住宅型有料老人ホームへ入居するとき、「今使っている車いすや歩行器をそのまま持ち込めるのか」「介護ベッドは自分で用意するのか」「福祉用具貸与を入居後も利用できるのか」が気になる人も多いでしょう。
まず結論|持ち込み可否と介護保険での利用可否は別々に確認する
住宅型有料老人ホームでは、車いす・歩行器・つえ・特殊寝台などの福祉用具を持ち込める場合があります。また、有料老人ホームの居室は介護保険の福祉用具貸与でいう「居宅」に含まれるため、要件を満たせば入居後も福祉用具貸与を利用できます。
ただし、「制度上借りられること」と「そのホームの居室で安全に使えること」は別です。居室の広さ、廊下・扉幅、電源、避難経路、床材、ホーム備品との重複、夜間介助の方法などを確認してから持ち込む必要があります。
この記事では、住宅型有料老人ホームへ福祉用具を持ち込むときに、持ち込み可否、介護保険の福祉用具貸与、要介護度による制限、購入品・レンタル品の違い、搬入・設置・点検、退去時の扱いまで確認すべきポイントを解説します。
住宅型有料老人ホームに福祉用具を持ち込める?
持ち込める場合がありますが、すべての福祉用具を自由に持ち込めると一律にはいえません。
住宅型有料老人ホームは本人の生活の場であり、居室へ私物を持ち込める施設が一般的ですが、居室設備、安全管理、消防・避難上の事情などから施設独自のルールを設けていることがあります。
持ち込み前にホームへ確認する
特に次のような大型・電動の福祉用具は、事前確認が必要です。
- 車いす・電動車いす
- 特殊寝台・介護ベッド
- 床ずれ防止用具
- 移動用リフト
- 据え置き型の手すり
- スロープ
- 歩行器
本人が現在使っている用具のメーカー名・型番・寸法が分かれば、施設側も設置可否を判断しやすくなります。
住宅型有料老人ホームでも介護保険の福祉用具貸与を使える?
要件を満たせば利用できます。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、福祉用具貸与を利用できる「居宅」には、自宅だけでなく有料老人ホームなどの居室も含まれると説明されています。
住宅型は外部の居宅サービスを利用する仕組み
住宅型有料老人ホームは、介護付き有料老人ホームのようにホーム自身が特定施設入居者生活介護を包括的に提供する仕組みではありません。
介護が必要な場合、本人がケアマネジャーや福祉用具貸与事業者等と相談し、必要な居宅サービスを個別に利用します。
入居前から借りている用具を継続できる場合もある
現在、自宅で介護保険の福祉用具貸与を利用している場合、住宅型有料老人ホームへの転居後も継続できる場合があります。
ただし、住所変更、担当ケアマネジャー、福祉用具貸与事業所の通常の事業実施地域、搬入方法などの確認が必要です。
「住宅型に入ったら介護保険レンタルは使えない」という一律の仕組みではありません。本人の要介護度・必要性・用具種目と事業者の対応地域を確認してください。
介護保険で借りられる福祉用具と軽度者の例外
介護保険で借りられる福祉用具には何がある?
介護保険の福祉用具貸与では、主に次の種目が対象です。
- 車いす
- 車いす付属品
- 特殊寝台
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 歩行補助つえ
- 認知症老人徘徊感知機器
- 移動用リフト
- 自動排泄処理装置
実際に貸与対象となるかは、要介護度や身体状態、用具の仕様によって異なります。
用具はケアマネジャーと福祉用具専門相談員に相談する
厚生労働省は、福祉用具貸与を希望する場合、担当ケアマネジャーと福祉用具貸与事業者へ相談して貸与する用具を決めるよう案内しています。
「今まで使っていたから同じものをそのまま」というだけでなく、新しい居室の広さや動線に合うかも含めて再確認してください。
要支援・要介護1だと介護ベッドや車いすは借りられない?
