になったら住宅型では暮らせない」と一律には言えません。
実際に住み続けられるかはホームの体制と契約で決まる
夜間の職員体制、外部サービスの提供可能時間、医療対応、認知症ケアなどはホームによって異なります。
重要事項説明書や入居契約書で、介護度が上がった場合の対応と契約解除・住み替え条件を確認してください。
「要介護度が上がる=退去」ではない
厚生労働省の有料老人ホーム標準指導指針では、一定の要介護状態を理由に契約解除する契約を設ける場合、医師の意見、本人または身元引受人等の同意、一定の観察期間などの手続きを契約書・管理規程で明らかにすることが示されています。
住宅型では介護サービスを「外部事業所」から利用する
要介護度が上がったときの影響を理解するには、住宅型有料老人ホームの介護の仕組みを押さえることが重要です。
ホームの生活サービスと介護保険サービスは別
住宅型有料老人ホームは、食事、安否確認、生活相談などをホーム側から受けながら、介護保険サービスは外部の事業所と個別に契約して利用するのが基本です。
訪問介護
起床介助、排泄介助、着替え、入浴介助など、ケアプランに必要な訪問介護を組み込みます。
訪問看護
医師の指示に基づき、健康状態の観察や必要な医療的ケアを受ける場合があります。
デイサービス
日中の入浴、食事、機能訓練、活動などを目的に通所介護を利用することがあります。
POINT
要介護度が上がったときは、「ホームの職員が自動的に介護を増やす」というより、ケアマネジャーと相談し、本人に必要な外部の介護保険サービスを組み直すことが中心になります。
要介護度が上がると区分支給限度基準額も上がる
訪問介護、訪問看護、通所介護など多くの居宅サービスには、要介護度ごとに「区分支給限度基準額」が設けられています。
2026年10月時点の厚生労働省告示で示される要介護1~5の限度単位数は次のとおりです。
| 要介護度 | 1か月の区分支給限度基準額 |
|---|---|
| 要介護1 | 16,765単位 |
| 要介護2 | 19,705単位 |
| 要介護3 | 27,048単位 |
| 要介護4 | 30,938単位 |
| 要介護5 | 36,217単位 |
要介護度が上がると利用できる保険給付の枠が広がる
たとえば要介護2から要介護3へ変更されると、区分支給限度基準額は19,705単位から27,048単位へ広がります。
必要性があれば、その範囲内で訪問介護などの回数・内容を増やすことを検討できます。
限度額=必ず使い切る金額ではない
限度額は「ここまで必ずサービスを使う」という金額ではありません。
本人に必要な介護をケアマネジャーが検討し、ケアプランに位置づけたサービスを利用します。
単位数をそのまま円にしない
介護報酬は、サービス種類や地域によって1単位当たりの金額が異なるため、「16,765単位=必ず167,650円」と単純には決まりません。
要介護度が上がると月額費用は必ず高くなる?
要介護度が上がっただけで、住宅型有料老人ホームの家賃や管理費が必ず上がるとは限りません。
一方、必要な介護サービスが増えれば、介護保険サービスの自己負担や保険外サービス費が増える可能性があります。
訪問介護の回数が増える
排泄介助、起床・就寝介助、入浴介助などが増えると、利用する訪問介護サービス量が増えます。
訪問看護を追加する
病状や医療ニーズが変化し、訪問看護を新たに利用したり利用回数を増やしたりすると、その分の自己負担が発生します。
福祉用具が増える
歩行器、車いす、特殊寝台など、状態に応じて福祉用具貸与を利用する場合があります。
保険外サービスが増える場合がある
介護保険サービスで対応できない時間帯や内容を、ホーム独自の有料サービスとして利用する場合、別途費用が増える可能性があります。
要介護度と請求額は比例しない
要介護度が1段階上がったから月額が一律○円上がる、という仕組みではありません。実際の負担は、どのサービスを何回利用するか、自己負担割合、保険外サービスの有無で変わります。
区分支給限度基準額を超えるとどうなる?