車いす、特殊寝台、床ずれ防止用具など一部の福祉用具は、要支援1・2や要介護1では原則として介護保険給付の対象外です。
ただし、身体状態等によって一定の要件を満たす場合は、例外的に給付対象となることがあります。
「軽度だから絶対に借りられない」とは限らない
たとえば日常的に歩行が困難な人、起き上がりや寝返りが困難な人など、認定調査結果や医師の医学的所見、市町村の確認等により対象となる場合があります。
必要性がある場合は、自己判断で諦めずケアマネジャーへ相談してください。
自費レンタルを利用する方法もある
介護保険給付の対象外でも、福祉用具貸与事業者が自費レンタルを提供している場合があります。
介護保険で借りる場合との月額差、点検・交換対応、契約条件を確認してください。
歩行器・つえ・スロープはレンタルと購入を選べる?
一部の福祉用具では、2024年度から貸与と販売の選択制が導入されています。
対象は、固定用スロープ、歩行器の一部、単点杖の一部、多点杖です。
長く使うから必ず購入が得とは限らない
購入すれば毎月のレンタル料はかかりませんが、身体状態が変わって別の用具へ交換したくなった場合や、故障時の対応などを考える必要があります。
一方、貸与なら身体状態に合わせて用具を変更しやすい場合があります。
選択するときは説明を受ける
対象用具については、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員から、貸与・購入それぞれのメリットやデメリットについて説明を受け、本人に合う方法を選んでください。
車いす・介護ベッド・手すりはどう確認する?
今使っている車いすをそのまま持ち込んでいい?
持ち込み可能なホームは多くありますが、居室・館内で安全に使えるかの確認が必要です。
幅と回転スペースを確認する
車いすでは、居室入口、トイレ、洗面所、廊下、エレベーターなどを通れるかを確認します。
居室内でベッドから車いすへ移乗するスペースも必要です。
フットサポートを含む全長も確認する
車いす本体の横幅だけでなく、フットサポートを出した状態の長さや、介助者が後ろへ回れるスペースも確認してください。
電動車いすは充電場所も確認する
電動車いすを使用する場合は、充電場所、電源位置、コードの取り回し、館内での利用範囲、外出時の保管などを確認します。
介護ベッドは持ち込める?
特殊寝台・介護ベッドを持ち込めるホームがあります。
ただし、ホーム側がベッドを標準備品として用意している場合や、居室内の配置上、サイズに制限がある場合があります。
ホームの備え付けベッドを確認する
最初から電動ベッドが備え付けられているなら、本人のベッドを追加で持ち込む必要がないことがあります。
反対に通常ベッドしかない場合は、介護保険の福祉用具貸与で特殊寝台を導入できるか検討します。
ベッド周囲の介助スペースが必要
ベッドが居室に収まるだけでは十分ではありません。
介助者が横に立つスペース、車いすを近づけるスペース、移乗用リフトを使用する場合のスペースなどを確認してください。
ベッド柵や手すりを自由に付けてもいい?
自己判断で追加するのではなく、施設職員・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員と相談してください。
転落予防だけで考えない
ベッド柵や手すりは、起き上がりや立ち上がりを助ける一方、本人の状態や設置方法によっては身体が挟まるなどの危険につながることがあります。
本人の動作、認知機能、夜間の行動を踏まえて適切な位置・製品を選ぶことが重要です。
据え置き型手すりは動線を確認する
床に置くタイプの手すりは、立ち上がりを助ける一方、歩行動線を狭くしたり、つまずきの原因になったりすることがあります。
介助する職員の動線も含めて設置位置を決めてください。
リフト・床ずれ防止用具・見守り機器の確認
移動用リフトを持ち込める?
対応できるホームもありますが、車いすや歩行器以上に設置スペースと職員の操作体制を確認する必要があります。
床走行式リフトは回転・移動スペースを見る
リフト本体が居室内で動けるか、ベッド下へ脚部が入るか、床に段差がないかを確認します。
誰が操作するか確認する
リフトを設置できても、ホーム職員や訪問介護員がその機種を実際に使用できる体制でなければ、日常の移乗に使えないことがあります。
入居前に、誰が操作するのか、研修や福祉用具事業者の説明が必要か確認してください。
床ずれ防止マットレスは持ち込める?