住宅型有料老人ホームでは外部の居宅サービスを組み合わせるため、介護量が多くなると区分支給限度基準額を意識する必要があります。
限度額を超えた部分は原則全額自己負担
区分支給限度基準額の範囲内では、本人の負担割合に応じて1割・2割・3割などを自己負担します。
一方、限度額を超えて利用した部分については、原則として介護保険給付が適用されず、全額を自己負担します。
限度額に達しそうならケアプランを見直す
必要な介護量が増えて限度額に近づいたら、優先度の高い支援は何か、ホーム独自サービスとの役割分担をどうするかをケアマネジャーと整理します。
「限度額内に収めること」だけを目的にしない
費用を抑えるために必要な排泄介助や服薬支援まで削れば、安全な生活が維持できなくなることがあります。
必要な介護量と予算の両方を確認し、現在の住まいが適切かを検討してください。
要介護度が上がったらケアプランはどう変わる?
認定区分が変わったときは、単にサービス回数を増やすだけでなく、本人の状態を改めて評価します。
できなくなった動作を確認する
歩行、移乗、食事、排泄、入浴、着替えなど、どの場面で新たな介助が必要になったかを整理します。
時間帯を確認する
日中だけで介助が足りるのか、早朝・夜間・深夜にも支援が必要なのかを確認します。
訪問系と通所系を組み直す
訪問介護の回数を増やす、デイサービスの日数を調整する、訪問看護を加えるなど、本人に合わせてケアプランを見直します。
福祉用具・住宅環境も見直す
要介護度が上がる背景には身体機能の変化があるため、車いす、介護ベッドなども含めて安全な生活環境を再検討します。
介護度が高くなると夜間対応が課題になりやすい
住宅型有料老人ホームで継続入居できるかを左右しやすいのが、夜間に必要となる介護量です。
夜間のトイレ介助
夜間に何度もトイレ誘導・移乗介助が必要になる場合、必要なタイミングで支援できる体制か確認します。
おむつ交換・体位変換
寝たきりの時間が長くなると、夜間のおむつ交換や体位変換が必要になることがあります。
外部訪問介護だけでは埋めにくい時間がないか
訪問介護はケアプランに位置づけた時間帯に提供されます。必要な介助が不定期・頻回になる場合、訪問スケジュールだけでは対応しにくいことがあります。
確認の核心
「要介護5まで入居可能ですか?」という質問だけでは不十分です。「夜間に何回介助が必要でも対応可能か」「予定外の排泄介助は誰が行うか」など、実際の介護場面に置き換えて確認してください。
医療ニーズが増えた場合も継続入居できる?
要介護度の上昇とともに、病状が悪化したり医療処置が増えたりすることがあります。
訪問看護で対応できる範囲を確認する
訪問看護を利用できても、施設内に看護師が24時間常駐しているとは限りません。
処置の種類、回数、時間帯、緊急性を伝え、必要な時間に対応できるか確認します。
頻回の吸引や夜間処置
吸引や医療的ケアが夜間も頻回に必要になる場合は、ホーム・訪問看護・医師の連携で対応可能かを個別に確認します。
急変リスクが高くなった場合
頻繁な急変や高度な医学管理が必要になり、住宅型有料老人ホームでは安全確保が難しくなると、介護医療院など別の施設や医療機関を検討する場合があります。
医療処置名だけで継続可否を判断しない
同じ酸素療法や吸引でも、必要頻度・時間帯・急変リスクで対応の難しさは変わります。「対応可」の表示だけでなく、本人の具体的な処置条件を伝えてください。
認知症が進行した場合はどうなる?