持ち込み・レンタルできる場合があります。
ただし、本人の床ずれリスク、寝返り能力、体重、介護方法に合う製品を選ぶ必要があります。
高機能なマットレスほどよいとは限らない
沈み込みが大きいマットレスでは、本人が起き上がりにくくなったり、移乗介助の方法が変わったりすることがあります。
褥瘡予防だけでなく、起居動作とのバランスも確認してください。
認知症老人徘徊感知機器を持ち込める?
介護保険の福祉用具貸与対象に「認知症老人徘徊感知機器」が含まれますが、ホームでの設置には施設側との調整が必要です。
ナースコール・見守り機器との重複を確認する
ホーム側がすでに居室センサーや見守り機器を導入している場合があります。
個人用機器を追加すると、複数の通知が重複したり、Wi-Fi・電源・設置位置の問題が出たりすることがあります。
誰が通知を受け、誰が対応するのかまで確認してください。
持ち込み・レンタルの費用と保守はどうなる?
福祉用具を持ち込むと追加料金はかかる?
持ち込みそのものに追加料金がかかるかは施設によります。
大型機器の電気代、保管料、搬入時の対応費などが設定されている場合もあるため、料金表を確認してください。
介護保険レンタルの自己負担は別
介護保険の福祉用具貸与を利用する場合は、ホームの月額利用料とは別に福祉用具貸与サービスの自己負担が生じます。
複数の用具を利用する場合は、ケアプラン全体のサービス利用量と合わせて確認してください。
自分で買った福祉用具とレンタル品は何が違う?
自己購入品は本人の所有物ですが、レンタル品は福祉用具貸与事業者から借りている用具です。
レンタル品は事業者の点検・調整を受ける
指定福祉用具貸与では、利用者の心身状態や生活環境を踏まえて、適切な福祉用具の選定援助、取付け、調整などを行います。
身体状態が変わった場合に用具を変更できる点もレンタルの特徴です。
自己購入品は点検先を確認する
長年使っている車いすや歩行器を持ち込む場合は、ブレーキ、タイヤ、ねじ、電動部分などに不具合がないか確認してください。
修理が必要になったとき、誰へ依頼するのかも決めておくと安心です。
居室寸法・家具・避難動線を確認する
持ち込み前に居室寸法を測ったほうがいい?
大型の福祉用具を持ち込むなら、実測をおすすめします。
有料老人ホームの標準指導指針では、入居者の身体機能の低下や障害が生じた場合にも対応できるよう建物設計へ配慮することが示されています。
ただし、実際の居室寸法や家具配置は施設ごとに違います。
測っておきたい場所
- 居室入口の有効幅
- ベッドを置く場所の縦・横寸法
- ベッド横の介助スペース
- 車いすの回転スペース
- トイレ入口の幅
- 洗面台下の空間
- コンセント位置
- エレベーターの入口・かご寸法
家具と福祉用具を一緒に置いても大丈夫?
居室にタンス、テレビ台、いすなどを持ち込む場合、福祉用具と合わせた全体の動線を考える必要があります。
「入る」だけでなく介助できるかを見る
家具と介護ベッドが収まっても、介助者が横に立てない、車いすでトイレへ行けない、リフトが回転できない状態では生活しにくくなります。
避難経路を塞がない
居室入口や避難動線を家具・福祉用具で狭めないことも重要です。
大型家具や機器の配置は、入居前にホーム職員と一緒に確認してください。
搬入・設置は誰が行う?
福祉用具の搬入は誰が行う?
介護保険のレンタル品では、福祉用具貸与事業者が搬入・設置・調整を行うのが一般的です。
自己所有品の場合は、家族や引越し業者等が搬入する場合があります。
搬入日時をホームと調整する
大型ベッドやリフトは、共用廊下・エレベーターを使用するため、入居日当日に無断で持ち込むのではなく事前に搬入時間を調整してください。
設置後に動作確認する
特殊寝台なら背上げ・高さ調整、車いすならブレーキ、リフトなら移乗動線などを、実際の居室で確認してください。
身体状態が変わったら用具も見直す
入居後に身体状態が変わったら福祉用具を変更できる?