要介護度の上昇と同時に、認知症の症状が変化することもあります。
見守りが増える
道迷い、離設リスク、服薬忘れなどが増えると、継続した見守りが必要になります。
夜間不眠・介護拒否などへの対応
夜間の不穏、大声、介護拒否、他者への攻撃的な言動などがある場合は、ホームの認知症ケア体制によって対応可否が変わります。
認知症があるだけで自動退去ではない
診断名だけではなく、具体的な症状と安全上必要な支援をもとに、継続入居できるかを確認します。
住み替えを検討する目安
要介護度が上がっても住み続けられるなら、必ず現在のホームに残ることが最善とは限りません。
必要な介護が区分支給限度基準額を大きく超える
保険外負担が継続的に大きくなり、家計への負担が重くなる場合は、包括的に介護を受けられる施設と比較する価値があります。
夜間の介護を十分確保できない
夜間に頻回の介助が必要なのに、ホームと外部サービスでは必要な時間に対応できない場合は、安全面から住み替えを検討します。
医療ニーズに対応できない
医療処置の頻度や急変リスクが高まり、現在の訪問看護・医療連携では対応が難しい場合も候補を見直します。
本人の生活がサービス予定で細切れになる
介護量が非常に多いと、複数の訪問サービスを細かく組み合わせる必要が生じる場合があります。
本人にとって生活しにくくなっていないか、費用だけでなく暮らし方からも見直します。
要介護度が上がったら確認したい8項目
01
新たに必要になった介助は何ですか?
食事・排泄・入浴・移乗・着替えなどを具体的に整理します。
02
必要な時間帯はいつですか?
早朝・日中・夜間・深夜のどの時間に支援が必要か確認します。
03
新しい区分支給限度基準額はいくらですか?
認定結果を確認し、現在のサービス利用量と比較します。
04
限度額を超える可能性はありますか?
ケアマネジャーに月間単位数と自己負担の見込みを試算してもらいます。
05
夜間・緊急時は誰が対応しますか?
ホーム職員、訪問介護、訪問看護の役割分担を確認します。
06
医療処置が増えても対応できますか?
処置内容、頻度、時間帯まで伝えて確認します。
07
どんな状態になると継続入居が難しいですか?
入居契約書・管理規程の退去条件と実際の運用を確認します。
08
今後の月額総額はいくらですか?
家賃等に加え、介護保険自己負担、保険外サービス、医療費まで含めて試算します。
ケアマネジャーとホームの両方へ相談する
要介護度が上がったときは、ケアマネジャーだけ、またはホームだけに相談するのではなく、両者で情報を共有することが重要です。
ケアマネジャーには必要なサービス量を相談する
新しい要介護度と本人の状態をもとに、どの居宅サービスをどの程度利用する必要があるかを整理します。
ホームには生活上の対応範囲を確認する
外部サービスが入っていない時間帯の見守り・緊急対応、夜間体制、食事・生活支援の範囲などを確認します。
費用と安全性を同時に比較する
現在のホームでサービスを増やす場合と、介護付き有料老人ホーム、特養、介護医療院などへ住み替える場合の両方を比較することもできます。
認定変更後の最終チェック
- 要介護度が上がった理由・身体状態の変化
- 必要な介助内容と時間帯
- ケアプランの変更内容
- 新しい区分支給限度基準額
- 介護保険自己負担の見込み
- 限度額超過・保険外サービスの見込み
- 夜間の介護体制
- 訪問看護・医療連携
- 認知症症状への対応
- 契約上の継続入居・退去条件
- 現在のホームと住み替え先の費用比較
まとめ|要介護度ではなく「必要な介護を安全・継続的に受けられるか」で判断する
住宅型有料老人ホームでは、要介護度が上がっただけで全国一律に退去になるわけではありません。介護が必要になった場合は、外部の訪問介護、訪問看護、通所介護などを個別に契約し、必要なサービスを組み合わせて生活するのが基本です。
要介護度が上がると区分支給限度基準額も上がるため、介護保険サービスを増やせる余地は広がります。一方、実際のサービス利用量が増えれば自己負担も増え、限度額を超えた部分は原則全額自己負担になります。
また、介護量が増えて夜間に頻回の介助が必要になる、医療処置が増える、認知症症状への対応が難しくなるなど、現在のホームと外部サービスの組み合わせでは安全に生活できなくなる場合は、住み替えを検討することがあります。
認定変更後は、ケアマネジャーとホームの双方へ相談し、「必要な介護内容」「提供できる時間帯」「月額総額」「医療対応」「継続入居条件」を確認してください。要介護3・4・5という数字だけではなく、本人に必要な支援をその住まいで継続して確保できるかで判断することが大切です。