レンタル品であれば、身体状態や生活環境の変化に応じて、福祉用具専門相談員・ケアマネジャーと相談しながら変更を検討できます。
要介護度の変化だけで判断しない
同じ要介護度でも、歩行状態、起き上がり、移乗、褥瘡リスクは変化します。
転倒が増えた、ベッドから起き上がれなくなった、車いす姿勢が崩れるなどの変化があれば、用具が合っているか再評価してください。
ホーム職員からの情報も共有する
毎日の介助を行うホーム職員や訪問介護員が気付いた変化を、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ共有すると調整しやすくなります。
退去時の返却・搬出を確認する
退去するときレンタル品はどうする?
レンタル品は本人の所有物ではないため、退去・転居時には福祉用具貸与事業者と返却・継続利用を調整します。
転居先でも同じ事業者が対応できるか確認する
転居先が事業者の対応地域外であれば、別の福祉用具貸与事業者へ変更することがあります。
転居先で同じ用具が使えるか、居室環境に合うかも再確認してください。
自己所有品は搬出方法を確認する
自己購入した介護ベッドなどは、退去時に本人・家族側で搬出する必要がある場合があります。
処分する場合も、施設が無償で処分してくれるとは限らないため、契約前に確認しておくと安心です。
福祉用具を持ち込む前のチェックリスト
持ち込み・レンタル確認
- その福祉用具は施設へ持ち込めますか
- ホーム備品と重複していませんか
- 介護保険の福祉用具貸与を利用できますか
- 要介護度による給付制限はありますか
- 現在のレンタル事業者を継続できますか
- 居室・トイレ・廊下で安全に使えますか
- 車いす・リフトの回転スペースはありますか
- 特殊寝台の周囲に介助スペースがありますか
- 電動機器の電源・充電場所は確保できますか
- 避難動線を塞ぎませんか
- 誰が搬入・設置しますか
- 誰が日常点検・修理を担当しますか
- ホーム職員や訪問介護員がその用具を使用できますか
- 追加の電気代・保管料等はありますか
- 退去時の返却・搬出方法は決まっていますか
判断するときの順番
車いす・ベッド等の型番、寸法、使用目的を確認します。
要介護度、例外給付、貸与・販売選択制の対象をケアマネ等と確認します。
入口、トイレ、介助スペース、電源、避難経路まで実測します。
誰が使い、誰が保守し、退去時に返却・搬出するか決めます。
住宅型有料老人ホームの福祉用具は「制度・居室・介助方法」の3点で確認する
住宅型有料老人ホームの居室は、介護保険の福祉用具貸与でいう「居宅」に含まれるため、要件を満たせば車いす、特殊寝台、手すり、歩行器などの福祉用具貸与を利用できます。
一方、介護保険で借りられることと、そのホームへ問題なく持ち込めることは別です。
大型の福祉用具では、居室面積だけでなく、入口幅、トイレ動線、介助者の立ち位置、電源、避難経路などを確認する必要があります。
また、本人の身体状態が変化すれば、入居時に合っていた福祉用具が合わなくなることもあります。
入居前には、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員・ホーム職員の三者で、本人の状態と実際の居室を確認したうえで用具を決めるとミスマッチを防ぎやすくなります。
制度確認:本記事の福祉用具貸与対象、軽度者への給付、貸与と販売の選択制、有料老人ホーム居室での福祉用具貸与等は、2026年10月20日時点で厚生労働省「福祉用具・住宅改修」「介護サービス情報公表システム」等を確認しています。実際の持ち込み可否、設置場所、電源、搬入、追加料金、職員による使用可否は施設ごとに異なるため、候補施設の管理規程・重要事項説明書と現地確認を併用してください。